ブログトップ | ログイン

dezire_photo & art

desireart.exblog.jp

芸術と自然の美を巡る旅  

明治時代の空間で近代絵画の先駆者・マネを観る

「マネとモダン・パリ」  三菱一号館美術館開館記念展

明治時代の空間で近代絵画の先駆者・マネを観る_a0113718_8405157.jpg




 明治27年丸の内最初のオフィスビルが、「三菱一号館美術館」として開館した。この建物の魅力は、鹿鳴館やニコライ堂を造った英国人建築家、ジョサイア・コンドル”設計の明治時代の様式を忠実に復元した歴史の重みを感じさせる赤レンガ造りの建物の美しさです。室内も、ガラス、金具など家具も含めて、明治・大正期の執務室を復元しています。展示室の天井は天井裏の梁など細かいところまで復元しています。昔の建物を復元しているので、美術館の展示室は他の新しい美術明治時代の空間で近代絵画の先駆者・マネを観る_a0113718_8441063.jpg館と異なり、比較的小さな部屋に区切られ、安らぎを感ずる空間に仕上げられています。現代の効率重視の社会に慣れた感覚で見ると、警備の効率が悪く明らかに維持費にお金がかかるこんな贅沢な美術館で採算が取れるのかと、つい余計な心配をしてしまいますが、天下の三菱グループが威信をかけた社会貢献と受け取り、素直に喜んでこの空間を楽しむべきなのでしょう。

 


 この美術館の記念すべき開館記念展として開催された「マネとモダン・パリ」展を見てきました。マネは西洋近代絵画の先駆者で、絵画史を塗り替えた印象派の画家たちの指針を示した偉大な画家です。2001年に開館した府中市美術館の開館記念展もマネだった思います。このときは、マネの代表作「笛を吹く少年」「メキシコ皇帝マクシミリアンの処刑」「ステファヌ・マラルメの肖像」などが来ていましたと記憶しています。

明治時代の空間で近代絵画の先駆者・マネを観る_a0113718_842586.jpg マネはリアリズムの画家と言われていますが、同じリアリズムの画家と言われるクールベと比べるとずっと現代的です。マネの絵画は純視覚的であり、現実を超えた描かれた対象とは別の独自の絵画空間を持っています。さらにマネの絵画は繊細な感受性に溢れ、構図や色彩処理が新鮮で、絵画的造形、動き、絶妙なタッチが時空を超えて伝わってきて、観る人の心をとらえて離さない麻薬のような力があります。対象を最初の一筆から大胆かつ率直にとらえて表現するマネの作品は、亡くなってから130年以上過ぎた現在でも生気にあふれ、新鮮味を失っていません。この美術展に出品された作品からもマネのそのような魅力が心をとらえて離しません。


 マネは、モネ、ドガ、モリゾなど印象派の画家に大きな影響を与え、精神的指導者であったようです。晩年マネ自身も印象派の画家たちと交流し、印象派の画家の影響を受けています。明治時代の空間で近代絵画の先駆者・マネを観る_a0113718_8443418.jpg しかし、マネは印象派展には参加しなかったそうです。マネは自由な創造を重視する印象派の画家たちに共感はしていましたが、当時の美術の権威的存在であるサロン(官展)に挑戦し続けました。マネは印象派の若い画家とは一線を画し、マネ自身であるという姿勢を貫いたのだと思います。今回の美術展で久しぶりにマネの傑作に触れ、改めてマネの偉大さを改めて感じました。一つ一つの作品を素人の私が論ずることなど恐れ多いと感じました。素直に、明治時代を復元した贅沢な美術館で、マネの世界に浸って帰ってきました。マネの作品以外では、マネの後継者ドガとベル・エポックの画家・ジャン・ベローの傑作を久しぶりに味わうことができました。







by desire_san | 2010-05-14 21:12 | 美術展 & アート | Comments(38)
Commented by kyonshogo at 2010-05-14 09:48
実は、この美術展へ19日へ行く予定をしているのですよ!
なので、興味深く見せていただきました^^
マネの偉大な作品をやはりこの目で早く見たいです!
Commented by えりさ at 2010-05-14 10:31 x

desire_sanさん、こんにちは。

「三菱一号館美術館」開館に相応しい
「マネとモダン・パリ」展ですね。
多くの印象派ファンが訪れていることでしょう。
安らぎを感じる空間での鑑賞は心地よいものです。
独自の空間・・・オルセ-美術館にあるような空間でしょうか?
モネは良く観ますが、マネは地味なのでしょうか、余り機会がなかったように思います。
ポスターの女性がとても素敵ですね。
開館記念展の「マネとモダン・パリ」興味があります。
7月26日までとロングランなのは嬉しいです。
desire_sanのブログ、とてもお勉強になります。
少し知識が増えました。ご案内ありがとうございます。|友人を誘って出かけたいと思います。

