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芸術と自然の美を巡る旅  

ラブシーンを最高の美しさで表現したバレエ

バレエ『マノン』

Ballet "L'histoire deManon"


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 新国立劇場では2003年、当時の最高のプリマバレリーナの一人・アレッサンドラ・フェリを迎えて、マスネの音楽にマクミランが降り付けた『マノン』が上演され、バレエで表現された最高に美しいラブシーンとして心に残りました。そのバレエ『マノン』が9年ぶりに再演されました。



L'histoire de Manon is a ballet comprising the music of Jules Massenet, arranged and partially orchestrated by British composer Leighton Lucas, re-orchestrated entirely by conductor Martin Yates . The piece was first presented by The Royal Ballet in London , with choreography by Sir Kenneth MacMillan and it continues to be recognised internationally as the company's signature ballet.

 新国立劇場では2003年、当時の最高のプリマバレリーナの一人・アレッサンドラ・フェリを迎えて、マスネの音楽にマクミランが降り付けた『マノン』が上演され、バレエで表現された最高に美しいラブシーンとして心に残りました。そのバレエ『マノン』が9年ぶりに再演されました。

ラブシーンを最高の美しさで表現したバレエ_a0113718_16312669.jpg 小説自体は当時の腐敗した社会情勢を背景に、情欲と金銭欲のはざまで揺れるマノン・レスコーを、愛する男たちを破滅させていく魔性の女、不幸の運命を背負った女として描いています。プッチーニは小説に忠実にドラマティクなオペラを残しています。それに対してフランスの作曲家・マスネは、男女の情欲を本能的な愛の美しさとして表現したロマンチックなオペラとして仕上げており、音楽も甘味なラブストーリー的な雰囲気があります。

 バレエ『マノン』は、マスネのオペラ『マノン』の音楽に、マスネが作曲したほかの音楽を組み合わせてバレエ曲に編曲した音楽に、マクミランがバレエを降り付けたものです。英国ロイヤルバレエで初演されて以来、今までの古典バレエでは見られなかったような男女の濃密な恋愛表現を、高度技量のバレエで表現した独特の美しさが人気を博し、一流のバレエ団で上演されるようになりました。

The courtyard at the inn is frequented by actresses, gentlemen and the demimonde from Paris. Among them are des Grieux, a young student, the wealthy Monsieur GM, and Lescaut, who is there to meet his sister Manon on her way to enter a convent. A coach arrives bringing Manon and an old gentleman who has been very much attracted to her. Lescaut notices this and takes the gentleman into the inn to come to an arrangement with him over Manon. Manon remains outside and meets des Grieux. They fall in love and decide to escape to Paris with the help of the money that she has stolen from the old gentleman. Lescaut and the old gentleman come out of the inn, having made a bargain, and to their dismay see that Manon has disappeared. Monsieur GM tells Lescaut that he too is interested in Manon and because of this wealth Lescaut promises to find Manon and persuade her to accept GM. In Paris,Des Grieux is writing a letter to his father but Manon interrupts by declaring her love for him. Des Grieux goes to post the letter and in his absence Lescaut arrives with Monsieur GM. Manon yields to GM's advances and when des Grieux returns, Lescaut persuades him that there will be great wealth for all of them if he, des Grieux, will sanction the liaison between Manon and GM.

ラブシーンを最高の美しさで表現したバレエ_a0113718_16323920.jpg 今回『マノン』が再演されるということでチケットをとりましたが、気持ち的に9年前のアレッサンドラ・フェリの『マノン』の舞台を見た感激を期待していました。9年前のフェリの舞台では、原作の18世紀フランスの刹那的、耽美的で退廃した社会の中で、初めは学生デ・グリューへの純愛的なマノンの恋心が、マノンの兄レスコーも絡んで、金銭的な贅沢と快楽と恋心の狭間で揺れ、結局恋人デ・グリューを巻き込んで破滅していく姿を繊細に表現していました。マノンとデ・グリューのラブシーンのような燃えあがる恋の表現、ムッシューG.M.から毛皮のガウンと豪華なダイヤのネックレスを贈られ呼び覚まされるマノンの娼婦的な心の表現、死の淵に立ちデ・グリューと踊る魂が抜けたマノンの表現など、心が変貌しながらも、なおデ・グリューを魅了し続けるマノンの女性的な魅力を強く感じさせました。美しく壮絶な二人の愛と死のドラマが、マスネの甘く美しい旋律にのせられて演じられていました。

Manon arrives at the party given by Monsieur GM and is clearly torn between the wealth of her companion and her love for des Grieux, who is also there with Lescaut. Des Grieux tries to persuade Manon to leave with him but she tells him that the time is not right and only will be when he takes more of Monsieur GM's money at cards. Des Grieux is caught cheating and he and Manon rush away. Manon and des Grieux once again declare their love for one another but Monsieur GM arrives with the police and Manon is arrested as a prostitute. In the ensuing struggle Lescaut is killed.

