天才画家ゴッホの生涯と画風の変遷・ゴッホの絵画魅力
オランダのファン・ゴッホ美術館とクレラー=ミュラー美術館の2 大コレクションの協力を受け、ゴッホのほぼ全時代を網羅した約120点の作品を集めた大規模な美術展が国立新美術館で開催されました。ゴッホとともに同時代の画家の名作も展示されており、中身の濃い美術展でした。
1880年27歳でゴッホは画家になることを決意します。ミレーの「種まく人」「田園の労働」を熱心に複製していた頃のゴッホのデッサンは人物の動きを重量感があふれています。当初のゴッホはミレーを目標としていたことが多数のデッサンから分かります。有名な「馬鈴薯を食べる人々」を描いていた1985年頃までは、色彩も暗く、人物画も生物が暗く重たく息苦しくなるような作品を描いていたようです。
1886年33歳のとき、パリにいた弟テオのアパルトマンと同居を始めた頃から画風が一変します。ロートレックやエミール・ベルナール、シニャックなどと知り合い印象派の絵画を知ります。この美術展で展示されているモネの「ヴェトウィユ」の明るく豊かな色彩感、ピサロの「虹」の巧みな光の表現、スーラの「オンフルールの港の入り口」の静けさを画面に与える色彩を混ぜずに並べる手法は、ゴッホに大きな転換をもたらしたことが良く分かります。
ロートレックの「テーブルの若い女」を見ると、その生活観がにじみ出るような人物表現がゴッホの絵画に強い影響を与えたことが分かります。浮世絵も一部展示されていましたが、歌川国義の「川を渡る女性」の卓越した色彩配置、歌川広重の奇抜な構図の作品を見ると、ゴッホが印象派の本家の画家を超える色彩感覚や構図を浮世絵から学んだことが良く分かります。
もうひとつ意外だったのは、その当時最前線で活躍していたファン・タン。ラトゥールの静物画の影響です。ファン・タン。ラトゥールの「プリムラ・梨・ザクロ」の魅力的な作品が展示されていましたは、並べて展示されていたゴッホの花の作品は、個性を適度に抑制した心地よい作品でした。簡素な主題を好み、厚塗りのタッチで花の色彩を強烈に印象付ける技術はファン・タン。ラトゥールからの影響であることをこの美術展を見て初めて知りました。
『ラ・クローの収穫』は、南フランスのアルルの周りの平らな風景を描いた作品で、この土地の暑く乾いた夏の日の雰囲気を表現するため、黄色と緑の色調に空の紺碧を組み合わせました。ゴッホは燃える太陽の下で働く農民の生活や仕事を表現する手眼収穫のいくつかの段階を描き、「ラ・クローの収穫」はゴッホの最も成功した絵画の一つと考えられます。ゴッホの優れた色彩感覚が全開し私が最も好きな作品の一つです。
The Harvest 1888
1888年、35歳の時、ゴッホは南仏のアルル「黄色い家」に部屋を借り、ポン=タヴェンにいたゴーギャンを呼んで共同生活が始めます。しかし、世の中の誰も認めなくても自分の才能を信じ、たくさんの信望者を従えていたゴーギャンは、芸術家としては同じ気質を持っていたとしても、繊細なゴッホには手に負える相手ではなかったようです。ゴーギャンとの激しい口論の末、ゴッホは左耳下部を切り落とし、アルルの病院に収容されることになります。アルルに移ってからこの頃を回想して、「アルルの寝室」「ゴーギャンの椅子」という名作を描いていることから、ゴッホはその後もゴーギャンを同志として思っていたのかも知れません。しかし枠にはめられるのが嫌いで単身タヒチにまで行ってしましたゴーギャンも、そのような人をパートナーに選ぼうとしたゴッホも社会人としてはバランス感覚が欠けていたのかも知れません。
『アルルの寝室』はゴッホの寝室は、フランス・アルルでゴッホが暮らした黄色い家の2階の部屋を描いたもので、この家がゴッホの作品『黄色い家』です。絵の左側の扉はゴーギャンの部屋につながっていたとされています。
部屋に入ると、右側のベッドがあります。右側の壁に沿って、椅子、テーブル、その上に水で、通りを見下ろす窓があります。左側の壁は別の椅子と第二寝室のドアを持っています。ゴッホの寝室は、ブルースに対するオレンジ、赤と緑のカラー理論のゴッホの知識を示しています。ゴッホは日本の版画から刺激を受け絵から影を省略しました。影の欠如は、歪んだ視点とともに、オブジェの部が定常していないように見えます。家具は奥の壁が直角に整列していません。
Arles in the bedroom.
