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心に残った旅・芸術とアートとの出会い   

20世紀版モーツアルト「魔笛」

R.シュトラウス 『影のない女』

Richard Strauss " Die Frauohne Schatten "



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 リヒャルト・シュトラウスは、当時の文豪ホーフマンスタールと組んでモーツアルトのオペラに挑戦しました。その最初の作品が「フィガロの結婚」に相当する「バラの騎士」です。「バラの騎士」の成功で二人は一層意気投合して、次に「魔笛」に相当する作品として「影のない女」を作曲したとのことです。「影のない女」はモーツアルトの「魔笛」と対比させると、皇后と皇帝がパミーノとパミーナ、バラクと女房がパパゲーノのパパゲーナ、乳母が夜の女王を連想にあたるそうです。この作品の感想を紹介したいと思います。






Die Frau ohne Schatten (The Woman without a Shadow) is an opera in three acts by Richard Strauss.

私にとって「影のない女」は始めて見る作品でしたので、いろいろな解説書を読んでいたので、新国立劇場に行くまで「魔笛」のようなファンタジックオペラのような作品と予想していました。

a0113718_9183413.jpg しかし、実際に「影のない女」を鑑賞して、予想に反して「エレクトラ」のような重量感のある大作であることが分かりました。霊界と王宮、庶民の家と地下の暗闇の世界とめまぐるしく変わる舞台と、あの「アルプス交響曲」をも上回る大編成オーケストラを用いた演奏が正味3時間20分を要する壮大な舞台でした。日本では、舞台装置と本格的オーケストラピットを有する新国立劇場で上演するのに相応しい作品だと思いました。

The opera's story is set in the mythical empire of the Southeastern Islands and involves five principal characters: the Emperor , the Empress , her Nurs, Barak, a lowly dyer , and the Dyer's Wife. A sixth character, Keikobad, King of the Spirit Realm and father to the Empress, sets the plot in motion, but never appears on stage. The Empress is not human: she was captured by the Emperor in the form of a gazelle. She assumed human shape and he married her, but she has no shadow. This symbolizes her inability to bear children. Keikobad has decreed that unless the Empress gains a shadow before the end of the twelfth moon, she will be reclaimed by her father and the Emperor will turn to stone.

a0113718_9193772.jpg 皇帝の妃は実は霊界の大王の娘でした。結婚して1年して皇后が影を得なければ皇帝は石になる、その日は後3日に迫っています。皇后は乳母と人は影を手に入れるため人間の世界に降りていきます。
3人の兄弟と同居する貧しい染物屋バラク女房は生活に不満を持ち子供を生みたがらりません。そこに目をつけた乳母は妻に魔法を使って贅沢で豪華な生活で誘惑し、影を売ってくれ頼みます。更に彼女好みの若い男を魔法で見せ妻を誘惑します。

一方、皇帝は皇后から、3日間鷹狩り小屋にいる聞き小屋に行きますが、皇后と乳母が空を飛んで小屋に入るのを見て嘆きます。

a0113718_9212618.jpg 染物屋では、乳母が若い男を使って女房を誘惑しますが、女房は夫を市場で売られた自分を買って優しくしてくれた働き者の夫を裏切ることができません。皇后は夢で皇帝が皇后に影がないため洞窟の中で石になると告げられますが、影のためにバラクの家庭を破壊しようとしていることを苦しみます。
バラクの女房は夫に不貞を働いて影を売ったと嘘の告白をし、子供を諦めて影を売ると言い出します。彼女の影が薄くなっていくのを見て、乳母は皇后に影を奪うよう囁きますが、皇后は躊躇します。バラクの手に短剣が現われ、女房が後悔から胸を差し出すと地面が割れて二人は地底に呑み込まれていきます。
地下の厚い壁で、バラクの女房は良心に苦しみ夫に心から詫び、愛し合います。バラクは優しく応えます。

a0113718_9221039.jpg 皇后は愛ある人間界に住みたいと言い、夫の命乞いをします。乳母はバラクと女房を引き離し大王に皇后の助命を願いますが、聞き届けられず人間界に追放されます。皇后は他人を不幸にしてまで影を手に入れることはできなないと訴えます。黄金の水が湧き出し、この生命の水を飲めば影を得られ皇帝も助かると告げられますが、バラクの妻が影が奪われ子供が生めなくなると考え水を飲みません。石に変わった皇帝が現れ、皇后は皇帝の後を追って死のうとします。

a0113718_9253458.jpg その時皇后に影が生まれ皇帝も元の姿に戻ります。皇后のけなげな決心により全てが救われたのです。皇后と皇帝、バラクと女房はそれぞれが抱き合い、愛の喜びを歌います。愛の四重唱と子どもたちの歌声が響きわたり幕がおります。