ラブシーンを最高の美しさで表現したバレエ_a0113718_16331112.jpg 『マノン』はリフトを多用したアクロバティックなバレエで、技術的に最高レベルに難しい演目で、その中で微妙な心の揺れや女性的な魅力を表現するのは並大抵のことでないと思います。そういう意味では健闘していたとは思いますが、原発事故以来、世界を代表するバレエダンサーのゲスト出演を断られ続けて苦労しているらしい現状で、やっと出演してもらったヒューストンバレエ団のサラ・ウエップに、バレエの一時代を作った名バレリーナ・アレッサンドラ・フェリと同じものを期待するのは無理があつたように思いました。

 むしろ今回の舞台では、英国の指揮者マーティン•イェーツが英国ロイヤル•バレエ団のためにオーケストレーションし、現在世界中で使われている楽譜を、マーティン•イェーツ自ら東京フィル指揮した演奏で、バレエの舞台をドラマティクに演出していたように感じました。オペラでいえば、マスネというより、プッチーニの『マノン・レスコー』を思わせるようなドラマティクな演奏で舞台を引っ張っていたように思います。バレエではあまり経験のないことですが、今回は音楽にリードされてバレエが演じられていたような印象を受けました。

The gaoler of the penal colony awaits the arrival of the convicts from France. Manon has been deported to America as a prostitute and des Grieux has followed her there by pretending to be her husband. The gaoler now turns his interest towards Manon. The gaoler has arrested Manon but offers her rewards in the hope that she will desert des Grieux and live with him. Des Grieux, however, breaks in and kills the gaoler. Manon and des Grieux have escaped into the swamp of Louisiana. All her former ambitions of wealth and splendour have been renounced for her love for des Grieux. While eluding their pursuers Manon collapses and dies in his arms.

ラブシーンを最高の美しさで表現したバレエ_a0113718_1634252.jpg 音楽とバレエが結果的に調和して美しくまとまりの良い舞台だと思いました。しかしかつては、ダーシー・バッセル、アレッサンドラ・フェリ、吉田都、スヴェトラーナ・ザハロワ、アリーナ・コジョカル、ルシア・ラッカラなど世界のスターバレリーナがゲスト出演していたころの新国立バレエ団の公演を思うと寂しくもありました。
(2012年6月24日(金) 新国立劇場オペラバレス)

















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by desire_san | 2012-06-30 16:36 | バレエ・演劇 | Comments(12)
Commented by momo1216 at 2012-06-30 21:11 x
私のブログに訪問いただき、ありがとうございました!
私は全然勉強しないでいったのですが、前回はフェリだったのですね~!それはがっかりしても仕方ないかな・・・という気がします(^_^;)新国立バレエ団にももっと頑張っていってもらいたいですね!
ところで、ローエングリンも見られたのですね。
私も見たいと思っていたのに、うっかりチケット発売日を忘れてしまい、見そびれてしまいました・・・。やっぱり無理してでも見に行けばよかったなあ。
今後は忘れないように気をつけます!
Commented by おしぶち洋子 at 2012-06-30 21:50 x
こんばんは。
新国立の「マノン」、9年前にもご覧になったのですね。
詳しいご感想、なるほど~と勉強になります!

