シェイクスピアのラブストーリーの傑作をMETのドリームキャストでオペラ化
World premiere:Théâtre Lyrique, Paris, 1867. Perhaps the most enduringly successful of themany operatic settings of the world’s consummate love story, Roméo et Julietteis an excellent example of French Romanticism, a tradition that valuessubtlety, sensuality, and graceful vocal delivery over showy effects. In theopera there is a slight shift of focus away from the word games of the originalplay and a greater focus on the two lovers, who are given four irresistibleduets, including a brief final reunion in the tomb scene that does not appearin the play.
今年2017年1月21日に、メトロポリタンオペラで、シェイクスピアが遺した「家」に引き裂かれ運命に翻弄される恋人たちの永遠の悲恋物語をグノーのオペラ化した傑作を、ドリームキャストで新制作、上演された舞台が、メトライブビューングで上演されたことを知り早速鑑賞してきました。
グノーの傑作を、人気演出家B・シャーが壮麗かつスケール豊かに再現するイタリアの古都を舞台に、世界のプリマ D・ダムラウと花形テノール V・グリゴーロの強力カップルが、甘い二重唱や魅惑のアリアを歌い上げます。美しき声と甘美な音楽の旋律が作り上げたオペラの奇跡が伝説の恋を現代によみがえらせました。グノーの甘美な音楽を最高のキャストで楽しめ、夢の世界を体感出来ました。
グノーの『ロメオとジュリエット』全5幕のオペラで、劇中の『ジュリエットのワルツ』やアリアなどは多くの歌手が好んで歌名曲がたくさん含まれています。
あらすじ
プロローグ 時と場所:ルネサンス時代のヴェローナ
管弦楽による激しい嵐を思わせる序奏で両家の憎しみが描かれ、合唱がこれから始まる悲劇のあらましを説明します。
ジュリエットが乳母ジェルトリュードと現れます。「青春を謳歌して私は夢に生きたい」とアリアを歌います。 一人残ったジュリエットの目の前にロメオが現れて話しかけます。2人は瞬時に恋に落ちるのでした。従兄のティボルトがジュリエットを呼びに来たため、ロメオは彼女がキャピュレット家の娘であることを知って驚きます。一方声で、ティボルトはモンタギュー家のロメオであることを見抜き、仇敵に対し剣を抜きますが、キャピュレットの諫めにより抑えられ、ロメオは友人たちと逃げるようにその場から去っていきます。
第2幕 ジュリエットの家の庭
第3幕(全2場)
第1場 夜明け、修道院のローランの部屋
ロメオは神父ローランのもとへ訪問し、そこで神父にジュリエットとの恋を打ち明けます。そこにジュリエットが乳母とともに訪ねて来て、2人は神父に結婚の許しを乞うよう神に祈りを捧げる。長年に亘り敵対してきた両家の憎しみ合いが2人の結婚によって解消されることを願ったローレンス神父は、2人に結婚の祝福を与えます。
第2場 キャピュレット家の前の通り
キャピュレット家の近くの通りで、ロメオの小姓ステファーノが主人を探しに来て、キャピュレット家を揶揄するかのようなシャンソンを歌います。 それを聴いて怒りに震えたキャピュレット家の若者と友人メルキューシオとの間で乱闘が始まり、ティボルトも加勢して激しい決闘に発展してしまいます。駆けつけたロメオは2人を制止しますが、ティボルトの剣がマキューシオに刺し息絶えてしまう。友人の死を目の前で見たロメオは、剣を抜いてティボルトを倒します。そこにヴェローナ大公が現れ、ロメオを街から追放する条件でその場を収め、両家の面々に対し憎しみを捨てるように強く諫めます
第4幕(全2場)
ジュリエットは忍んで来たロメオに対し、従兄ティボルトの殺害したことを許し、2人は愛の幸福の中で一晩をともに過ごします。夜明けには去らなければなりませんでした。一人残ったジュリエットのもとに父キャピュレット卿がローレンス神父とともに現れ、パリス伯爵との結婚を宣誓くます。絶望に打ちひしがれたジュリエットに対し、ローレンス神父は一計を案じます。神父は一日仮死状態になれる薬を与え、墓からロメオとともに逃げるよう告げます。