Commented by timeturner at 2010-05-14 11:20 x
こんにちは。
ブログへのコメントありがとうございました。
私もこの三菱一号館美術館には行ってみたいと思っていました。
展覧会の内容もよさそうですね。
絶対に行く気になりました(^.^)。
Commented by hira-tama at 2010-05-14 12:26
こんにちわ。ひらたまです。
前回日本にきたマネもご覧になっているなど、ほんとの美術通なんですね。
美術館についての視点も勉強になります。
私は、天井などの細かい細工にも関心しましたが、警備の効率の悪さまでは気づきませんでした;;
今回の展覧会のマイベストピースは、温室で寛ぐマネ夫人の絵です。
マネがお気に入りの女性の肖像画からは、その筆致から愛情が伝わってくるようです。
ポスターのモデル、ベルト・モリゾ展が、以前に葉山の美術館でありましたが、それを見逃してしまったことを後悔しました。
Commented by drss0123noborui at 2010-05-14 13:09
コメントありがとうございます。なんと綺麗な写真でしよう。素晴らしい写真と内容です。私の知識の薄い内容が豊富で、愉しみながら勉強させていただきます。私のブログで『卓上造園』もやっています。
やっています。
Commented by transient66 at 2010-05-14 13:22
はじめまして、ブログへの書き込みありがとうございました。

マネ モダン・パリ展ですが、先日丸の内まで行ったにもかかわらず結局入らずじまいだったので、ここを読んでやっぱり行こうとなりました。うーん素敵。
Commented by やっくん at 2010-05-14 13:38 x
咲く13日はお休みのところ長時間お付き合いいただきありがとうございました。丸の内・日本橋・八重洲界隈には企業の美術館が増えてきましたね。マネといえば印象派というイメージがありますが、dezireさんの文を読んでいると無関係ではないけれども、必ずしもそうではないようですね。
Commented by shelley2002 at 2010-05-14 14:02
こういう視点でマネを観た事はなかった気がします。
勉強になりました。
ぜひ訪れたい美術展です。
Commented by takeshi_kanazaw at 2010-05-14 14:04
ブログへのコメント感謝。
名古屋に住み上京する機会が少ないので、ご紹介の美術館には行けそうもありません。
印象派の絵はあったくて親しみやすいですが、絵心がないのでそれ以上のコメントは出来ません。
昨年フランスのノルマンデイに行った時、印象派のモネが住んだ場所を通りました。ノンビリしたところで、睡蓮がありそうな感じでしたね。
Commented by yumechigai at 2010-05-14 14:28
ブログへの訪問とコメントありがとうございました。

綺麗で素敵なブログですね。
実際に展覧会に行った時の光景を思い出しました。
あまりマネには詳しくないのですが、彼の作品では、ベルト・モリゾが出てくる作品とピッコロを吹く少年が好きです。
Commented by grappa-tei at 2010-05-14 19:43
desire_san、こんばんは。近々行くつもりにしていましたら、詳しい解説、ありがたいです。マネ展もさることながら、この美術館そのものに興味津津です。楽しみに行きます。
Commented by cardiacsurgery at 2010-05-14 21:22
こんばんは。
拙ブログへコメントをいただき、ありがとうございました。
府中市美術館の「マネ展」の図録を見ながら、両者を比較してみました。油彩は今回のほうが多く、前回は版画が多かったようでした。
Commented by bernardbuffet at 2010-05-14 22:59
初めまして。
私のblogにきていただきありがとうございました。
府中市美術館で「笛吹(笛を吹く少年)」もご覧になっているのですね! Manetは名前が知られている割には日本で見る機会の少ない画家ですね。残された絵もそれほど多くはないし、これだけ集めた展覧会は貴重ですね。
Commented by nomi333 at 2010-05-15 00:43 x
初めまして!my blog へのコメント有難うございます。
「菫の花束をつけたベルト・モリゾ」 は本当に素敵な魅力的な女性ですね。自分画のモデルであり弟の妻にもした不思議な関係?
ですね。同室のベルトモリゾを描いた中でもピカイチであり以外に小さな作品だと驚きました。「エミール・ゾラ」はとても気になりました。役者絵をバックに描き日本の浮世絵が良く知られているゴッホ・モネのみならずマネにも影響を与えていたのだと驚きでした。あまり作品は知られていませんでしたが印象派セザンヌ・ゴーガン・ピカソなどに影響を与えていたと言う事がこの展覧会で初めて解りました。尚↓山も興味が有りますので又時間のある時に拝見する事に致します。
Commented by hayachoh at 2010-05-15 12:54
コメントをありがとうございました。
ボストン美術館展、とてもわかりやすく西洋絵画の歴史に
そって展示されてましたね。
ボストンに行ってじっくり観たくなりました。