Uponentering the room, there is a bed to the right. Along the wall to the right isa chair, table with water on it, and a window overlooking the street. The wallon the left has another chair and the door to the second bedroom. Bedroom inArles shows Van Gogh’s knowledge of color theory with oranges against blues,and red and greens. Inspired by the Japanese prints that Van Gogh studied, heomitted shadows from the picture. The lack of shadows, along with the distortedperspective, makes some of the objects appear to be falling or not steady. Thisis not entirely a result of working fast or a lack of skill. The odd angle ofthe far wall results in the furniture not aligning squarely.
Van Gogh mustVanGogh must have liked the picture. In the letter to his brother he included asketch of The Bedroom and then the very next day he wrote to Gauguin andincluded a sketch with that letter too! The painting he sent to his brother wasdamaged from a flood so he revisited the subject and painted it again the nextyear when he was in Saint-Remy. Then, still wanting to explore the subject,painted a third version for his mother. In all three paintings the compositionis almost identical with minor changes to details and color.
しかし、画風は「アルルの寝室」「ゴーギャンの椅子」から心象を表現した絵画となり、風景画を描いても、例えば「緑のぶどう畑」のように、構図は印象派的ですが、絵の具のチューブを塗りたくったような激しいタッチや益々不気味に画面がうねるようになりますタッチで精神的な乱れを感じさせます。これは1888年11月の作品ですが、同じ年に5月には印象派的なおとなしい作品を描いており、この間に精神が急激に病んできたと思われます。
『アイリス』は、サン・レミ・の精神病院で描きました。ゴッホは主に色の研究としてアイリスを見て豊かなブーケを描きました。ゴッホは、強力な色のコントラストを表現するため柔らかいパステル効果を生かし、花は強く目立つ画論構成で一様に黄色の背景に配置されます。アイリスはもともと紫でしたが赤色顔料が褪色して薄れ青みを帯びています。青色のアイリスの花が、背景の黄色に対して補色の効果で際立って見えます。計算しつくされたような構図と配色ですが、生きるはかなさを表現しているとも、自分の死を予言しているともいえるように、一部の花はしおれて枯れ落ちてしまいそうです。
Irises 1889
しかし、その後は錯乱する心を表現するように、うねるような曲線で「糸杉」を初めとした心象風景を描き続けます。1993年ニューヨーク近代美術館展で来日した「星月夜」や今年オルセー美術館展で来日した「星降る夜」のような作品もこの時代に残しています。
1890年、ゴッホは麦畑で胸を拳銃で撃ち自殺を図を図り、ただ一人の理解者・弟テオに看取られながら亡くなります。オーヴェールの共同墓地に埋葬される。37歳の短い生涯でした。翌年ただ一人の理解者テオも後を追うように亡くなります。
(2010年12月4日、国立新美術館)
あまり見る機会のない初期の作品が見られたのが最大の収穫でした。
>自分と同志だと勘違いしてしまったこと・・・
わかる気がします。
ゴッホは以前、見に行った記憶がありますが
大分昔なので、覚えておりません(^^;)
作品と共に非常に詳しい説明が素晴らしいです。
彼の人生を教えていただく事が出来ました。
私もゴッホ展に行きたくなりました。
私は難しいことはわかりませんが、印象派の人と交流していた頃の色あざやかで爽やかな絵が好きです。この頃の絵は明るく清清しい感じがします。「 じゃがいもを食べる人々 」を描いていた画家の作品とは思えません。「灰色のフェルト帽の自画像 」も同じ時代に書かれていたようですが、ゴッホはその日の気分で画風がまったく違ってしまうような人だったのでしょうか。
ゴッホ展混んでましたか?