第2場 キャピュレット家の屋敷の中における壮麗な広間、宮殿の回廊
宮殿の回廊では、ジュリエットとパリス伯爵との結婚が行われています。伯爵が指輪をはめようとした瞬間、ジュリエットは隠し持っていた薬を密かに飲み、突然倒れて仮死状態となます。周囲の人々はただ驚愕するばかりです。
第5幕 キャピュレット家の地下の墓所
神父からの伝言が遅れてしまったため、計画について知らなかったロメオは、ジュリエットが死んだことを聞いてすぐに墓所へ駆けつけます。ジュリエットの姿を見たロメオは絶望し、自ら持っていた毒薬を飲みます。その直後にジュリエットが目覚め、二人は再会の歓喜に震えるが、全身に毒がまわったロメオはジュリエットの腕の中に崩れる。毒を飲んだことを知ったジュリエットは、後を追って短剣で胸を刺し、二人は最後の口づけを交わして息絶えて幕がおります。
グノーの音楽と感想
グノーはマスネと同じフランスのオペラ作曲家なので、シェイクスピアの傑作ラブストーリーである『ロメオとジュリエット』でもマスネのような甘くロマンチックな世界を期待していましたが、グノーはマスネとは全くちがう性格の作曲家であることを痛感させられました。指揮者のジャナンドレア・ノセダによると、グノーは音楽学者のような面があり、論理的に音楽を構成していくタイプだそうですかが、このオペラの音楽の構成は考えつくされており、全体として完成度の堅い重量級の作品に仕上がっていたように感じました。
最初のプロローグでは、激しい嵐を思わせる管弦楽による序奏で両家の憎しみが描かれ、重厚な合唱によりこれから始まる悲劇のあらましを説明するあたりから、悲劇を夜間させる物語全体が詰め込まれているようで、マスネのオペラとは全く違うなことを世化させられました。
グノーのオペラ『ロメオとジュリエット』は、演劇版と比べても、セリフが少ない分だけ中身が濃く凝集されたような重

幕が開くとプロローグの重たい音楽からガラッと変わって、キャピュレッ家の仮面舞踏会の場面から始まります。ジュリエットが登場して歌うアリア「私はうっとり夢の中で生きてきたの・・・」は輝かしく情熱的なアリアで高音のコルトローラを美しく歌います。マキューシオが登場し、彼の明るい性格を表現した個性的なアリアを歌います。ロメオも登場して輝かしい歌声のアリアを歌います。
ロメオはジュリエットに一目ぼれして「美しい天使よ・・・」と甘く美しい声でアリアを歌います。お互いに広魅かれた

第3幕第1場でローラン神父の立ち合いの二人の結婚のシーンでは荘厳な音楽が演奏されますが、第2場の初めではロメオの小姓ステファーノがメゾソプラノの美しく楽しいアリアでキャピュレット家の人々を皮肉ります。この美しいアリアがきっかけで、ティボルトがマキューシオを殺し、ロメオの怒りが燃え上がりティボルトを刺し殺してしまいます。ティボルトの死の場面では、グノーは極めて荘厳な音楽を上手に使っています。それに加えて両家の争いの退廃的要素音楽で表現されているのはさすがだと思いました。
第4幕第1場や第5幕でもロメオとジュリエットの美しい愛の2重唱がクライマックスとなっていますが、激しい音楽や悲

シェイクスピアの原作ではロミオ16歳、ジュリエット14歳という設定ですが、さすがに一流のオペラ歌手がこの年齢設定を演じるのは無理ですので、クノーのオペラでは、映画やバレエのような若い男女の純愛物語とは一味違った情熱的な恋の物語に仕上げたものと考えられます。それでもロミオとジュリエットの二重唱をたくさん入れて、舞台の中でジュリエットが成長していくように演じられていました。
グノーの『ロメオとジュリエット』を今回初めて鑑賞して、音楽構成も素晴らしく、燃えるように情熱的なアリアや二重唱も美しく、非常に完成度の高い傑作オペラだと思いました。このような傑作オペラがなぜ上演の機会が少ないのか不思議な気もしますが、おそらく歌手に演技力も含めて極めて高い力量とロメオとジュリエットの二人の息がぴったり合わないと成功しない難しさがあるからだと思います。
今回のメトロポリタンオペラでのグノーの『ロメオとジュリエット』の上演はドリームキャストの名に恥じない最高の歌手による舞台でした。
ジュリエット役のディアナ・ダムラウは声の美しさ、音域の広さ、声量ともすばらしく、それに加えて本格的俳優を凌ぐ演技力で、若いジュリエットを演ずるため第1幕では舞台を走りまくり、舞台の中で人間的成長する姿を演技力と歌唱表現