 第1幕の始めは鮮やかな光を使って華やかに演出された舞台です。音楽や歌唱は20世紀オペラらしい現代的な音楽で始まります。場面がバラクの家に変わると、貧しく生活観あふれる現実的な演劇のような重たい舞台に変わります。音楽は細かい心理描写が鋭く表現された音楽となります。天界と現実の落差が際立った演出で、バルクの女房を中心とした人間劇を中心にオペラが展開さして行きます。

a0113718_927754.jpg 第2幕までは現実のバルクの女房の生活が中心となっているため、重たい音楽が続きますが、第3幕から、バルクと女房の愛の二重唱、哀愁ある皇后のアリア、皇后と皇帝、バラクと女房の愛の四重唱と音楽も舞台もファンタジックな世界に変わります。
大編成のオーケストラを使用していますが、多様な楽器の組み合わせで大音響から室内楽的透明感のある音楽まで多種多様な音楽が組み合わされていて、リヒャルト・シュトラウスの音楽の偉大な才能を感じる厚みのある音楽作品でした。
この作品は主要な歌手5人が壮大なオーケストラの響きと競いあう場面や、複雑な心理描写を表現する場面が多く歌手にとっては難曲だと思います。今回出演している5人の主要な歌手は、声量、表現力など力量がそろっていて、それぞれに聴き応えがありました。特に実質的な主役であるバルクの女房を歌うテスファニー・フリーデは、ウィーン国立歌劇場などで、「ラ・ボエム」「トスカ」「喋々夫人」からワーグナーの作品まで主役を演じた実力派で、苦しい現実を生きることの重みを感じさせる迫力がありました。〔2010.5.23 新国立劇場〕






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by desire_san | 2010-06-02 09:27 | オペラ | Trackback | Comments(19)
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Commented by koala29 at 2010-06-02 13:55 x
モーツアルトの「魔笛」のオペラなのですね。詳しい解説でよく分かりました。これも見ておくべきオペラですね。不勉強で分かりませんでした。これも見ておくべきオペラですね。ありがとうございます。
Commented by rudolf2006 at 2010-06-02 16:16 x
desireさま こんにちは

拙ブログへのご訪問、コメント、ありがとうございます。

「影のない女」昔から好きなオペラで、CDなどではよく聴いていますが、ライヴはまだ観たことがありません。
新国立の上演、行かれたんですね〜
羨ましい限りです。

カットはありましたか?
長いので、けっこうカット上演が多いようです。

これからも宜しくお願いします。
(*´ω`*)
Commented by つるりんこ at 2010-06-02 17:24 x
多くの画像で、舞台が一気によみがえりますね。
特に今回の「影のない女」は、
物語を読み取るライトモチーフが随所に織り込まれていて、
観終わってから日にちが経つにつれて、
じわじわと体に染み込んでくるものを感じます。
作曲家の薬に犯されてしまったようです。
Commented by hirune-neko at 2010-06-02 18:41
なかなか重厚なテーマなんですね。
確かに魔笛よりは、重いテーマだと思います。
機会があったら鑑賞したいです。
Commented by hirune-neko at 2010-06-02 18:41
なかなか重厚なテーマなんですね。
確かに魔笛よりは、重いテーマだと思います。
機会があったら鑑賞したいです。
Commented by ひろこ at 2010-06-02 20:56 x
私はまだ新国立劇場に行った事がありません。重厚なオペラをごらんになって、さぞ素敵なときを過ごされたことでしょう。
Commented by フランツ at 2010-06-02 21:39 x
こんばんは。
道楽ねずみことフランツです。
拙ブログにコメント有り難うございました。

