ブログトップ

dezire_photo & art

desireart.exblog.jp

心に残った旅・芸術とアートとの出会い   

イタリアオペラを代表する快活なオペラ

ロッシーニ『セビリアの理髪師』

 Rossini  "barber of Sevilla"


a0113718_17522243.jpg



 「セビリアの理髪師」はロッシーニが作曲したいかにもイタリア的な明るく生き生きとした快活なオペラだと思います。今まで観た「セビリアの理髪師」では、時代設定は18世紀で、ヒロインのロジーナは高貴で気品のある令嬢という設定で、有名な「今の歌号は」など気品の中に自立心の強い気高さを感ずる私のもってとも好きなアリアでした。しかし、今回のヨーゼフ・E.ケップリンガーの演出はかなり大胆なもので、今まで全く違う「セビリアの理髪師」を鑑賞することができました。







 



"The barber of Sevilla" thinks that he is the brightly lively cheerful Italy opera Rossini to want to write music.In the "barber of Sevilla" who saw until now, a time setup was the 18th century, and the heroine's Rosinawas noble, was a setup called a graceful daughter, and was favorite Alia as I who feel the strong nobleness of self-reliance into dignity.However, the production of this Joseph and E. Koepp Lynne Ge was quite bold, and was able to appreciate the "barber of Sevilla" who is completely different until now.

a0113718_17184643.jpg 今回の演出では、時代設定を1960年のフランコ独裁政権下のセリビアとし、その時代の建物や室内を再現したというセットの室内に机、椅子、壁の額、布団、枕、新聞、雑誌、食器、肉、書類など夥しい数の小道具が置かれていました。壁や床は赤、青・黄色の原色の鮮やかな色で塗られ、何か頽廃的な雰囲気を感じさせました。

 ストーリーは医師の館に軟禁状態の美しい娘・ロジーナを美男の伯爵が理髪師、フィガロの助けを借りて口説き、救い出して結婚するというロッシーニのオペラの原作通り進行していきますが、医師の館の周辺には娼婦や貧しい労働者、金持ちにたかる子供たちなどが行き交い、各シーンで 札束が飛び交います。バルトロの家のドタバタの騒動とは別に、フランコ政権時代の町の人々の日常生活を表現しているようです。ヒロインのロジーナも高貴な令嬢というより、派手な娼婦を連想させるようの衣装で登場します。軍隊の医師に変装して入ってきた初めて会った伯爵とソファーに横たわって抱き合ったりする行動も娼婦を連想させます。

a0113718_17164479.jpg 伯爵はロジーナに近づくため酔っぱらった軍隊の医師に変装して、バルトロの館に泊まろうとしてバルトロともめると、大勢の軍隊が入ってきます。隊長は頭が坊主で旧日本軍の将校を連想させます。これも独裁政権下の治安当局の実態と重ねているのでしょうが、伯爵が隊長に身分を明かすとも隊長は敬礼し、軍隊の隊員はバラバラになりバルトロの館を荒らします。物語の進行ともに鎧戸が明け離れ、独裁者の写真が外され、無秩序に主人公たちの動きとは無関係に一般市民・職人・子供たち・娼婦などが入代わる代わる登場してきます。主人公たちがアリア、重唱を歌っている最中に、建物の外の街並みと建物をカットしたような家の中の部屋の様子を見せながら回り舞台が回転します。

 ケップリンガーの演出は、多分ロジーナと伯爵の恋物語と併行して、軍事独裁政権下の金銭にまみれた社会の頽廃と、そのような独裁政治の崩壊を、独裁下の富裕層・バルトロの館が荒らされていく象徴として描いていたのだと思います。

a0113718_17202280.jpg ただロッシーニのオペラは深い意味のないドタバタ喜劇的なストーリーの中で純粋にアリアの美しさ、音楽の楽しさを味わうもので、本来政治色がなく、政治批判精神的精神がないものと理解していました。今回の演出はロッシーニの典型的なイタリアオペラ的なアリア・重唱も含む音楽と、フランコ政権時代のファシズム、資本主義、不道徳な頽廃の批判と崩壊が舞台の上で同時並行的に進んでいたように感じました。このような政治色彩を絡めた演出は賛否両論がわかれるところだと思います。私も1度くらいはこのような演出の「セビリアの理髪師」を観てもよいかとは思いましたが、次に観るときはオリジナルのロッシーニの典型的イタリアオペラのイメージの演出の方が良いと思いました。

