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芸術と自然の美を巡る旅  

浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力

肉筆浮世絵-美の競艶

Nikuhitsuga of Japanese painting in the ukiyo-e artstyle

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浮世絵というと一般的には量産された浮世絵版画を思い浮かべます。それに対して、一点物の肉筆浮世絵は絵師たちが腕をふるって女性の髪の生え際や華麗な衣裳の文様まで精緻に描かれている作品が多く見られ、絶対数も少なく大変貴重で、大名や豪商たちからの注文を受けて描かれたものも多くありました。

英語の説明を読みたい方は、 ukiyoe – beautyをクリックしてください。





 浮世絵版画では摺る時に絵の具を使わず紙の白さで美人の顔を表現しますが、肉筆浮世絵では貝殻を砕いた胡粉を使って、おしろいをはたくように何度も薄く重ねることで白く滑らかな肌を描きました。筆で細かく描かれた髪の生え際やうなじの毛筋、まつ毛、唇の紅のぼかし、薄い着物越しに透けて見える肢体など美人の色香を引き立てる精緻な表現には超絶的な技巧を味わうことがでるのも魅力です。

 今回東京・上野の森美術館で開催された肉筆浮世絵展は、世界有数の規模のアメリカ・シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏の肉筆浮世絵コレクションの初来日で。これだけ大規模な肉筆浮世絵展はおそらく日本でも初めてだと思います。美人画を中心に、100図以上の立姿美人図は贅をこらした衣装やさまざまな髪型の女性が勢ぞろいし、時代を追って並べられており、美人画浮世絵の変遷を見ることができました。



上方で展開した浮世の絵

 本来「浮世絵」とは、「風俗画」と言う意味で、その源は、安土桃山時代・江戸時代の障屏画に描かれた、祭り等の行事や日常生活など風俗を題材とした絵画で、現実社会の営みを絵画化しはじめたのは、16世紀前半、近世初期からと言われています。風俗画の代表作として,洛中洛外図屏風・職人尽図屏風・豊国祭礼図屏風・花下遊楽図・高雄観楓図屏風などがあり,狩野派の作品も多くあります。


 17世紀中頃京都を中心とした上方では、大名の依頼による大画面の障壁画が制作されました。その後富裕な商人などの注文で、歌舞伎や遊里も描かれるようになり、小型化した掛軸装の一人立美人図も生まれました。



 初期は大和絵の土佐派が、後には狩野派の絵師たちにより描き続けられ、寛永年間中頃には多くの町絵師も描くようになり、「京・奈良名所図屏風」や寛文美人と呼ばれる一人立美人などが上方の社会に広く愛されたようです。


浮世絵の確立、江戸での開花

 17世紀中葉頃、上方での風俗画の展開は終盤を迎えたころ頃、江戸では菱川師宣が登場し、肉筆画とともに一枚絵や版本などを精力的に発表しました。浮世絵を専業とする浮世絵師という職業の誕生です。師宣の「江戸風俗図巻」は、江戸風俗の群像を描いた大作で、江戸の風俗を生き生きと描いた風俗絵巻です。この中に有名な「見返り美人」も描かれています。




 何の権威もない一介の絵師が、自己の道を貫き、自然な徹底した世界を生み出したことは画期的なことでした。菱川師宣は肉質画と版画の両方にわたって1枚一枚独立した作品を制作している点で、浮世絵師の祖と美術史的にも評価されています。


浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_08460102.jpg 浮世絵の根源には、庶民の現実の生活があり、描かれる一切の事物は人間味を帯びてきます。浮世絵は文化の内向性から生まれ、時には好色的なエロスの感覚も表現されます。現実賛美に発する現代性の強調、現代性の強調による享楽主義は、遊里、芝居、花鳥、名所、物語を人間的に表現し、ある意味では日本美術史におけるルネサンスに該当するといえるかもしれません。


 師宣が菱川派と呼ばれる浮世絵の流派をはじめて形成し、古山派という分派も生まれ、江戸の浮世絵界の方向を決定づけられたからです。寛文美人の流れをひく「立姿遊女図」は上品な女性像で、菱川派から分派した古山派の師政の筆になる「遊女と禿の羽根突き図」も美しい作品です。


