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芸術と自然の美を巡る旅  

過激化した学生運動の惨劇・日本の深部にひそむ「暴力の解放」テーマにした代表作

大江健三郎『洪水はわが魂に及び』 
写真:鞆の浦  名前をクリックすると福山市・鞆の浦のホームページにリンクします。 

過激化した学生運動の惨劇・日本の深部にひそむ「暴力の解放」テーマにした代表作_a0113718_15464579.jpg


 世間に背を向け核避難所(シェルター)に息子ジンとともに引きこもりつつ、樹木の魂、鯨の魂と交感する大木勇魚が、「自由航海団」を名乗る若者とたちと出会い、相互に影響を与えつつ大きな破局へと進んでいく物語。







 奇想天外な話だが、連合赤軍の浅間山荘事件に重なるものがあり、集団心理からから暴力的なものへ進んでいく過程は説得力がある。「自由航海団」はとカルト集団のようで、「鯨の魂」は滅びゆく古き良き存在の象徴なのかも知れない。多麻吉は、政治集団を過激な方向に進めていく存在だか、妙にかっこいい。肉存伊奈子は『罪と罰』のソーニャのようで、ジンと伊奈子の関係が美しい。個々の登場人物に魅力があるのも、現実味を感じさせる力となっている。どの登場人物にも共感できないが、精神的に刺激となる要素が多く、文体が独創的で大変魅力があり、読んでいくうちにだんだん引き込まれて一気に読んでしまった。最後の「すべてよし!」はなんだか分からないが納得させられてしまった。これは理屈ではない。まさに文学体験というものだろうか。






大江健三郎『取り替え子』 


 大江健三郎は、後に映画監督となる伊丹十三に出あい、その妹と結婚した。その義兄の自殺と向き合い、重い障害をもつ息子大江光を立派な音楽家に育て上げた。そこには、当事者の苦しみを省みず、批判し追い詰めていく世間や知的障害者に対する無理解との凄まじい闘いがあったと思う。この小説の迫力の根底には、作家が受けた強い衝撃と世間への激しい怒りがあるように思える。残された録音テープを通じて死んだ義兄と対話しながら、少年時代の同性愛的感情などへ屈曲してゆく過程はスリリングで引き込まれていく。精神的遡行や妄想が織り交じっており、難解な面もあるが、屈折を繰り返しながら普遍性をもった文学に仕上がっているのは見事だと思った。






鞆の浦過激化した学生運動の惨劇・日本の深部にひそむ「暴力の解放」テーマにした代表作_a0113718_141713.jpg 鞆の浦は、広島県福山市鞆町の沼隈半島南端周辺の海域で、鞆港の港周辺を「鞆の浦」と呼んでいます。「鞆の浦」の地名は「鞆にある入り江」という意味で海域を示し、仙酔島などいくつかの島も含まれます。歴史的には、万葉集で、大伴旅人が、「鞆の浦の礒のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも」と詠んでいます。

 南北朝時代に足利尊氏率いる北朝と新田義貞率いる南朝との鞆合戦が繰り広げられました・ 戦国時代には毛利氏が鞆中心部に「鞆要害」を築き備後国の軍事的要所となりました。室町幕府には、15代将軍足利義昭が織田信長により京から追われ、毛利氏、伊勢氏、上野氏などの支援で足利義昭が「鞆幕府」と呼ばれた幕府となしていたこともあり、頼山陽によれば。“足利(室町幕府)は鞆で興り鞆で滅びた”場所になっていま  近世は、航海技術が発達し鞆のは衰退し、尾道にこの地方の港湾拠点は移って行きました。












