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芸術と自然の美を巡る旅  

日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力

ルーヴル美術館展
Louvre Museum
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_551018.jpg


 東京の新国立美術館で、「ルーヴル美術館:日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」と題して、ヨーロッパ絵画の中で風俗画の歴史を一望する展覧会が開かれていましたので、鑑賞してきました。



 西欧では、社会の状況や世相を反映して、時代・地域によって異なる表現の風俗画が制作されていました。この展覧会では、ルーヴル美術館の名画コレクションから、16世紀初頭から19世紀半ばまでの約3世紀半にわたる風俗画の多彩で多様性にあふれる展開を包括的に展示することを試みていて、その視点で見ると興味深い美術展でした。

In Europe, the genre picture which reflected the social situation and social conditions is produced, and the expression varies according to the times, an area. It was accepted as a genre of the pictures called "the genre picture" in the 19th century from the late 18th century by those low ranks.

 ルネサンス期を迎えると、絵画の地位を高めるために、画家は古代史や神話など学識を要する物語を描くべきだとする理論がイタリアで生まれ、これを受け継いだフランス王立絵画彫刻アカデミーでは、「歴史画」を頂点に、王侯貴族など身分の高い人々を描く「肖像画」、「風景画」、「静物画」の格差が設けられ、18世紀後半から19世紀にそれらの下位に「風俗画」という絵画のジャンルとして認められました。

レンブラント『聖家族』 1640 年 日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_5553637.jpg 17世紀オランダの巨匠レンブラントが手幼子イエスに授乳する聖母マリア、マリアの母アンナ、イエスの父ヨセフからなる聖家族を、17世紀オランダの庶民の生活の中に描いています。

 16世紀から19世紀ヨーロッパ各国の画家たちは庶民の生活を風俗画として描きました。農民、職人、召使いの女性、物乞い、さまざまな職業の人々の日々の営みの多くの時間は生活のために働くこと、即ち労働でした。画家の関心や中心的なテーマも労働そのものを描くことに寄せられるようになっていきました。過酷な労働に明け暮れる農夫や職人の動作の力強さと尊厳、啓蒙の世紀である18世紀には、フランスのグルーズ、イギリスのホガースが、市民階級の人々を主人公とした場面に道徳的メッセージを託すことによって、日常生活の絵画の歴史に新たな局面を描きました。

Painters of each European country drew the life of the common people as a genre picture in the 19th century from the 16th century. It was farmer, craftsman, woman of the servant, beggar, working for life in much time for daily working of the people of various occupations namely labor. The interest of the painter and the central theme came to be sent to drawing labor itself. I pictured new situation in the history of the picture of the everyday life by being in strength and dignity of the movement of a farmer and the craftsman who spent all its time were severe, labor, a century of the enlightenment, and entrusting the scene which did people of the bourgeoisie with a chief character with a moral message in the 18th century.

日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_5562910.jpgピーテル・ブリューゲル『物乞いたち』1568年
 ブリューゲルの晩年の習作で、貧しい人の施設の中庭にいる松葉杖をついた男たちを描いています。ブリューゲルは自然に対す詩熱烈な敬愛の念を持った画家であったが、ここに描かれた不具者たちを見て驚きと自然に匹敵する愛顧の念を感じたと言われています。こんな状況に置かれていてもおれたちは生きているんだ!と訴えかけてくるようで、悲惨な現実に対する画家のヒューマニズムを感じさせます。この作品には、階級制度に根差した社会情勢への皮肉、人の不具者に社会階層の政治的暗示を示しているという解釈、スペイン支配に対して立ち上がろうとした乞食党への暗示など様々な解釈があるそうです。