浮世絵諸画派の確立と京都西川祐信の活動

 師宣らによって花開いた江戸の浮世絵は華やかで多彩な浮世絵画派を生み出しました。

浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_08475556.jpg  寛文美人以来の背景を省略した一人立美人図は、懐月堂安度をリーダーとする懐月堂派に受け継がれました。背景を省略した、肥痩の強い線で流れるような着物の輪郭線による美人画が描かれました。懐月堂安度一派の作品は、小顔で切れ長の眼の顔の輪郭線は細く、強い輪郭線と強い色彩感の衣装で、顔に清純な雰囲気を表現しているようです。左手を袖で隠すか懐に入れ、豊艶な身体をそらせた肢体とのコントラストは見事だと思いました。懐月堂派の画家たちは斜めに構える豊満な遊女を繰り返し描き懐月堂美人の商標を生みました。




 懐月堂安度や菱川師宣などに影響を受け、肉筆画を専門とした宮川長春は、艶やかな色彩と流麗な衣文様の肉質浮世絵を多数描き、遊女の日常をスナップ写真的に表現しました。その代表作が「「梅下遊女と禿図」 であらゆる意味で洗練されています。浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_08541619.jpg

宮川長春の「琉球人舞楽之図」は、江戸に来た琉球の楽師たち舞姿の美少年を描いています。中央の美少年の踊り手と囲む楽士たちの構図は卓越しており、色彩感覚も豊かです。

 


 宮川派は、軽快で繊細で、題材も風俗全体に及び、丹念な仕上げで。上層の人々の嗜好を満たしました。宮川長春は町絵師でありながら、幕府御用絵師の仕事も依頼されるほど高い評価を受け、徹底して肉質画を描きつつづけました。


浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_08552178.jpg 宮川長春の門人の長亀、一笑の作品も見ごたえがありました。長亀と双璧と言われた宮川一笑は、吉原の正月の妓楼や茶屋の光景の中に、七福神や鶴亀を描いた「七福神正月図」を残しました。布袋様も大黒様も楽しそうです。異質の人物を絶妙に配置し、統一感と変化のある美しさを表現しました。


浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_08563506.jpg 京都の西川祐信は、優美で流麗な線で女性を描き、その美しさは傑出したものがあります。薄物の文様に透ける女性の肢体と緻密な模様の施された衣装は、女性の色香を感じさせますが、気品を失わないところが素晴らしいと思いました。西川祐信は江戸の浮世絵に多大な影響を与えました。







 奥村政信は、菱川師宣、鳥居清信の影響を受けながらも、独自の画風による美人画、役者絵を描き、肉筆浮世絵にも手腕を発揮しました。「やつし琴高仙人図」は、琴高仙人は中国の仙人で、鯉は滝を上ると龍になるので「龍の子をとってくる」と水に潜ったが鯉に乗って現れます。仙人のかわりになぜか手紙を読む当世美女として描かれています。古典的な題材を当世風に置き換えることは、浮世絵でよく用いられました。版画形式も錦絵誕生の直前まで墨摺絵、丹絵、紅絵、漆絵、紅摺絵など浮世絵版画を様々な形式で描き、版画技法の発見者として位置付けられています。


 また、奥村政信は、芝居の舞台あるいは内部を斬新な感覚で描いています。浮世絵に浮絵というもう一つの斬新さをもたらし、遠近的視覚をもって空間を描いたことは大きな政信の貢献で、浮世絵にリアリズムの基礎をもたらし、花鳥や風景の絵にも力を発揮しました。


 色彩版画の成立は西洋版画史に比べると驚くほど早く、その原因は西洋版画が宗教との関係で発達したのに対して、浮世絵は極めて人間的な俗世界で育ったため、題材となった芝居、遊里といった世界が極めてカラフルな世界だったからと考えられます。


