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芸術と自然の美を巡る旅  

バレエ史上初のロマンティック・バレエの幻想的な世界

バレエ『ラ・シルフィード』

La Sylphide

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 バレエ史上初のロマンティック・バレエ作品『ラ・シルフィード』は、1832年にパリ・オペラ座で初演され、主役のシルフィードを踊ったマリー・タリオーニはやわらかいチュールを重ねた白く透き通った膝下丈のロマンティックチュチュを身に付け、爪先立ちで軽やかに宙を舞う技術を駆使して踊り、この世のものとも思われぬ美しい妖精の叙情的で幻想的な夢のような世界を表現して客を魅了し、この作品と自らの名を不朽のものとした。森の妖精シルフィードたちの舞う幻想的な世界は、緻密な考証を経て忠実に舞台化された美しいスコットランドの情景が再現しました。今や「ジゼル」、「白鳥の湖」とともに三大バレエのひとつに数えられるロマンティック・バレエの代表作です。





La Sylphide is known as the first romanticwork in the history of ballet. It premiered at the Paris Opera in 1832. MarieTAGLIONI danced the lead role and entranced the audience with her en pointedancing, lightly floating through space in translucent white garb, less acreature of this world than a thing of dreams.

 バレエはもともとイタリアの貴族・富裕階級の遊びで、それがフランスにもちこまれて発展しました。特にルイ14世はバレエを愛好し、パリ・オペラ座の前身である王立音楽アカデミーを設立しました。この王立アカデミーを中心にバレエは大きな発展をとげます。バレエの題材は、ギリシア・ローマの神話が中心でしたが、その重々しい雰囲気破って、妖精が爪立ちで軽やかに登場したのです。この作品を境にバレエは妖精などこの世ならぬものが自由に活躍するロマンティック・バレエの時代に突入しました。ラ・シルフィード以降、多くのロマンティクバレエの作品が作られ、「ジゼル」も生まれました。

 『ラ・シルフィード』は、デンマークのブルノンヴィルが違った音楽を使って振り付けた版はロシアにもわたって生き続けました。20世紀後半にパリ・オペラ座のピエール・ラコット氏が膨大な資料を用いて数々のロマンティック・バレエを復元して、『ラ・シルフィード』もラコットによって復元されました。現在はブルノンヴィル版とラコット版の両方が上演されております。


August BOURNONVILLE's version of LaSylphide is a dance heritage and Romantic treasure of ballet, and the NationalBallet of Japan has made it a part of its repertoire. However, this year'sstaging is by artistic director, OHARA Noriko, who is well and truly versed inthe piece from her time as a dancer when she played the signature role. Thebeautiful scenery of the fantasy world in which the forest nymphs, thesylphides, dance is based on the wilds of Scotland, meticulously researched andfaithfully depicted on stage--to be enjoyed as much as the performance itself.



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あらすじ

第一幕

 スコットランドの農村、婚約者エフィとの結婚式を控えた村の男ジェイムズ。そこに森の妖精シルフィードが現れ、魅惑的な踊りでジェイムズを魅了します。ジェイムズの婚約相手・エフィを愛するグエンは彼女を諦められませんでした。占い師マッジは、エフィに「幸福な結婚をするが相手はジェイムズではなくグエンである」と告げます。ジェイムズは一人になると、再びシルフィードが現れ、彼の結婚を知ると嘆き悲しみながら愛を告白します。やがて結婚式が行われますが、シルフィードが指輪を奪い去り、ジェイムズは彼女を追って森へ行きます。


James Ruben, a young Scotsman, sleeps in a chair by the fireside. A sylph gazes lovingly upon him and dances about his chair. She kisses him and then vanishes when he suddenly wakes. James' bride-to-be, Effie, arrives with her mother and bridesmaids. James dutifully kisses her, but is startled by a shadow in the corner. Effie and her friends beg Old Madge to tell their fortunes, and the witch complies. She gleefully informs Effie that James loves someone else and she will be united with Gurn. James is furious. Effie and her bridesmaids hurry upstairs to prepare for the wedding, and James is left alone in the room. As he stares out the window, the sylph materializes before him and confesses her love. She weeps at his apparent indifference. James resists at first, but, captivated by her ethereal beauty, capitulates and kisses her tenderly. As the bridal procession forms, James stands apart and gazes upon the ring he is to place on Effie's finger. The Sylph snatches the ring, places it on her own finger, and, smiling enticingly, rushes into the forest. James hurries after her in ardent pursuit. The guests are bewildered with James' sudden departure. Effie is heartbroken. She falls into her mother's arms sobbing inconsolably.


