ブログトップ | ログイン

dezire_photo & art

desireart.exblog.jp

芸術と自然の美を巡る旅  

ルネサンス美術の巨匠・ピエロ・デッラ・フランチェスカの『出産の聖母』

モンテルキ
Monterchi
ルネサンス美術の巨匠・ピエロ・デッラ・フランチェスカの『出産の聖母』_a0113718_09091922.jpg


 モンテルキは、人口1,831人のイタリア・トスカーナ州の小さな田舎の町です。この小さな町が有名なのは、ルネサンス時代を代表する画家ピエロ・デッラ・フランチェスカの母親が生まれた町で、彼のフレスコ画「出産の聖母」があるからです。






The Madonna delParto is a fresco painting by the Italian Renaissance master Piero dellaFrancesca, finished around 1460. It is housed in the Museo della Madonna delParto of Monterchi. The figure of this Madonna, the protector of pregnantwomen, with her austere expression and natural stance of a woman heavy withchild, stands out against the damask canopy, held open at the sides by twoangels. The sacred and ritual nature of the image is further emphasized by thefact that the angels are drawn from the same cartoon, repeated in mirror image.


 ピエロ・デッラ・フランチェスカのお母さんの実家があったこの町の墓地の礼拝堂の壁に、ピエロは「出産の聖母」のフレスコ画を描きました。その教会は地震のときに大きなダメージを受けた後、絵が描かれている正面のみを剥がし布に貼り付け修復を加え、防弾ガラスで覆い空調を整え見やすい照明を付け、サンタ・マリア・ディ・ モメンターナ教会の礼拝堂は「出産の聖母」だけを展示するための美術館になりました。



ルネサンス美術の巨匠・ピエロ・デッラ・フランチェスカの『出産の聖母』_a0113718_09115395.jpg

「出産の聖母」は、ピエロが母のロマーナに敬意を表わすために描いた作品と言われ、1459年に母の葬式のためにモンテルキを訪れた時に制作したというのが通説です。アレッツォの「聖十字架伝説」と同じ時期です。モンテルキの丘の斜面、町外れにあるモメンターナ教会の聖アウグスティヌスに捧げた礼拝堂に描かれました。この作品は妊婦に守護を与えると信じられるようになります。出産を控える女性が安産を願い、町から教会がある谷まで歩いて、この作品を詣でるようになります。


Piero della Francesca paintedthe extraordinary and touching image of the Madonna del Parto, distant as aheavenly vision and yet alive and real in her post-adolescent freshness. Thefresco was planned to complete the back wall of the main altar in the 13thcentury church of Santa Maria di Momentana in an isolated country village on the slopes of Monterchi.


ルネサンス美術の巨匠・ピエロ・デッラ・フランチェスカの『出産の聖母』_a0113718_09123813.jpg


 ピエロ・デッラ・フランチェスカは、美術研究者の間では、ルネサンスの画家でも不動の評価と絶対な人気を誇る画家です。「出産の聖母」も遠近法と空間の扱い方、比較的明るい色彩の中に、硬派の威風堂々とした威厳を表現しています。「出産の聖母」は妊娠した聖母という珍しいモチーフを描いています。普通の画家にはおなかの突き出た聖母を美しく描くことに挑戦することもないでしょう。画面構成力が群を抜いて秀でた凄い画家のピエロ・デッラ・フランチェスカだから描けた作品とも言えます。


 現実味のある突き出たおなか、生々しい人間性の表現、威厳と安定感に加え不思議な人間味が醸し出され、妊娠したお母さん的な安定感があります。聖母の太い首、いかり肩に大きな手、開き気味のどっしりとした足、母性の持つ多面的な性格を表現し、聖母は人間ゆえに母性に分かち難い絆を感じる母性の化身で、人々をこの聖母に魅かれるのです。聖母の青い衣装と、天使の緑の衣装の色近く融和し、右側の天使の服の色は赤系統で画面に変化を持たせています。妊娠した女性の気取らない威厳すら感ずるポーズに、神聖な儀式的要素は二人の天使により強調されています。


ルネサンス美術の巨匠・ピエロ・デッラ・フランチェスカの『出産の聖母』_a0113718_09134661.jpg

 若い聖母の出産を待つ穏やかな柔らかな表情の顔は少女の様な、きめ細かい肌の質感、やさしい頬の血色など若さが匂う肌の美しさかあります。神聖な聖母に相応しい透明感のある美しさです。背景の色も穏やかで、静謐な空気が漂っています。



モンテルキ 写真ギャラリー  文字をクリックするとリンクします。

Monterchi Photo Gallery
 When you click a character, you can see the another phoh album of Split.









by desire_san | 2015-10-11 09:30 | イタリア・ルネサンス美術の旅 | Comments(13)
Commented by snowdrop-momo at 2015-10-11 19:22
desireさん、コメントのお返事とトラックバックをどうもありがとうございます。
ピエロのイタリアの記事が始まって、これからもとても楽しみです。モンテルキのような街は、外国で運転できない自分には行けそうになく、羨ましいです。

もしよろしければ、この記事を、下記のページにトラックバックしていただけると有難いのですが…いつでも、ついでのおありの時で結構です。ピエロの絵が1枚入っているだけですが…よろしくお願い致します。

http://ramages2.exblog.jp/24675502/
Commented by desire_san at 2015-10-12 09:01
snowdrop-momoさん、コメントありがとうございます。
モンテルキは、イタリアの緑豊かな田舎町という雰囲気で、観光もピエロ・デッラ・フランチェスカの『出産の聖母』くらいしかありませんので、ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵を好きなひとしか訪れる人もないしずかな街でした。

