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芸術と自然の美を巡る旅  

町を戦火から救った、キリストを描いた世界一の名画

サンセポルクロ Ⅰ

Sansepolcro

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 サンセポルクロは、人口約16,000人のイタリア南トスカーナにあるドォーモの広場を中心に四方に500メートルほど小さな町です。サンセポルクロは、ピエロ・デッラ・フランチェスカが生まれた町で、その家は現在ピエロ・デッラ・フランチェスカの研究所になっており、その向かいの「ピエロ・デッラ・フランチェスカの庭」呼ばれる公園の中央には彼の銅像が立っています。






Sansepolcro,formerly Borgo Santo Sepolcro, is a town and comune in Tuscany, Italy. Sansepolcro is a town of Piero della Francesca was born. His house is the Institute of the current Piero della Francesca. In the center of the park, which is called "garden of Piero della Francesca" stands his statue.




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ピエロ・デッラ・フランチェスカ『キリストの復活』

 15世紀半ばに描かれたピエロ・デッラ・フランチェスカの「キリストの復活」は、サンセポルクロにあるフレスコ画です。描かれたのは市庁舎の壁で、現在は市立美術館となっている。 

 「キリストの復活」は磔刑にされた後、キリストが復活するという噂がたち、それを恐れた王により墓には見張りがつけられた。しかし噂通りキリストは復活したという聖書の場面を描いたものです。兵士が眠りこける中、自らの棺に片足をかけて立ち上がる姿は、威厳に満ちていて見る人を圧倒します。当時の神学に基づくイタリア美術の特徴を示しながらも、イエスがサンセポルクロの旗を掲げるなど、政治的な意図も含まれた図像という説もあり、一説では、画面下部に配される左から二番目の眠る兵士は、ピエロ・デラ・フランチェスカの自画像とも云われている。「美術家列伝」の中でヴァザーリもこの作品を絶賛していいます。



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 透視画法を駆使した技法はルネッサンス初期の革新的なものでした。ピエロ自身、遠近法の解説書を3冊書いているが、この作品ではそれを実践しているので、現代の絵画にも通ずるものです。


 この作品は、一度は人気がなくなり石膏で白く塗りつぶされましたが、19世紀になって剥がれ落ちた石膏の下から自力で復活し再び人気を取り戻した。サンセポルクロの人々がこよなく愛するこの作品は、街のシンボルであり、守り神でもありました。第二次世界大戦中、この街が砲火を逃れたのもこの作品のおかげでした。


 The main church isthe Cathedral, built in Gothic-Romanesque style in 1012–49.The English writerAldous Huxley described the Resurrection by Piero della Francesca, which is inthe Museo Civico, as "the greatest painting in the world". The museumcollection includes three other works by Piero della Francesca and many othertreasures including paintings by Santi di Tito, Raffaellino del Colle and LucaSignorelli.


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 イギリス人小説家オルダス・ハックスリーが、サンセポルクロの『キリストの復活』を「世界で最も素晴らしい絵」と評していました。第二次大戦の末期、サンセポルクロはドイツ軍に占領されており、イギリス軍が間近に迫っていました。このイギリス軍を指揮していたのは、将校トニー・クラークは、攻撃命令を受けて、実際にサンセポルクロに向かって砲撃を開始しようとしましたが、以前に読んだことのあるハックスリーの「世界最高の画」のことを思い出して、砲撃を中止しました。 将校トニー・クラークらのイギリス軍がサンセポルクロに入った時には、ドイツ軍はすでに撤退していて、幸いにこの「世界最高の画」は無傷でした。この画のおかげでサンセポルクロの街が砲火を免れたのです。


 戦後この史実が知られンセポルクロが有名になり、多くの観光客が訪れるようになり、クラークは表彰され、多くのアーティストがこの作品に触発された作品を制作するようになりました。

 

 「キリストの復活」をテーマとした絵画は意外に少なく、イタリア語でサンセポルクロが「聖なる墓」を意味しているため、ピエロ・デッラ・フランチェスカの『キリストの復活』は町のアイデンティティを象徴する絵画として描かれたのかもしれません。 