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by desire_san | 2012-03-09 23:37 | 日本の旅と文学・映画・ドラマ | Comments(23)
Commented by 仲原誠一 at 2010-11-20 10:42
お久しぶりです。いつもブログを拝見しているのですが、私にコメントする知識がなくて、よんでなるほどと思いますが、コメントできないで失礼しました。大江健三郎の文学作品は、かなり読みましたが、難しいですね。なんとなく引き込まれるところがあるのは分かりますが。
Commented by 藤島巌 at 2010-11-20 10:54
いつもブログを紹介していただき。ありがとうございます。大江健三郎は作品も人柄もすきです。おもしろいストーリーではないので、初めは少し抵抗がありましたが、読めば読むほど奥深さがあります。 なぜノーベル文学賞をとったのかわかるきもします。
Commented by 智子 at 2010-11-20 10:56
大江健三郎さんがノーベル文学賞をもらったとき、ブームになったので何作か読みましたがもあまり良く分かりませんでした。desireさんの解説は分かりやすく、また大江健三郎さんの文学に挑戦してみたい気持ちになりました。
Commented by Takashi at 2010-11-20 11:03
こんにちは。記事を興味深く読ませていただきました。
ところで、冒頭の写真はどこにある寺ですか。大江健三郎の文学ゆかりの寺ですか。
Commented by ゆりこ at 2010-11-20 11:12
desireさんのブログは、パソコンを立ち上げる日は必ずのぞいています。新しい記事がのるのが楽しみなものですから。
今度は文学作品ですか。話題がどんどん広がりますね。私も本が好きですが、流行作家のベストセラーのものばかり読んでいます。ブログをよませていただき、大江健三郎のような純文学の作品もよんでみようか、という気持ちになりました。
Commented by desire_san at 2010-11-20 11:20
みなさん、コメントいただきありがとうございます。
Takashiさん、写真と文は関係ありません。誤解を招くので、ブログに書き加えておきます。ご指摘ありがとうございました。
Commented by Ken_Siraishi at 2010-11-20 11:54
大江健三郎は言葉は穏やかですが気骨のあるひとですね。民主主義者としての意識が非常に強く、国家主義、天皇制を一貫して批判的な立場を貫いているようです。平和憲法を大切にし、核兵器や憲法第9条についても積極的書き、自衛隊にも否定的立場を明確にしています。皇が親授式を行う文化勲章と文化功労者の授与受章を拒否したそうですね。普通の人でしたら、今の日本では、マスコミからバッシングされたり、本が出版できなかったりするのですが、何といっても世界に通用駆る文学者なので、堂々と文筆活動を行っています。
大衆迎合、権力や体制に迎合する作家が多い中で、数少ない本物の文学者だと思います。どんどんこのような人が出てくると日本ももう少し良くなるのですが、きっとそういう人は表に出にくい力が働いてもなかなかメジャーになれないのでしょうね。
Commented by Rueise at 2010-11-20 12:05
desireさん、こんにちは。
私は大江健三郎さんの文学作品が好きでたくさん読んでいます。私が読んだ主な作品は、小説では、『われらの時代』、『遅れてきた青年』、『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』、『懐かしい年への手紙』、『M/Tと森のフシギの物語』エッセーでは、『沖縄ノート』『「自分の木」の下で』、などです。
desireさんが紹介している『洪水はわが魂に及び』は未だ読んでいませんでした。こんど読んで見ることにしたいとしたいと思います。
Commented by yukigumo at 2010-11-20 12:10
『洪水はわが魂におよび』がお好きならば、『燃え上がる緑の木』『宙返り』の2作品は、もう、お読みでしょうか?大江氏がオウム真理教に向き合った作品、といえる内容ですね。また代表作のひとつ『万延元年のフットボール』も、一読の価値があると思います。氏の故郷でもある四国の谷間で起きた一揆と、安保闘争をダブらせて描いた作品です。
Commented by Sigeru at 2010-11-20 13:06
この大江健三郎先生は私の田舎の出身ですが、それにノーベル賞作家と言うのに、図書館でも先生の書物が置いて在る本棚には誰も手に取って見てる。どころか、その本棚の前にも居てないです。本当に寂しいです。まあ、この大江先生を表に出して催し事など町が一切やらないことも原因の一つでしょうが、作品は違うが、ゲゲの鬼太郎とは全く違います。
Commented by Wata at 2010-11-20 13:07
大江健三郎といえば、私が昔が学生だった頃は、文学の最先端のような感じでしたね。大江を読まないで現代文学を語るな、というような雰囲気もあったように思います。で、そういうことで私も読みましたが、なんか文体が変わっていました。読みづらいし、何を考えているのかよくわからない人が出てくるし、結構読むだけで苦労したように思います。初期の「芽むしり、仔撃ち」(でしたっけ?」や「性的人間」「見る前に跳べ」、なんかよくわからなかったけど、おおこれが最先端かというような思いで読んでいたように思います。「個人的な体験」が出て読み、「万延元年のフットボール」を読んだあたりからじわりと感動が湧いてきて、「洪水・・・」で頂点に達した感じがありました。まあ、語るといろいろと長くなりますが、大江健三郎はリアルタイムで出れば読むということではないですが、1、2年遅れでも大体は読んできているように思いす。(最新作は未読です。)何がお勧めかといえば、私の場合だったら初期の作品ですかね。死体を扱うアルバイトの話しとか。
