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芸術と自然の美を巡る旅  

オペラとオペレッタとミュージカルの違い

レハール『メリーウィドウ』

Operetta: The Merry Widow

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 『メリーウィドウ』を見て、改めてオペラとオペレッタ、ミュージカルの違いを考えさせられました。最近は『アイーダ』のようなオペラ演目もミュージカルで上演していますが、その違いはどこにあるのでしょう。




The Merry Widow is an operetta by the Austro-Hungarian composer Franz Lehár. The librettists, Viktor Léon and Leo Stein, based the story – concerning a rich widow, and her countrymen's attempt to keep her money in the principality by finding her the right husband on an 1861 comedy play, L'attaché d'ambassade by Henri Meilhac.

 オペレッタはオペラブッファをさらに親しみやすくし、人生の機微を観客の笑いと涙を誘いつつ、描き出すことを身上としている。浅薄な内容のドラマを甘美で軽快な音楽で舞台をまとめ上げいるようです。オペレッタは。パリで19世紀半ばオッフェンバックの『天国と地獄』ウィーンで19世紀後半『こうもり』、20世紀初頭『チャールダーシュの女王』・『伯爵令嬢マリツァ』、の『メリーウィドウ』『ルーナ夫人』が人気を博しました。

オペラとオペレッタとミュージカルの違い_a0113718_51953.jpg ミュージカルは、オペレッタがイギリスへ渡って変貌しアメリカで開花しました。ミュージカルの代表作品『キャット』や『コーラスライン』などでは、芝居、歌、ダンスが一体となって劇的効果作っていいます。セリフも全て音楽に乗せて歌うオペラ形式のミュージカル『ウエストサイド物語』『オペラ座の怪人』や『ジーザス・クライスト・スーパースター』、『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』『ボギーとベス』はポップオペラというジャンルと重なり、本格的オペラとして上演されることもあります。このような昨比手でのオペラとミュージカルの違いといえば、オペラのアリアでは独特のベルカント唱法で歌われるのに対し、ミュージカルではポピュラーソングと同じように歌われます。

もう一つオペラとミュージカルの根本的な違いは、オペラはあくまで主役は優れた音楽、脚本、舞台美術、演出は音楽際立出せるための脇役であることです。例えばモーツアルトの傑作オペラはたわいもない浅薄な話ですが、モーツアルトの比類ない音楽に載せて演じられれば立派な芸術作品です。オペラのアリアでは独特の発声(ベルカント唱法という)唱法で歌われ、優れたアリアには芸術性があふれています。ミュージカルの多くは小説としても愛されてきたような完成度の高い脚本で、音楽のない演劇の舞台にしても通用するものです。その脚本を生かして優れた音楽とダンスをつけたものがミュージカルの傑作と言える作品です。『オペラ座の怪人』、『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』歌はポピュラーソングと同じ発声法が用いられ、重要な要素であるダンスは、すべての出演者が踊るのが基本です。

 オペレッタの名作と言われる『メリーウィドウ』を見て、オペレッタというのは芸術性の高い音楽を擁するオペラと、人を感動させるような脚本を擁するミュージカル傑作の狭間に会って、浅薄で通俗的な脚本を甘味で口当たりの良い音楽で飾り立てた作品という印象を受け、これがかなりカルチャーショックだったからです。オペレッタから開花したミュージカルは、ただ楽しければ良いと言う世界を超えて、文学と融合した新たな舞台芸術に発展していたのです。オペレッタの傑作『メリーウィドウ』をMETの最高の舞台で観て、改めてオペレッタの微妙な立ち位置を考えさせられました。



オペラとオペレッタとミュージカルの違い_a0113718_5195980.jpg 『メリーウィドウ』のお話は財政破綻寸前の「ポンテヴェドロ侯国」という架空の国、の騎兵士官ダニロ伯爵は、美しい少女ハンナに恋心をいだきますが、ダニロは貴族、ハンナは貧しい平民という身分に違いから、交際を禁じられ、駐フランス公使館付き書記官になり、パリに赴任し、もっぱらキャバレー・マキシムに入り浸って、退廃的な生活を送っています。