ロメオ役のヴィットーリオ・グリゴーロは高い演技力に加え、とろける様な魅惑的な甘い恋の声から、過激ともいえる情熱的な表現まで歌の表現力が素晴らしく魅力的なロメオを見事に演じていました。それに加えて素晴らしかったのは、ロメオとジュリエットの呼吸がぴったり合っていて、歌も演技もふたりが本当に愛し合っているように感じさせたことでした。インタビューで。二人はお互いに芸術家として尊敬しあっており、芸術家として恋をしているような関係だからこのような演技ができたのだろうと語っていたことが印象的でした。
マキューシオ役のエリオット・マドールは明るいキャラクターとアリアが魅力的でした。ロメオの小姓ステファーノ役のウラジミール・ヴェレースは、一時舞台の雰囲気を一変させる明るく加賀安傘しいアリアを披露し強く印象に残りました。
ジャナンドレア・ノセダが指揮したオーケストラは、変化と起伏の激しいグノーの難しい音楽を歌手たちと一体となって表現していました。バートレット・シャーの自然に時間が流れるような演出は、実力ある歌手の魅力を着渡出せる意味で効果的だったと思います。子の魅力ある舞台は、歌手陣とオーケストラ、演出しスタッフが最高水準だったからこそ成功したものと感じ、爽やかな感動が残る舞台でした。
[ MET上演日 2017年1月21日 ]
上映期間:2017年2月25日(土)〜3月3日(金)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ 演出:バートレット・シャー
出演:ディアナ・ダムラウ、ヴィットーリオ・グリゴーロ、エリオット・マドール、ミハイル・ペトレンコ
上映時間:3時間30分(休憩1回) 言語:フランス語

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バレエ『ロメオとジュリエット』Ballet“Romeo andJuliet” バレエ『ロメオとジュリエット』は、イギリスの文豪シェイクスピアの純愛の悲劇『ロミオとジュリエット』に、ロシアの作曲家・プロコフィエフがバレエ音楽を作曲して作られた、古典バレエの傑作です。物語は誰もが知っているように、敵対する家に生まれたふたりが恋に落ち、死によって思いを遂げるという4日間のラブストーリーです。... more

『ロメオとジュリエット』を題材にしたオペラには、グノーの作品の他に。ベッリーニの『カプレーティ家とモンテッキ家』というさくひんがありますね。2016年藤原歌劇団の公演で観ました。憂いを秘めたメロディー・ラインに彩られたアリアゃフィナーレ中盤「天の救いとお力を」の五重唱美しいハーモニー、ロメオがジュリエッタの死を嘆き悲しむアリア「ああ、君の清らかな魂が」から死に至るまでの音楽など、ベッリーニの音楽が持つ旋律美が魅力の作品でした。グノーの作品は、dezireさんのブログで初めて知りましたが、ベッリーニの作品と全く違ったオペラのようで、私も機会があったら是非鑑賞したいと思います。いつも楽しい情報ありがとうございます。
ベッリーニの『カプレーティ家とモンテッキ家』も興味はありましたが、まだ鑑賞したことがありません。ベッリーニとグノーでは、同じストーリーでも全く違うオペラになるのでは、と思っていましたが、やはり、ベッリーニの音楽が持つ旋律の美しさが味わえる作品なのですね。機会があったら鑑賞したいと思います。情報ありがとうございました。
ヴェローナに行って、館をも見学してきました。
丁寧な解説に、感心しています。今度見るときの参考にさせていただきます。
『ロメオとジュリエット』をオペラで鑑賞したのは初めてで、期待を上回るすばらしい舞台でした。オリビア・ハッセイの映画や、バレエの『ロメオとジュリエット』は好きでしたが、このオペラは、また違った魅力を感じました。
ヴェローナ二も行かれたのですね。私も一度行ってみたいと思っています。
ロミオとジュリエットも旋律の美しさや、良い意味での単純なストーリーは、格別な味があります。
楽曲の人気は時代とともに変わるので、いずれは、グノーがプッチーニやヴェルディを抜くのかもしれませんね。
グリゴーロのロメオは、スカラ座での公演(同じシェールの演出)以来、ぜひとも映像で見たい!と思っていましたので、映画館で見られて大満足です。
スカラ座でも77年ぶりだったようですから、グノーは「ファウスト」が上演されることが多いようですね。やっぱり、なかなか役にふさわしい歌手がいないというのが理由かもしれません。
