奇想の浮世絵師・歌川國芳の世界をプリマ・バレリーナが舞う
バレエ「パゴダの王子」
Ballet : The Prince of thePagodas

『パゴダの王子』は、1957年英国ロイヤルバレエの振付家クランコが構想し、英国人作曲家ブリテンが音楽をつけた英国にゆかり深い作品でした。この作品に、新国立劇場バレエ団の芸術監督、デヴィット・ビントレーは江戸時代の奇想の画家・歌川國芳の大胆な構図の浮世絵にインスピレーションを得た演出を導入し、斬新な舞台を創造しました
Britten’s ballet score for The Prince of the Pagodas was commissioned in 1954 for a three-act ballet by John Cranko, mounted by the Sadler’s Wells Ballet in 1957. For the scenario, Cranko had conflated a number of fables: Beauty and the Beast, The Sleeping Beauty, Cinderella and King Lear. He apparently regarded the plot as a thread on which to hang a series of divertissements. Britten provided more music than Cranko found he required.
歌川國芳は、大魚や鯨と小さい身体で戦う武者といった大胆な構図、海や川の躍動感ある造形表現、骸骨や妖怪の異様な迫力ある表現の作品を残し、奇想の画家として一世を風靡しました。今回のビントレーの演出は、ヒロインが王国を出て、さまざまな練をくぐり抜ける姿を、生き物のようにうねる波、愛嬌のある妖怪、迫力ある稲妻などの間を美しく踊りながら駆け抜けていきます。この様子は国芳の妖怪や自然描写とここを闘いぬく小さな武者のイメージと重なり、舞台に新鮮なイメージが広がりました。設定は菊の国は開国前と後の日本という大胆な設定で、ローズ姫を「さくら姫」と変え、姫と王子の恋物語ではなく、2人を兄妹とし、パゴダ(仏塔)の国への旅を終えた兄妹が、邪悪な皇后により荒廃した祖国の再生を求めて戦う、家族愛や絆の物語という設定にしています。
最初に登場する皇帝や貴族たちは日本の公家のような衣装で現れ、この重たい衣装で貴族たちの重厚な群舞が繰り広げられます。外国の4人の王も重たい衣装で踊ります。この重たい雰囲気から一変、次に現れる悪のヒロイン皇后エチータ(湯川真美子)が軽やかな洋風衣装で登場し軽やかに舞います。そしてヒロインのさくら姫(小野絢子)はさらに軽やかなカスートの完全に西洋バレエのプリマの衣装で登場し、一層軽やかに舞います。周囲の公家のような衣装との違和感は、さくら姫の軽やかな舞を際立たせており、狙った演出効果と思われます。Rose travels to the magical Land of the Pagodas, where she encounters a prince who has been turned into a salamander. Repelled, she flees, returning home to find her father and the court abused and manipulated by Epine. The salamander prince comes to the rescue, transformed back into human shape by Rose’s compassion. They marry, to general rejoicing.
このさくら姫が王国を出て、国芳の宮本武蔵さながら、妖怪や自然描写を彷彿させるような生き物のようにうねる波、愛嬌のある妖怪、迫力ある雨や稲妻などの間を美しく踊りながら駆け抜けていきます。浮世絵では、愛嬌のある妖怪などの国芳ワールドに宮本武蔵描かれていましたが、舞台ではバレエ衣装の可愛く美しいさくら姫が、国芳ワールドの中を舞いながら走り抜けることになり、この違和感かさくら姫の美しい舞をより際立たせていました。クラシックバレエでは新鮮な演出だと思いました。The stage clears as the monkey courtiers vanish, giving way to airy spirits celebrating a new regime. Rose and the prince, now restored to human form, declare their commitment to each other in a pas de deux. The elements of evil still remain to be routed. Epine rallies the four kings, each of whom attacks the prince. He sees them off, along with their retinues. Epine surrenders her crown, which Rose restores to the emperor.
バリ島のガムラン音楽の影響を受けたというブリテンの音楽は部分ごとには起伏があり魅惑的な響きありましたが、クライマックスの盛り上がりに乏しく終わってみるとあまり印象に残らなかったのが少し残念でした。MacMillan created the role of Princess Rose on 19-year-old Darcey Bussell. He used her physical attributes and fresh, open personality to define Rose’s character. Unlike the flawed heroines in many of his ballets, Rose is forthright and compassionate, undamaged by her rite of passage from innocence to experience. The duplicitous side of female nature is revealed in Epine, who exploits her sexuality to gain power. The salamander prince is both man and beast, trapped in a disguise he longs to abandon. The scenario, however, never explains his back story. He turns into a standard Prince Charming for the ballet’s happy ending.