行きたい気持ちは満々なのですが、混んでるミュージアムが昆布巻きの次に苦手な私としては、逡巡してます。
会期も残り少なくそうこうしているうちに益々混んでしまうのでしょうが…
ゴッホとゴーギャンの出会いは、dezireさんは不幸な出会いとお考えのようですね。私は少し違う考え方をしています。ゴッホがゴーギャンの到着に夢を膨らませて描かれた「 アルルの寝室 」には、期待の気持ちがこもっているように思えるのです。ゴーギャンにはドアを隔てた隣のより広い部屋を用意していたようです。
「ゴーギャンの椅子」も興味深い作品です。ゆったりとした曲線表現は優しく床もきれいで少し豪華な感じで、くつろぎを感じる余裕があるようです。それと対で「ゴッホの椅子」という作品も描いています。「ゴッホの椅子」ゴッホの自画像と言われ、寒い印象の青いの壁に質素に描かれています。ゴッホはゴーギャンを尊敬し、ゴーギャンもゴッホを認めていたと思いますが、お互いに妥協できず別れることになりましたが、「ゴーギャンの椅子」を見ると、ゴッホにとって決して不幸な出会いではなかったように思えてなりません。
dezireさんから見るとムッとされましたか? 展示の感じか、照明かなにかで、「おーーっ」という感じがしなかったのですよ。 ゴッホは好きな画家の一人ですが・・。
ブログへコメントありがとうございました。
よくお勉強されているのですね〜
感心してしまいました。。。
私も「はね橋」の辺りの作品がとても好きです。
豊かで明るい色彩に心惹かれますね〜
心が病んでいたとは言え「サン=レミ療養院の庭」も
色彩が豊富で驚きました。
おっしゃるように一時的に心が安定したのかも知れないですね。
この美術展はゴッホの画家としての足跡が見事に展示されていて
見応えがあったと思います。
このブログを拝見して 更に勉強になりました。
私もcalafさんではないですが、
損保ジャパンの美術館でゴッホの「ひまわり」を見て、
感動した一人です。
ゴッホの作品を一堂にかいした展覧会は
本当に魅力的ですね。
ご紹介、ありがとうございました^^
ゴッホの努力の軌跡(←深く感動しました!)がよくわかる展覧会だったと思いました。
短い創作活動の間に、どんどん上手くなっていく。
色彩が素晴らしかったです!
ゴッホの自画像が好きでで、画集などでいろいろ見ています。パリ時代自画像は、意志を持ったパリの芸術家 という自意識と落ち着きを感じる自画像もあります。今回展示されている自画像は、チラシの絵で見る限り、未だ眼に力がありますが少し違うようにですね。ゴッホ展が名古屋に来るのが楽しみです。
ただ純粋なゴッホのゴーギャン気持ちは共感します。自分白木の肘のない椅子なのに、「ゴーギャンの椅子」は立派な椅子ですし、自分を棄てていなくなったのにろうそくを置いてゴーギャンに対する尊敬の気持ちを表しているようです。本当はこの椅子に座って語らいを続けたかったのでしょうね。
ゴーギャンを慕って着いていった画家はたくさんいたようですが、ゴッホはゴーキャンと同等またそれ以上に才能があったので、それも無理だったのでしょうね。
ゴッホはパリに来て浮世絵や印象派の人を知り明るく色彩豊かな絵を描き始めましたね。
「花瓶のヤグルマギクとケシ」のような花の絵や「ヒバリの飛び立つ麦畑」のよう印象派的な絵を描いていますね。でも少し印象派の作品より印象が強烈な感じがします。ブログに書けているように印象派に物足りないものを感じていたのでしょうか。
絵画のことは全くわからないのですが
見るのが好きなので。。。
分かりやすい説明 ありがとうございます。
何回も読ませていただいて インプットさせていただきました。これで大丈夫です。????かな。
確か三~四年前にゴッホ展を見たことがあり
小さな小物を買いました。古靴が描いてあり
使っています。又楽しみ見てきます。
ゴッホの絵、ほんとうにお好きですか?私は多くの方がゴッホの絵がすきなのが不思議でなりません。特に晩年のゴッホの絵は不気味な渦巻きやうねるような曲線が不安を感じさせます。このような絵を描く人は精神的に正常とは思えないのです。糸杉や星月夜の絵を描いたからまもなくゴッホは自殺したと着ますが、私の感覚では自然のなりゆきのように思えてしまうのです。
今回のゴッホ展を実際に行かないでこのようなコメントを書いてすみません。でも、desireさんも、こんなふうに考えたことありませんか?
