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芸術と自然の美を巡る旅  

ロマンチック・バレエの最高傑作

バレエ「ジゼル」
Ballet "Gisele"
ロマンチック・バレエの最高傑作_a0113718_13491852.jpg


 「ジゼル」は、ハインリッヒ・ハイネが紹介したオーストリアの民話をヒントにフランスの詩人、ゴーチェが体本を描きおろし、アダンが作曲したロマン主義時代に制作されたロマンチック・バレエで、現在でも制作当時のまま上演されています。第1幕の昼間の森の場面の明るい美しさと第2幕の夜の場面の幻想的美しさと対照が見事です。



Giselle is a ballet in two acts with a libretto by Jules-Henri Vernoy de Saint-Georges and Théophile Gautier, music by Adolphe. Adam. The role of Giselle is the most famous Romantic ballet role and was created and first performed by the great Italian ballerina, Carlotta Grisi in June 1841.

第1幕
ロマンチック・バレエの最高傑作_a0113718_1351351.jpg 踊りの好きな明るい笑顔の村娘ジゼルに、アルブレヒトは貴族の身分を隠しロイス名乗って近づき、ふたりは想いを通わせるようになります。そんなある時、狩りに来ていたアルブレヒトの婚約者、バチルド姫の一行が村に立ち寄ります。バチルド姫は、初めて会った身分の低い村娘ジゼルに交感と親しみを感じ、首飾りを贈ります。その時、ハンスがアルブレヒトが貴族の衣装や剣を隠していた小屋から見つけた剣を持ち出し、アルブレヒトの身分を暴きます。アルブレヒトは混乱するジゼルをなだめようとしますが、バチルド姫と公爵が現れると、アルブレヒトはバチルドの手にキスをします。それを見たジゼルは狂乱状態に陥り、心臓が弱いため、そのショックのため母の腕の中で息絶えます。

第2幕
ロマンチック・バレエの最高傑作_a0113718_13533381.jpg森の沼のほとりの墓場。精霊・ウィリたちが集まる場所で、ジゼルはウィリの女王ミルタにウィリの仲間として迎えられます。ジゼルの墓に許しを請いにやってきたハンスは、ウィリたちに死ぬまで踊らされ、ミルタにより死の沼に突き落されます。
ジゼルを失った悲しみと悔恨にくれるアルブレヒトが彼女の墓を訪れ、ウィリとなったジゼルに再会します。ミルタはアルブレヒトを捕らえ死ぬまで踊らせようとします。アルブレヒトが踊り続け力尽きようとするとき、ジゼルはミルタにアルブレヒトの命を助けてくれと頼みます。やがて朝日が射しはじめ、ウィリたちは去って行きます。ジゼルは朝の光を浴びながら、アルブレヒトに別れをつげて消えていきます。

The character is a sweet, innocent, beautiful young peasant girl with a great love for dancing, but is forbidden to dance by her mother in fear of Giselle's health for the girl has a weak heart. Giselle finds herself caught up in a love rectangle, which takes a tragic turn after she discovers that her lover 'Loys' is really Duke Albrecht in disguise and is engaged to another woman. Devastated, she goes mad and dies of a broken heart. But even after her death, Giselle's love is undiminished. Summoned from her grave to join the Wilis, Giselle refuses to take revenge on Albrecht and instead, protects him, defending him until dawn and saving his life. Giselle's love has transcended death.

ロマンチック・バレエの最高傑作_a0113718_1453878.jpg 前回「ジゼル」を見たのは、2年以上前にアリーナ・コジョカルが客演した東京バレエ団の「ジゼル」でした。「ジゼル」はコジョカルの評価を決定づけ、この舞台の評価により英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルに昇進したと言われるほど、彼女の得意とする演目と言われています。第1幕では、明るい純真な少女、アルブレヒトに出会い満ち溢れる喜び、アルブレヒトの正体を知った後の狂気と鬼気迫の場面、魂を失った空虚さを見事にバレエで費用減していました。第2幕でウィリとなった彼女の踊りはこの世のものとは思えない美しさでした。

 今回のジゼルは長田佳世さん、最初に舞台に登場したジゼルは、清楚で可愛らしくて純粋で内気でおとなしい性格を上手に表現して、すこし愛嬌はあり魅力的でした。アルベルトと目が合ったときの恥らは初々しさがよく出ていました。アルベルトと踊るときは輝かしいほど美しく感じました。狂乱の場面では、それまで清楚なイメージのジゼルから豹変し、「狂気」と空虚感がみなぎっていました。人間の理性の感情が失われていく悲しみが伝わってきました。第2幕のウィリでは透明感のある踊りで、アルベルトを守る芯の強さも上手に演じていました。

ロマンチック・バレエの最高傑作_a0113718_14534870.jpg アルベルト役の菅野英男さんは、ほんの気まぐれでジゼルを遊びのつもりで口説いた高貴な貴族が次第にジゼルを本気で愛するようになったという設定をうまく表現していたように思いました。ジゼルが正気を失い死に至ったことに自責の念をいだき、悲嘆にくれる第1幕のラストや第2幕でもジゼルを死に追いやったことを深く後悔しているのを感じさせました。ジゼルを貴族としての気品をもって丁寧にサポートしているのは良かったと思いました。

ロマンチック・バレエの最高傑作_a0113718_14543523.jpg ハンス役のマレイトン・トレウバエフさんは、踊りも美しく存在感もりました。アルブレヒトに対する嫉妬心とむき出しの気合いは共感しました。「ジゼル」を見るといつもなぜハンスだけが呪い殺されたのかと思ってしまうのですが、その理由の一つはハンス役に魅力ある踊り手を当てているからかもしれません。