三菱一号館美術館もそのうち出かけようと思ってます。

オペラ、ピアノ、コーラス、旅行、絵画鑑賞などいろいろ楽しんでます。
記事、参考にさせていただきたいのでリンクさせていただきました。
Commented by houseofflowers at 2010-05-15 14:24
こんにちは。三菱一号館美術館は、尋ねてみようと思っているので、参考にさせてもらいました!!
とても楽しみです。
Commented by miho at 2010-05-15 19:49 x
情報ありがとうございました。ベルト・モリゾの肖像が素敵でしたね。
Commented by miya at 2010-05-15 19:50 x
行ってみたい思っていましたので、大変参考になりました。ありがとうございました。
Commented by 6-gousitsu at 2010-05-15 20:14
こんにちは、ブログへのコメントありがとうございます

写真がきれいですね
「マネとモダン・パリ」展に行く予定はありませんが、紹介されている作品をみると落ち着いて品の良さそうな作品たちですね
落ち着いた気分になれそうです
自分は絵に関して詳しくないのですが、美術館の楽しみとして
1枚だけ持ち帰られるとしたらどの作品が欲しいか?と考えます
同じ作品を希望する人がいたら楽しさが少し増します
お気に入りの作品はありましたか?      
                六

Commented by nomadmurasaki at 2010-05-15 20:50
こんばんは。
先程は当ブログにご来訪&コメントをありがとうございました。
こちらの美術館へはまだ行ってませんが、
また違う展示の時にでも、行ってみたいなと思います。
夏にかけて、いろいろ面白そうな展覧会が目白押しなので
今から楽しみです。

それでは、また^^
Commented by ydomodomo at 2010-05-15 21:10
desire_sanさんマネとモダンパリ展にいらしたんですね
先日テレビでマネについて詳しく放送されていてとても良かったです
モデルのベルトモリゾとの関係や
私の好きな絵「フォリーベルジュールのバー」についても詳しく解説されていました 
三菱一号館美術館は建物も魅力的なのですね
この記事を見て是非とも訪れたいと思いました
解説と分析が素晴らしいです
Commented by tadasu24 at 2010-05-15 21:26
こんにちは。tadasu24です。
ブログへのコメント、ありがとうございました。

マネ展、行きたいです!

三菱一号館美術館に、興味が湧きます。
desire_san がおっしゃる、贅沢な空間を楽しみに
近々行きたいと思っています。
(会期が長い!と、油断して、終了間際大慌てにならないよう・・)
Commented by fis2001a at 2010-05-15 22:46
初めまして。(ぺこり)
拙いブログへの訪問ありがとうございました。
こちらの、さまざまな分野に造詣が深くていらっしゃるブログを楽しく読ませて頂きました。

「マネとモダン・パリ」展、会期終了まで時間があるようですので、機会を作って一度訪ねてみたいと思います。
三菱一号館美術館や絵画のお話しにワクワクしています ♪
ありがとうございました。
Commented by kisachisa at 2010-05-15 23:23
こんばんは、お邪魔しています♪
美術もいいですが・・・山の写真がいいですね。見入ってしまいました。ちょくちょくお邪魔させていただきます☆
Commented by アレ? at 2010-05-16 08:53 x
desire_sanさん
初めまして。アレ?です。
ブログへのコメント有難うございました。

まだ三菱一号館美術館の中に入ったことはないのですが、外観から、ただの白い箱、といった空間の美術館とは異なる美術館なんだろうなぁ、なんて想像しています。

掲載してくださった作品、どれも素敵ですね。
淡い色合いの美しさだけではない、どこか乾いた、ちょっと抑えた色合いが印象的です。
Commented by mahoroba-shahai at 2010-05-16 08:57
おはようございます。