「影のない女」は本当にいい作品でしたね。
歌手は皆、表現力が豊かで,音楽とともにうまく役の性格を表現していたように思います。

desireさんも美術もお好きなのでしょうか。
今後ともよろしくお願いします。
Commented by yokochan at 2010-06-03 00:22 x
deisireさん、こんばんは。拙ブログへのご訪問ありがとうございました。
最終日の公演を観劇しました。
影のない女は、これで2度目の体験ですが、自前のハウスで、日本人歌手も交え、国内オーケストラでこのような高レヴェルの上演が行われるなんて隔世の感があります。
来年は、ゲルギエフが上演するみたですし、ちょっとしたブームになりそうですね。
演出は、私はいまひとつでしたが、音楽面、それも歌手の素晴らしさは文句なしでした。
 またよろしくお願いいたします。
Commented by とうぷ at 2010-06-03 07:01 x
desireさん、おはようございます。
「影のない女」の記事を楽しませていただきました。ありがとうござ
います。私はこのオペラをTVで観ました。1992年の愛知県芸術
劇場のこけら落としの上演でした。すばらしいのに上演機会の
少ないオペラですから、貴重な機会を得られて、うらやましい
です。
Commented by NOMA-IGA at 2010-06-03 08:25 x
こんにちは。
私のブログにコメントをいただいて、ありがとうございました。
「影のない女」を見るのは私も今回が初めてでした。
さほど予習もせずに出かけたため、バラクの妻の心境が今ひとつわかりにくかったのですが、desire_sanさんの記事を読み、なるほど、そうだったのかと思いました。ありがとうございました。
Commented by felice_vita at 2010-06-03 08:58
こんにちは。私もこのオペラ生で見たことはないので、舞台美術もぴったりで、キャストもよかった、となると、行っておけばよかった、と少々後悔しております。R・シュトラウスの音楽って、終わってからも余韻が後から後から漣のように畳み掛けてくるのですよね。
Commented by mirutarun at 2010-06-03 10:02 x
こんにちは、コメントありがとうございます。
「影のない女」の詳細なご報告、楽しく拝見させていただきました。
私も29日に観てきました。
2度目なのですが、前に観たのはかなりファンタジー感が強い印象だった気がします。演出によるのでしょうね。
29日も、熱演の女声陣をはじめ満足できる公演でした。


Commented by 失われたアウラを求めて at 2010-06-03 16:12 x
いつも美しい写真豊富なブログをたのしく拝見させていただいております。《影のない女》は、2011年、2月にゲルギエフ指揮の公演も観に行く予定でいます。P.S.私は18歳まで山形県寒河江市で育ったので、月山、蔵王山、朝日岳を見ながら育ちました。地元の人間はあまり登山はしませんが、父親が無類の登山好きだったので、上記の山以外にも自宅からかなり遠い鳥海山(3度ほど)や飯豊山にも登ったことがあります。美術も好きですが、とりわけカンデンスキーが好きです。クリムトの絵に関してほんの少しだけブログに書いたことが有ります。http://blog.livedoor.jp/mp1922/archives/51373080.html
Commented by 5-saturn at 2010-06-03 18:37
こんにちは
コメント有難うございました。私も楽日(6/1)に「影のない女」を観て来ました。初めて観るオペラなので予備知識くらいは、とあらすじをさらっと読んで行ったのですが、意外やあんな重いテーマのオペラとは思いませんでした。主役の4人の歌唱力も抜群でラストの4重唱は「薔薇の騎士」のラストを彷彿とするようなまさにR.シュトラウス・ワールドでしたね。
Commented by Shushi at 2010-06-04 19:30 x
こんばんは。記事、拝読致しました。思い出がよみがえるおもいです。やっぱり女声は素晴らしかったですね。感動しました。次はゲルギエフでも聴いてみたくなりますね。
Commented by lovehomeopathy at 2010-06-05 21:24 x
私はR・シュトラウスの作品は一度も観たことが無いのですが、記事を読ませていただいて、是非観てみたくなりました。手元に資料がないのではっきり判りませんが、確か来シーズンのメットの演目には入っていなかったような気が。。。
Commented by i_misakura at 2010-06-06 23:13
こんばんわ。
詳しい解説に生で観たい、聴きたい願望が強くなりました。
重厚なシュトラウス、、、ぞくぞくしてきます。
リアルな写真、記事、これからも楽しみにしています。
Commented by dankkochiku at 2010-06-09 10:53
 「あなたのその影を私にお譲り頂けないでしょうか」 と、見知らぬ男からの頼みに、自分の影と引き換えに、いくら使っても減らないお金の入った革袋をもらい、大金持ちになったものの、影を失ったことを、一生、悔むことになったシャミッソーの小説 「影をなくした男」 の話を思い出しました。 それにしても、3時間半にわたるこのオペラ、全曲演奏するのでしょうか?
Commented by artlondon at 2010-06-18 02:53
シュトラウスは、「ばらの騎士」ともう1つを観た程度ですが、ちょっと苦手な部類かも〜。モーツアルト等古典派の方が好きです。

舞台と声はオペラの命ですよね。堪能された様で何よりです。