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芸術と自然の美を巡る旅  

人間の愚かさをも包み込む1300年を超えた白鳳の微笑み

興福寺「仏頭」
Kofukuji temple "Head of Buddha"

人間の愚かさをも包み込む1300年を超えた白鳳の微笑み_a0113718_8332346.jpg


 奈良・興福寺の創建1300年を記念して「国宝 興福寺仏頭展」が東京上野の東京藝大美術館で開催されています。「銅造仏頭」は仏像の頭だけが残った破損仏でありながら、優しさの中に威厳のあり「白鳳の貴公子」と呼ばれる興福寺の至宝です。併せて浮彫の最高傑作も国宝「板彫十二神将像」、「仏頭」の守護神として鎌倉時代に造られた国宝「木造十二神将立像」が展示されていました。



At Tokyo National University of Fine Arts Museum in Tokyo Ueno, "National Treasure Kofukuji Buddha Exhibition" is being held."Buddha" is the principal image of Togane temple former Kofukuji. "Buddha" was loved as a young nobleman of Hakuho era."Junijin future image engraving plate" is a masterpiece one of the best-relief image of Japan.We were able to see national treasure of the Kamakura period, which is enshrined in Togane temple also "wooden statue Junijin future".

人間の愚かさをも包み込む1300年を超えた白鳳の微笑み_a0113718_833483.jpg  奈良の興福寺は、大河ドラマ「平清盛」の終わりの部分でも描かれていたように、平家末期に、平家に対する反乱鎮圧のため赴いた戦を知らない清盛の五男、1180年平重衡が南都を焼き尽くし、興福寺も灰塵と化しました

 その後、興福寺は東金堂を再建し、その本尊として、当時力を失っていた山田らから本尊を奪い取り、東金堂の本尊としました。しかし、1411年再び火災となり、胴身を失い、本尊は頭だけが火災で焼け落ちた瓦礫の下に傷だらけの姿で転げ落ちていました。これが今回展示されている「興福寺仏頭」です。

 「興福寺仏頭」は、飛鳥時代の二次元的空間に拘束された飛鳥時代の仏像から、天平時代の三次元的造形空間に移行する移行期である白鳳時代に造られたものと推定されています。全身が残っていれば、この時代薬師寺の薬師三尊や聖観音など白鳳時代の傑作に匹敵する仏像だったかもしれません。

人間の愚かさをも包み込む1300年を超えた白鳳の微笑み_a0113718_834819.jpg 「興福寺仏頭」は山田寺の本尊として、平重衡の愚かしい南都の焼き討ちを眼にし、その後興福寺東金堂の本尊として東金堂の火災で胴体を失って、がれきの下で人間の愚かしさを見つめていたことでしょう。「仏頭」は頭の後ろ半分は破損し、右の耳は下半分が破損し、顔には焼け落ちた瓦礫で傷つけられた傷が生々しく残っています。
しかし、「仏頭」は童子の面影もあるはつらつとした若々しさと初々しい顔で、凛として見る人々に対峙し、その運命のすべてを受け入れ、優しい表情で人々の心を包み込んでいるのです。この神秘的ともいうる表情は、すべての人を受け入れ慈悲の心を我々に伝えているかのようです。







人間の愚かさをも包み込む1300年を超えた白鳳の微笑み_a0113718_8343792.jpg 「板彫十二神将像」は、平安時代の作で、東金堂の薬師如来像の台座の周囲荘厳な姿で配されていたと伝えられています。数センチの厚さのヒノキの板を彫りですが、それぞれに個性があり、表情豊かで躍動感と奥行きを感ずる表現で立体感を感じさせ、たくましい神将としての存在感があります。

 「仏頭」の前に展示されていた東金堂の国宝「木造十二神将立像」は鎌倉時代の運慶に通ずる慶派の作品で、当時まで本尊であった「仏頭」の周りに配されるのは、実に約600年ぶりの再会だそうです。









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by desire_san | 2013-11-10 08:34 | 日本の美術・文化遺産 | Comments(28)
Commented by trintrin at 2013-11-10 10:28
おはようございます
仏頭展見ごたえのあるものでした
北円堂の運慶作品も
ぜひとも江戸におたずねいただけたらと願います
Commented by tabinotochu at 2013-11-10 16:26
旅の途中です。拙ブログを訪問いただき、ありがとうございました。興福寺仏頭展にも行かれたのですね。いつもながら素晴らしい写真に感服です。特に板彫十二神将を1枚にまとめられたものは興味深いです。洋の東西、歴史を超え、作品の種類を超え、人の営みの素晴らしさを感じられることは素晴らしいと思っています。今後も素敵なブログを楽しみにしています。
Commented by idura at 2013-11-10 16:29
こんにちは。仏頭展は展示方法がとても良かったです。歴史を知って観ると、感慨深いものになりますね。
先月、興福寺に行ったので、この展覧会の意味が更に深まり、もう一度行きたくなりました。
Commented by desire_san at 2013-11-10 17:31
trintrinさん、仏頭は会場の中心に据えるとすばらしい存在感ですね。北円堂もいいですね。興福寺には美術展の主役になれる作品がたくさんありますね。