オペラ愛好家の中には、まだまだ仮装大会を好む人も多く、グリゴーロは、動き過ぎ、演技過剰と批判されることも多いのですが、ダムラウと一緒なら批判されないようです。この二人、けっこう性格が似てますね。カーテンコールでのはしゃぎぶりとか、天真爛漫でいい年して可愛い。
まだ先のことなので、実現するかどうかは分かりませんが、ROHの来日公演の「ファウスト」では、このコンビの名前があがっていますね。楽しみです。
グリゴーロとダムラウのコンビは最高に良かったですね。この二人、けっこう性格が似ていると言われてみると、確かに二人とも天真爛漫な性格で、絶妙のコンビだったと改めて感じました。
グノーの「ファウスト」はかなり前に一度観たことがありますが、また上演されるのでしたら、是非観たいですね。あまり上演される機会が少ないのは、一般に対する知名度の問題もあると思いますが、やはりキャスティングなど上演が難しいオペラなのでしょうね。
グノーのオペラは日本ではあまりなじみがないようです。海外の一流歌劇場の来日公演のばあいは、1回の開演費用が高額ななため、どうしても集客が期待できる人気オペラ以外あまり上演されませんね。、新国立劇場でも創立20年にしてもマスネの作品は何度も上演されていますが、グノーの作品は創立20年にして度上演されていません。以前「ファウスト」を観て、今回「ロメオとジュリエット」を鑑賞しましたが、音楽的には考え抜かれた音楽構成で完成度の高いオペラだと思いました。ただ、歌手に高度の音楽表現力と演技力が要求される作品であることを強く感じました。一般的な知名度が低い割に上演の難度が高いため。上演しにくいオペラなのでしょうね。
しかしこの作品は素晴らしかった。
オペラはもっぱらライブビューイングですが、おっしゃる通り2人の呼吸がぴったりあっていて、かつ双方歌と演技力が素晴らしく、かつのびのびとしていて、本当に見応えのある悲劇ではありますが楽しい作品でした。
レビュー拝見してまた作品を見直せたような。ありがとうございます。(*^_^*)
METライブビューイングは、日本では上演されそうもない作品があると、時々見に行きます。
グノーは優れたオペラ作曲家だと思いますが。グノーのオペラはほとんど上演される機会がないのを不思議におもっていました。今回の『ロメオとジュリエット』を観て、マスネやプッチーニとの違いを強くに感じました。作品としては傑作ですが、マスネのオペラでは音楽全体が甘くロマンチックで、プッチーニのオペラも音楽事態が情熱的な恋の雰囲気があるのに対して、今回のグノーの『ロメオとジュリエット』では音楽が重たく、恋愛劇は殆ど二人魔恋人のアリアや愛の二重唱に追っているので、今回のような最高のキャストを揃えて二人の恋を表現していかないとオペラとして成立しないような気がしました。
とにかくMETのドリームキャストでの上演は最高でした。
オルガニストでもあったグノーは、繊細で甘美なマスネの音楽と比べると若干骨太な感じでしょうか。でも《ファウスト》(宝石の歌)にも《ロメオとジュリエット》にもソプラノの魅力的なアリアがありますね。このオペラ、私が選んだ3つ以外にもアラーニャとゲオルギュー(オランジュ、2002)、アラーニャとネトレプコ(MET、2007)、セッコとマチャイゼ(アレーナ・ディ・ベローナ、2011、2015年にも上演されているようですが、こちらはキャスト不明)と、結構上演されています。中には一部をYouTubeで見られるものもあります。また、シェイクスピアをもとにしたものではありませんが、ベッリー二の《モンテッキとカプレーティ》もいいですよ。これはロメオがズボン役で、この中にも「ああ、幾たびか」というジュリエットのアリアがあり、単独でもよく歌われます。バレエの『ロミオとジュリエット』(プロコフィエフ)も素敵な作品で、音楽も素晴らしいですが、いろいろな振り付けを見比べるのも楽しいです。ブログの過去記事で何回か取り上げましたのでお読みいただければと思います。
バレエ『ロミオとジュリエット』(2013/07/06)
ロミオとジュリエット ― バレエとオペラの違い ―
ご指摘のように、徹底的にロマンチックなマスネの音楽と比べると骨太な感じがするのは、グノーがオルガニストでもあった事を考えるとナックとできますね。
ベッリー二の「モンテッキとカプレーティ」も大変興味があります。上演機会があったら是非比べてみたいですね。同じシェークスピアの作品から発展させたも、色々な表現になるのは興味深いところです。