 実物のピエロ・デッラ・フランチェスカの『キリストの復活』を観ると、予想を超えた素晴らしいが魅力ある作品でした。2本の石灰柱の疑似円柱を配して画面を区切り、その中の構図を遠近法で明確に分割しています。兵士たちが描かれている下の部分の石棺をかすめて、非常に低い位置に設定しています


 背景はトスカーナ地方の眺望ですが、丘のラインがキリストの肩の線につながっています。左手には冬の枯れ木を、右手には生い茂る緑樹を配して、キリストの復活を象徴しています。ピラトに石棺の番を命じられていた4人の兵士が寝込んでいいて、のけぞったように寝ている兵士はピエロ自身ともいわれています。兵士たちは傾いた姿勢で描かれていますが一人の兵士の脚が描かれていなません。様々なポーズで兵士達を描くことで、彼らがキリストの存在に気付いていないことをあらわしているようです。


The Resurrectionis a fresco painting by the Italian Renaissance master Piero della Francesca,It was painted for the Palazzo della Residenza in the town of Sansepolcro, Jesusis in the centre of the composition, portrayed in the moment of hisresurrection, as suggested by the position of the leg on the parapet of histomb, which Piero renders as a classical sarcophagus. His stern, impassivefigure, depicted in an iconic and abstract fixity, rises over four sleepingsoldiers, representing the difference between the human and the divine spheres.


 キリストは、桃色の死装束を身にまとい、左足を石棺の縁に置き、右手に死に打ち勝ったことを象徴する白地に赤の十字架が描かれた旗を持って、力強く立ち上がっています。キリストの脇腹からは血がしたたり落ちています。キリストの顔は理想化されて描いているとはいえません。寝ていないためか、左右不対照で髭は粗く、生身の人間のようです。キリストは鼻の孔が描かれておらず、まっすぐに見ていて、この画を見る者はキリストを直視ことができます。聖書に書かれているように「めざめている者」だけが復活したキリストを見られるのです。


 眠っている兵士の上に、彫刻のようにモニュメンタルで力強い表現のイエス・キリストが厳しい表情で立ち上がっています。キリストの肉体はピエロの抱いている理想の肉体像に合致しているように感じます。その血の滴る肉体で凛として見る人を見つめ「真理は我にあり」と語りかけてくるように感じます。本当の真理は、ローマ法王でも枢機卿でも、キリスト教の色々な会派でもなく、イエス・キリストが命を捧げて人類に残した「愛の思想」であると語りかけているように私には感じました。現代社会に重ねあわせれば、指導者が経済発展こそ唯一の道と訴え、経済的敗者を否定したとしても、ピエロ・デッラ・フランチェスカの『キリストの復活』に描かれたイエス・キリストは、どんな圧力にも負けず、「キリストの愛の思想という価値軸こそが人類の幸せのためには真理である」と、一歩も怯まず私たちに訴えてくるようです。宗教画というより、絵画自体を超えた求心力がこの作品にはあるように感じられ、しばらくこの絵画の中のキリストと向き合っていると、永遠にこの絵画と向き合っていたいほどのほど感動を覚えます。決して一般に言う美しい絵画ではないのに、ハックスリーの「世界最高の画」と表現したのにも説得力を感じてきます。


 ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画は、その後ダ・ビンチやミケランジェロたちの動きのある絵画に人気を奪われ、動きのなくてつまらないと人気がなくなり、この作品も石膏で壁ごと白く塗りつぶされてしまったようです。19世紀になって、この画は剥がれ落ちた石膏の下から「自力で復活」し、イギリスの有名な旅行家・考古学者・楔形文字研究者・美術史家・美術品収集家・作家・政治家・外交官であったヘンリー・レヤード(Sir Austen Henry Layard 1817- 1894年)が、15世紀フレスコ画家としてのピエロを称揚したことによって、再び人気を取り戻した。ニコラス・ペニーは「アレッゾへの旅」この作品を次のように紹介しています。


