ブログトップ

dezire_photo & art

desireart.exblog.jp

心に残った自然とアート   

声の美しさを追求する究極のイタリア・オペラ

ベッリーニ『ノルマ』
VincenzoBellini "Norma"

a0113718_17410179.jpg


 33才という若さで世を去ったベッリーニは、全部で10作のオペラを書、『ノルマ』は、その中でも最高傑作と言われています。ノルマの葛藤が中核をなす典型的な「プリマ・ドンナ・オペラ」で、声の美しさを追求する究極のイタリア・オペラと言えるかもしれません。しかし一方で、ベッリーニ『ノルマ』はすでに、女主人公ノルマに歌唱装飾だけに頼らずドラマティックな唱法でドラマを展開することが求められている点で、ロッシーニのベルカントの時代を超えて、新しい19世紀のヴェルディなどのオペラにより近いということができます。





序曲は、優れた構成と緊迫感を持ち、この一曲で演奏してもよいような完成度の高い管弦楽曲となっていました。


 

【第1幕】第1

時は紀元前50年頃、舞台はローマ領ガリア地方。ローマ皇帝カエサルによりガリア地方(現在のフランス)は征服され、ガリアの民衆はローマの圧政に苦しんでいました。力強い合唱でローマとの戦いを望むガリアの民衆は、巫女ノルマから神のお告げを待っていました。ノルマは民族の心の支えとなっていました。


しかしノルマは、密かにガリア地方を治めるローマの総督ポリオーネとの間に二人の子供がいる関係でした。しかし、ポリオーネの心はノルマから離れ、彼は若い尼僧・アダルジーザに心が映っており、自分の恋を平然と抒情性と劇性を備えた美しいアリアで歌います。

 

a0113718_17441209.jpgポリオーネが退場し、人々が勇壮な音楽とともに現れ、巫女ノルマが登場します。ノルマのアリア「清らかな女神」はこのオペラの中でも屈指の名曲です。後半の「ああ、愛しい人、帰って」は、敵のローマ人を愛してしまった苦しい胸の内を切々と歌い、後ろの民衆の復讐を誓う合唱との対比が見事です。


そんな時、総督ポリオーネにローマへの帰還の命令がでました。 ポリオーネはアダルジーザに一緒に帰ろうと誘います。ポリオーネは、ふてぶてしく彼女を口説こうと、愛の歌を歌いますが、アダルジーザは清らかな巫女で心の疚しさを感じています。劣悪な男・ポリオーネはアダルジーザを騙し続けようと美しいテノールの愛の歌を歌い、心の疚しさに悩むアダルジーザとの心の駆け引きとせめぎあいが織りなす二人の愛の二重唱は迫力がありました。 



2

a0113718_17455272.jpg舞台がせりあがり。木の根の下のノルマの家の中の場面となります。何も知らないアダルジーザは、巫女のノルマにポリオーネとのことを相談しにきました。アダルジーザの告白のアリアと、ノルマの心の中で歌う「ああ思い出す、私もそうだった」が美しく絡み合います。男をいちずに思うアダルジーザを優しい言葉で励ますノルマ、アダルジーザの愛の喜びの表現とノルマの複雑な心理の表現が交錯する二人の二重唱として悲しくも美しく迫力がありました。


しかしノルマはアダルジーザの相手が誰だか知りませんでした。そこにポリオーネが駆けつけてきて、ノルマは総てが知ります。「彼女には罪はない」「とノルマはポリオーネに詰め寄ります。アダルジーザもポリオーネに対して不信感を持ち始めます。強引にアダルジーザを連れて行こうとするポリオーネの不実をノルマは激しく非難します、ポリオーネは開き直って他人事のように「俺を愛するも運命なら、アダルジーザを愛したのも運命、愛は何よりも強いのだ。」と歌いますが、美しいテノールの声がポリオーネの人間的軽さを見事に表現していました。ふたりの激しい歌のせめぎあいの二重唱に、事の次第を知って躊躇するアダルジーザの歌加わり、感情表現が絡み合った三重唱を展開します。


a0113718_17470324.jpg2場のノルマのアダルジーザの二重唱の夢を見るような柔らかい旋律から、「不実な人」の激情的な旋律に変わっていく非常に優れた音楽的構成に、ベッリーニの音楽的才能の素晴らしさを強く印象付けられました。



【第2幕】第1

 ベッリーニのロマンチックな悲しい序曲で幕が開きます。アダルジーザは男を退けますが、ノルマの怒りはおさまりません。ノルマは寝ている二人の子供を殺そうとしますができず「愛しい、愛しい子供たち」と美しいアリアを歌います。


そこにアダルジーザが入ってきます。ノルマは彼女に「自分の死をもって清めることとした」と告げ、アダルジーザに二人の子供を連れてポリオーネと共にローマに行ってほしい、子供たちを守ってほしいと頼みます。アダルジーザはノルマを信じており、ノルマを励まし、ふたりは友達だと二人の女性の友情を力強く歌います。ポリオーネについていくことを断ります。この「お願い、子供たちを連れて行って」から中間部にあたる「御覧なさい、ノルマ」と、後半部の「永遠にあなたは友」の長大な二重唱はオペラ『ノルマ』の中でも特に美しく、ふたりのハーモニーの美しさが際立っていました。アダルジーザは自分の悲しい運命に泣くばかりですが、ノルマはまだポリオーネが戻ってくる都心している、ふたりの女性の性格の違いを微妙に表現していた二人の演技は見事でした。]