三菱一号館美術館の場所を確認しました。
このような場所にあるんですね!
この夏、東京に行けそうなので、是非
寄ってみたいです。

貴重な情報、ありがとうございます。
 
Commented by hirokokk at 2010-05-16 22:00
山登りに絵画に写真に音楽にといろいろな分野に、興味をお持ちなのですね。生きていることを楽しまれておられる、おしあわせですね。
Commented by shizushizu131 at 2010-05-17 00:03
こんばんは、はじめまして。
お詳しいのですね。マネは変人か?天才か?と特集した番組があったように記憶していますが、リアルな感性が変人と言われるゆえんなのでしょうか?モデルが持つ内面を描き出す鋭い感性は天才にしか備わっていない?と感じています。

山の記事も多いので、頻繁に読ませていただきます。
教えていただきありがとうございます。
Commented by tkomakusa1t at 2010-05-17 14:43
山にも絵にも詳しいのですね。
美術館も絵も見てみたいです。
情報ありがとうございます。
最終は7/25ですね。
行ってみます。
Commented by junbronson at 2010-05-18 16:33
見に来ましたー。
三菱一号館美術館は入り口が今ひとつ分かりにくかったり順路も迷いそうになったりですよね。
部屋で細分されてる感じは庭園美術館みたい。

今回はマネの作品をこれだけ集めるのは相当大変だったろうなと、
ホントならもっと有名どころを集めるべく努力したんだ、という思いが伝わる感じでした(参考に図版を展示したりして)。
あと、当時のパリを撮った写真作品が面白かった。
あ、マネも写真の影響受けてるんだな、
そんな感じを受けました。
では〜。
Commented by orapu-travel at 2010-05-19 23:09
ブログへの来訪ありがとうございました。
今年は、印象派の展示会が盛りだくさんですね。芸術新潮、Penなど雑誌などの特集も楽しみです。
三井一号館は、勤め先のすぐ傍。油断しているうちに会期が終わってしまいそうです。急がなくては。
Commented by ami5691 at 2010-05-20 00:07
私のブログへの訪問とコメントありがとうございました。
美術に詳しいんですね、参考になりました。
三菱1号館美術館の復元建物はすてきですよね。
マネ絵画の雰囲気にも似合っていると思います。
Commented by miki at 2010-05-20 09:43 x
こんにちは。先日は大変ありがとうございました。
三菱一号美術館、私のオフィスから近いのに、なかなか行けてませんが、このブログ見て、是非行かねばという気持ちになりました。
いつも、情報を提供していただきありがとうございます。
マネの時代を堪能してきます。
Commented by hoshi-kyouko at 2010-05-20 09:58
こんにちは。
ブログへのコメントありがとうございます。
絵画を鑑賞する際には器も重要だと思います。
外側から眺めてはいましたが、ここにお邪魔して行ってみる意欲がでてきました。
Commented by les_nuages_bleus at 2010-05-21 22:21
ブログへのコメント、ありがとうございました。
大変勉強になりました。山のお写真も、素晴らしいですね。
Commented by mucco at 2010-05-24 22:05
こんばんは。コメントありがとうございました。
三菱一号館の外観と中庭はたしか昨年の今頃ほぼ完成していたような。http://mucco.exblog.jp/11676749/
あの頃は秘密の花園で、お昼のお弁当をのんきに食べていましたが、今では近寄れないほどの人気スポットになりましたね。
仕事帰りに立ち寄るつもりです。

Commented by ぼけちゃん at 2010-05-29 22:28 x
マネの「オランピア」を追いかけて、2月にオルセーに行って来ました。わたくしが男性でしたら・・・I desired her the moment,
I saw her !! のような作品でした。
19世紀にこの絵画を描く勇気、父と言われる所以でしょうね。
Commented by cafegent at 2010-07-21 11:39
こんにちは!
海の日にやっと、「マネとモダン・パリ」展を観て来ました。
庭園美術館同様にあの趣の在る歴史的な建物の中で観るのに相応しい展覧会でしたネ。
マントルピースの上に飾られたマネの作品を拝見出来るなんて、とても贅沢なこと。そして、いつのまにかベルト・モリゾの瞳に釘付けになっておりました。

展覧会を観る前に、このブログを拝読しておいて良かったです。
ありがとうございました。

東京自由人

by desire_san