9年前と今回の舞台の違いや、オーケストラの情報もよくわかります。
ありがとうございます(*^_^*)
Commented by Masayuki_Mori at 2012-07-01 06:52 x
こんにちは。
私はザハロワのファンだったのでザハロワが出なくなってから新国立バレエを見ていませんでした。新国立劇場のレベルアップに協力していたザハロワが来なくなったのも、原発事故が原因だったのですね。海外のにヨーロッパの知識人は親日家でも、日本の政治に対する信用度は自民党時代から先進国でも最低に近いという話をよく聞きますので、日本政府が原発事故の安全性をアピールしても、あまり信用されていないのでしょうね。海外の一流のダンサーやオペラ歌手、指揮者、演出家を招いで、一緒に仕事をすることでバレエ団やオペラの合唱団、東京フィルなどが力をつけてきたのに、非常に残念なことですね。政治は頼りにならないから、関係者が頑張るしかない状況は、今の日本を象徴しているように思います。
Commented by desire_san at 2012-07-01 07:04
コメントありがとうございます。
momo1216さん、そんなにがっかりはしていません、オーケストラの演奏は期待以上に良かったと思います。新国立劇場のピットに入り、一流の指揮者、演出家、歌手などと共演して、東京フィルは確実に力をつけていることを実感しました。Masayuki_Mori さん、自民党政権から続く日本の政治の低迷と劣化は、海外の知識人常識となっているのは実感しています。与党、野党も含めて全自己批判して信頼を回復しようとする様子が感じられないのは、文化活動に努力している人の足かせになっているようで困ったものです。関係者は懸命に努力しているようですので、そちらを応援するしかないようですね。
Commented by marigata at 2012-07-01 12:31 x
こにちには。
今回初めてバレエの「マノン」わ見ましたが、高度のテクニックを馳駆したバレエにすばらしい舞台だと思いました。アレッサンドラ・フェリの舞台をご覧になっているので、いまひとつのような印象をお持ちのようですが、バレリーナを目指す人ととしては、あのくらい踊れるのは夢のような目標だと思います。ほとんどの人がアレッサンドラ・フェリのようにはなれませんから。ご指摘のようにオーケストラの演奏の方がリードしたいたとい印象は私も感じました。
Commented by Ruiese at 2012-07-01 12:42 x
『マノン』シルヴィ・ギエムが得意としていた作品なので、フェリクラスのバレエダンサーが踊らないと、十分お客を満足させられないということは理解いたします。ただ。日本のダンサーもこのような難しい演目に挑戦しても頑張っているので、暖かい眼で応援してあげてくださいね。私は。海外からのゲストダンサーよりむしろ日本のダンサーの舞台を見て、成長していく姿を楽しんでいます。そのようなバレエの見方もあってよいのではないでしょうか。
Commented by バイヤーFB at 2012-07-01 15:42 x
dezireさんへ

完全素人目線の私の感想にコメント頂いて恐縮です。
作品自体初めて見たので(オペラのイメージなので)
とっても新鮮でした。バレエにするとこうなんだなぁと。

ただ、素人目にもなかなか難しい大変な作品なんだろうなと思いました。
地味めですしね、他のことでごまかしきかないですし。

前作も鑑賞されているとのことで、本当にお詳しい感想読ませて頂きました。ありがとうございました。

Commented by Nukaya at 2012-07-02 00:35 x
東京フィルは、新国立劇場のオーケストラピットで演奏するようになってから、レベルを上げてきているようですね。世界的な名歌手や演出家に加え、本場の指揮者を迎えて、鍛えられてきたのでしょうね。
Commented by tchinierwa at 2012-07-02 12:13 x
こんにちは。確かによくまとまっていて本当に美しく、感動的だったと思いますが、一方でコンパクトという感じがしないでもなかったですね。
「マノン」ってもっと黒い部分を持ったキャラだったのではとも思います。
すごく清潔なマノンだっかもとも思います。
Commented by Masayuki_Mori at 2012-07-04 16:32 x
原発事故以来、世界を代表するバレエダンサーが日本での舞台のゲスト出演を断る理由はわかるような気がします。バレエダンサーにとって身体の異変は致命的ですから、長期の舞台稽古が必要な日本のバレエ団との共演を嫌がるのも無理ないことと思います。海外で練習した1日くらい舞台に立つのとは違いますからね。日本の政府が安全だと発信しても、海外から信頼されないことが深刻ですね。
Commented by memoria_77 at 2012-07-04 17:09 x
始めまして。芸術に対する高い見識があふれるブログですね。芸術に深い理解を持っておられる方に東京フィルの演奏がすばらしいといっていただけると大変うれしく思います。まず、世界的な歌手との共演で、合唱団が力をつけてきました。いい意味で緊張感が生まれ、一流の指揮者の力もあり、団東京フィルの員のレベルもあがっていると思います。今後もさらに伸びる可能性を秘めていますので、ご期待ください。
Commented by Sakura at 2012-07-05 18:47 x
こんにちは。
アレッサンドラ・フェリのバレエ『マノン』は私も見ました。身体の表現全体にオーラがあり、愛の表現がものすごい情熱が伝わってきて、起用列に印象に残っています。この『マノン』は、シルヴィー・ギエムが得意としていたバレエだそうで、特別な身体能力と表現力をもった人しかdezireさんが満足できる舞台にはならなかったように思います。

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