「改悛する聖ヒエロニムス」のページを拝見しました。ピエロ・デッラ・フランチェスカの作品もいいですね。トラックバックさせていただきました。
Commented by Haruma_Takahssh at 2015-10-12 10:05 x
珍しいピエロ・デラ・フランチェスカの『出産の聖母』についてのお話、拝読いたしました。
ピエロ・デラ・フランチェスカは数学や幾何学を研究した最初の画家の一人で、その作品にも数学研究の影響が見られます。ヴァザーリはピエロについて「生涯を通じて数学と縁を切ることはなかった」と評しといわれています。彼は、幾何学について研究し、「算術論」、「遠近法論」、「五つの正多面体論」の3冊の著作を残しました。
ピエロ・デラ・フランチェスカの作品には、伝統の制約の中にも創意が見られますね。祭壇画においても、聖母などの人物配置により空間が表現され、幾何学的創意により、空間構成を統一しようとする工夫がなされていると思います。画面構成力が優れていると書かれていますが、このあたりがピエロ・デラ・フランチェスカの魅力なのではないかと思います。
Commented by Keiko_Kinoshita at 2015-10-12 10:29 x
私もモンテルキにこの絵を見に行きました。「出産の聖母」は260cm x 203cmの大作で、左右に天使を従えた、臨月のマリアが右手を腹に置き、左手を左腰を支え、憂い顔でどっしりと立っている野が印象的でした。 聖母の服は空色一色のマタニティで開放部もあり、くユーモアが漂います。聖母の服の青色はラピスラズリが使われていますが、当時ラピスラズリはアフガニスタンが原産の鉱石で、金と等価値の高貴な色とされていました。左右の天使は左右対称で、服と翼、靴下の色も対比しています。ダマスク模様の天幕と共に儀式的な構図のようです。モンテルキはピエロの母の生まれ故郷のモンテルキのサンタ・マリア・ディ・モメンターナ教会の礼拝堂にあつたそうですが、今はこの絵のために建てられた美術館に飾られていますね。
Commented by desire_san at 2015-10-12 11:57
Takahsshiさん
ピエロ・デラ・フランチェスカの作品の独特の画面構成は、数学や幾何学の知識に基づいて計算されたものなのでしょうかね。
感覚的ですが、非常に画面のバランスがとれているように感じます。
Commented by desire_san at 2015-10-12 12:00
Kinoshitaさん、
聖母の服は、高価なラピスラズリの蒼の美しさによるものなのですね。貴重なお話をありがとうございます。
Commented by bernardbuffet at 2015-10-12 20:13
ピエロ・デッラ・フランチェスカを訪ねるというディープなツアーがあったという話を聞いたことがあります。彼の絵はあまり残されていないし、フレスコ画となると日本で見ることはまず不可能。熱烈な愛好者がいるからこそ成り立つのでしょう。
ブレラでモンテフェルトロ祭壇画を見て以来、私も隠れファンになったのですが、機会あれば、いくつかの作品を訪ねてみたいと心ひそかに願っています。
Commented by desire_san at 2015-10-12 21:04
bernardbuffetさん、コメントありがとうございます。
ピエロ・デッラ・フランチェスカの作品は、たしか一度も日本に来たことがないと思いますし、日本ではなじみの薄い画家ですが、イタリアでは、ルネサンス美術の一つの方向性を示した巨匠のひとりとして評価が高いようです。
華やかな絵画ではないので、やはり本物に触れないとその魅力は理解しにくいかもしれません。私もピエロ・デッラ・フランチェスカの隠れファンで、一度本物が見たくてイタリアまで行きました。続けて何回かピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画に着いて感じた事などを書いてみたいと思いますので、bernardbuffetさんがイタリアに行かれて作品を見るときの参考にしていただければ幸いです。
Commented by rollingwest at 2015-10-15 07:18
全国各地で2015年に開催される展覧会が開催されているので国内で見るしかないRWですが、「ルーヴル美術館展」「プラド美術館展」「ボッティチェリとルネサンス」展、みんな大混雑で足が遠のいています。(苦笑)
(ps)200名山・尾鈴山を公開いたしました~
Commented by desire_san at 2015-10-15 08:55
> rollingwestさん
コメントありがとうございます。美受店は土日は近年ますます混んで―来ていますね。私は比較的すいている金曜日の夜に行きます。この時間は本当に絵が好きな人しか来ていないので、静かに絵を楽しむことができます。

尾鈴山のブログはさっそく訪問させていただきました。
Commented by sakuraimac at 2015-10-19 22:34
こんにちわ。私のパリ旅行の記事にコメントしてくださったのを、今発見しました。私は理工系の教員につき芸術は全くのシロウトです。ただ音楽とか絵画はとても好きなので、このブログは大変勉強になります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

なお、もしFacebookをおやりでしたら、是非友人にしていただきたいです。私のメールアドレスは、m.sakurai@ieee.org です。
また、実名は 名古屋工業大学 桜井優です。
Commented by desire_san at 2015-10-20 20:22
sakuraimacさん。ご訪問ありがとうございます。
私も理工系の技術者で、芸術関係は学校などで習ったことがありませんが、音楽、美術などが好きで感動して、興味を持ち、いろいろ学ぶようになりました。
早速メールを差し上げたいと思います。 共通の趣味を持つ方と情報や感動を共有できるのはすばらしいですね・ Facebookでも友達になっていだくことは、大歓迎です。よろしくお願い致します。
Commented by natabolestr at 2016-02-20 01:06 x
Very well written!
I’ll right away grab your rss as I can’t find your
email subscription link or e-newsletter service.
Do you have any? Please permit me understand so that I may subscribe.


by desire_san