 今回の配役では、フィガロ役のダイポール・フェニスが初めて登場したとき歌う「町の何でも屋、道を開けろ」のアリアでは、楽天的な性格と理髪師の忙しい生活を声量豊かな躍動感のある歌唱で、謳いあげました。それ以降も終始舞台を引っ張っていいて主役はフィガロという印象の舞台になっていました。

a0113718_17213538.jpg ロジーナ役のロクサーナ・コンスタンティネスクは、派手な衣装のせいかもしれませんが、籠の中の鳥の令嬢という感じではなく自立心が強く自由奔放な現代娘のように見えました。有名な「今の歌声は」のアリアなどでは、ロクサーナ・コンスタンティネスクは広い音域と豊かな声量は充分アリアの魅力を表現していました。

 アルマヴィーヴァ伯爵役のルシアノ・ポテリョは、当日不調だったのか声量に乏しく、アルマヴィーヴァ伯爵の愛を告げるアリアは淡白な感じで、ロジーナやフィガロとの重唱もロジーナやフィガロが主導権を握っているように聴こえました。アルマヴィーヴァ伯爵役は「セビリアの理髪師」の続編であるモーツアルトの「フィガロの結婚」で浮気男に転ずる、家柄の良い美男子だが本来軽薄な男なので、この程度の存在感でもよいのかも知れませんが、機転の利く自立心の強いロジーナが恋をする相手としては少し物足りなかったように思いました。

a0113718_17224683.jpg バルトロのブルーノ・プラティコは、声量豊かな歌で表現力のある魅力あるバスを聞かせてくれました。ドン・バジリオの妻屋秀和は、外国人キャストに負けない声量で頑張っていましたが、役作りとしてはバジリオの個性があまり感じられず存在感に乏しい印象を受けました。

 カルロ・モンタナーノ指揮の東京フィルの演奏は、ロッシーニの典型的なイタリアオペラ的音楽と、フランコ政権時代の頽廃と崩壊を絡めた演出の狭間で、無難な安全運転のような演奏をしていたように感じられました。もっと血がたぎって高揚するような演奏をした方がこの演出にはあっていたような気もしますが、それも演出と同様賛否両論でしょうか。

 フィナーレのロジーナとアルマヴィーヴァ伯爵が合唱を絡めながら歌いつなぐ「この素晴らしく幸せな結びつきを」は躍動感があり、最後は全員の合唱で終わり、人生楽しまなければという、まさにイタリアオペラらしい醍醐味を感じました。
(2012.12.1 新国立劇場 オペラパレス)














