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心に残った旅・芸術とアートとの出会い   

現代最高のローエングリン・フォークト、待望の舞台

ワーグナー「ローエングリン」
Richard Wagner"Lohengrin "

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 ワーグナーの傑作オペラ「ローエングリン」が、新国立劇場で待望の上演となりました。今回は現代最高のローエングリン歌手ともいわれているフォークトを迎えての上演で、すばらしい舞台でした。
 



Lohengrin is a romantic opera in three acts composed and written by Richard Wagner, first performed in 1850. The story of the eponymous character is taken from medieval German romance, notably the Parzival of Wolfram von Eschenbach and its sequel, Lohengrin, written by a different author, itself inspired by the epic of Garin le Loherain. It is part of the Knight of the Swan tradition.

「ローエングリン」はワーグナーのロマンティック・オペラの代表作で、バイエルン国王、ルードビッヒ2世を虜にした作品として有名です。劇中に出てくる「結婚行進曲」はたいていの結婚式で使われているほどホピュラーになっています。

a0113718_1851264.jpg  新国立劇場での「ローエングリン」の上演は初めてだと思っていましたが、1997年11月の新国立劇場開場記念公演で行われおりました。その時は、作曲者の孫でもあるヴォルフガング・ワーグナー(バイロイト祝祭劇場の当時の総監督)による新演出、ローエングリン:福井敬、エルザ:小濱妙美の合唱団も含めて二期会のメンバー中心の公演でした。作曲者ワーグナー本人の「自分の作品のうちでもっとも悲劇的なものだ」の言葉に従って、知的で正統的な解釈で重厚な舞台だったそうです。

 それから15年、今回の舞台は、バイロイト祝祭劇場で研鑽を積み、新国立劇場『さまよえるオランダ人』演出したシュテークマンの新演出、同じくバイロイトで活躍した美術・衣裳担当のロザリエとの共演です。現代最高のローエングリンともいわれるフォークトを中心に第一線で活躍するワーグナー歌手を揃え、ドイツオペラの第一人者として世界各地で高い評価を受けている指揮者ペーター・シュナイダーと強力な布陣でした。

King Henry the Fowler has arrived in Brabant where he has assembled the German tribes in order to expel the Hungarians from his dominions.Count Friedrich von Telramund, has accused the Duke's sister, Elsa, of murdering her brother. He calls upon the King to punish Elsa and to make him, Telramund, the new Duke of Brabant. The King calls for Elsa to answer Telramund's accusation. Elsa herself makes the call. A boat drawn by a swan appears on the river and in it stands a knight in shining armour. He disembarks, dismisses the swan, respectfully greets the king, and asks Elsa if she will have him as her champion. Elsa kneels in front of him and places her honour in his keeping. He asks but one thing in return for his service: she is never to ask him his name or where he has come from. Elsa agrees to this.

a0113718_18515125.jpg テルラムント伯爵に弟の殺害という無実の罪をきせられた王女エルザは、白鳥に乗って現れた騎士ローエングリンによって救われる。しかし、テルラムント伯爵の妻で魔女のオルトルートの企みに乗せられて、禁問の誓いを破り、騎士の身分を疑い名前と素性を聴いたため、その愛を失って白鳥の騎士は去ってしまうという愛と別れを描く神話的で幻想的な悲劇の物語です。

As Elsa and her attendants are about to enter the church, Ortrud appears, clad in magnificent attire, and challenges Elsa to tell who her husband is, and to explain why anyone should follow him. After that, King Henry enters with the Knight. Elsa tells both of them that Ortrud was interrupting the ceremony. Elsa and her new husband are ushered in with the well-known bridal chorus, and the couple express their love for each other. Ortrud's words, however, are impressed upon Elsa, and, despite his warning, she asks her husband the fatal question. Before the Knight can answer, Telramund and his four recruits rush into the room in order to attack him. The knight defeats and kills Telramund. Then, he sorrowfully turns to Elsa and asks her to follow him to the king, to whom he will now reveal the mystery.