 ハンナはポンテヴェドロ侯国に住む大富豪グラヴァリに嫁ぎますが、夫はご高齢で結婚後、莫大な財産を残して亡くなりハンナが遺産を相続します。一方、母国ポンテヴェドロは財政破綻という状況に陥っています。国王の誕生記念パーティがパリ公使館で開かれますが、莫大な遺産を相続しパリで豪遊中のハンナも招待されています。パーティを主催するツェータ男爵は、大富豪の未亡人ハンナの莫大な遺産が国外に流出することを何とか防がなくてはなりません。そのため、ハンナと旧知の仲であるダニロに「ハンナと結婚せよ」という特命を与えたいのですが、マキシムに入り浸っています。ツェータ男爵は、ハンナが財産目当てのパリの男になびいてしまうのが心配で、若い妻ヴェランシェンヌをパリの伊達男カミュ・ド・ロション任せたままです。カミュ・ド・ロションは、ヴェランシェンヌの扇子に「あなたを愛す」と書いて、彼女に言い寄ります。ここで2人が歌う二重唱「火遊びはやめて」が歌われます。

 颯爽と「ハンナ登場の歌」を歌いハンナが登場、ルネ・フレミングが聴きどころを見事に歌います。遺産目当てにハンナに群がる男性たち、ハンナが男たちを引き連れて、入れ違いにマキシムから酔っぱらったダニロが戻って「ダニロ登場の歌」を歌います。男たちにまつわりつかれてお疲れのハンナがやってきて、ソファーに休んでいるダニロと再会。昔の恋人同士、お互い自分の気持ちに素直になれない「意地の張り合い」が始まります。「お馬鹿な騎士さんが」という楽しい歌がここで歌われます。

 ハンナの気を惹こうとダンスを申し込むのですが、遺産目当ての男たちにうんざり。ヴェランシェンヌはロションをパートナーに推しますが、ハンナがパートナーに選んだのはダニロでした。ハンナから指名されたダニロは“パートナーの権利を1万フランで買う男はいないかい?”と突然言い出し、ハンナは唖然しますが、遺産目当ての男たちも1万フランを出すことには躊躇してしまいます。“もう踊りたくない”と怒るハンナに、今度はダニロが彼女の手を取り、ワルツの調べに乗せて踊ります。ワルツを踊り終えたところで二人は別れ、幕となります。

オペラとオペレッタとミュージカルの違い_a0113718_5203159.jpg 2幕は「パリにあるハンナの別邸の庭」ハンナは公使主催のパーティの返礼として、翌日、昨晩の参列者全員を招待し、故郷ポンテヴェドロ風のガーデンパーティを開きます。
民族衣装に身を包んだハンナがアリア「ヴァリアの歌」をしっとりと歌います。「ヴァリアの歌」の前後には、民族衣装に身を包んだバレエ団の見事なバルカン風のダンスが披露されます。「ヴァリアの歌」が終わった頃、ダニロが軍服姿でやってきます。素直になれない二人は、ここでも意地の張り合い。

 ツェータ男爵や他の男たちも加わり、2幕で最も楽しい6重唱「女、女、女のマーチ」(女性の扱いは難しい)が始まります。「メリーウィドウ」では「唇は語らずとも」(別名「メリーウィドウのワルツ」)というワルツが最も有名ですが、オペレッタの中では「女、女、女のマーチ」。7重唱となり、ラインダンスを披露しながら歌います
その後、ダニロだけが残っている庭にハンナが戻ってきて、ダニロと「唇は語らずとも」のワルツに乗って踊りはじめます。やっと、二人の心が通じ合ってききます。

 誰もいなくなった庭にヴェランシェンヌとロションがやってきます。幸い、庭のテーブルで「例の扇子」を見つけます。ロションはヴェランシェンヌに言い寄りますが、彼女は「私は貞淑な人妻です」と、その場で書き加えた扇子を示してロションに抵抗します。ヴェランシェンヌとロションが歌う「バラのつぼみが」と「あそこに小さな四阿が」がヴェランシェンヌの心の変化を上手に表現した名曲です。結局抗しきれず、二人で四阿に入っていきます。

 ツェータ男爵が鍵穴から中の人妻を確認すると何と妻ヴェランシェンヌ、ショックでオロオロするツェータ男爵。この窮地に、ニグシュは、ハンナに相談して、四阿の裏口を使ってヴェランシェンヌと密かに交代。ツェータ男爵が四阿の扉を叩くと、そこから出てきたのは、ハンナとロション。驚くツェータ男爵。ハンナは混乱を収拾するため、パ “ロションが私の婚約者よ。私は彼と結婚するわ”と宣言してしまいます。自分を愛していると思っていたダニロはショックを受けて、「王子と王女の物語が」というアリアを歌い、昔と今の自分の気持ちをハンナに伝え、マキシムへ行ってしまいます。しかしこれはハンナがダニロの気持ちを確かめるための大芝居だったのです。ダニロの気持ちを確信したハンナはヴェランシェンヌや女性陣と「本当の愉悦の歌と合唱」を歌い上げて幕となります。