 ミルタ役の本島和美さんは、威厳がありかつ軽やかで空中を漂っているようなウィリの女王雰囲気をよく出していて、腕の動きなどに優しさとともに冷気を感じ、ミルタには適役だったと思います。

 村娘たちの踊りなど他の配役のダンサーたちのレベルも高く、特に第2幕のウィリたちの群舞の美しさは、新国立劇場バレエ団のレベルの高さを感じさせ、この世のものとは思えない美の世界を楽しむことができました。
(2013.2.24 新国立劇場、オペラパレス)





















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by desire_san | 2013-02-26 00:30 | バレエ・演劇 | Comments(11)
Commented by tomokovsky00 at 2013-02-26 17:26
こんにちは。私も長田さんと菅野さんのペアを見たかったのですが、2回見に行けるだけの財力がなく、ゲスト組を取ってしまいました~。こちらでわかりやすいレポを読ませていただきました♪
Commented by 踊るひつじ at 2013-02-26 18:25 x
キャストは違えど、私も新国立劇場で「ジゼル」を鑑賞し、こんなに素晴らしいバレエだったのかと感動した所です。2幕の美しさ。もう言葉が出ません。ウィリたちの、まったく体重を感じさせない動き!もはや人ではない・・・それを実感させられます。そしてステップの速さ!恥ずかしながら40代近くなってから始めた社会人のためのバレエ教室、とにかく足が重くあがらないし、腹筋背筋が足りなくて立ち姿もままなりません。だから体重を感じないというのがいかにすごいことか、驚きの気持ちで見ていました。後方の席でしたが、すっかり圧倒されました。ジゼル、ぜひまた観たいバレエです。
Commented by desire_san at 2013-02-27 08:37
tomokovsky0さん、コメントありがとうございます。
長田佳世さんの「ジゼル」も良かったですが、あえて言えば新国立劇場の他のダンサーもレベルが高いため、アリーナ・コジョカルの舞台のように、主役のジゼルがの魅力が際立って輝いているという舞台でなかったところが、あえて言えばちょっと物足りなかったと思いました。そういう意味では、tomokovsky00 さんがご覧になったダリア・クリメントヴァの舞台を見たかったです。贅沢だと言われそうですが。
Commented by desire_san at 2013-02-27 08:40
踊るひつじ さん、コメントありがとうございます。
ご自身もバレエをなされているということですが、「ジゼル」を踊ることは、バレエをされている方の、夢というか目標のようなものらしいですね。
Commented by windtalker2008 at 2013-02-28 19:37
初めまして。ご訪問とコメントをありがとうございました。^^
とても細やかに全体を鑑賞していらして、ていねいに記された舞台の様子に、いろいろな情景が今一度おもいうかびました。
今回は、クリメントヴァ・ムンタギロフ組を観たいと思っての「ジゼル」でしたので、作品はもちろんですが、おふたりのパートナーシップに特に注目していました。「舞台の上の夫婦」という言葉が本当にあるそうですが、うなずけるような呼吸のあったPDDでした。
ダンサーのお互いの存在が触発しあう化学反応の熱を客席から感じ取れるのは、とても幸福な経験です。
柔らかさ、優しさ、おだやかさ、活き活きとした一幕。
ひととしての悲しみを知り尽くしてしまったそのあとの魂の行方を思う二幕。
観終わったあとの余韻が感じられたとても素敵な舞台だったと、改めておもいました。
Commented by きんちゃん at 2013-02-28 22:05 x
こんばんは。
私も、新国組も見たかったです。
dezire様のレポで情景浮かびました。
ありがとうございました!
Commented by desire_san at 2013-03-01 09:12
windtalker2008 さん、コメントありがとうございました。
バレエは同じ振り付けでも、踊り手によりかなり舞台から受ける印象が変わるのが面白いですね。
そこが、芸術なんでしょうね。
Commented by desire_san at 2013-03-01 09:18
きんちゃんさん、コメントありがとうございます。
ダンサーの力量もありますが、私もどちらかというと外国人ダンサーの方を好んでみます。
バレエは一時の夢の世界で、ヨーロッパの設定なので、外国人が躍っている方が雰囲気が夢の世界に浸れますね。
Commented by 風水茶房 瑞光 at 2013-03-31 12:51 x
こんにちは

長田さんは米沢さんとともに今伸びておりますね。ダイナミックダンスの時にすごく感じました。
ところでジゼルは指揮者が音楽をすごく知っていて、踊りに合わせていた部分が大成功でしょう。
個人的にはゲスト組は、昨年のコジョカルガラでのイメージよりは若干落ちたかな、と言う印象でした。かなり良かったですが、ジゼルは今までに良い舞台を見過ぎているので。。。
現役ではコジョカル、ボリショイのルンキナが好みです。彼女たちのジゼルみてくださいませ。私もジゼルは大好きな演目です。
Commented by desire_san at 2013-03-31 14:39
風水茶房 瑞光さん、コメントありがとうございます。
震災と原発事故以来、新国立劇劇場に世界でトップクラスのゲストダンサーが来なくなってしまいました。海外からの出張公演と異なり、日本でかなりの時間一緒に練習しなければならないので、身体が命のバレエダンサーには万一の不安があるようです。ここでも福島の原発事故が影を落としているようです。
秀でたゲストダンサーが出演していないので、私も若手で成長著しい長田さんは米沢さんのような日本のダンサーのバレエを楽しみにさせていただいています。
Commented by Ich at 2013-04-03 21:45 x
もう30年も前になりますか・・・、記憶も薄れてきましたが森下洋子さんとヌレエフとの共演でこのジゼルを鑑賞しましたことがこのブログを拝見してまたまた甦ってきました(^-^)
森下洋子さんが蝶のような舞で素晴らしいのなんの・・・

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