a0113718_18532852.jpg モンサンヴォートの聖杯を護る騎士団からきた白鳥の騎士ローエングリンは、世俗の娘を愛しても相手に素性を知られれば別れなければならない。白鳥の騎士ローエングリンはエルザに恋をしたとは、愛の告白とともに禁問いの誓いを相手に求めます。ローエングリンのエルザへの禁問の誓いは、男女の間の支配と服従の関係を強いる者であり、当時の家長制の象徴と考えられます。エルザは現実社会のテルラムント伯爵を選ばず、白鳥の騎士との愛を夢見ていました。第1幕ではエルザは白鳥の騎士への愛の成就のために騎士へ服従を容認していました。しかし、本来自由な愛を望んでいたエルザは、オルトルートの「あの男は何者なのか」の問いに目覚め、ローエングリンとの対等の愛を求め、自分の意志で夫の名前と素性をたずねます。ローエングリンのすべてを知り、あなたと悩みや苦しみも共にしたいと切望します。

 このオペラでワーグナーは登場人物の特徴、立場にふさわしい音楽を与えています。主人公ローエングリンは世俗社会と距離を置く浮世離れした存在で、音楽も登場場面から高貴で美しくはありますが孤独感を背負っています。

The troops arrive equipped for war. Telramund's corpse is brought in, Elsa comes forward, then the Knight. He discloses his identity to the king and Elsa. He tells the story of the Holy Grail, on the Monsalvat, and reveals himself as Lohengrin, Knight of the Holy Grail and son of King Parsifal. The time for his return has arrived and he has only tarried to prove Elsa innocent.

a0113718_18595573.jpg第3幕の有名な「ローエングリンの名乗りの歌」「美しい白鳥よ」はテノールの美声に聞き惚れる美しいアリアですが、例えば、「さまよえるオランダ人」のゼンタのバラードや「トリスタンのイゾルデ」の愛の二重唱やイゾルデの愛と死のような地に着いた迫力はかんじられず、心に強烈に焼付くようなものではありませんでした。ローエングリンはこの世に住むものではなく、エルザとは住む世界が違う、所詮かなわぬ恋だったように感じられました。

それに対して、キリスト教支配が進む前の古代ゲルマンの神々を信仰する異教徒の象徴・オルトルートの復讐のアリアやエルザの愛するがゆえに揺れ動く心の苦悩のアリアは、世俗的感覚で分かり易い音楽を与えているように思いました。他の登場人物や合唱も含めた世俗の音楽に、ひとりローエングリンの浮世離れした高貴な音楽が立ち向かうという構図だったように感じました。

As he sadly bids farewell to his beloved bride, the swan reappears. Lohengrin prays that Elsa may recover her lost brother, and gives her his sword, horn and ring; which allows Elsa to remember him fully. Then, when Lohengrin tries to get in the boat, Ortrud appears. She tells Elsa that the swan who drove Lohengrin to the bank was actually Gottfried, Elsa's brother; and she put a curse on him by turning him into a swan. The people considered Ortrud guilty of witchcraft. Lohengrin prays to the swan, and the swan turns into another form, a young Gottfried. He elects him as the Duke of Brabant. Ortrud sinks as she sees him.

a0113718_190547.jpg ローエングリン役のクラウス・フロリアン・フォークトは、「現代最高のローエングリン」ともいわれるだけあって、まさに孤高の存在で魅力的でした。天から白鳥に乗って降りてくるローエングリンの最初の白鳥へのねぎらいの第一声から、男声とは思えないほど甘味で優しさに満ちています。気品のある白い衣装に身を包む騎士は、甘く透き通るような、明るく強く時には繊細な美しい声は声量豊かで、終始余裕がありました。他の人物が現実の世界に生きるのに対し、ローエングリンは聖杯の騎士という孤独な存在であることもクラウス・フロリアン・フォークトの群を抜いたような歌唱で説得力を持っていました。世俗の人間の心の脆さや揺れと、それを超越した世界に住む白鳥の騎士・ローエングリンの対比が音楽で見事に表現されていたように思いました。

a0113718_1913374.jpg エルザのメルベートは、王女の気品を保ちながら、禁問の誓いを求めるローエングリンと愛ゆえに相手のすべてを知りたいという女心の間で揺れる心を激しく繊細に表現していました。

