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芸術と自然の美を巡る旅  

ロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力

ロッシーニ『チェネレントラ』

Gioachino Rossini. "LaCenerentola"


ロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力_a0113718_16270090.jpg

 ロッシーニは『チェネレントラを25歳の時に作曲し、前年の『セビリアの理髪師』の成功に続いてオペラ作曲画としての地位を不動のものにしました。ロッシーニが3週間の期間に完成した『チェネレントラは、ソロ・ヴォイスとアンサンブルのための最高の作品をいくつも備えていると考えられています。





Rossinicomposed La Cenerentola when he was 25 years old, following the success of TheBarber of Seville the year before. La Cenerentola, which he completed in aperiod of three weeks, is considered to have some of his finest writing forsolo voice and ensembles. Rossini saved some time by reusing an overture fromLa gazzetta and part of an aria from The Barber of Seville and by enlisting acollaborator, Luca Agolini, who wrote the secco recitatives and three numbers(Alidoro's "Vasto teatro è il mondo", Clorinda's"Sventurata!" and the chorus "Ah, della bella incognita").The facsimile edition of the autograph has a different aria for Alidoro,"Fa' silenzio, odo un rumore"; this seems to have been added by ananonymous hand for an 1818 production. For an 1820 revival in Rome, Rossiniwrote a bravura replacement, "La, del ciel nell'arcano profondo". When you click the"Translate to English" in the lower right, you can read this articlein English.



 一口に言ってオペラといっても理念・哲学・超自然的力を歌い上げるドイツオペラや、生身の人間の赤裸々な姿を歌い上げるイタリアオペラは同じジャンルの音楽として同一に扱えないほど違います。同じイタリアオペラでも、ヴェルディやプッチーニのように壮大な人間劇と登場人物の心の葛藤を歌い上げています。それがイタリアオペラだと思っていましたが、ロッシーニのオペラは全く違うようです。今回の合唱指揮者・三澤洋史さんの解説によると、ロッシーニのオペラは、ヴェルディのオペラのような立派な脚本はなく、ある意味ではたわいのない物語を、歌唱芸術の極地とも言える超絶技巧のアリア、限界なまでの早口の歌の掛け合いなど音楽に歌唱にあらゆる嗜好を織り込んだ高度の音楽で飾り立てて芸術作品に仕立てているのだそうです。たわいもない物語を題材にしているという点ではモーツアルトのオペラと重なるものがありますが、モーツアルトのオペラが人間の心層を深えぐりだすようなリアリズムが潜んでいるのにロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力_a0113718_16295739.jpg対して、ロッシーニのオペラの描く人物は表面的で、内容は芝居かがっているとさえ思える。ロッシーニとモーツアルトの共通性と違いは、同じ作家の脚本をオペラにした「せりビアの理髪師」と「フィガロの結婚」を比べてみるとわかるような気がします。ロッシーニのオペラの魅力は、脚本の内容ではなく、純粋に音楽そのものが全てなのだと思います。



 ヴェルディやプッチーニのオペラでは脚本が重厚で面白いのでそれだけでもある程度楽しめます。それに対してロッシーニのオペラは歌唱が命であるため、高いレベルの歌手を集めないと面白くもなんともないことになることがあるようです。従ってロッシーニのオペラでは相当実力のある歌手がそろうかが公演の成功のポイントとなるようです。



ロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力_a0113718_16390591.jpg今回の新国立劇場での「チェネレントラ」 上演は、アンジェリーナ〔チェネレントラ〕役に世界でも屈指のメゾソプラノ・ヴェッセリーナ・カサロヴァ、王子ラミーロ役にアントニーノ・シラグーザと世界でも超一流の歌手を向かえ、端役の狂言回しであるチェネレントの二人の姉の役に、幸田浩子と清水華澄という日本のソプラノ界のトップトップ歌手を配するという豪華な配役で、おとぎ話「シンデレラ」を素晴らしい芸術作品として聴かせてくれました、



ロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力_a0113718_16362469.jpg 通常のオペラではヒロインはソプラノですが、ロッシーニの「チェネレントラ」ではアルトを主役として、二人の姉のソプラノを高音の軽薄さで対比させています。今回の舞台では、従って主役アンジェリーナは派手なソプラノ歌手に負けない圧倒的な存在感が要求されます。主役カサロヴァは、期待通り圧倒的な歌唱力で、特の「悲しみと涙を背負い」のアリアは圧倒的な迫力で舞台のフィナーレにふさわしい快演でした。ただ欲を言えば、カサロヴァは要望も歌唱も貫禄があり堂々とし過ぎていて、いじめられ虐げられている「シンデレラ」という雰囲気が全くなく、初めから夜の女王のようでした。オペラは歌唱が命なのでこれでよいと思いますが、演劇やドラマだったら完全なミスキャストと言われたでしょう。女王のような役でもう一度聞きたいと思いました。



ロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力_a0113718_16373873.jpg 王子ラミーロ役にシラグーザの歌唱は、声の質、声量ともほかの歌手の数段上を行く素晴らしいものでした。特に「「誓ってまた見つける」のアリアは、ハイCを含む圧倒的な歌唱は、ビロードのように肌触りまのよい、それでいて声量と迫力があり、会場から割れるような拍手でした。拍手が鳴り止まず手拍子になってしまい、オペラでは珍しいアリアのアンコールがありました。シラグーザの歌を聴いただけで、このオペラを聴きにきて良かったと思いました。王子ラミーロ役にシラグーザの歌唱は、声の質、声量ともほかの歌手の数段上を行く素晴らしいものでした。特に「「誓ってまた見つける」のアリアは、ハイCを含む圧倒的な歌唱は、ビロードのように肌触りまのよい、それでいて声量と迫力があり、会場から割れるような拍手でした。拍手が鳴り止まず手拍子になってしまい、オペラでは珍しいアリアのアンコールがありました。シラグーザの歌を聴いただけで、このオペラを聴きにきて良かったと思いました。



ロッシーニのオペラ作曲家としての地位を不動にした傑作オペラとロッシーニの魅力_a0113718_16414796.jpg 主役の二人の存在感が圧倒的だったため他の歌手の印象を吹き飛ばしてしまったような館がありますが、日本の幸田浩子と清水華澄も含めも他の歌手も普通の公演だったら主役を努めてもおかしくないと思うほど立派な歌唱でした。〔2009.6.20 新国立劇場〕



 ロッシーニは数多いオペラの中でも『セビリアの理髪師』意外の多く日本ではほとんど上演されず、時代遅れの作曲家と見る人もいるようです。イタリア、ではロッシーニはオペラ史上でモンテヴェルディ、モーツァルト、ワーグナーに比肩する傑出した天才であったと認識されており、「オペラ王」といえる天才として尊敬されています。


 ロッシーニの音楽はある意味ではたわいのない物語にたいして、感情を軽くほほえみながら表現します。その表現は喜劇でもあり悲劇的でもあり、知的で頭脳的でもあります。音楽的な軽快さ、リズム感、スピード感は、バロック音楽にも共通する部分がありますが、モダニズム的要素も感じさせます。


 ロッシーニがイタリア以外でも再評価されたのは、1984年に蘇演された『ランスへの旅』が一大センセーションを巻き起こした時でした。それはオペラの常識を超えて、筋らしい筋もないのに、「ロッシーニの中でももつとも美しく作られている」と絶賛を浴びました。ロッシーニの生地ペーザロで行われる「ロッシーニフェスティバル」の芸術監督であるアルベルト・ゼッダ氏は、「『ランスへの旅』にはロッシーニが理想とした「感情」が描かれている、それはヴェルディやプッチーニの描いたリアルな感情ではなく、抽象的なもの。個人のレベルを超えた、人間を理想化した上での感情である」と述べています。


 その「感情」を音楽、歌で行うのが、ロッシーニの大きな魅力と考えられます。超絶技巧的でかつ華麗な、チェネレントラのアリア「悲しみと涙のうちに生まれ」は、まさにその「感情」を歌った最高のアリアと言えるのだと思います。


 ロッシーニは音楽を通して情熱、愛、死、苦しみ、幸せなどの感情の質を理想化して描き、そこに深遠で豊かな普遍性を獲得しようとしましした。現実世界からかけ離れた表現。それは現実の感情を写実しようとするロマン派と違い芸術文化における曖昧さ、抽象性、常軌を逸している事の価値を持っていました。そのようなロッシーニの音楽がモダンで新しすぎ進みすぎていたため、芸術上に抽象という概念が生まれるまで本当に理解されていなかったのではないかと思います。ロッシーニが44歳で筆を折って音楽界から引退したのは、彼の音楽が古いと感じたからはなく、音楽が当時としては斬新で進みすぎていたため、本当に理解されていないことに苦悩し、時代に限界を感じていたからではないかと考えられます。







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by desire_san | 2017-03-29 16:46 | オペラ | Comments(2)
Commented by rollingwest at 2017-04-01 07:08
今日から4月なのに無茶苦茶寒いですね~!東京は開花宣言が出て10日以上経つのにまだ全体は4~5分咲き、来週から本格的な春を迎える感じですね。新年度もあらためてよろしくお願いいたします。
Commented by desire_san at 2017-04-01 10:55
rollingwestさん、会社でいえば新年度になりますね。
今年は、4月になっても、未だ冬のように寒く、桜の花の開花がおそいようですね。
今年度も、よろしくお願いいたします。

by desire_san