Commented by desire_san at 2013-11-10 17:35
tabinotochuさん、今回は「仏頭」に魅せられ、簡単に書いてしまいましたが、板彫十二神将も素晴らしい作品ですね。
Commented by desire_san at 2013-11-10 17:42
iduraさん、「平清盛」で平重衡が南都を焼き尽したというシーンがあったので興味を持ちましたが、この時東大寺も興福寺も灰塵と化し、奈良の大仏をはじめとした天平の優れた仏像がほとんど失われてしまったようです。今から考えるとなんと愚かしい行為だと思います。今も残っている仏像は、きびしい歴史を生き残ってきたと思うと、更に感慨深いものがあります、
Commented by Haruna_Takahash at 2013-11-10 18:02 x
本来山田寺の薬師如来であった「仏頭」は、678年薬師三尊が銅に鋳造され、山田寺で仏眼を点じられました。平重衝の焼き打ちに遭って焼失した後の再建の過程で東金堂の当時荒廃していた山田寺の薬師三尊像に目をつけ、興福寺が力づくで強奪しましたが、1411年東金堂は雷の火災で、この仏像の胴体が失われ、頭部だけ残ったようです。1937年に興福寺の東金堂の修理中に須弥座の下より「仏頭」が発見され興福寺の東金堂の修理中、須弥座の下より発見されたのは衝撃的な出来事で、この数奇な運命をたどった「仏頭」を見ると、私も涙をが出てきました。

Commented by 平石悟 at 2013-11-10 18:09 x
゜仏頭」は童顔の若々しい張りのある肉付き、眉と眼の直線的な切れ味、高い鼻梁と長く垂れ下がる耳は白鳳期の傑作と言えるでしよう。藤原道長が、当時飛鳥にあった山田寺に寄り、その美しさに感嘆したという記録もあります。当時の山田寺の薬師三尊の純真で凛然とした姿はすばらしかったことでしょう。薬師三尊として残っていれば、薬師寺の薬師三尊とどのような違った表現だったのかなど興味はつきません。本当に残念ですね。
Commented by あだっちゃん at 2013-11-10 18:26 x
desire_san さん、こんばんは。
私はこの展示会が始まって直ぐに行って来ました。
私は歴史に詳しくありませんが、この仏頭や板彫りの十二神将、木造の十二神将を見て、大変感動して帰ってきました。
先日、北印旛に鳥の写真を撮りに行った時、この地にある龍角寺というお寺に興福寺仏頭より古い阿弥陀如来の仏頭がある事を知りました。
折があったら行ってみたいと思っています。
Commented by opaphoto at 2013-11-10 18:29
こんばんは!
仏頭はあの痛々しい姿だからこそ我々に何かを伝え続けていると
感じました、それは人の愚かさなのかも知れません、
または祈りなのかも知れません、
仏像と対峙し、いろいろ思う時間って心休まる時間です。
また奈良や京都へ見仏に行きたくなります。

拙ブログへのご訪問、ありがとうございました(^^)
Commented by desire_san at 2013-11-10 21:00
Takahashiさん、平石さん、いつも貴重な情報をありがとうございます。
「仏頭」が山田寺の薬師如来であったころのお話など大変勉強になりました。山田寺にあった時のような薬師如来として今も残っていたら、どんなにすばらしいでしょうね。ほんとうに残念です。
Commented by desire_san at 2013-11-10 21:07
あだっちゃんさん、opaphotoさん、コメントありがとうございます。
仏頭や板彫りの十二神将、木造の十二神将と揃ったのは壮観でしたね。
仏像が人の心をとらえては離さないのは、 opaphotoさんがご指摘のように、それを作った仏師の祈りが込められているからだと思います。仏像は現代人が失いつつある真の善悪感、慈悲のと祈りの心を思いおこさせ、心を清めてくれるような気がします。
Commented by shimo19670717 at 2013-11-10 22:07
コメントを寄せて頂きましてありがとうございました。
素敵なブログですね。