ル・ナン三兄弟『農民の家族』 1642年
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_557942.jpg 17世紀のフランスの古典主義の画家兄弟ル・ナン三兄弟の代表作『農民の家族』は、ル・ナン兄弟が盛んに手がけた画題である≪農民≫の家族を、平線上に配される登場人物の頭、中央のワイングラスを手にする男を中心とした対称的な人物配置など安定的な構図、深い明暗対比による人物の描写で、貧しくても崇高で慎ましやかな精神性を訴えかけてきます。そこに描かれている農民の人々、労働者階級の人々の真摯な姿を深い精神性と厳格性と静謐な雰囲気で描いているところが大きな魅力を感じます。
 卓上には、木のストの肉体と血の象徴であるパンとワインが置かれ、「聖体の奇跡」の儀式と読み取る解釈もできます。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『物乞いの少年(蚤をとる少年)』 1647-48年頃
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_612423.jpg ムリーリョは、聖母子像などの宗教画名を成した画家で、特に幼いキリストや天使など愛らしい子供たちの表現でも人気がりました。ムリーリョは、宗教画とともに、路上に暮らす浮浪児や庶民の子供たちの日常をテーマとにした風俗画も描きました。
 部屋の片すみで、衣服についた蚤をとる少年。真っ黒に汚れた素足、ぼろぼろに擦り切れた衣服からも最下層の極貧の暮らしが感じられます。しかし画家は、この少年にあたたかく包み込む窓からの光を与え、ほのかな希望のようなものが感じられる作品に仕上げています。
 ムリーリョが暮らしたセビーリャの繁栄は、17世紀半ばには、物価の高騰や自然災害により陰りをみせ、街中には親も家も失った子供たちがあふれていました。しかし、彼の絵を特徴づけるのは悲惨さだけでなく、厳しい現実の中を生き抜こうとするたくましさを感じさせる少年の姿でした。貧しくともひたむきに生きるムリーリョの描く子供たちの絵が伝えるものは、弱いものにも救いの手を差し伸べるイエス・キリストの慈悲の精神でした。

 シャルダンの『買い物帰りのる召使』、ドラクロアの『鍛冶屋』、ミレーの『箕をふるう男』なども心に残りました。多くの風俗画は、貧しくとも心は崇高に描かれており、貧しいものは卑しいと言う価値観を打ち崩しているように感じます。

 さらに驚くべきは、16世紀から西欧では貧しい人々の生々しい現実を生き生きと描いて今に伝えていることです。情報化社会と言われる現代の日本でも、多くの富裕層の人々は普通の人々生活の現実を、中間層以上の人々は貧しい人々の生活の現実を知っているでしょうか。学校で習う日本の歴史で、例えば平安時代の美しい十二単を身にまとった貴族の生活は教えられても、生々しい庶民の生活が語られるでしょうか。日本の美術でも仏画、歴史画、風景画、装飾性を重視した絵画は発展しましたが、庶民の生活が絵画で扱われるようになったのは室町時代の風俗画から発展した浮世絵の時代からです。それでも江戸庶民のにぎやかな暮らしに触れる浮世絵の遊びの世界には多く触れますが、働く農民の労働の生々しい現実を伝えるものはあるのでしょうか。そんな観点から見ると、西欧では貧しい人々の生々しい現実を生き生きと描いた作品は画期的なものと感じました。

 17世紀のオランダでは、日常の生活の描写を超えて、寓意画が得かがれました。室内でワインを飲み交わし、ともに楽器を奏でる男女を主題にした風俗画は、不道徳な恋愛への警鐘など道徳的暗示が込められています。風俗画は現実の生活の記録だけではなく節度ある生活の勧めや教訓や寓意がこめられています。現実と虚構が入り混じっている風俗画を読み解く美術史学、イコノロジーの対象となっている。

In the Netherlands of the 17th century, we were able to sew an emblem across description of the everyday life. I drink and exchange wine in the room, and the moral suggestion such as alarm bells to immoral love is loaded the genre picture which made man and woman playing a musical instrument together the subject with. The advice and a lesson and an allegory of a certain moderation life are loaded the genre picture with as well as a record of the real life.

