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カトリックとプロテスタントのミサの違いについて

バッハ『ロ短調ミサ曲』 ミサについて
" Mass in B minor " by Johann Sebastian Bach

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イーゼンハイムの祭壇画


プロテスタントの礼拝の構成
 『ロ短調ミサ曲』はカトリック教会のミサ様式に沿って作曲されているので、プロテスタントの礼拝様式は直接関係しませんが、『ロ短調ミサ曲』がカトリックのミサ典礼文に拠りながら、その構成が、カトリックの場合のKyrie、Gloria、Credo、SanctusとBenedictus、gnus Deiの5部構成とは異なり、第1部KyrieとGloria、第2部Symbolium Nycenum=Credo、第3部Sanctus、第4部Osanna、Benedictus、Osanna、Agnus Deiの4部構成となっています。





プロテスタントとカトリックの礼拝の比較
 ミサがキリストの最後の晩餐の再現であることはプロテスタントも同じで、大きな差は、カトリックでは一連のほぼ定められた様式に則って進められて、キリストの血と肉と言われる聖体拝領を最高潮の頂点が置かれているのに対し、プロテスタントではミサの中心は、会衆自身の歌による信仰告白とそれに続く牧師の説教に置かれています。カトリックのミサは原則ラテン語で歌われていたのに対し、プロテスタントでは原則母国語で話され歌われていました。

(1) 第1部
 ミサの開式から、Gloriaが終わって、カトリックで入祭頌が歌われるところではプロテスタントではモテットが歌われます。KyrieとGloriaはラテン語で歌われますが、『ロ短調ミサ曲』ではバッハが、一部の歌詞をルターのドイツ語訳の典文に合わせて変えています。カトリックの集会祈祷やプロテスタントの特別祈祷は類似しています。

(2) 第2部
 カトリックでは続唱司祭によりグレゴリオ聖歌で称えられるのに対しし、プロテスタントでは相応しい賛美歌が歌われます。続く信仰宣言が顕著に異なっており、両派の本質の違いといえます。カトリックでは、二ケア信経と呼ばれる長大な歌詞の典礼文Credoが歌われますが、プロテスタントCredo in unum Deumだけが歌われ、続いて教会暦に合わせたカンタータが演奏されます。バッハがライプツィッヒ時代の最初の数年間で300曲作曲したカンタータはこのタイミングで演奏されました。カンタータに続いて会衆により母国語で信仰告白が歌われます。この信仰告白がミサの中で不動の地位を占める重要な要素と言われています。キリストが再臨して最後の審判を下すとか、唯一の洗礼を信じるとか、使徒伝承の教会を信じるというような教会の権威を称えるような要素はプロテスタントでは見られません。プロテスタントでではその日の教会暦に相応しい賛美歌が歌われ、これに続く説教、共同の懺悔と執り成しが非常に重要視されています。

(3) 第3部
 カトリックでは感謝の賛歌Sanctusが歌われます。プロテスタントの場合は、大規模なミサの場合にのみ歌われます。カトリックでは、Sanctus-Hosanna-Benedictus-Hosannaという構成なのに対し、プロテスタントでは歌われる場合でもSanctusだけでHosanna以下は含まれません。カトリックでは、この賛歌が歌われている間に単なるパンとぶどう酒であったものがキリストの肉と血に変わるとされている。プロテスタントでは「聖餐設定の言葉」が牧師にから唱えられる。パンとぶどう酒がキリストの肉と血に変わった印としてサンクトゥス・ベルが鳴らされるのは共通どちらも共通です。
 カトリックでは続いてAgnus Deiが歌われますが、プロテスタントでは再びカンタータが歌われます。バッハの教会カンタータの幾つかは2部構成になっているのは、ここから来ています。本来はAgnus Deiはパンを切り分けている間、会衆に歌わせました。パンとぶどう酒をカトリックでは司祭、プロテスタントでは牧師から受けて、キリストと一体なり、その際にカトリックでは聖体拝領唱、プロテスタントでは聖体拝領の賛美歌が歌われます。

『ロ短調ミサ曲』をカトリックとプロテスタントのミサの拝礼の構成との関係を整理すると以下のようになります。

『ロ短調ミサ曲』第1部は、カトリックでは①集会の儀(シナクシス)、あわれみの賛歌(Kyrie)~栄光の賛歌(Gloria)、プロテスタントでは、キリエ、クリステ、キリエ(多声音楽)~グローリア(多声音楽)に相当します。

 
『ロ短調ミサ曲』第2部は、カトリックでは信仰宣言(Credo)、プロテスタントでは クレド(冒頭句:Credo in unum deum) に相当します。

 
『ロ短調ミサ曲』第3部と第4部前半は、カトリックでは奉献文~感謝の賛歌(Sanctus)、プロテスタントではサンクトゥス(多声音楽)に相当します。

 
『ロ短調ミサ曲』は、カトリックでは感謝の賛歌(Sanctus)~平和の賛歌(Agnus dei)、プロテスタントでは サンクトゥス(多声音楽)~サンクトゥス(多声音楽)に相当します。

 
サはイエス・キリストが十字架にかけられ復活した、イエス・キリストが命を懸けて人類を救おうとしているという事実を今の出来事として意味を持ち、キリストに「主」という二人称でイエス・キリストに「私の罪を許してください」「主よ、憐れみたまえ」と呼びかけ、クレドで、「私は信じます」と発せられます。『ロ短調ミサ曲』は主の栄光が天地に満ちていることを感じさせ、サンクトゥスで私たちの心を高揚させていきます。

 
現在世界では宗教対立が戦争にまで発展しています。イスラム教やユダヤ教は偶像を排除する傾向にあり、キリスト教にも偶像崇拝を禁止していた時代もあり、今でもそのような宗派もあります。一般のキリスト教は、神としているイエスの像を作ることを認めています。そのような違いはありますが、健全な宗教に共通するのは、神への慈しみであり、お互いに対して愛の心を大切にすることだと思います。愛する人との時間が最も大切な時間だということも共通していると考えられます。このような宗教の精神性は、優れて音楽を通じて理解し合い、伝い合えるのではないかと考えさせられました。 

【参考文献】
徳善義和、百瀬文晃 編
「カトリックとプロテスタント~どこが同じで、どこが違うか~」教文館
クリストフ ヴォルフ (著), 礒山 雅 (翻訳)「バッハ ロ短調ミサ曲」
磯山雅著「バッハ=魂のエバンゲリスト」1985年、東京書籍(株)

クリストフ・ヴォルフ著「バッハ ロ短調ミサ曲」(礒山雅 訳)春秋社



文字をクリックするとバッハがなぜ『ロ短調ミサ曲』を作曲したかなど』詳細の説明にリンクします。
バッハ『ロ短調ミサ曲』 [背景と作曲動機]


文字をクリックすると音楽史してのバッハ『ロ短調ミサ曲』の説明と鑑賞記にリンクします。
音楽として聴くバッハ『ロ短調ミサ曲』


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by desire_san | 2016-02-22 11:25 | 音楽・オーディオ & 写真 | Trackback(4) | Comments(0)
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