初めて訪問させていただきましたが、詳しくゴッホについて勉強されているのに敬服いたしました。非常に分かりやすい説明で、大変勉強になりました。また、時々訪問させてください。
ゴッホ展を再認識できる素晴らしい内容のブログに感服いたしました。
今回のゴッホ展は画家としてのゴッホの歩みや生涯が分かり易かったですね。
私は今まで見た中では「星降る夜」が好きです。
desire_san様のお気に入りはどの絵でしょうか?
ゴッホの生い立ちや年譜など、ゆっくり読みながら
作品を、見ていきたかったのですが・・作品を見る事だけで
精一杯だったのです。
作品の中では、「アルルの寝室」・「サン=レミ療養院の庭」
「アイリス」が印象に残っていたので、desireさんのブログに
作品と共に、詳しい説明があったので、詳しく知ることが
出来ました。
desireさん有難うございました。
また、ブログにお邪魔します。
文化芸術の色んな催しがあり羨ましくなります。
地方に居るとせいぜいNHKの日曜美術館程度で本物は見れません。源氏絵巻然りです。
貴方のブログを見て、瀬戸内寂聴さんの訳本10巻を12月に入って読み始めました。
老境の目には中々ですが、山行の合間に読んで今年中には読破出来そうです。
ゆりこさんがご指摘のように、「不気味な渦巻きやうねるような曲線」は健康な心の状態でないことを示していると思います。この種の作品では、「星月夜」「星降る夜」のような一部の優れた作品を除いて好きではありません。
どんな巨匠にも言えることですが、ゴッホの作品にも波があり、ゴッホを研究する上では価値があっても、美術作品としての価値には疑問を感ずるものもあります。
好き、嫌いだけから言えば、印象派時代の「はね橋」、「ラ・クローの収穫」や晩年の「サン=レミ療養院の庭」のような強烈な色彩の作品は限りなく好きですが、「 じゃがいもを食べる人々 」のような暗い絵やご指摘いただいた「不気味な渦巻きやうねるような曲線」しかないような作品は好きではありません。それから、これはまったく個人的嗜好の問題ですが、自画像も好きではありません。
ゴッホの精神病については実は、ちゃんとわかってなくて、美術館に行った後に知りました。背景を知ると絵の見かたが変わって面白いですね。
僕は、奇妙な絵も好きです。ゴッホ美術館にあるはずの絵は実は日本に来てたんですね~。いつまでやってるのかな?行ってみたいと思います。
ブログへのコメントありがとうございます。
ゴッホ没後120年ですか、長いですね
このような長い時間が経ったにも関わらず何かしら見る人の心に響くものを残せるなんて、どのような魂の込め方をしたのだろうかとよく考えていました。
今回の記事やHPの紹介をみて背景を知る事により少し納得できた気がします、きっかけをありがとうございました
こちらのブログを拝見いたしました。
とても詳しくわかり易く書かれていて、大変驚きました。
正直ちょっとワタシが自分のブログで
書いたゴッホ展の一言感想が恥ずかしいです。
アルル時代の作品が特に好きですね。「跳ね橋」などアルルで描かれた作品は明るく輝いた色彩特に好きです。
ゴッホの作品は、フランスのオルセー美術館に行ってパリ時代の印象派に影響された時代の絵も好きになりました。オランダからパリに出て 印象派の影響を受け、スーラやシスレー等の点描画法を学び、自画像にもその影響を見ることができます。アルル時代に色彩の輝きが一際惹かれ、補色も効果的に使ってます。黄色をや青が多くなりますね。ドラクロアやミレーの影響を受けて働く人を多く描いていたころの作品も好きです。
ゴッホの作品は、フランスのオルセー美術館に行ってパリ時代の印象派に影響された時代の絵も好きになりました。オランダからパリに出て 印象派の影響を受け、スーラやシスレー等の点描画法を学び、自画像にもその影響を見ることができます。アルル時代に色彩の輝きが一際惹かれ、補色も効果的に使ってます。黄色をや青が多くなりますね。ドラクロアやミレーの影響を受けて働く人を多く描いていたころの作品も好きです。
ゴッホはdesireさんとは少し違うかもしれませんが、心象を描いた作品に惹かれます「星月夜」なんか最高ですね。「夜のカフェテラス」も実物を見ましたが、最高に素敵でした。
最近の新説(噂)ゴッホの耳を切り落としたのはゴーギャンだったという
話し、個人的にはそれはないだろうと思っているのですが、ゴーギャンとの
関係性をミステリーと捉えるとそれもまた面白い説だなとも思っています。