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第二幕

 ジェイムズはシルフィードを追うが、妖精の体に触れることができません。ジェイムズは、占い師マッジに頼み、肩にかけると飛べなくなるというショールをもらい受けます。しかしそれは呪いのショールでした。ジェイムズはシルフィードの肩に呪いのショールをかけてしまいます。シルフィードの背中の羽は落ち、もがき苦しみならジェイムズへの愛に後悔はないと告げシルフィードは力尽きます。森の向こうではエフィとグエンの結婚式の鐘が響き渡ります。すべてを失ったジェイムズは嘆き静かに息絶えます。


James enters with the sylph who shows him her charming, woodland realm. She brings him berries and water for refreshment but avoids his embrace. To cheer him, she summons her ethereal sisters who shyly enter and perform their airy dances. The young Scotsman is delighted and joins the divertissement before all flee for another part of the forest. James enters the glade. Madge meets him, and tosses him the magic scarf. She tells the young farmer the scarf will bind the sylph to him so she cannot fly away. She instructs him to wind the scarf about the sylph's shoulders and arms for full effect. James is ecstatic. When the sylph returns and sees the scarf, she allows James to place it around her trembling form. As James embraces the sylph passionately, her wings fall off, she shudders, and dies in James' arms. Suddenly, a joyful wedding procession led by Effie and Gurn crosses the glade. James is stunned.




バレエ史上初のロマンティック・バレエの幻想的な世界_a0113718_19083813.jpg 『ラ・シルフィード』の新国立劇場の舞台は2000年6月、シルフィード役が 吉田都、ジェームス役が ヨハン・コッボの舞台を見ました。その時、吉田都さんは,初役とのことでしたが、少女のようにかわいらしいシルフと軽やかな踊りが見事でした。舞台のほとんどを占める愛らしい場面は魅力的なのが強く印象に残っています。吉田都さんの空気に溶けこんでしまっているかのような浮遊感のある舞いは、パ・ド・ドゥでも空間を上手く使い、身長158cmの小柄な吉田都さんですが、舞台では他の日本人女性ダンサーで際立った豊かな表情と表現が印象に残っています。

 今回の舞台ではシルフィード役が米沢唯さん、ジェームス役が奥村康祐さんでした。第2幕の米沢唯さんのシルフィードは可憐で可愛らしく、妖精たちの群舞の秀逸で美しく一時の夢の世界を堪能することができました。しかし残念だったのは、そういう演出なのか、第1幕ではシルフィードの出ている場面が少なく、第1幕の米沢唯さんのシルフィードの舞いもおとなしく、少し寂しく感じました。シルフィードがおとなしく感じられたこともあり、ジェームス役が奥村康祐さんの存在感も少し希薄だった気がしました。可憐で愛の感情表現が見る人にも伝わってくる全盛期の吉田都さんと、迫力ある踊りのヨハン・コッボさんの舞台と比べると、新国立劇場のダンサーが当時より進化しているとはいえ、現在の新国立バレエ団で小野絢子さんに次ぐ存在の米沢唯さんをもってしても、当時世界を代表するダンサーだった吉田都とはと同じレベルとは言えないことを思い知らされたような気がしました。

バレエ史上初のロマンティック・バレエの幻想的な世界_a0113718_19052139.jpg 今回の『ラ・シルフィード』のブルノンヴィル振り付は、第2幕のシルフィードの踊りの場面でも比較的証明を明るくして、シルフィードたちの存在を、夢の世界ではなくより現実の世界に近く演出していたような気がしました。最後のシルフィードが亡くなって天に昇っていくシーンは、吉田都さんの舞台度はなかったシーンで、ジェームスの悲劇性を観客によりわかりやすい演出だってように感じました。