 明和2年(1765年)鈴木春信は多色摺りの木版画の錦絵を完成させました。春信の作品は、俳諧や和歌に沿えた俳諧趣味や歴史見立て絵が多く、純愛にふける男女を清楚で品よく描き、母子の愛情をほほえましく描きました。構成が斬新で、空間構成が豊かになりリアリズム性も次第に増していきました。春信の少女趣味的描法は、遊女や役者絵には適さず、普通の町娘を描くのに適していました。江戸の浮世絵界は「春信様式」と呼ばれた春信風浮世絵一色の時代となりました。


 天文から寛政(17811801年)になると、その反動で個性的な絵師が輩出しました。


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 勝川春章は役者の個性描写につとめ、役者絵においてリアリズムを確立して、役者似顔絵という新境地を創案しました。役者似顔絵を得意とした勝川春章は江戸時代中期を代表する浮世絵師でした。


 勝川春章は、肉筆浮世絵でも数々の名作美人図を描いきました。「中之町の遊女」は肉筆浮世絵の最盛期の作品です。色彩造詣が洗練された美しい作品です。「納涼美人」も繊細で優美な肉質美人画です。「浅妻舟図」では白拍子の恰好をした遊女が舟の中で客をとる姿が描かれています。客を待つ憂い顔がなんとも言えない趣を感じさせます。「美人按文図」も遊女を描いていますが、局面は繊細な気品と趣にあふれ、肉質画の頂点といえる美しさです。


 鳥居清元を祖とする鳥居派は、はじめ芝居関係の絵を独占していましたが、美人画にも作品を残しました。当時の鳥居派の誇張の多い作風では色彩が必要であり、丹絵、漆絵へと進展した技法を成功させ、次第に柔軟で優美な美人画を生み出していきました。


 鳥居家の4代目、鳥居清長は、自由奔放な伸び伸びしてスケールの大きい、ちょうど春信の少女が成長して、成熟して女っぽくなったような豊麗な肉体美の女性を描きました。鳥居清長の浮世絵は、背景が的確な遠近感をもって広大に描かれており、自然と人間が見事に調和しています。主題の女性は、面長で鼻筋が通り十頭身の長身ですが、成熟した落ち着きと品位を持ち清楚な美人を描きました。鳥居清長には肉筆画や単品作品はほとんど見当たらず、2枚、3枚と続く続き絵がほとんどで、スケールの大きい浮世絵作品は、清長の作品が源となっています。


 十頭身の楚な美人画を描いた清長、艶治な遊里の美人を描いて一世を風靡した歌麿、清楚な女性美を追求した栄之、歌川派の祖、晴豊など、木版画の錦絵は最盛期を迎えます。


 喜多川歌麿は半身図という美人画の新しい領域を開き、芸術的に完成させました。美人画の初めは一種の名所絵でしたが、歌麿は特定の美人の容貌の描写へ進展させ、女性を分析して人間的個性まで描写しました。「夫人相十品」では、「隠し文を読む女」「煙草吹く図」という主題で女性の品性を描き分け、「婦人相学十躰」では、「浮気の相」「面白き相」といつた女性のタイプを描き分け、絵画による女性論を展開したことは歌麿の達成した成果と言えます。


浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_09010705.jpg 歌麿の浮世絵が傑出しているのは、描く対象の内部に踏み込み、経験と豊かな想像力により、戦列に人間のイメージを描き出しているところで、「当世全盛美人揃」などの傑作を生みだしました。歌麿の女性像は、成熟しきった女性の艶っぽさが溢れでており、それでいて、初々しさと純真さ、素朴さを残しており、「鮑取り」のように普通の清純な肉体を過去、現在、未来に描き分け、女性たちの労働する姿や遊ぶ姿、母性愛など、多面的視点で、女性を全体的に捉え、人間としての本質を追求しているところです。



 喜多川歌麿は肉筆浮世絵画家としてもすぐれた技量を発揮しています。「四王母図」では、中国の仙女を描いていますが、的確で肥痩の強い衣文の線や絹の裏から丹念に施された彩色など、通常の歌麿の肉質画とは異なる描き方で、仏画の観音を思わせる気品の高さを感じさせます。


 清長、歌麿とともに美人画三傑と言われた鳥文斎細田栄之は、武士として3年間将軍家治の納戸役として絵の相手をして「栄之」の画郷を頂いたが、家督を譲り、絵画に専念しました。栄之は歌麿や清長より清冽で優雅な美人画を描きました。