クエンティン・マセイス『両替商とその妻』 1514年
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_621425.jpg 16世紀初期のフランドル、両替商が天秤で金貨を慎重に量っています。横では瀟洒な身なりの頭に白い頭巾をしたその妻が左右に対称に配置し安定感のある三角形を形作ってように寄り添い、夫の服と妻の襟と袖口の毛皮の灰色がかった青、妻の服と夫のシャツの袖口の赤も呼応しています。両替商の妻は時祷書の言葉や聖母子の細密画より現世の財物に注意を奪われているように見え、道徳的批判の精神を読みとることが出来ます。或いは無心に金を量る夫が俗を、それを冷たく見つめる妻が聖で聖と俗の対象とする見方もできます。この絵の最初の額縁には「汝、正しい天秤、正しい重りを用いるべし」という言葉が刻まれていていたといいます。何れにせよ、単なる風俗画でなく、両替商に対する道徳的な批判の意図で描かれたと思われます。

ピーテル・デ・ホーホ 『酒を飲む女』 1650年代
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_643927.jpg この作品の人物が中景に配する構成は、デ・ホーホが編み出した独特の構図で、発展させたデルフトの絵画様式で描かれた典型的な風俗画とされ、明るく広々とした室内で、座った女性と立った男性が屋内でワインを酌み交わしている情景が描かれています。絵の中の人物が絵画の中の閉じられた空間の中にいて、観る人は客観的にその絵画空間の世界に浸ることができます。この閉じられた空間の技法は、フェルメールの絵画でさらに発展しました。




フェルメールの『天文学者』 1668年ごろ
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_65461.jpg 17 世紀オランダを代表する画家フェルメールの円熟期の傑作といわれ、風俗画の巨匠フェルメールの決定的な転換期を示す女性が描かず、男性のみが登場する作品です。『天文学者』は翌年頃に描かれた『地理学者』と対画、又は連作であったと考えられます。2011年来日した『地理学者』はローブを羽織って精力的に知的作業に没頭し、周囲には地図、海図、地球儀、書物などが散乱し、右手にはディバイダが握られています。古い書物が描かれているのは最先端の研究をする学者は、伝統的な知識を踏まえていることを表現していると読み取れる。フェルメールの『天文学者』からは彼の誠実な研究姿勢や天文学への静かな情熱が感じられます。天球儀や天文学者の上半身、そして画面手前の机から垂れるタペスリー上部を照らす、窓から射し込む柔らかい光の表現は以前の作品と比べ、やや明度が増していますが、フェルメールの特徴的な調和と絶妙な均整性が保たれています。天文学者の纏うガウン、タペスリー上部に散乱する独立的で装飾的な光の粒の描写は、一色塗った後それが乾かないうちに違う色を塗っていく複雑な描写法など、フェルメールの技巧的表現への傾倒を感じさせます。

 一方、18世紀のフランスでは、ロココ絵画の巨匠ヴァトーが、緑豊かな自然や庭園のなかに、最新流行の衣服をまとった紳士淑女が集う情景を描き、雅宴画(フェット・ギャラント)と呼ばれる独自のジャンルを生み出しました。優雅な男女の姿は、恋がもたらす歓びや幸福感にあふれているように見えます。

On the other hand, in nature and the garden which were full of green, the gentleman lady who wore clothes of the latest style pictured a scene to gather, and, in France of the 18th century, great master Watteau of the rococo picture brought about an original genre. The figures of elegant man and woman seem to overflow in joy and the feeling of happiness that love brings.

ジャン=アントワーヌ・ヴァトー『二人の従姉妹』1716 年頃 
 日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_671860.jpg18世紀フランスでは絵画も歴史画や宗教画から、男女の愛の駆け引きを主題にした風俗画が増えてきました。ヴァトーはフランスのロココ様式を代表する画家で、彼の代表作はヴァトーがアカデミー会員入会を認められた『シテール島の巡礼』です。シテール島はヴィーナスが誕生した島で、ダンクールの喜劇「三人の従姉妹」の愛の相手を求め、ヴィーナスが支配するシテール島へ行く話から着想を得た作品と言われています。この作品の題名が『雅びなる宴』に変更され、田園に集い愛を語り合う若い男女の群れを曲線的、装飾的で甘美なロココ様式で描き描いた「雅宴画(フェート・ギャラント)」と呼ばれるヴァトーの独特の世界を築きました。画面の右端から左端へ進むにつれ男女の親密度が増していくように見え、愛が成就する過程を追っているのだともいわれています。
 今回7展示されていた『二人の従姉妹』にも感じられますが、ヴァトーの「雅宴画」は、女性のためらいがちな憂いを含んだ表情など哀愁が漂っています。これは結核に苦しめられ、36歳の若さでこの世を去ることになるヴァトー自身の病に対する不安が反映していると考えられています。