舞台冒頭の純日本的美しい舞台、歌川國芳的な妖怪の世界に舞う可憐なさくら姫が舞い、時折現れる美しい紫や白のバレエ衣装の群舞、異形なものがバレリーナの美しさを効果的に際立たせる美しい舞台でした。(2011.10.29 新国立劇場・オペラパレス)
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僕は小野絢子さんのファンです(実は彼女が中学生のときに勉強を教えていた)ので、彼女のステージは毎回見に行っております。
行くたびに新国立劇場のバレエの舞台芸術としての完成度の高さに感心させられますが、今回も感動しました。
自分のブログには書きませんでしたが、感想の一つとして、日本的なものを日本的なものとして表現するジャポニズムが、英国人であるがゆえに発揮されたなぁって思います。
能の舞いを取り入れたりしたようですが、日本人が監督だと能そのものは実現できてもバレエの中に能の要素を入れるなんてぇことはできないんじゃぁないかな。
この演目で新国立バレエ団が欧州公演をやるとよい、と僕は思いました。
歌川國芳ワールドをほとんど意識した事がなかったのですが、改めて國芳の世界を異文化ともなるバレエから確認させていただきました。
初日にご覧になられたご様子。同じ空間にいたんですね。
またいつか同じ空間にいるような気がいたします。よろしくお願いいたします。
ビントレー版の『パゴダの王子』は少し変わったバレエでしたね。
日本のバレエ団もどんどん新作に挑戦して、いろんな公演を観ることができるようになると楽しいですね。
ブログのご案内ありがとうございます。
『パゴダの王子』は新作だったので迷っている間にチケットを取り損なって、見るのを逃してしまいました。
歌川國芳の浮世絵にインスピレーションを得た演出というのは面白い演出のバレエだったようですね。
ミスマッチの違和感が、バレリーナの踊りの美しさかえって引き立てる演出とは新国立劇場がバレエの芸術監督に選んだデヴィット・ビントレーの力量発揮の舞台だったのでしょうね。
ブログを読ませていただき、見ればよかったと少し後悔しました。(笑)
先日はご訪問ありがとうございました。
desireさんの評を読んで、改めてまたこのバレエが観たくなりました。
重い衣装の舞とさくら姫の対比は確かに感じますね。これから向かう冒険への溌剌とした若さと自由さが表れているようにも思います。衣裳においては初めは和と洋が別物扱いとして出てくるので戸惑いましたが、アジアンテイストの物語なのでかえって拘らなくて正解だったのかもしれません。あくまでも架空の菊の国なのですしね。
期待してずっと待っていたこの創作バレエが成功に終わって本当に良かったと思います。
異質のものの組み合わせの違和感が一方の美しさを輝かせる手法は音楽の世界では、コラボレーションなどでよきく見られますね。
浮世絵とバレエの組み合わせは珍しいのではないでしょうか。
私は残念ながらこの舞台のことを知らず、見る機会を逃してしまいましたが、再演があるなら一度味わってみたいと思います。
最近はコラボレーションがはやりで、たとえば和洋の異種音楽のコラボレーションで斬新さをねねらう企画がよくあります。
しかし、これは本来の音楽追求ではなくパフォーマンスで終わってしまっては消えてしまいます。
デヴィット・ビントレーさんが、奇想の浮世絵師・歌川國芳の大胆な構図の浮世絵にインスピレーションを得てこの演出をかんがえたというのは興味風あります、単なるコラボレーンではなく、国芳の世界と自分の世界を融合させ新しい姿のバレエの誕生ができたのは、喜ばしぐ思います。
バレエはよくわかりませんが、このブログをよませていただき、映画「赤い靴」を思い出しました。
パコダも、行こうかな~と思いながら
結局、行かなかったんですけどその日に東京にいたのに行きませんでした。後から考えると残念です。
不思議な世界のようですね。どんな印象を受けましたか?
印象はそれそれのもので、私が自分の目で゜見ないとわかりませんよね。(笑)
ブログをざっと拝見させていただきました。海外旅行、オペラ、アート、とすごく充実した内容ですね。私はこういう世界が昔から大好きです。また時々立ち寄らせていただきます。 今後ともよろしくお願いします。
相変わらず好奇心旺盛で、いろいろなものを見に行っていますね。
私はバレエは古典の傑作と高い評価が決まっているものしかみません。一度以前新作バレエを見に行ったのですが、全然苦手な内容で全部見ないで帰ってきてしまいました。それ以来トラウマになって、新作バレエはすべてパスしています。
これでは、新しい感性は育ちませんね(笑)
「パゴダの王子」はこのブログを読んで、再演されたらぜひ見たいと思いました。新作バレエをどんどん見て、ブログで内容のポイント、魅力などを私に教えてくださいね。
いろいろ幅広く芸術を鑑賞していますね。
江戸時代の奇想の画家・歌川國芳の大胆な構図の浮世絵にインスピレーション感じてバレエを演出するということ自体デヴィット・ビントレーという人は天才ではないでしょうか。
ふつうと人は、歌川國芳の浮世絵なんかとクラシックバレエを結び付けようと考えもしませんよ!(笑)
それがいいとわかるあなたも、だんだんデヴィット・ビントレーの次元に近づいているのではありませんか。(笑)
浮世絵とバレエのコラボレーションですか。
面白そうですね。
最近は、バレエとフラメンコのコラボレーション、現代舞踏家とバレエのコラボレーションなどパフォーマンス的なものもありますが、ご紹介の舞台は、浮世絵の世界のインスピレーションでクラシックバレエの舞台を演出したという出で、興味深いと思いました。
小野絢子さんは私も大好きで大演しています。舞台を見るたびに表現力が豊かになって、最近はプリマの貫録もかんじます。期待の星ですね。
新国立バレエ団は、どんどんカバらしい若手が育って、主役はどんどん世代こうたいしています。よい意味で競争が激しく、魅力ある人材がどんどん育っていますね。
コールドバレエのレベルも高く、日本にこのような世界に誇れるバレエ団が育ったのはうれしいことです。