 栄里は栄之の一門と思われますが、風景の中に美人画を描き、栄之と画風は異なり要望は艶っぽく感じられます


 初代目歌川豊国は、絵が非常にうまく洗練された画風の絵師で。顔が面長で気品があります。歌川豊国の「時世粧百姿図」では様々な階級の女性たちを描き、女官、武家、農家、遊女、夜鷹を高いクオリティーで描き、豊国の肉筆浮世絵の基準作品に位置付けられているそうです。


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 的に矢を当てる楊弓場呼ばれる遊技場の店先を描いた1作では、矢場女と呼ばれる看板女が2人、一人は前切髪の二十歳前後、もう一人の女性は前髪を紅裂で結んで島田に緋った十七八の娘盛り、往来を黒い紗の羽織に短刀を帯して扇子を提げた後家と武家奉公の老女が描かれています。「芸者の置屋」の絵では名前が書かれた黒札が掛っており、


浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_09030176.jpg 一人の芸者らしき女が、女髪結いに島田を作らせ、傍らで小娘に片手間の拍子をつけています。奥の台所では、母親が火吹き竹を用いて平鍋の火を焚います。「農婦の休息」では、植えの済んだ青田を横目にキセルで煙草を吸いながら、雑談をする二人の女。薬缶を提げた年増がその傍を通りかかり、伸びた素足の描写なども含め、当時の社会の各層の女性たちを見事に描き分けています。その時代の流行、女性の着物や髪型、化粧から身分、階級、未婚、既婚などもわかるように描かれています。 


 葛飾北斎は、天才的な画家でしたが、逆境に育って、周囲に逆らい、自己に鞭打って形成された血みどろの感性があり、対象と向き合い打ち勝たねばやまない激しい気迫に満ちています。その力強く画面を走る線と強烈で生々しい色彩は、近代人の自我を感じさせ、画家自身の感情移入も読み取れ、浮世絵を超えた前衛性を持っており、海外で高い評価を受けました。北斎の複合的視点と的確に対象を捉える視点は、鎖国時代の終わりにあたって、新しい文化創造の欲求があふれ出したものとも考えることができます。浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_09125138.jpg


 葛飾北斎の肉筆美人画も、清楚で上品で、身体の動きを自然にとらえていて、衣装の模様も美しく、葛飾北斎の技量の高さを感じさせます。北斎は水墨画゜でも優れた技量を発揮しています。「美人愛猫図」では、繊細で顔の表情も豊かで、着物の落ち着いた色彩感覚により、上品な作品に仕上がっています。








  幕末の浮世絵は百花繚乱の時代で、歌川派では豊国と豊広が双璧と言われました。豊国の弟子には、国貞、国芳、豊広の弟子には広重と、数々の奇才が活躍しました。


 歌川広重は、純粋で静粛な風景画家で、人間匂希薄ですが、構図が感性豊かで斬新さがあり、で西洋では高い評価を受け、西洋絵画にも影響を与えました。

 

 2代目豊国、3代目豊国・国貞と遊女の生々しさが表現されていき、だんだん退廃的な雰囲気になっていきました。2代目歌麿の作品も、粗野で品性に欠けるように感じました。3代目豊国の時代になるとさらに粗悪な班が横行しました。

 歌川派の中で、歌川国芳は、3代目豊国と人気を二分する実力を持っていましたが、武者絵を専門として、3代目豊国とは比較にならぬほど鋭く豊かな感性をもち、時代の退廃性を乗り越えて、末期浮世絵において最高の芸術的水準の作品を残しました。外国の絵画からも吸収した北斎並みの積極的な探求心と優れた着想、表現の新鮮さ、未来の領域を開拓する意欲で、対象の本質を鋭く突いた風刺性のある作品や、微妙に屈折した豊かな表現力で国芳しか描けない作品を数多く残しました。リアリズムにおける想像力の重要性を切実に示したという点も含めて、この時代のはるか先を行く新しさを持った芸術家と言えます。