 一緒に上演された『Men Y Men』は、英国ロイヤル・バレエ活躍し、各国で芸術監督を歴任したウエイン・イーグリングによる作品です。イーグリングは、新国立劇場バレエ団の『眠れる森の美女』で、古典の優美さと現代的感覚を活かした振付で賞賛されました。イングリッシュ・ナショナル・バレエで2009年に初演されました。男性ダンサーのみで踊られ、高い身体能力と音楽性を兼ね備えたダンサーの動きが流れるように変化しながら「柔らかさ」と「強さ」を描き出す、洗練された美しい作品でした。

2016.2.6 新国立劇場アベラパレス)







吉田都さんの『ラ・シルフィード』については下記を文字をクリックすると、詳しく見ることができます。
吉田都さん『ラ・シルフィード』


If you want to know for Miyako Yoshida's "La Sylphide", you will be able to see in detail when you click on the letter below.
Miyako Yoshida's "La Sylphide"









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補足:『ラ・シルフィー』の演出について

2013年の『ラ・シルフィー』を演出したブルノンヴィルについて少し詳しく調べてみました。ブルノンヴィル版の『ラ・シルフィー』では男女は原則的に接触しない。彼によれば男性ダンサーが女性ダンサーの支柱役にすぎず、軽視されていると感じ、男性による女性のサポートをあえて廃し、ジェームスにもラ・シルフィードと同じ見栄えのする振付を与えました。同様の配慮により演出面でジェームスの役柄を作り込んでいます。ブルノンヴィル版では、パ・ド・ドゥよりむしろソロの踊りに見せ場を作っています。第一幕のエフィとジェームスのソロは、予備動作がとても小さいのに、テンポが速く、軽やかで小気味よい動きが連続する振付で、ブルノンヴィル・スタイルの真骨頂と言えます。また、「ラ・シルフィードのパ・ド・ドゥ」(第ニ幕)も、グラン・パ・ド・ドゥ形式ではなく、二人がソロを交互に踊る構成になっています。ブルノンヴィル版ではロマンティック・バレエ時代の舞踊技法をそのまま継承して上演しています。


 その作品に特徴的な技術体系・思想が"ブルノンヴィル・スタイル" と称され、ブルノンヴィルの振付には、力強い跳躍と軽やかな足さばきが絶妙にちりばめられています。美技がスパスパと決められるのを観ていると実に爽快だが、極めて難度が高く、踊り手泣かせといえます。演劇性の高い作風があいまって独自の舞踊世界を織りなしています。


 一方20世紀バレエの巨匠としてアメリカで活躍したバランシンは、クラシック・バレエ様式を極めたマリウス・プティパの系譜を受け継ぐロシア・マリインスキー劇場出身で、ロシア・バレエはフランスとともにデンマークからの影響も強く受けて発展してきました。バランシン作品に顕著な繊細なポアントさばきの源流はブルノンヴィル作品にあるともいわれています。


 演劇性を重視するブルノンヴィル作品と物語性を極力排除したアブストラクト・バレエで知られるバランシン作品の表現様式は異なっています。具象と抽象という表現は、あらゆる芸術表現で両極といえ、バレエ芸術でそれを鮮やかに体現するのがこの両者といえます。味わいは異なりますが、詩情と抒情性は相通じるものがあります。


 妖精に恋した若者の悲劇を幻想的に描くロマンティック・バレエの名作『ラ・シルフィード』を9世紀にデンマークで活躍した巨匠オーギュスト・ブルノンヴィル振付と20世紀バレエの名匠ジョージ・バランシン振付で見られたのは、バレエにおける振り付けの重要性を生の舞台で感じられたという意味で貴重な経験だと思いました。