にほんブログ村 クラシックブログ オペラへ
にほんブログ村

[PR]
by desire_san | 2012-12-09 17:24 | オペラ | Trackback(1) | Comments(18)
トラックバックURL : https://desireart.exblog.jp/tb/16946946
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from dezire_photo.. at 2012-12-11 07:14
タイトル : 超絶技巧のアリアを楽しむロッシーニのオペラ
ロッシーニ「チェネレントラ」  一口に言ってオペラといっても理念・哲学・超自然的力を歌い上げるドイツオペラと、生身の人間の赤裸々な姿を歌い上げるイタリアオペラとでは、同じジャンルの音楽として同一に扱えないほど違います。同じイタリアオペラでも、ヴェルディやプッチーニのように壮大な人間劇と登場人物の心の葛藤を歌い上げています。それがイタリアオペラだと思っていましたが、ロッシーニのオペラは全く違うようです。  今回の合唱指揮者・三澤洋史さんの解説によると、ロッシーニのオペラは、ヴェルディのオ...... more
Commented by Ruiese at 2012-12-11 07:10 x
こんにちは。
お書きになっているように、今回の「セビリアの理髪師」は少し従来とは違った演出でしたね。
ロマンチックな恋物語を期待していた私としては、ちょっと予想外でした。
たまにはこんな舞台もいいかな?とも思いましたが、dezireさんが言われているように、次回は古典的な演出の舞台をみたいという気持ちです。
Commented by charis at 2012-12-11 07:32 x
詳細な観賞記、興味深く読ませていただきました。あらためて思いましたが、細部まで演出が凝っていますね。カラフルで内部が一度に見える建物も、回転舞台にぴったりで、上手に使っていたと思います。
Commented by Eno at 2012-12-11 16:34 x
あのプロダクションは大好きです。世界に通じるレベルだと思いますが、いかがでしょう。
Commented by desire_san at 2012-12-11 18:36
Ruieseさん、 charis さん、Eno さん、コメントいただきありがとうございます。
新国立劇場のオペラは、好きかどうかはともかく、世界でも一流の演出家が演出し、歌手も世界の一流歌劇場で歌っているその分野を得意とする歌手が出演しています。合唱団のレベルは世界に通ずるもので、オーケストラもその演目を得意とする人を読んでいるようでレベルの高い演奏になってきました。Eno さんが言われるように世界に通じるレベルだと思います。
Commented by camelstraycat at 2012-12-11 20:59
こんにちは。
拙ブログにお越しいただきありがとうございました。
演出に関しては、私はdesire_sanさまがお書きになっているほどには読み取れませんでしたが、またそれはそれで楽しむことのできるよくできたものだったと思います。随所にいろんな工夫やこだわりがありましたし。新国立は、納得できる水準のものを、手ごろな価格で見せてくれるのがありがたいですね。
Commented by desire_san at 2012-12-12 03:38
camelstraycatさん  コメントありがとうございます。
新国立劇場のオペラは、ご指摘のように高水準のオペラを比較的手ごろな価格で見られるので、私も愛好者になっています。
Commented by Haruna_Takahash at 2012-12-12 17:10 x
「セビリアの理髪師」は、パリのオペラ座とミラノスカラ座、ウイーンのオペラ座で見ました。ミラノスカラ座はオーソドックスな古典的演出でしたが、パリのオペラ座は今回の新国立劇場の演出のように体制批判的色彩を絡めた演出でした。ウイーンで見たものは完全に現代演出で、これがロッシーニの作品?と疑うような演出でした。私はdezireさんと同じように古典的演出が好きですが、最近の流れは演出家の個性を意識的に強く表現する傾向にあるようです。観客がそれを求めているのでしょうか。
Commented by k-mia-f at 2012-12-12 17:13
こんにちは。
先日はブログにコメントを頂き有難うございました。
楽しみにしていた公演に行けなくなり、演出desire_san 様の感想を読ませて頂き「鑑賞した気分」を味わうことができました。個人的には政治色や、時代・場所の設定を変えることに不満等はありませんが、娼婦風のロジーナはピンときません。バルトロ邸が娼館だったとしても、ロジーナだけは大切に育てられた令嬢でいてほしい気がします。
最近は時代設定を変えての演出が主流なんでしょうか?オペラ鑑賞本数は多くありませんが、前回の鑑賞が新国立劇場の『コジ・ファン・トゥッテ』で、キャンプ場のセットと終わり方に驚いたので。