歌川国芳について詳しく知りたい方は、
歌川国芳の芸術」をクリックするとも詳しい説明を見ることができます。


 西川祐信以後、上方では浮世絵はまったくの停滞をみせていた。それがわずかながらも動きをみせはじめるのは、宝暦年間(175164)頃からとされます。


 大坂で目ざましい活動を見せた月岡雪鼎がまず挙げられます。雪鼎の子の雪斎や桂宗信、岡田玉山、墨江武禅、蔀関月などの有力な門人が出て、一時、大勢力を形成しました。


 一方京都では、独自に肉筆美人図を専門に描いて知られる祇園井特が活躍しました。井特の描く美人図は、迫真的で強烈な個性に貫かれており、浮世絵史全般を通じても最も異色な肉筆絵師であったといえます。



明治維新後の浮世絵

浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_09160570.jpg 明治維新を迎えた東京の浮世絵は、大半が歌川派の絵師たちによって支えられていたといえます。国貞門下の豊原国周は、明治期の役者絵の第一人者として活躍し、最後の役者絵師と評されました。「楼上美人図」は、背景に歌川様式とは異なる近代的描写を試みている点に興味深いものがあります。


 河鍋暁斎は狩野派も学びましたが、浮世絵では歌川国芳の門下でした。一休禅師地獄太夫図」は、暁斎の門人で建築家のジョサイア・コンドルの遺愛品で同主題の作品の基準となるものでした。


浮世絵の誕生・浮世絵の歴史と肉筆浮世絵の魅力_a0113718_09172126.jpg 最後の浮世絵師といわれる小林清親は、浮世絵版画に西洋の描写法を用いて“光線画”と評され、近代における新たな錦絵を目指しました。「頼豪阿闍梨」は、大胆な火煙の描写とともに、面貌などにこれまでの浮世絵にはみられないリアリズム的な表現を用いた作品になっています。







参考文献

永田 生慈 修:「肉筆浮世絵-美の競艶」総合カタログ、2015

小林 , 富田 智子, 内田 欽三内藤 正人,「世絵の歴史」1998




















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by desire_san | 2016-01-19 01:50 | 日本の美術・文化遺産 | Comments(31)
Commented by kirafune at 2016-01-17 22:12
日本の浮世絵の歴史と多様な魅力についての記事、
楽しく拝読させていただきました。
私の好きな葛飾北斎は、前衛的な浮世絵師だったのですね。
でも、猫を愛する美人画も描いていて、
達者な筆遣いに思わず身を乗り出しました。

猫といえば、広重の名所江戸百景の中で浅草の町家から
夕焼けの富士山や田圃を白猫が眺める作品があり、気に入っています。
室内に手拭や茶碗が描かれていて、dezireさんのおっしゃるように
庶民の生活を描いた作品がとても魅力的です。
Commented by desire_san at 2016-01-17 23:38
kirafuneさん、コメントありがとうございます。
肉筆画見ると、葛飾北斎は美人画を描かせても最高レベルの技量であることが分かりますが、北斎と浮世絵画家との違いは、大胆な構図や奇抜な発想の作品を描けることで、そこが前衛画家といえる才能だと思います。浮世絵画家で、北斎に匹敵する前衛的才能を持っているのは、歌川国芳だと思います。広重も美的感性の高い奇抜な構図と色彩感覚は素晴らしく、西洋では非常に斬新な感覚の画家と評価され、印象派時代の画家に愛されたのは、ご存じの通りだと思います。日本美術史の中で、浮世絵の世界が、才能ある人材が最も多く活躍したのではないかと私は思っています。
Commented by megumiiro3 at 2016-01-18 06:12
コメントいただき、ありがとうございました。
展覧会の記事、すごく詳しく分かりやすく説明されていて、とても勉強になりました。
展覧会を思い返しながら読んでいました。

さらりと描かれているようで、様々な技巧がこらされているところなど興味深く読ませてもらいました。肌の白さの表現とか...

