ブログトップ

dezire_photo & art

desireart.exblog.jp

心に残った自然とアート   

東京で初公開された千手観音像の最高傑作、天平彫刻の傑作

葛井寺「千手観音菩薩」

Fujii-dera Thousand-armed Kannon


a0113718_14512386.jpg



 葛井寺は近鉄の藤井寺駅から徒歩で数分のところにあり、本堂に置かれた厨子の中には秘仏の千手観音菩薩坐像が安置されていると聞き。以前葛井寺訪れましたが、毎月18日しか扉が開かれないということで、観ることができませんでした。未だ見たことのない数少ない天平彫刻の傑作で、一度でよいから見たいと思っていましたが、東京国立博物館平成館で開かれた特別展「仁和寺と御室派のみほとけ― 天平と真言密教の名宝 ―」で、この千手観音像を見ることができると知り、鑑賞してきました。





Fujii-derais a Buddhist temple in Fujiidera, Osaka, Japan. The temple is associated withShingon Buddhism and has as its main image a sculpture of the Thousand-armedKannon. It is the fifth temple on the Saigoku Kannon.



 千の手と目を持ち、あらゆる方法で衆生を救うとされるのが千手観音です。日本の千手観音は、正面の2本の手を除き40本の手を持つのが一般的ですが、これは、仏教の世界では「三界二十五有」という観念があり. 三界六道を二十五種類に分けて考え. それぞれが二十五種類の世界を救う力があれば40本の手で表現したようです。



 千手観音が日本に伝わったのは8世紀で、当初は経典に厳密に作ろうと考え、実際に千本の手を持つ千手観音が作られました。しかし実際に千本の腕を作った像はごく稀で、現在日本に残っている千本の手を持つ千手観音は、唐招提寺の国宝・千手観音菩薩像と、この葛井寺の千手観音菩薩像だけです。唐招提寺の千手観音菩薩像は好きで何度かに見に行きましたので、ここで念願の葛井寺の千手観音菩薩像を見ることができたのは感激でした。




a0113718_14535194.jpg




 等身よりも大きい体に、1041本の腕を持つ姿には迫力がありました。東大寺法華堂の仏像を手掛けた工房の高い技術で制作されたと言われており、唐招提寺の千手観音菩薩像とは異なる作風の特徴が感じられます。唐招提寺の千手観音は木心乾漆像で、小脇手は腕も指もほぼ直線状に揃えて、一抹の重厚な精神性の表現を出していました。 




a0113718_14553221.jpg




 葛井寺の千手観音は、脱活乾漆像で、唐招提寺の千手観音と同じく両肩から千本の手が忠実に放射状に延びていますが、坐像の背後に大きな光背型に本尊を覆っている表現は壮観そのもので、その美しさは秀麗でした。脇手、台座の蓮肉敷茄子などは当初のものと言われ、様式、手法とも唐招提寺より初期の天平彫刻らしいと感じました。それ以上に尊顔と身体の均整の取れた美しさは天平彫刻の理想ともいえる美しさです。


 同合する両手は中指だけ合わさって外は少しだけ離れています。この指の表現は、今にも指が動き出しそうで、人々を助けに来てくれるように感じさせます。脇手も持ち物が蓮華、羂索、独鈷杵、1040本の手にひとつひとつ眼がついていて、ふっくらとした指の表情はそれぞれ異なり、これらも今にも動き出しそうです。


 葛井寺の千手観音は異形なのに絶妙なバランスにより、静かで心安らぐ仏の姿は高貴で気品がありました。天平仏らしい美的完成度の高さは、唐招提寺の千手観音菩薩像を凌ぎ、日本の千手観音の最高傑作と言えます。まさに天平の美を体感することができました。




 


