バーミンガム・ロイヤルバレエ・佐久間奈緒、吉田都の世界に挑戦
Ballet: Sylvia
『シルヴィア』は、レオ・ドリーブ作曲、ルイ・メラント振付の3幕5場のバレエ作品でしたが、当時英国バーミンガム・ロイヤルバレエでプリンシパルとして活躍していた吉田都さんのためデヴィッド・ビントレー監督が新たな振付を行いました。今回この演目を現在バーミンガム・ロイヤルバレエ団のプリンシパルを務める佐久間奈緒さんのために再振付して上演されました。
Sylvia, originally Sylvia, ou La nymphe de Diane, is a full-length ballet in two or three acts, first choreographed by Louis Mérante to music by Léo Delibes. Sylvia is a typical classical ballet in many respects, yet it has many interesting features which make it unique. Sylvia is notable for its mythological Arcadian setting, creative choreographies, expansive sets and, above all, its remarkable score.
佐久間奈緒さんは英国ロイヤルバレエ学校に入学し、バーミンガム・ロイヤルバレエ団に入団し2002年よりプリンシパルを務め、まさに吉田都と同じコースを歩み、吉田都に続く最も近いバレリーナの一人で、『眠れる森の美女』『コッペリア』などで主演しテクニックと気品のある演技は本場英国でも高く評価されています。
第1幕 第1場
真実の愛は過去のものと人間たちにも神々にも背を向けて庭師として暮らす愛の神・エロス。伯爵(オライオン)の不貞で夫人(ディアナ)とは不仲、召使(シルヴィア)と家庭教師(アミンタ)の間に芽生えた愛も互いに思いを寄せいあいながらも、愛の冷めた伯爵夫妻の様子を見て恋愛を信じることができなくなっている、これを見かねた愛の神・エロスの計らいにより、彼らに真実の愛を授けるため古代ローマの時代に世界にタイムスリップさせる。そこで、娘は女神ダイアナに使えるニンフ・シルビアに、青年は羊飼いのアミンタになる。
第2場
森の女神、ディアナは、狩りを終え、森の精たちと身体を休めている。そこに。身分の低い羊飼いのアミンタが誤って入り込んでしまい、ダイアナは怒ってアミンタを盲目にしてしまう。森の精のひとりシルヴィアは若者・アミンタを慰めるため洞窟に舞い戻るが、森をさまよう好色の狩人・オライオンに連れ去られてしまう。アミンタはシルヴィアを助けるため、ウロスの助けを借りて旅に出る。
第2幕
オライオンの隠れ家に捕らえられたシルヴィアを誘惑しようとするが、シルヴィアはオライオンにワインの作り方を教えて、それを飲ませて酔わせてしまう。盲目のアミンタはエロスに導かれてシルヴィアを見つけるが、シルヴィアはディアナとの純潔の誓いに触れたことを恥じて闇夜に逃げこんでしまう。シルヴィアはまだアミンタの愛に対して懐疑的な気持ちであるためアミンタの旅は更に続く。
第3幕
アミンタはシルヴィアを見つけるためディアナの神殿に着く。ディアナの側近たちはディアナを讃えている。そこに奴隷の女たちを積んだ海賊船が到着する。ディアナの召使として女たちを売ろうとするが、その一人が行方の知れなかったシルヴィアだった。ディアナの誓いを破って罰を覚悟していたシルヴィアの前に突然ディアナの声に気付いたがアミンタが現れ二人は結ばれる。アミンタの目は海賊の船長により魔法が解かれる。海賊の船長の正体はエロスであった。そこに怒り狂ったオライオンが現れる。オライオンとアミンタの決闘。シルヴィアはディアナの神殿に身を隠し、オライオンは後を追いかけようとする。狩りの女神ディアナはこの行為に憤り、オライオンを打ちのめし、アミンタとシルヴィアの交際を認めない。情け深いエロスはディアナ彼女の若い恋人で、羊飼いであったエンデュミオンのことを思い出させ、彼らを許させる。シルヴィアとアミンタは良き神意のもとで結ばれるところで場面は元の現代に戻る。傷ついた心のシルヴィアとアミンタ、愛されていない伯爵夫人ディアナ、好色の伯爵オライオンは夢から覚めると、自分たちの愚かな愛情の行為を改める。
現代と古代、時間旅行というか時空を超えたドラマで、現代のパーティーシーンから、突全ローの時代のギリシアの神話の世界画面が展開し、カクテルドレスの女性たちが神話の衣装の女性たちに変わる、このセットと衣裳が美しい、この場面転換が見事で見ている人の気持ちを刺激する美しい演出になっています。音楽はいかにもイギリス的な音楽で躍動感がありました。