 女性の日常生活は、魅力的な主題でした。鏡の前で身づくろいをする女性という主題は、16世紀から19世紀を通してヨーロッパ各国で描かれています。女性たちは鏡のなかの自分の美しさに見入ったり、化粧をしながら大きく胸をはだけたりと、人目に触れることのない姿をさらしています。

ティツィアーノ『鏡の前の女』1515年頃 
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_674649.jpg ティツィアーノはジョヴァンニ・ベルリーニからデッサンを学び、ジョルジョーネと出会って、手法と様式を継承しました。この作品は、若きティツィアーノの古典主義的色彩によるこの傑作では、構図と色彩の調和が女性美を高め、ヴェネツィア絵画の特徴である鮮やかな色を用いた豊かな色階や、明暗法の効果の絶妙さと、傾げた顔、青い目、明るい肌、露になった肩、解かれて波打つ金髪など細部描写で、16世紀初頭のヴェネツィアの理想的女性像を女性肖像画に表現しています。前景の縁の小物や鏡などを用い鏡像の表現もョルジョーネから継承しています。鏡は「虚栄」の寓意とされています。

 東洋趣味が現れた18世紀から19世紀半ばのフランスでは、イスラムの後宮の美女「オダリスク」のテーマに、官能的な裸身の女性が数多く描かれました。一方17世紀オランダの風俗画には、母としての役割をつとめる女性の姿も見いだされます。当時のオランダ社会では、夫には稼ぎ手として家族を扶養し、家計のやりくりから、使用人の監督、子どもたちの養育まで、家政をとりしきることは妻の役割という役割分担が重視されていました。

フランソワ・ブーシェ『オダリスク』 1745年(?) 
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_682888.jpg ブーシェは、ヴィーナスやディアナなど裸身の女神を主人公とする優美な神話画によって、国内外の宮廷で人気を博した。ほんのりとバラ色に染まるふくよかな肌を惜しげもなく露わにしながら、こちらを振り返る女性は、ブーシェらしい明るさと自由奔放な魅力に溢れている。





ジャン=バティスト・グルーズ 『壊れた甕』1771年
日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_685117.jpg 無邪気な目を大きく見開き、紫色のリボンと花を頭に挿し、子供っぽい無垢な少女がドレスの中で散った花を両手で押さえています。ひび割れた甕が、少女の左腕に掛けられています。スカーフは乱れて、少女のふくよかな喉下が垣間見え、ドレスのバラの花はむしられ、白美しいドレスは無造作に身に付けられている。悔しそうな表情も感じられる少女は穢れのない無邪気さと挑発との間で揺れ動いてかのようにも見えます。当時大衆に大変な人気のあったテーマ「失われた純潔」寓意を肌の透明感や滑らかさも非常に美しく、偽りの純情も見抜いた官能的に描いた作品といえます。





ドラクロア『地獄のダンテとウェルギリウス』 1822年
 日常を人々を描く風俗画にみるヨーロッパ絵画の魅力_a0113718_610828.jpg『神曲』は「地獄篇」、「煉獄篇」、「天国篇」の3部で構成されていますが、ダンテは古代の詩人を伴に地獄を巡り、9つの圏を通過してベアトリーチェに出会い、天国へと導かれます。この絵では、ダンテとウェルギリウスがプレギュアスの漕ぐ船で地獄の世界ディーテを取り囲む湖を渡っているところで、湖の中では亡者たちが苦痛に身を捩り、小舟にしがみついて地獄から逃れようとしています。ダンテの『神曲』の「地獄編』に想を得たテーマをミケランジェロやルーベンスらの表現も吸収してきわめて劇的な構図で描き、後にロマン派と呼ばれる斬新な流れを絵画の世界を築きました。若きドラクロワがサロンに最初に出品した作品は「偉大な画家の将来を告げている絵画」と絶賛されました。今までの絵画にない激しいタッチで力強くロマン主義的な絵画を描き出すために、ドラクロワはイタリア詩人の幻視的な作品からインスピレーションを受けたのです。新しいテーマによって知性を刺激し、斬新さによって想像力をかき立てます。あまりにも斬新なドラクロワの絵画は賛否両論を引き起こしました。