第2場

a0113718_17483224.jpg舞台は西域の森、オロヴェーゾとガリアの民衆の男性の合唱に、オロヴェーゾのバスのソロで「今は機会が熟するのをまとう」と民衆を諫めます。ノルマはポリオーネがアダルジーザの説得を聴かなかったのを知り、ノルマの気持ちは固まり、ドラを3回鳴らしてガリアの民衆を集めます。ノルマは、祭壇に上がりローマと戦うことを宣言すると、民衆は熱狂し「闘いだ」と力強い合唱が響き渡ります。


ます。そのとき、アダルジーザに会うため巫女の神殿に忍び込んだポリオーネが捕らえられ、ガリアの民衆の前に引き立てられます。


ノルマは一度、民衆を退けます。囚われの身となったポリオーネをノルマは殺そうとしますが、ノルマには彼を殺せません。「とうとう私の手に」「ポリオーネが自分のもとに戻らないなら、アダルジーザを火やぶりにする」と決意を示すノルマはと、ノルマにひざまずいて、自分の命は奪ってもアダルジーザだけは助けてほしいと嘆願するポリオーネの「君の足元で・・・」の歌が交錯します。



a0113718_17495797.jpgノルマは再び民衆を集めました。そして、祖国を裏切った一人の女がいることを明らかにします。民衆から怒号があびせられる中、ノルマは裏切ったのは自分自身だと宣言し、自らが火刑台に上がろうします。「あなたが裏切ったこの心・・・・自分が生贄になる」と歌うノルマの気高さと愛の深さに心を打たれたポリオーネは、ノルマを抱きしめキスをします。「逃げようとしてもダメなの、残酷なローマ人・・」「崇高な女性・・・」ノルマとポリオーネの最期の愛の二重唱が控えめな合唱を従えて歌われます。ノルマは二人の子供を嫌がる父オロヴェーゾに託し、火の中に身を投じ、ポリオーネがそれに続きます。音楽のフィナーレの感動的な高まりで幕を閉じます。



タイトルロールのノルマは、民族の自然崇拝を示すオークの木の下に住んでおり、民衆を導く巫女の長の威厳と自然を感じる力、一人の男を想う女性など多面性を歌で表現をする必要のあり、ソプラノでは一番難しいと言われ難役です。ノルマ役のソンドラ・ラトヴァノスキーは、完璧なベルカント唱法の美しい声で、有名なアリア「清き女神」に現れる威厳、ポリオーネに対する愛、小さな子供の行く末を思う母性、アダルジーザへの友情なとも見事に歌い分けていました。 


アダルジーザ役のジョイス・ディドナートは、ノルマと比べて若く純粋な役ですが、ポリオーネとの愛の二重唱、アダルジーザの愛の喜びの表現とノルマの複雑な心理の表現が交錯する二人の二重唱などで、ノルマに負けぬ存在感があました。このオペラとしてはこのくらいの重量感は必要なので難しいのですが、ノルマより若く純粋な娘という雰囲気を出すのには、実力派メゾソプラノのジョイス・ディドナートは少し重く強すぎるようにも感じました。


ポリオーネ役のジョセフ・カレーヤは、第一幕では傲慢な誘い低男でしたが、第2幕で囚われ人となって、アダルジーザの助けを請うあたりから少しずつ人間性が変化していくのを、歌で見事に表現していました。


門族の団結を表す劇的な合唱を効果的に使われ、ベッリーニの実力が存分に発揮される中で、メトロポリタンおヘラだから上演できたオボラではないかと思いました。

20171119日 METライブビューイング 東劇)。



参考文献

スタンダード・オペラ鑑賞ハンドブック (1) イタリア・オペラ()  音楽之友社  2003




このブログを見た方は、下のマークをクリックお願いいたします。

にほんブログ村 クラシックブログ オペラへ
にほんブログ村 クラシックブログへ



[PR]
by desire_san | 2018-02-22 17:57 | オペラ | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : https://desireart.exblog.jp/tb/238264194
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by Hara_Meary at 2018-02-25 19:56 x
こんにちは。
マリア・カラスの『ノルマ』は20世紀最高と言えるのではないでしょうか。『ノルマ』は歌の表現だけでなく、女優マリア・カラスの表現力素晴らしく、比類ないものだと思います。
Commented by KIroro_Cross at 2018-02-25 20:01 x
カラスがこの役に初めて挑戦したのは、まだ25歳の年の1948年フィレンツェででした。それ以来1965年までにこの役を世界のいろいろな劇場で演じ(ブエノス・アイレス、メキシコ・シティ、ミラノ、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク、ローマ、エピダロウスの野外劇場、パリ)、遠い古代ドゥルイド教の巫女の悲劇に、見る者を感動させずにおかない人間味豊かなドラマを持ち込んだ歌と演技で今なお超える者がない高みに達しただけでなく、19世紀のベル・カント唱法を現代にも通用する新たな生命を与えて蘇らせました。いくつか録音がありますが、セラフィンの指揮でデル・モナコと共演した放送録音は、60年盤で、深々とした大きな歌唱力はさすがに聴き手に強力に訴えかけてきます。CBS・ソニーから国内盤のCDで出ていると思います。
Commented by Haroemoryus at 2018-02-25 20:06 x
ベッリーニの『ノルマ』はやはりマリア・カラスが最高ですね。終幕の「この心を、あなたは裏切った」のなんという神々しさはまさに最高で、ノルマこそカラスであり、カラスこそノルマであると感じざるえませんね。
Commented by Haruma_Takahsshi at 2018-02-26 15:25 x
ベルカントを歌えるソプラノは世界でもごくわずかで、現代最もノルマを歌うのにふさわしいソプラノ歌手はもグルベローヴァでしょうね。『ノルマ』は日本で殆ど上演されたことがありませんが、それは日本人ソプラノで歌いきれる人はいないからだと思います。

by desire_san