TVの放送やネットでの写真などでしか見ることが出来ない私は、
本物が解き放つ力強さはどんななのだろう?とそんな妄想の中で、貴殿のブログを拝読させて頂き、その一端が垣間見れたようでありました。
また訪問をさせて頂きます。
Commented by reiko-pink-rose at 2013-11-10 23:51
こんばんは☆
ご訪問頂きましてありがとうございました。
仏頭展見応えがありましたね。
数奇な運命をたどった貴公子をこちらで拝見さて頂き
感動が蘇りました。
素敵なブログ遡って読ませて頂きます。
Commented by goddoor70 at 2013-11-11 14:37 x
興福寺改修のため東京で貴重な国宝が鑑賞できる機会が持てることは嬉しいことです。仏頭の全てに圧倒されながら感動したひと時を得ました。desire san のブログ早速訪れ読ませて頂きました。ご造詣の深さに圧倒された次第です。これから時折アクセスさせて頂きます。
Commented by desire_san at 2013-11-11 16:22
shimo19670717さん、 reiko-pink-roseさん、 goddoor70 さん
コメントありがとうございます。
興福寺「仏頭」は、興福寺の宝物館では人気の阿修羅など、天平時代の傑作がたくさんあり、宝物館の片隅に展示されておりました。
今回の興福寺「仏頭」を主役とした展示は、その魅力を堪能でき、大変良かったです。
Commented by nene_rui-morana at 2013-11-11 22:58
 清々しく気品にあふれた美しさ、興福寺の仏頭は白鳳美術の至宝です。今回、東京で見られて本当に感激しました。
 十二神将も素晴らしく、新薬師寺など他の寺の作品を思い浮かべながら鑑賞しました。
 また、多くのコメントを拝見して、感動を共有できる方々の存在を確認できたのも、嬉しかったです。
 なお、私は慶派のファンで、興福寺北円堂の無著・世親菩薩像も大のお気に入り、旅行は難しいのですが工事完了後に再び興福寺を訪れる夢を持ち続けていようと思います。
Commented by desire_san at 2013-11-12 07:20
nene_rui-moranaさん 興福寺には、このような場で中心に据える価値のあるすばらしい仏像がたくさんありますね。
興福寺北円堂の無著・世親菩薩像はを北円堂内部を公開しているとき一度拝観しました。無著・世親菩薩像を中心に据えた美術展を東京で企画してほしいですね。日本には優れた仏像が保存されており、すばらしいことだと思います。
Commented by Azu_mitocha at 2013-11-15 22:10
こんばんは。私のブログにコメントいただき、ありがとうございます。とても素敵な内容の濃いブログですね。もう一度展覧会を見に行ったような気持ちになりました。終了まで後少し、見に行く時間がなさそうです。また奈良に行く機会を作りたいと思います。
Commented by desire_san at 2013-11-15 22:42
Azu_mitochaさん、私も関西方面に行く用事があると、奈良のお寺に行きます。私の好きなお寺は、浄瑠璃寺、唐招提寺、法隆寺と室生寺です。いずれも寺全体が建設当時の姿で保護されていて、当時の雰囲気に浸ることができまする
Commented by greenkatastumuri at 2013-11-17 16:57
私のブログにも、ご訪問いただきありがとうございます。
今回の「仏頭展」は、後ろの部分から見る事が出来て、その損傷ぶりとお顔のりりしい美しさが対象的でした。
だからこそ、後世の私たちに訴えるものが大きいと思いました。
Commented by emuriwakuwaku at 2013-12-13 17:31
こんにちは。
ブログに訪問いただきましてありがとうございました。
仏頭展は、展示のしかたが、素晴らしかったですね。
仏頭も木造十二神将立像も前後左右からゆっくり拝見できて堪能しました。
しばらく行っていない奈良に、また行きたくなりました。
Commented at 2014-02-19 00:45
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by desire_san at 2014-02-19 01:32
smile8sさん、ご丁寧にありがとうございます。
美術の記事は次回はラファエル前派でしょうか。
海外旅行の写真などいろいろですが、またご訪問ください。
Commented by desire_san at 2014-02-19 01:32
smile8sさん、ご丁寧にありがとうございます。
美術の記事は次回はラファエル前派でしょうか。
海外旅行の写真などいろいろですが、またご訪問ください。
Commented by snowdrop-momo at 2015-01-03 11:40
desireさん、新年のご挨拶を申し上げます。

いつも拙コメントへの親切で行き届いたご回答をどうもありがとうございます。
今年も様々な記事を拝見して勉強させて頂くのが楽しみです。

日本の風景写真もお好きとのことですが、自然の写真が中心なのでしょうか。

新年より、奈良の風景写真のブログ(ももさへずり*寧楽編)を始めました。
20年前のアナログ写真ですが、1年かけて四季の自然に包まれた古都風景を紹介してゆきたいです。
よろしければお立ち寄りください。

http://ramages3.exblog.jp/

それでは今年もどうぞよろしくお願い致します。
Commented by desire_san at 2015-01-03 13:14
snowdrop-momoさん、ももさへずり*寧楽編拝見しました。
詩情あふれる雪の奈良の写真に、詩的な言葉を添えて、すてきなブログですね。さっそくリンクさせていただきました。
私は仏像が好きで、一時国宝級の仏像はすべて見たいと、京都、奈良の古寺を廻っていました。関西方面はできるだけ土日につけるようにして、土日はお寺で仏像を見ていました。戒壇院の四天王は好きで何度も観に行きました。さすがに冬の京都・奈良は寒いので行ったことがありませんでした。すてきな写真をありがとうございました。
snowdrop-momoさんのような方とブログで知り合い、大変嬉しく思います。これを機会によろしくお願い致します。
Commented by snowdrop-nara at 2015-02-23 05:50
ふたたびこの欄にお邪魔しました。
拙ブログに興福寺の仏頭や阿修羅などの記事をアップしましたので、よろしければお立ち寄りください。

これまでにTBを頂戴し、ありがとうございます。
じつは今回は、TBのお返しを…と試みたのですが
やはりうまく出来ませんでした。
TBに限らず、色々不慣れで失礼もあるかと存じますが
これからもどうぞよろしくお願い致します。

by desire_san