To painters of the bread-and-butter theory of the 19th century, there was the group of the Millet and others who pictured the group of the Courbet and others who pictured it in rial including the situation that brought about pains of the life of farmer and workers and a poor farmer beautifully powerfully. It was calm and was kind, and Millet expressed scenery such as life and farm village or nature of the farmer by a delicate, soft touch. Painters who followed Millet and him were called "Barbizon school". The principal objective is put in the frank thing picturing in nature of the straight fact, and the genre picture which I described the human working in becomes only a part of nature, and their picture winds up the working in the everyday life.

 19世紀のレアリスムの画家たちには、農民や労働者たちの生活の苦しさを生み出した状況を含めてリアルに描いたクールベらのグループと貧しい農民を力強く、美しく描いたミレーらのグループがありました。ミレーは、農民の生活や農村や自然などの風景を繊細で柔らかいタッチで穏やかで優しく表現しました。ミレーと彼に追随した画家たちは「バルビゾン派」と呼ばれました。彼らの絵画は、日常生活における営みをあるがままの自然の中に率直な描くことに主眼が置かれ、人間の営みを描いた風俗画は、自然の一部にすぎないものとなっていきました。

 「日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」という趣旨に多少こじつけているところはありましたが、先にも述べた様に、16世紀という昔からの貧しい人々の生々しい現実も含めて、生き生きと描いて現在の人々に伝えているという観点では、画期的な作品も多くみられ感動しました。

 余談ですが、『ルーヴル美術館展』は、観客動員という点では本年度の美術展ではトップクラスで主催者側の期待通りの人気を博していましたが、ある調査によると美術展を見た後の感想をアンケートすると、長い時間待って見てきた割には「いい絵がなかった」「つまらなかった」という感想が半数以上を占めていたそうです。確かにこの美術展の目玉であるフェルメールの『天文学者』はフェルメールらしい緻密な画面構成と色彩感覚の優れた作品ですが、女性が登場しないという意味で“華”がなく、本展の代表作ル・ナン三兄弟の『農民の家族』やムリーリョの『物乞いの少年(蚤をとる少年)』は美術史上に残る傑作ですが、貧困をテーマと作品ですので、美術展にルノワールやラファエロのような美しさを求めてきた人には“ 薄汚い作品“に移ったのかもしれません。そういう意味では見に来た人が期待するような“華のある美しさ”のある作品は少なかったのかもしれません。

 しかし、 “華のある美しさ”を表現するだけでなく、人々の生々しい現実を伝えることで問題提起し、社会をよりよくものにする動きを先導する芸術も貴重だと思います。今回の現代の日本では、株価や大企業の収益だけをみてその国の経済状況を語り、外国人富裕層を呼び込んで経済発展に結び付けようとする傾向があるように感じます。そのような時代こそ、我々は人々の現実の生活を見る視点を養い、その国に住む人々の生活の現実や幸福度も大切なその国の豊かさの尺度であるべきではないかという問題意識も持つべきではないでしょうか。今回の「ルーヴル美術館:日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」に強い共感を感ずる感性を提起したという意味で、良い企画だったと思います。現代の格差社会の生々しい現実を表現している写真家なども世界に数多く存在するはずですので、私たちも自分の周囲の現実のみをみて物事を判断するという小さな視点を脱して、色々な階層の人々の生活の現実に眼を向けて、広い視点で考える習慣が必要であることを痛切に感じました。
(2015.3.国立新美術館)


















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by desire_san | 2015-05-21 06:11 | 美術展 & アート | Comments(22)
Commented by primex64 at 2015-05-21 10:40
desire_san さま
拙blogへのコメントありがとうございます。
今回の展覧会の目玉の一つがフェルメールの天文学者でしたが、近くで見ると保存状態がそれほど良くなくて心配になりました。絵自体はフェルメール独特のパースペクティブ、光と翳が素晴らしかったです。また、テーマ別の展覧については解説が丁寧で分かり易かったです。