私は女性の憂いのある表情がとても印象的で、視線、仕草など。そこからいろいろな事が想像されて、そんな想像をしながら展覧会を楽しんでいました。

Commented by hiougi at 2016-01-18 06:38 x
コメントをありがとうございました。長文でしたのでパソコン画面ではうまく読めるのか心配でしたので、プリントアウトして読ませて頂きました。
浮世絵の歴史とそれぞれの時代的表現の特徴、そして流派の系統など、とても勉強になりました。素人の私はただ見た感想だけで、まるで研究紀要論文のようなその内容と質に敬服しています。
山の写真も…仙丈は近いので何度か登りましたし仙丈小屋や馬の背ヒュッテも懐かしく診させて貰いました。経ヶ岳、空木も近くです。
Commented by desire_san at 2016-01-18 07:31
megumiiro3さん、コメントいただきありがとうございました。
子の美術展では浮世絵の誕生から菱川師宣をはじめ優れた浮世絵師が独自の描法を開拓し発展していったのが分りやすく展示されていました。ご指摘のように女性の表情の表現も時代とともに豊かになっていくのがわかりますね。いろいろ楽しまれて良かったですね。
Commented by desire_san at 2016-01-18 07:36
hiougiさん、丁寧にブログを読んでいただいてありがとうございます。内容の濃い浮世絵展だったので、この機会に浮世絵の歴史も勉強させてもらい、自分なりに整理してみました。お役に立てていただいてうれしいです。。
Commented by nene_rui-morana at 2016-01-18 20:44
こんばんは。そして遅れましたが、新年おめでとうございます。
自分も行ってきました。貴重な海外のコレクションを国内で見られて感激しました。最近とみに、日本の文化・芸術を愛する外国の方の存在を、嬉しく思います。
今年はいい展覧会が目白押しですね。身辺は落ち着きませんが、可能な限り足を運びたいと思います。
今年もどうぞよろしく。
Commented by yukimaru156 at 2016-01-18 22:22
コメントをいただき、早速拝見しました。とても丁寧に解説されていて、自分の拙い文章が恥ずかしくなりました(^_^;)
浮世絵は、私は肉筆より版画の方が好きなのですが(より多くの職人によって完成されるものだから…かな。版画となることによって江戸庶民に手の届く芸術となったためもあるかもしれません)、こうして拝見してると、肉筆画にもどれだけ丹精が込められてるか改めて知らされる想いです。

上野まで行く機会はなかったのですが、今度肉筆画を観るときはもっとココロして観よう、と思います。
わかりやすくていい解説をありがとうございました。
Commented by snowdrop-momo at 2016-01-19 06:01
あたたかなコメントをどうもありがとうございます。美術史の研究成果に基づく内容豊かな記事を、興味深く拝読しました。ブログによる格好の通史入門にもなりますね。