『ドン・ジョバンニ』の感想も興味深く読ませて頂きました。迷いましたが諸事情で買わなかった公演なので、両公演を鑑賞できたdesire_san 様が羨ましいです。

新国立劇場のオペラは私のような地方からの遠征組には大助かりです。交通費を考えると海外の出張オペラには手が出ません。新国立劇場の価格でしたら何とか(それでもS席は無理ですが)
それでは、長々とお邪魔しましたm(__)m
Commented by Mantrpiese at 2012-12-12 22:28 x
セビリアは、8世紀よりイスラム勢力の支配下りあり、後にセビーリャ王国が栄えた街で、19世紀のスペイン立憲革命でセビリアは自由主義者の拠点となりました。セビリアの理髪師は、フランスの劇作家カロン・ド・ボーマルシェの書いた風刺的な戯曲により、舞台をそのセビリアにおいたのは、劇作家カロン・ド・ボーマルシェの意図があると思います。ロッシーニ自身は政治風刺的な意図はなかったのかもしれませんが、演出家は戯曲には政治風刺をこめたのかもしれませんね。
Commented by desire_san at 2012-12-14 11:26
akahashiさん、Mantrpieseさん
貴重な情報ありがとうございました。大変勉強になりました。
Commented by desire_san at 2012-12-14 11:31
k-mia-f さん  ご丁寧なコメントをいただきありがとうございました。
、ロジーナだけは大切に育てられた令嬢でいてほしいというご意見、同感です。
いろいろ書きましたが、新国立劇場のオペラは手ごろな価格で海外の出張オペラにとそんなに見劣りしない舞台が鑑賞できるので、私も愛好しています。
Commented by flbouquet at 2012-12-17 01:10
このたびはブログへの書き込み頂き有り難うございました。
斬新な演出と公演の様子が伝わってくる気がします。
美術、音楽、自然あふれる素敵なブログですね!
また伺わせて頂きたいです。
Commented by desire_san at 2012-12-17 06:54
flbouquetさん コメントいただきありがとうございます。
素敵なブログの言葉うれしいです。
よろしかったらまた遊びに来てください、
Commented by margaritq at 2012-12-22 07:12 x
こんにちは。「セリビアの理髪師」の詳しい鑑賞記録で楽しく読ませていただきました。私もこの舞台は見ました。フィガロとロジーナがひっぱっていたというのは同感。演出はいろいろな味を入れすぎて美しい恋物語の要素がかすんでしまったように思いました。
Commented by Gen-tatou at 2012-12-22 07:16 x
鑑賞記を興味深く読ませていただきました。少し変わった演出ですね。「セビリアの理髪師」の演出・美術では、1981年のスカラ座初来日の折りの演目の一つにもなったジャン=ピエール・ポネルの演出・美術が高く評価されているのはご存知と思います。回り舞台にフィガロの床屋とセビリアの広場とバルトロの屋敷の中とを、三つの場面に仕切ったいわゆる三杯飾りではなく、立体的につなげて飾って、それを臨機応変に自由に使い回し、ユニークな照明も手伝って、その場その場にふさわしく、スムーズに流れてウイットにも富んだみごとな出来栄えとなっていました。
Commented by むなかた at 2012-12-22 07:21 x
演出のことが話題となってますが、わたしが感動したのは、1980年に来日したベルリン国立歌劇場の「セビリアの理髪師」の舞台でした。
演出は女流演出家のルート・ベルクハウスで、とかくオペラの伝統主義的なあり方に真っ向から対決した挑発的な演出で物議を醸したベルクハウスの生前の仕事のなかで、最も理屈抜きで楽しめたものの一といえる舞台でした。
Commented by criem-stue at 2012-12-22 07:25 x
私のお気に入りの「セビリアの理髪師」は1989年2月、メトロポリタン歌劇場の公演をライヴ収録映像です。ある人曰く「おしなべてメトの演出は何の工夫も無い保守的なものが多い」のだそうでこのディスクも何の工夫も無い物の一つなのだろうと思います。セビリア・・・のように楽しいオペラではそれほど演出に拘らなくても十分に楽しさは伝わって来ました。私は時代背景を無視した演出は好きではありません。
Commented by ま~ちゃん at 2012-12-22 07:28 x
楽しく読ませていただきました。オペラ鑑賞、楽しく贅沢な時間ですね。セビリアの理髪師では序曲が、軽快で楽しい音楽で好きです。