別件: 立山の記事がありましたのでTBさせていただきました。(私、富山が故郷なんです)

またいらしてくださいね。
primex64@MusicArena
Commented by ma-kom at 2015-05-21 11:24
うわぁ~毎回の事とは言え
素晴らしい解説で感動しています。(^_^)v
私は流して見るタイプで
これ程の洞察力はありません。
全てお勉強になります。
有難うございます。m(__)m
Commented by desire_san at 2015-05-21 19:23
primex64さん、ブログを読んでいただいてありがとうござます。
フェルメールの天文学者は地味な作品ですが、フェルメール独特の理想的に構成された画面や色彩が味わい深い作品でしたね。
primex64さんのブログもまた時々訪問させていただきますね。
Commented by desire_san at 2015-05-21 19:27
ma-komさん、私の記事を読んでいただきありがとうございます。
私も美術館で作品を流し見した後、絵に囲まれた雰囲気を楽しむこともよくあります。いろいろな楽しみ方があって良いのではないかと思います。
Commented by oga0406 at 2015-05-21 20:54
コメントありがとうございます♪
凄い豊富な情報と解説で凄い!の一言です
また、お邪魔させて頂きます。
Commented by makoto at 2015-05-22 01:19
こんばんは。
訪問&コメントありがとうございました。
ずいぶんと細かく書かれてますね~。
僕は数多く見ますがそこまでは書けないですね~。
実はどちらかと言うと美術館より博物館が好きだったりするので(笑)。
また是非お越しください。
Commented by drss0123noborui at 2015-05-22 05:36
素晴らしい鑑賞表現に圧倒されます。壊れた水ガメは何を意味しているのでしょうか。オダリスクの官能的かつ放漫な姿に目が釘づけでした。
貴方のブログがとても勉強になります。これからも拝見します。
Commented by akko_sweets at 2015-05-22 07:53
おはようございます。
私のblogにコメントして下さり、ありがとうございました。
desire様のblogを拝見し、大変勉強になりました。
もう一度、新国立美術館に行こうかなと思ってます。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
Commented by hamagiku at 2015-05-22 21:00
今晩は
訪問,コメありがとうございました。
素晴らしい解説力にただただ脱帽です。
またお勉強させていただきにまいります。
Commented by snowdrop-nara at 2015-05-23 20:44
こんばんは。東京にはいま色んな作品が来日していたのですね。うらやましく思います。
日本の絵画作品は脆弱なこともあって、贅を尽くした一握りの作品しか伝わっていないのは残念ですね。伴大納言絵巻や、信貴山縁起絵巻の一部から、垣間見するしかないのは如何にも物足りません。
そういえば、時代は遡りますが、万葉集も俗謡などがもっと多ければ、もっと楽しいことでしょう。
これからもdesireさんの深く掘り下げた記事を拝読するのを楽しみにしています。
Commented by fabricb at 2015-05-24 14:27
コメントありがとうございます。
それにしても大変細やかな素晴らしい解説を拝見でき、またルーヴル美術館展での感動が甦って参りました。何度も読み返させていただきたいと思います。
Commented by ruki_fevrier at 2015-05-25 00:22
こんばんは。
コメントありがとうございました。
いつもながら詳しい解説、とても勉強になります。
庶民の暮らしを生き生きと描く絵が多かったですね。
ピーテル・デ・ホーホが特に好きで、彼の絵から見える、当時のカナルハウスの暮らしがとても興味深くて、海外の美術館では必ず探していまいます。
Commented by AT_fushigi at 2015-05-25 00:37
desire_san
詳細な解説を興味深く読みました。この展覧会は行こうと思っているのですが仕事の合間が見つけられずまだ行っていません。なので丁寧な記事をありがとうございました。
確かにフェルメールというと観客を呼ぶことができますね。彼の人気は日本だけではありません。3月にドレスデンの王立美術館に行ったのですがそこでも彼の絵の前に多くの人が集まっていました。
私はティツィアーノの「鏡の前の女」に興味があります。彼の絵が大好きなのです。
PS: BLOGにコメントありがとうございました。
Commented by tabinotochu at 2015-05-25 22:01
いつもお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回のような展示を見ると、ルーヴルの底の厚さ、そして西洋絵画の底の厚さをしみじみ感じます。もっというと、文化・文明の底の深さなのかもしれません。
Commented by 幸亥 at 2015-05-26 21:03
豊富な図版としっかりした解説が、通勤電車でのちょうどよい読み物になってます。 展示を観たあとに、これだけの文章にまとめあげる努力には敬服します。 昔々に訪れたスペインの記事なども懐かしく思い出しながら拝見しました、写真が本当に素晴らしい! これからも楽しみにしています。
Commented by MIEKOMISSLIM at 2015-05-28 18:17
こんにちは。ブログ記事「ルーヴル美術館展 日常を描くー風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」にコメント有難うございます。