肉筆による浮世絵には、絵師たちは一層の時間をかけ、技能の粋を注いだとされます。その熱意がdesireさんにも伝わって、この記事として実ったのかもしれません。

私事ながら、拙記事で連載中の酒井抱一物語は、この画家の一枚の肉筆浮世絵を知ったことで、予定より長編になりました。画集での出会いでしたが…いつか原画をじかに見たいです。翻って、つねに生の絵画や音楽、舞台から出発しているdesireさんの記事には、いつも迫力と説得力がありますね!
Commented by desire_san at 2016-01-19 19:16
nene_rui-moranaさん、今年もよろしくお願いいたします。
このような大規模で貴重な肉筆浮世絵の肉筆浮世絵海外のコレクターが持っているとは驚きました。日本にも浮世絵専門の美術館はかなりありますが、肉筆浮世絵はそんなにが多く持っていないと思います。今回のようにたくさんの肉筆浮世絵は、もう日本では見る機会がないかもしれませんね。そういう意味でも、有意義な時間でした。
Commented by desire_san at 2016-01-19 19:28
snowdrop-momoさん、私のブログを読んでいただいてありがとうございます。肉筆浮世絵は、浮世絵画家の器量を表現する大事なチャンスだったのでしょうね。
酒井抱一物語は楽しみに拝読しています。酒井抱一が浮世絵に強い影響を受けたことは知りませんでした。引き継続き楽しみに読ませていただきます。
Commented by desire_san at 2016-01-19 19:34
yukimaru156さん、コメントありがとうございます。
私も浮世絵は、肉質浮世絵より版画の方がどちらかといえば好きです。繊細な線の芸術という意味では、特に初版の版画の線の表現の繊細さは素晴らしいものがあります。ご指摘のように、版画にすることにより、江戸庶民に手の届く芸術となって、大きく発展できたのだと思います。
それはそれとして、肉筆画に込められた浮世絵師の技量は素晴らしく感動的でもありました。
Commented by tabinotochu at 2016-01-19 20:53
いつも拙ブログを訪ねていただき、ありがとうございます。
ウェストン・コレクション。
素晴らしい展覧会でした。
後期に行けなかったことを心残りに思っています。
Commented by desire_san at 2016-01-19 21:28
tabinotochuさん、展示替えがあるとは知りませんでしたので、私も後期は行けませんでした。
Commented by wavesll at 2016-01-19 21:47
コメントありがとうござました。いつもトラックバックで拝見していると凄いしっかりとした記事を書かれている方だなぁと想っておりました。
肉筆浮世絵、いいですね!琉球の奴なんかかなり気になりました。
素晴らしい記事、楽しませて頂きました。
Commented by desire_san at 2016-01-19 22:47
wavesllさん、私の長いブログを読んでいただいてありがとうございます。かなり自分の知的な興味で書いているので、納得いかないところは調べて付け加えたりして、つい長くなってしまいます。ブログにお付き合いいただき感謝です。これに懲りず、よろしくお願いいたします。
Commented by chico_book at 2016-01-20 00:00
コメントありがとうございました。
素晴らしい充実の展示だったのですね>上野。

この展覧会はまったくのノーマークだったので、
ちょっと残念ですが、記事を拝見することができて
取り返すことができた気がしています。
ありがとうございます。

浮世絵の展覧会って独立した時代や作家などに
フォーカスしたものが多いような印象があり、
縦軸が見えにくいことも多いので、
時代の変遷をこうしてわかりやすくまとめて
いただけると本当にありがたいです。

いまは千葉市立美術館の展示を
観に行こうかどうか迷っております。
『初期浮世絵展 −版の力・筆の力−』
です(うちからだと、ちょっと遠いのが悩みどころ)
こちらの記事を拝見して、ますます興味がわいてきました☆

Commented by rollingwest at 2016-01-20 00:21
浮世絵は本当に楽しい~!過去に色々な展示会に行きましたがやはり日本人は素晴しい文化を持っている誇らしさを感じます。
Commented by desire_san at 2016-01-20 08:43
chico_bookさん。私のブログを読んでいただいてありがとうございます。ご指摘のように、多くの浮世絵展は歌麿、写楽、北斎などスター浮世絵師にスポットをあてたものが多いですね。しかし、浮世絵が室町時代の風俗画に発しており、上記以外に個性的でレベルの高い作品を残した多数の才能ある浮世絵師の存在が浮世絵界の底辺からレベルを高めてきたことを理解していないと、浮世絵が日本美術の中で最も西洋美術に強い影響を与えてきたその芸術性と奥深さがわかりませんね。今回の肉筆浮世絵展は、そういう意味でもよい企画だったと思いました。『初期浮世絵展 −版の力・筆の力−』は自宅から遠いので未見ですが、別の視点から浮世絵を理解できそうで、期待できそうですね。
Commented by desire_san at 2016-01-20 08:48
rollingwestさん、日本は東洋でもトップクラスの素晴しい文化を持っていますね。しかし、個人的な意見ですが、多くの自然の美しい自然に恵まれている点でも日本は、世界でもクラスだと思います。アフリカや南米、中国などにはもっと雄大な自然遺産がありますが、ここのの景色な繊細で人に安らぎを与える美しさという点では、日本が一番のような気がします。
Commented by margueri1 at 2016-01-21 07:46
おはようございます。
トラックバックをありがとうございました。
素敵な作品をご覧になられたのですね。
浮世絵の歴史など詳しく書かれていて、とても勉強になりました。
私も絵画、特に日本画が好きで、時々、美術館などに足を運んでいます。
芸術として、好んで観ておりますが、このように歴史や作風を紐解きながら観ることで、一層、観賞の楽しみが増すように感じられました。
過去の記事も、少しずつ拝読させていただきますね。
Commented by ふっこ at 2016-01-21 20:06 x
こんばんは。
会期終了間近にやっと観に行って来ました。
肉筆ならではの、線の強弱がとても印象的でした。
Commented by c-u-in-dreem at 2016-01-21 20:27
トラックバックから失礼します。
構図の大胆さから、江戸末期の浮世絵が好きなんですが、歌川国芳と北斎の娘、おえいが特に当時の日本ではかなり僭越的だったと思います。
江戸末期になると、構図、配色、題材等自由に、大胆に表現できる土壌が整ったのでしょうか?