by desire_san | 2016-02-08 19:09 | バレエ・演劇 | Comments(10)
Commented by snowdrop-momo at 2016-02-09 07:24
おはようございます。ラ・シルフィードをご覧になったのですね!テレビで観たパリオペラ座のでは、ジェイムズがタータンチェックのスカートを穿いていました。その元になった19世紀のバレエから、ブルノンヴィル版が発展したのでしょうか。
先日、フランスのクラシック・バレエの元になった宮廷舞踊の体験レッスンを受けてみました。楽しかったです♪
貴族の踊りから生まれたイタリアのバレエが始まりにあったのですね。興味は尽きません。
Commented at 2016-02-09 07:26
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by desire_san at 2016-02-09 08:20
snowdrop-momoさん、コメントありがとうございます。
説明が分りにくくてすみません。『ラ・シルフィード』はプリマバレリーナが爪先立ちで妖精のように踊りつつづける、クラシックバレエでも最も高度な器量を必要とする演目です。吉田都さんはそれに一層芸術表現を強化したバラシンの振り付けで踊っています。吉田都さんの『ラ・シルフィード』のすばらしさについては、次回詳しくご紹介いたします。

ラファエル前派については2014年に一度書いていますが(http://desireart.exblog.jp/19611680/)、今回Bunkamura ザ・ミュージアムの『ラファエル前派展』を見て、展示されている作品の多くが、ラファエル前派が否定したアカデミズムの絵画との違いが分かりにくいと感じ、まず『アカデミズムの美術』について整理して書いてみた次第です。Bunkamura ザ・ミュージアムの『ラファエル前派展』については、もう一度子の美術展を見に行って自分の疑問を払しょくしてから、書こうと思いますので、しばらく後になりますが、よろしくお願いいたします。
Commented by d_aplomb at 2016-02-09 21:45
こんばんは。私のブログにお越しくださり、コメントまでありがとうございました。『ラ・シルフィード』鑑賞記、大変興味深く読ませていただきました。お詳しいですね~、もう鑑賞記の枠を超えて解説のようで、すばらしいです。『ラ・シルフィード』は未見なので、いつか観てみたいです。ロマンティック・バレエつながり、ありがとうございました(^v^)
Commented by desire_san at 2016-02-09 23:31
d_aplombさん、コメントありがとうございます。
『ラ・シルフィード』は技術的に非常に難しいバレエということもあり、日本でもめったに上演されません。新国立劇場でも10年ぶりです。次回はその10年前に世界に誇る日本人バレリーナ、吉田都さんの『ラ・シルフィード』をご紹介しますので、よろしかったらぜひお立ち寄りください。
Commented by kurukuru at 2016-02-11 02:27 x
こんばんは。新国の『ラ・シルフィード』観て来られたんですね。
吉田都さんのシルフィードは2014年にNHKバレエの饗宴でシュツットガルト・バレエ団のヴァランキエビッチと踊ったパ・ド・ドゥだけ観たことがあります。とても素敵でした。
Commented by desire_san at 2016-02-11 07:56
kurukuruさん、コメントありがとうございます。
私は2000年『ラ・シルフィード』の6月の新国立劇場の舞台は、吉田都さんがシルフィードを踊ったのを生で見ることができました。だいぶ前の話ですが、まだ鮮明に印象が残っているほどすばらしいバレエを見せてくれました。これについては次回詳しくレポートさせていただきます。
Commented by desire_san at 2016-02-11 07:56
kurukuruさん、コメントありがとうございます。
私は2000年『ラ・シルフィード』の6月の新国立劇場の舞台は、吉田都さんがシルフィードを踊ったのを生で見ることができました。だいぶ前の話ですが、まだ鮮明に印象が残っているほどすばらしいバレエを見せてくれました。これについては次回詳しくレポートさせていただきます。
Commented by noho_hon2 at 2016-02-12 08:56
こんにちわ、ラ・シルフィード、御覧になって、そんなにも素晴らしかったのですね。興奮が伝わってくる報告、素敵でした。

美しいものは、素朴に好きです。吉田都さんのバレエも、短い時間ですが、テレビで見たことあります。また新たな興味をひらかせてくださって、ありがとうございました
Commented by desire_san at 2016-02-12 11:58
noho_hon2さん、ブログを見ていただきありがとうございます。
私も、分野にかかわらず美しいものは素朴に美しいと感じ、差の魅力に浸る時間は至高の時間だと思っています。吉田都さんの全盛期は新国立バレエに毎回出演してくださり、新国立バレエをけん引されていました。年齢を重ねた今でも、現役でいろいろなバレー団にゲスト出演して、バレエコンクールの審査員もしています。私の最も尊敬する女性のひとりです。

by desire_san