 オルトルート役のスサネ・レースマークは、激動する声を多彩な表現を筑紫して表現し存在感がありました。オルトルートの復讐のアリアは古代ゲルマンの神々のキリスト教支配に対する怒りを内蔵し、弾きつけられました。

 その他のキャスト・貴族テルラムントを演じるゲルト・グロホフスキーやドイツ国王ハインリヒのギュンター・グロイスベックも存在感がありました。新国立劇場合唱団はいつもながら整然として厚みのある合唱で、ドイツオペラの第一人者・ペーター・シュナイダー指揮の演奏とともに、迫力ある壮大なドラマに仕上げていました。

a0113718_1925652.jpg シュテークマンの演出も斬新でした。光を使ったドラマティックなの効果から、宙から白鳥に乗って降りてくるローエングリン登場、フォークトの白鳥へのねぎらいの甘い歌声の第一声は、聖杯の騎士ローエングリンの登場にふさわしいものでした。第2幕、第3幕も抽象的な表現でしたが違和感なく、衝撃的で斬新さを感じました。
(2012.6.4 新国立劇場オペラパレス)









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by desire_san | 2012-06-18 19:21 | オペラ | Trackback(2) | Comments(18)
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Tracked from dezire_photo.. at 2012-06-17 07:25
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Tracked from dezire_photo.. at 2012-06-17 07:27
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Commented by メロディ at 2012-06-17 22:10 x
ブログに訪問していただきありがとうございました。こちらのブログは美しい写真と文章で公演日の感激が素直に思いだされとてもステキですね。
Commented by camelstraycat at 2012-06-17 23:52
こんにちは。
先程は拙ブログにコメントありがとうございました。
本当に至福のひと時でした。
日本でこの水準でこのお値段で・・全く有り難い事だなぁと思います。
フォークトのローエングリンで今季のシーズンが締めくくれた事はまさに望外の幸せでした。
Commented by Masayuki_Mori at 2012-06-18 07:23 x
こんにちは、ブログを読ませました。ローエングリンとエルザの愛しあう二人が禁問はを発しただけで簡単に分かれなけれならないのはら見ていて非常に違和感を感じました、この当あたりの時的背景を教えていただけると、もう少し理解しやすくなります。お時間名があるときにお願い致します
Commented by desire_san at 2012-06-18 07:28
この音楽の重要なポイントである正椎の騎士について書き加えてみたいと思います
Commented by seiunzi at 2012-06-18 10:29 x
当ブログに訪問いただきましてありがとうござます。
ローエングリン良かったですね。これだけの水準のものが日本で当たり前に観られるようになったことに感謝です。
Commented by らぴすらずり at 2012-06-18 20:56 x
ブログへのコメントありがとうございました。
初めて見たワーグナーのオペラが今回のローエングリンだったのは
とても幸せだったと思います。
素敵なブログで、これからも読ませていただきますね。
Commented at 2012-06-19 11:24 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 慶子_Kinoshita at 2012-06-19 13:59 x