 ピエロ・デッラ・フランチェスカの「キリストの復活」は、素晴らしい宗教画といわれる作品である。ピエロ・デッラ・フランチェスカは、石棺のふちに片足をかけ直立しているキリストを描いている。キリストはピンク色の死装束を身にまとい、右手には、死に打ち勝ったことを象徴する白地に赤の十字架が描かれた旗を持っている。 キリストは理想化して描かれておらず、脇腹からは血がしたたり落ち、上げた左足によって腹部にはしわが寄っている。キリストの顔は特に衝撃的で、じっと見つめる目の下にできたたるみは、彼が寝ていないことを示し、鼻は平らで、髭は手入れがされい。「世界で最も素晴らしい絵」と評した作家のオルダス・ハクスリーは、それはキリストの「肉体的、知性的な力」であると語っている。


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Nicholas PennyJourney to Arezzo

 Above all, in Sansepolcro there was the fresco of the Resurrection No painter has ever so painted the scene! Later, as the leading force in the ArundelSociety, which was devoted to recording old Italian frescos, Layardcommissioned copies of some of Piero’s works. The Resurrection was published asa chromolithograph. But, Layard himself insisted that Piero’s easel pictures‘afford but a faint idea of his originality’: his greatness lay in public work,which made him an example not only to artists but to patrons.




《参考文献》

嘉門 安雄 (監修), Michael Michael (原著), 遠藤 みさ ()

「ピエロ・デッラ・フランチェスカ―アレッツォの壁画」 1998/6

マリリン・アロンバーグ レーヴィン () , 諸川春樹()

「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」 (岩波 世界の美術)

ピエロ・デッラ・フランチェスカ《キリストの復活》 @BS朝日: BBC地球伝説




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サンセポルクロ










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by desire_san | 2015-10-31 17:01 | イタリア・ルネサンス美術の旅 | Comments(4)
Commented by Ich at 2015-11-01 11:42
こんにちは。ピエロ・デッラ・フランチェスカの『キリストの復活』を貴殿の解説を拝読していて、あらためてこの作品に想いが膨らみました。ピエロであろう番兵の顔が何とも言えずピエロ的(飛躍ですが^^)で少しユーモアを感じます。何気ない所にイエス・キリストが大きく存在している力に西洋のキリストへの信仰の深さを感じ新たな考える人になっています。
Commented by desire_san at 2015-11-01 14:17
Ichさん、いつも私のブログを読んでいただいてありがとうございます。
ピエロ・デッラ・フランチェスカは、他の画家が使わないようなタイタンな構図も魅力ですが、兵士たちとキリストの大きさ、画面配置で絶妙だと思いました。見ているとどんどんキリストの存在感に心を奪われ、兵士たちは背景と同様キリストの存在の大きさを引き立てるだけの存在になってしまいます。とにかく凄い絵だとかんじました。兵士のひとりとして自分を描いたのは、ご指摘のように、彼特有のユーモアだったのかもしれませんね。
Commented by Mortitamia at 2015-11-06 20:07
スターリング・アンド・フランシーヌ・クラーク美術館でピエロ・デッラ・フランチェスカ、素晴らしい絵に出会いました。大理石の円柱の立つ宮廷の一部屋に4人の女性に囲まれて玉座に座る幼子キリストを抱いた聖母。 4人の飾りの無い服装の背中に羽が生えている硬い表情天使と聖母子を中心とした正方形の各頂点に立ちています。マリアとその左に立つ天使は全身を覆う黒いガウンを着ており、僅かに薄赤色の衣装がマリアの胸元、右手首、足元から覗いていました。 マリアの左手、画面の右端に立つ天使だけが、薄赤色の服をまとい、右手を上げてキリストを指しているが、身体は真横を向き、顔は斜め外側を向いていいて、6人とも違った方向を向き視線が交わることはありません。結したような静謐な雰囲気を醸し出している。静ではあるが、観る者の想像をかきたてる物語性を秘めている。雄弁なる沈黙都も感じました。このような作品を初めてで、新鮮でした。
Commented at 2015-12-31 21:32
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