Commented by Marco at 2010-11-20 13:35
こんにちは、desireさん
Kenzaburo Oe is known well also in Italy. Lots of novels of Kenzaburo Oe are translated into Italian.
He is evaluated high as a mettlesome artist also in Italy.
Commented by enya at 2010-11-20 19:57
こんにちは。
川端康成がノーベル文学賞を受賞したとき、三島由紀夫もノーベル賞の噂があったのに、川端康成はその当時ノーベル賞の話などまったくなかつた大江健三郎に、次は君だねと言ったそうです、言ったそうです。天才には天才の才能がわかるのですかね。
Commented by 下町文士 at 2010-11-20 20:01
大江健三郎さんのような大作家で、映画化もドラマ化化もほとんどそれない作家も珍しいと思います。なぜ大江文学は、映画やドラマにならないのでしょうか?
Commented by Phenix.ktou at 2010-11-20 20:16
映画化された作品は少ないですがありますよ。「 われらの時代 」(1959) 監督:蔵原惟繕、「 偽大学生」 (1960) 監督:増村保造  
「 飼育 」(1961) 監督:大島渚「静かな生活」 (1995) 監督:伊丹十三 などです。
しかし、代表作は映画化されていませんし、映画化して成功したという話も確かにききませんね。
Commented by Noriko at 2010-11-20 20:45
こんばんは。 『取り替え子』を読みました。自殺した伊丹監督の気持ちを大江健三郎さんは良く理解していたのだと思いますが、凡人の私には、何が理解できたのかよく分かりませんでした。
Commented by Yoshie at 2010-11-20 21:06
『洪水はわが魂に及び』 は読んでいて、難解な小説だと思っていましたが、desireさんのブログを読んで少し理解できたように思いました。ありがとうございました。
Commented by やっくん at 2010-11-21 12:42
大江健三郎の作品は学生の頃に良く読みました。まだ学生運動が盛んな頃で、左翼系作家の本をよく読んだものです。
話は変わりますが、19日から上京しまして、20日にブリヂストン美術館に行ってきました。久し振りの文化的刺激でした。
Commented by 山脇由美 at 2010-12-13 09:20
こんにちは。
大江健三郎の文学は何作か読み、朝日新聞に定期的に投稿されているのでそれも時々読んでいます。人間としての生き方を深く語っているようにも思えますが、理解できないような政治的に発言も過去にあり、思想的には良く分からないところもあります。しかし、作品を読んでいると、言葉の洪水のような大江ワールドにいつの間にか引き込まれていき、なんだか分からないが納得させられいまう、というのは私も理解できます。この辺は思想的本質は違うと思いますが、安部公房と通ずるものがあるのではないかと思います。
Commented by Tony at 2010-12-13 15:31
時々訪問していますが、初めてコメントさせていただきます。オペラ、美術などはdesireさんのブログにコメントできるほど知識はありませんが、小説は小学生の時から好きです。ベストセラー的なものが中心ですが。純文学も時々読みます。個人的には井上靖や遠藤周作のように主張が明確な方が好きです。
大江健三郎の作品はdesireさんが書かれているように、なんだか分からないが・・という部分があり、読み終わっても欲求不満が残るような気がします。
初めてコメントしたのに気の効いたことが書けなくてすみません。
Commented by tkomakusa1t at 2012-03-11 06:45
大江健三郎さんの作品は若い時に四な記憶がありますが
深く理解できなくて。。。じっくり読ませていただきました。
いろいろなものに詳しいのにびっくりです。
知識の洪水です。
Commented by かりふらわ at 2012-03-11 11:50
大江さんの作品が好きです。わかる?と言われると困るのですが。大江さんは、自分のことを時代の語り部と言っていたような気がします。新刊が出ると以前は読んでいました。
彼がすごいのは時代を察知する眼だと思います。燃え上がる木は、オウム真理教の騒ぎが起こる前に書かれた作品です。あの事件の前に一部の新興宗教への盲信を指摘していたことに震えました。
そういった意味では、治療塔も面白かったです。ファジーという言葉が流行ってなんかおかしいなと思ったいた時に、見事に進みすぎた技術に対して批判してくれました。
伊丹さんの死に対する悲しみは大きかったようです。週刊誌の記事が自殺のひとつの引き金になったととらえたようで、懇意にしてたその出版社から以降本を出すことをやめてしまったくらいでした。(現在はわかりませんが)
私は「雨の木を聴く女たち」から「新しき人よ目覚めよ」までの息子の光さんとの関わりを書いた小説をお勧めします。
Commented by rollingwest at 2012-03-14 06:11
鞆の浦は「崖の上のポニョ」の舞台になったことで初めて知りましたが、このように歴史が刻まれていたんですね。いつか行ってみたいです。