ワーグナーの「ローエングリン」について整理されて描かれていて、一気に読ませていただきました。「ローエングリン」は、ワーグナーの妄想をオペラにしたものという説があります。現在の荒廃の源を告発する高潔の騎士・ローエングリンはワーグナー自身の姿に重ね合わせ、ワーグナーは自分こそが現代の荒廃の犠牲者だと思っていたようです。数々の愛のために死を選ぶオペラを作っていましたが、ワーグナー自身はこの「ローエングリン」を最大の悲劇と呼んでいます。生涯自己中心的な考え方を貫いたワーグナーらしいと思いました。
Commented by 山脇由美 at 2012-06-19 14:11 x
「ローエングリン」はワーグナーのオペラでも初回の上演が大成功しためずらしい作品のようです。声楽的には音域の対照的な配置が聴く人には分かり易いのだと思います。高貴な人物国王(バス)をはさんで、英雄、ヒロイン役(テノールとソプラノ)と悪人役(バリトンとメゾソプラノ)を配して、音楽は複雑ですが、物語や役柄は善玉、悪玉が明確で、安心して見られたのだと思います。
Commented by 智子 at 2012-06-19 15:02 x
こんにちは。ブログのご紹介ありがとうございました。
ワーグナーのオペラというと上演時間が長く内容も難しく、ヒキイが高いように思っていましたが、「ローエングリン」は白鳥の騎士がとうじょうしたり、おとぎ話のようなところがあり親しみやすそうですね。
Commented by 平石悟 at 2012-06-19 17:49 x
「ローエングリン」は高貴な白鳥の騎士の登場、伝統的なオペラに近い筋書きなど、ワーグナーのオペラの中では最も人気のあったおぺらのようですね。、バイエルン国王、ルードビッヒ2世は白鳥の騎士の衣装をまとって自分が夢の世界に浸るほど夢中になったオペラだそうですね。このころは、リスト、ニーチェなどもワーグナーを熱烈に支持していたようです。 リストやニーチェがワーグナーから離れていったのは、「「トリスタンとイゾルデ」 の異様な世界からでしょうか?
Commented at 2012-06-20 12:07
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by つるりんこ at 2012-06-20 12:36 x
「ローエングリン」は上演時間の長い作品ですが、その素晴らしい音楽は時間を忘れるほどでした。
Commented by 失われたアウラを求めて at 2012-06-21 00:14 x
こんばんは。鑑賞から2週間が過ぎて、かなり印象的な舞台でも、記憶から次第に薄れそうな昨今ですが、写真付きの美しいブログのおかげで、いろいろと思い起こすことができました。
Commented by ゆりこ at 2012-06-21 01:18 x
こんばんは。
ワーグナーの「ローエングリン」のご紹介ありがとうございます。
ワーグナーのオペラは、死をテーマとしたものが多く敬遠していましたが、この「ローエングリン」は、現代最高の歌手が出演しているようで、行けばよかったと少し後悔しました。(笑)
Commented by rollingwest at 2012-06-23 20:58
ワーグナーというと、メンデルスゾーンと並んで 2大結婚式定番クラシック曲しかしらないRWですが、数々の有名な曲をつくりあげた方なのでしょうね。でも結構聴いたことのある曲が多いのかもしれません。
Commented by 5-saturn at 2012-06-25 10:19
ブログを訪問していただきありがとうございます。昨年のバイロイト音楽祭でフォークトの「ローエングリーン」をBSで見ましたが今回新国立での「ローエングリーン」のほうがよかった。ライブの臨場感もさることながらシュテークマンの演出はとても好感が持てました。バイロイト級ヘルデン歌手の得意演目を東京で堪能できるなんて夢のようです。
Commented by desire_san at 2012-06-25 23:51
コメントありがとうございます。
今回の舞台は、バイロイト級ヘルデン歌手、クラウス・フロリアン・フォークトの出演の存在なくして、この舞台はこれだけ成功しなかったので気いでしょうか。他の歌手も合唱も現世界の存在に対して、フォークトのローエングリーンだけが聖杯の騎士という別世界の存在という対立構図で圧倒的な存在感を示す歌唱力は巣後と思いました。新国立劇場の公演は海外から強力な歌手を呼んでいますが、これだけの存在感があったのは、、ロッシーニの「チェネレントラ」のシラグーザ以来だったように思います。