そういえば日本画には貧しい庶民を描くジャンル、というのはないですね。 今回印象的だった作品中の「割れた水瓶」は、その題材、タイトル、少女の表情など妙にアンバランスさ等が気になって、鑑賞の後少し検索してみたら、書かれてるように「失われた純潔」がテーマだったと判りました。こういうものや、恋愛ジャンル等も含めて、風俗画テーマということで、従来よりラフな趣のルーブル展だったと思います。
Commented by nanitabonita at 2015-05-29 16:45
Desire さん、初めまして。
随分以前にコメントなどを頂いていましたのに(有難うございます!)、気付くのも遅く、又、返信にとてもとても手間取り時間が経ってしまいました。本当に申し訳ありません!!

トラックバック有難うございます!!
(この意味もあまり分からないまま、こちらにコメントを残させていただいております。)

スペインに在住されていらっしゃるのでしょうか?
(どのお写真も美し~い!!)
ゆっくりブログを拝見させていただきますね。
これからも宜しくお願い致します。

nanita
Commented by aki-bluesky at 2015-06-02 17:44
とても詳細な解説を拝見して、勉強になりました。
ルーブル美術館展という題名の印象で、何となく華やかな展示をイメージしていました。
庶民の日常や、現実の苦難を描いた作品も多かったのですね。
Commented by rollingwest at 2015-06-04 07:09
フェルメールいいですね。
それにしtも何度見てもクエンカの絶景素晴らしい~!日本では見られないお宝物の景色ですね。
Commented by vvyumavv at 2015-06-05 22:07
こんばんは。
詳細に解説されていて、びっくりしました!!
なるほどなるほど…と興味深く拝見させていただきました。
ありがとうございます^^
美術展の感想…あんまり良くなかったという意見が多かったのですね。
私は、普段見ることのできない作品を観れたし、風俗画ってちょっと身近な感じもして結構楽しめました^^
Commented by Ich at 2015-06-07 12:07
こんにちは^^ 楽しく拝読いたしました。おっしゃろうとしていらっしゃるお気持、伝わってまいります。今回の展覧会、企画の趣旨は理解いたしますが高齢になってくると足が重たくなってきて(比喩ですが・・・)人間の多様性に心が疲れ、身近な花などにこころが奪われます。パリのルーヴルもオルセーと分かれてから足が一度きりで向かなくなってしまいました。芸術をしっかり学びたい若い方に譲ります。つまらないコメントをお許しください。
Commented by desire_san at 2015-06-07 14:48
皆様、コメントいただきありがとうございました。
しばらく旅に出ていたため、帰って今皆様のコメントをひとつひつと読ませていただきました。ひとつひとつにコメントのご返事をする余裕がなく、まとめてお礼させていただくことをお許しください。
 フェルメールの天文学者はフェルメールらしい計算盡された色彩と画面構成が見事でしたね。当時代のデ・ホーホもフェルメールとは一味違ったみりょくがありますね。ティツィアーノの色彩感覚もさすがですね。全体に地味ですが、レベルの高い作品が見られてよかったと思いました。
 併行して少しづつ写真付きで海外旅行記を書いています。今スペインに着いて書いていますが、次はイタリアのルネサンスの旅についてご紹介したいと思っています。
 御次回のある時に覗いて頂けれは幸いです。今後ともよろしくお願い致します。