浮世絵も中国、韓国の古典芸術と通じる点が多く感じられるので、そこも少しずつ探っていきたいと思っています。
Commented by desire_san at 2016-01-21 21:09
margueri1さん、コメントありがとうございます。
日本画の中でも、「俵屋宗達」のところで描きましたが、浮世絵と琳派が最も西洋で高い評価を得て、西洋絵画に影響を与えました。それは、狩野派など日本画の本流は政治的支配者の好むような絵を描いていた西洋でいう宮廷画家だったのに対して、浮世絵や琳派は画家自らの美意識を展開でき、日本独自の繊細な美意識を表現できたからだと思います。これは個人的見解ですが、いろいろな美術について考えるところも含めて書いていますので、よろしかったらまたご訪問ください。
Commented by desire_san at 2016-01-21 21:12
ふっこさん、「肉筆浮世絵展」間に合ってよかったですね。
肉筆ならではの線の強弱は、実物をみて初めて感じられる魅力ですね。
Commented by desire_san at 2016-01-21 21:20
c-u-in-dreemさん、
私も歌川国芳と北斎の娘、おえいには大変興味を持っています。歌川国芳はこの記事にトラックバックしておきましたが、非常に前衛的な画家だと思います。おえいは太田記念美術館で「吉原夜景図」を見ましたが、この吉原の夜景が素晴らしく、明治時代の浮世絵師・小林清親の光の表現を先取りして、夜景を描いた浮世絵では最高傑作ではないかと思っています。
Commented by c-u-in-dreem at 2016-01-22 18:41
私も太田記念美術館での展示、行きました。あれは貴重でしたね。あの時代で「吉原夜景図」の構図、明暗、彩色は相当に前衛的だったと思います。おえいの作品がはっきりと多く残されていないのがとても残念ですが、尚更恋心が燃え上がります。
Commented by Conrad at 2016-01-23 23:17 x
こんばんは。
いつもながら、とても詳しい解説でとても勉強になります。
どれも状態がよく、美しい作品ばかりで、こんな素晴らしい浮世絵が海外に入出してしまったことがちょっと残念にも思いました。
Commented by desire_san at 2016-01-24 10:12
Conradさん、私も海外の浮世絵のコレクションがあまりに銃実施手織り、保存状態もよく、美しい色彩を味わえたことに驚きました。Conrad三も言われているように、こんな素晴らしい浮世絵が海外に入出してしまったことが非常に残念に思いました。。
Commented by hszrhszr at 2016-01-28 12:39
はじめまして、こんにちは。コメントチェックしていなくて気づくのが遅れましたが有難うございます。ほとんど行動記録に過ぎない拙ブログと比べ物にならない詳細な解説が素晴らしいです。僕もこの展覧会は大阪市立博物館で去年の5月15日に見ましたので少し思い出しました。今年も素敵な美術展が目白押し、去年の琳派に対し今年は禅の年と楽しみが尽きないです。その他の記事もまたゆっくりと拝見させていただきますね
Commented by desire_san at 2016-01-29 07:22
hszrhszrさん、ご丁寧にありがとうございます。
浮世絵の始まりは肉質画ですので、版画の浮世絵展では浮世絵の歴史全体を見ることができないので、この肉筆浮世絵展は初期の浮世絵を知る上でも非常に有意義だったと思いました。美術展のブログを書くときは、できるだけその分野全体がわかるように書くように努めています。お時間があるときに他の記事も見ていただけると嬉しい限りです。これを機会によろしくお願いいたします。

by desire_san