シルヴィアを演じた佐久間奈緒さんは、日本で全幕物を踊るのは珍しく踊るのは新国立劇場では初めてでした。この舞台手は、シルビア自身も常にアミンタを気にかけ思いやり、ニンフの群舞の中でも一番女性らしい感じを表現していましたが、その後アミンタの愛に気付き変貌していく様子を美しく表現していました。堂々と流れるような振付の中で音楽性が豊かなこの作品の魅力がよく表現されていたと思います。テクニックよりキャラクターを表現することに徹していたように思います。曲がエキサイティングですし、それでもグラン・パ・ド・ドゥでは、確かな技術に基づく表現の美しさは安定癌がありました。本当は難しい踊りなのでしょうが流れるように表現されていて佐久間奈緒さん自身も楽しんで踊っているようなハッピーエンドは、我々も安心して楽しむことができました。
アミンタ役のチーは自然体で佐久間奈緒さんの踊り方に共鳴する身体の動かし方音の取り方がとても優雅な雰囲気でダンサーとしての感性の豊かさを感じました。アミンタ役はリフトのシーンが多く、特にパ・ド・ドゥはにかなりハードなものなのでしょうが、シルヴィア役の佐久間奈緒さんと調和のとれた表現力が印象に残りました。
このバレエはシルヴィアが主役ですが、相手役のアミンタが盲目され第2幕まであまり活躍しないこともあり、ダイアナとオライオンが物語の展開に大きな役割を演じていると思いました。特に伯爵夫人はダイアナになるので、愛に対して懐疑的な象徴はダイアナです。女神ダイアナはニンフたちの心をつかんで敬われている感じがいます。ダイアナ役の木島和美さんは最近まで主役を踊っていただけあり、踊りにと気品と感情の起伏をうまく表現しており、激しさを示す場面ではスピード感もありました。
オライオンは女好きの伯爵という役柄と性格が現代と古代にまたがっていて、そこにこのバレエのキャラクターの面白さがあります。敵役のオライオンを演じた福田圭吾さんも行く躍動感のある踊りで魅力がありました。演劇や映画、ドラマでも敵役に魅力がないと止まらないものになりますが、その点でも配役に十分配慮された舞台でした。
(2011.10.30 新国立劇場。オペラパレス)
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ブログご訪問ありがとうございました!
シルヴィアの音楽は本当に素敵でした。
コッペリアもいいですが、シルヴィアの音楽もすごく好きです♪
バレエ的には、リフトの技術がすごいなぁーと思いました。あんなに複雑なリフト、男性も女性も力量が問われますね^^;)
このたびは拙ブログをご訪問下さり、どうもありがとうございました。
ビントリー版『シルヴィア』、最初はさほど期待していなかっただけに、久しぶりに良い作品に出会えたと嬉しく思いました。
佐久間さんとツァオ・チーの回も観ました。二人とも手足を真っ直ぐに伸ばしたポーズがきれいで、グラン・パ・ド・ドゥでの流れるようなパートナーシップもすばらしかったです。
ドリーブの印象的な音楽にきっちり合わせた振付も見ごたえ充分でした。
また再演してほしいですね。
バレエの鑑賞歴が凄いですね、出てくるバレリーナの名前を見ているとうらやましい限りです。私もバレエは大好きで3年前に初めて観てから毎週のようにいろんな公演を観ています。来日公演も然ることながら地元(愛知県)のバレエ団の若きバレリーナが将来大舞台に羽ばたくのを楽しみにしています。私のブログはその時の思いをダラダラ書いているだけですが、dezireさんのブログは親切丁寧な内容でフォト入のわかりやすいものですね。機会があればまた新国立劇場バレエをオペラパレスで観たいですネ。
本当に楽しい公演でした。
目下の私の楽しみは、NHK-BSの「プレミアムシアター」でいつ放送するか、ということです。
もちろん生で見るのとテレビ画面で見るのとでは全然違いますが、一度生で見ている舞台はテレビを見ながら思い出すことができますから。
いつもの例ですと、放送するタイミングは、「忘れたころ」です(^_^;)。
チェックを怠らないようにしなければ。
皆様もご指摘のように、佐久間奈緒さんは卓越したテクニックに基づき、表現力も安定していて楽しめる舞台だったと思います。
チャウ さんも描いて頂いていますが、、グラン・パ・ド・ドゥは流れるように余裕を持って踊っておられて見ごたえがありました。
素人的な見方かもしれませんが、吉田都さんに続くダンサーとして、 英国ロイヤル・バレエの小林ひかるさんとまた違ったタイプのように感じられ、ともに今後か楽しみで応援しています。
全く聞いたことがなかった演目なので行きませんでした。佐久間奈緒さんの名前も初めて知りました。バレエにもお詳しいのに驚きです!吉田都さんにつづく世界に通ずる日本人バレリーナの一人なのですね。前にご紹介のあった小林ひかるさんといい、第2の吉田都を目指すバレリーナがいめということは、それだけ吉田都さんの存在はおおきいということでしょうね。
佐久間さんの舞台を数年前のバーミンガム・ロイヤル・バレエ来日
公演「美女と野獣」で初めて見て、技術と表現力の高さに感心した
のですが、今回も期待を裏切らない舞台を見せてくれたと思います。
dezireさんはとても幅広い趣味をお持ちなんですね。他の記事も
じっくり読ませていただきます。