 3幕はマキシム風に飾り付けられたハンナの別邸です。参列者が一杯方向けているところへ、マキシムの踊り子のサービス嬢たちが入場してきます。ヴェランシェンヌもグリセッティンの服装で登場します。ヴェランシェンヌはマキシムのグリセッティンだったのです。楽しい「グリセットの歌」がヴェランシェンヌと合唱団による重唱で披露され、キャバレー・マキシムの雰囲気。華麗なカンカン踊り。この時に使う曲はオッフェンバックの「天国と地獄のギャロップ」。オペレッタ、他の作曲家の曲を入れることがあるのです。ヴェランシェンヌがバレエ団に加わって、一緒にカンカン踊りを披露します。ヴェランシェンヌ役には歌と、高度なダンスの能力が求められます

 カンカンが終わったところで、ダニロが登場します。ダニロはハンナを見つけて、“祖国に財産を残すためにロションと結婚してはならない”と告げます。ハンナは、自分はロションと結婚する気がないことを伝えます。ダニロは、ハンナの遺産目当ての結婚だと思われる野が嫌で愛を告白できません。この後、有名な「唇は語らずとも」のワルツが二重唱がしっとりと歌われます。

オペラとオペレッタとミュージカルの違い_a0113718_521772.jpg 妻の浮気を確信したツェータ男爵は、突如、ハンナに結婚を申し込みます。ハンナが“夫の遺言により、再婚すると遺産は放棄することになっているのです”。ダニロは、“ハンナ、再婚すると無一文になるのか?”とたずねねと、ハンナの“そうよ”と答えます。それを聞いてダニロは“僕は君を愛している”と本音を打ち明けます。ハンナも“私もダニロを愛しているわ”と彼の愛を受けとめます。 “実は、再婚すると私の遺産は新しい夫が引き継ぐのよ”。

 バツが悪いのは“妻は浮気をしているから、離婚だ”と皆の前で言い切ってしまったツェータ男爵。ここでヴェランシェンヌが例の扇子をツェータ男爵に渡します。ツェータ男爵が、恐る恐る扇子を開けて中を見ると、そこには“私は貞淑な人妻”という文字が。ツェータ男爵も妻のヴェランシェンヌに誤解をわびて、最後は、全員で「女、女、女のマーチ」を盛大に歌って幕となります。

"The Merry Widow" has been incorporated a lot of beautiful melody of the song rich in variety.We were able to enjoy a song variegated.Ability of Lehar the music blessed with melody maker of talent of "The Merry Widow" has been demonstrated regret without.This is the charm of this work. However, the content of the story is the story of superficial slapstick.I have the impression music show that was put together on the stage in the dense and light music in "The Merry Widow". .

 『メリーウィドウ』は、バラエティに富んだ美しいメロディーの曲がたくさん盛り込まれて、変化に富んだ曲を楽しむことができます。メロディーメーカーの才能に恵まれたレハールの実力が遺憾なく発揮されています。これがこの作品の魅力なのでしょうが、話の内容は浅薄で観終わって感じ入るところはなく、ドタバタの話を濃密で軽快な音楽で舞台にまとめ上げた音楽ショーといった印象しか残りませんでした。

 同じオペレッタに分類される『こうもり』も全体のストーリーは浅薄な内容ですが、アリアなどに人生の機微を感じさせる高尚さ、芸術を感じさせるものがあり、観た後強く心に残ります。今回の『メリーウィドウ』では名歌手、ルネ・フレミングがヒロインを演じていましたが、満足できなかったのは、オペラの心に焼き付くような音楽的感動か、ミュージカルの舞台に演劇性や人生的感動を求めてしまったからでしょうか。
(2015.2 METライブブューイング 東劇)
















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by desire_san | 2015-03-11 05:24 | オペラ | Comments(9)
Commented by 観劇レビュー&旅行記 at 2015-03-11 18:58 x
当方のブログへのコメントありがとうございます。

こちらのブログ記事も読み始めましたが、余りにも粗筋紹介が長く、途中で読むのをやめました。 m(__)m

「オペラは芸術だ!ミュージカルはエンターテイメント(娯楽)だ!」
と言って、ミュージカルを馬鹿にするクラシック馬鹿(専門家に多い・(笑))がいますが、私はそういう考えには反対しています。
オペラにも他愛のない(と云うかくだらない)内容のものが多く(モーツァルトの「コジ・ファントゥッテ」でさえも)、
ミュージカルにも「オペラ座の怪人」や「エリザベート」のように重厚なストーリーのものも多々あります。

オペラも元は貴族たちの気晴らし・娯楽・宴会芸のようなものであったので、エンターテイメントに変わりはありません。

私がオペラとミュージカルの決定的違いだと思うのは、ミュージカルは必ず開催国の言語で(日本なら日本語で、韓国なら韓国語で)上演されるのに対して、オペラは原語上演が基本となっていることです。
もっとも、【メリー・ウィドウ】は原語上演では無く英語で上演されていましたが・・・

なお、私はオペラも日本の歌劇団が上演する場合には、日本語上演するべきだと思っています。
大半の聴衆が解らないイタリア語やドイツ語やロシア語・・・で上演して字幕を見るのに気が逸れるなど本末転倒です。

長くなりました m(__)m
Commented by くろわし at 2015-03-11 19:21 x
dezire様、当方のつたないブログにお越しいただき、またコメントいただきましてありがとうございました。こちらのブログを拝見して大変勉強になりました。
「メリー・ウィドウ」は名曲ぞろいで大変楽しかったです。
おっしゃるとおりミュージカルではダンスが大事ですね。歌い方も随分違います。
また勉強してオペラも観たいと思いました。
Commented by desire_san at 2015-03-11 19:44
観劇レビュー&旅行記さん、コメントありがとうございます。ご指摘のようにミュージカルにも心を打つ傑作もあり、オペラにも駄作はあります。話の内容は一般的にミュージカルの傑作はは中身の恋感動的なものですね。オペラの主役はあくまで音楽なので「コジ・ファントゥッテ」ように内容は軽薄でも、アンサンブル音楽は比類ないものなので、傑作と言えるのだと思います。

Commented by desire_san at 2015-03-11 19:51
くろわさん、コメントありがとうございます。
ミュージカルにダンスは不可欠ですが、私はそのミュージカルが傑作か否かは台本で決まるような気がします。オペラは音楽がすばらしくなくては傑作とはいえません。音楽で聴かせるロックオペラ都いうのもありだとおもいます。「メリー・ウィドウ」は美しいメロディーの音楽に彩られたオペレッタの傑作だと思いますね。
Commented by snowdrop-momo at 2015-03-13 17:49
ルネ・フレミング、テレビでしか見たことがありませんが相変わらず美しいですね。
オペラとオペレッタとミュージカルについて、日頃の疑問を、広い視野から解き明かしてくださり興味深かったです。オペラに関する他の記事も少しずつ拝読したいです。
Commented by desire_san at 2015-03-13 18:17
snowdrop-momoさん、ルネ・フレミングは、当代随一のソプラノ歌手の一人と評されていますが、もう55歳になりました。一流のメイクがメイクしていると言え、55歳でこの写真のような美しさはさすが堺のスターですね。オペラはクラシック音楽の延長で行くようになりましたが、病み付きになる魅力があります。
Commented by mcap-cr at 2015-03-18 21:08
オペラ、オペレッタ、ミュージカル...
私の印象では、最初の2つは同質ですが、ミュージカルは異質です。
ミュージカルはミュージカルの良さがあると認めた上で、音楽としては別物かな、と感じます。
それと、ミュージカルは、マイクロフォンを付けるところがオペラやオペレッタと全く違います。
たとえば、ミュージカルは小学校の学芸会でヘタクソに演じられるかもしれませんが、学芸会でオペラはどんなにヘタクソにしても無理と思います。
ミュージカルはソープオペラに近いのかな?
Commented by desire_san at 2015-03-19 07:23
mcap-cさん、ご指摘の通り、オペラ、オペレッタは演奏はフルオーケストラで、その中でノーマイクで歌う声の魅力がおおきいですね。それはおっしゃる通り重要な芸術的要素ですね。ミュージカル「ウエストサイド物語」もカレーラスがオペラとして上演していますが、そのCDを聴くと、それはもうオペラの世界だと感じました。
Commented by ma-kom at 2015-03-24 11:31
コメント有難うございます。
いつもいつも素晴らしい投稿で
お勉強させていただいています(*^^)v

by desire_san