この記事を読んだ方は上のマークをクリックして下さい。

にほんブログ村 美術ブログへ





[PR]
by desire_san | 2018-03-12 15:19 | 日本の美術・文化遺産 | Trackback | Comments(8)
トラックバックURL : https://desireart.exblog.jp/tb/238385688
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by snowdrop-momo at 2018-03-14 18:47
こんばんは。
嬉しいお知らせをありがとうございます。
やはりdesireさんはこの展覧会にも行かれたのですね!
葛井寺の千手観音像が見られて本当に良かったですね。
私も大阪のお寺では拝見する機会がなく
奈良か京都の国立博物館の展覧会で熟覧しました。

仰る通り、唐招提寺の千手観音とはかなり違う作風ですね。
唐招提寺は天平後期、鑑真周辺の中国の仏師の作風も感じさせます。大きな腕と小さな腕を組み合わせた、鳥の翼のような造形が印象的です。堂宇とも調和しています。

葛井寺像は肉身表現がより繊細で、
腕も同じ大きさのものを丹念に千余本並べていて
日本人の感覚によりぴったりくるように感じられます。
天平盛期の写実性を伝えるものと言えるのではないでしょうか。

道明寺の十一面観音像は
奈良国立博物館の展覧会「檀像 白檀仏から日本の木彫仏へ 」で見たのが最初です。
檀像も面白いですね。
Commented by desire_san at 2018-03-14 21:06
snowdrop-momoさん 早速のごコメントありがとうございます。

四分律に基づく南山律宗の継承者であり、4万人以上の人々に授戒を行った鑑真はが、日本から戒律を伝えるよう懇請を受け、困難を乗り越え来日しして、聖武上皇以下の歓待を受け、孝謙天皇の勅により戒壇の設立と授戒について全面的に一任されたひとです。唐招提寺は、鑑真が新田部親王の旧邸宅跡が与えられて創建し、戒壇を設置したお寺ですので、ご指摘の通り、唐招提寺の千手観音が中国の仏師の作風も感じさせるのもりかいできますね。

葛井寺の千手観音が、肉身表現がより繊細で、腕も同じ大きさのものを丹念に千余本並べていて日本人の感覚で創られているというsnowdrop-momoさんのご指摘は、大変共感致しました。こちらが本来の日本の天平盛期の写実性を伝えるものというご見解も、なるほどと思い、私の理解を深めることができました。

snowdrop-momoさんの感性に敬服いたしました。 ありがとうございました。
Commented by Amerinoseoria at 2018-03-15 21:12 x
こんばんは。
大坂に住んでいるので、西国33所第5番札所である葛井寺によく行きます。葛井寺の本尊千手観音像は大手・小手あわせて1041本をもち、優美な表情、均整の取れた体や衣の表現が素晴らしいです。江戸時代の出開帳以来、東京で展示されるのは初めだそうですが、葛井寺に行っても、普段は閉ざされた厨子の中に鎮座しているて、月1回だけ厨子の中のお姿を拝観するだけです。東京国立博物館では360度から拝観できるそうですが。ご覧になりましたか。 私は仏像は前に座って拝観するように制作されているので、360度後ろからも見ることは仏に失礼で、意味のないことだと思いますが。
Commented by desire_san at 2018-03-15 21:25
Amerinoseoriaさん  コメントありがとうございます。

葛井寺の千手観音像は、ご指摘のように優美な表情、均整の取れた体や衣の表現が美しく、まさに天平彫刻の傑作ですね。

この千手観音像を360度から拝観できることは、ご指摘のように私もあまり関心出来ることとは思えませんね。信仰の対象としての仏像としても、芸術品としても、表面から拝観することで最も貴く美しく見えるように制作されているので、美術研究者ならともかく、一般の人に後ろ魅せることは悪趣味としか思えません。以前阿修羅像が東京国立博物館で60度から拝観出来るようにしていたときは、下から覗いている人もいて不快感を感じました。

Commented by SIRIUS at 2018-03-17 17:08 x
初めまして。
コメントをいただきありがとうございます。
詳しく知らないままでトーハクを訪ねたのですが千手観音像の救いの手の説得力と迫力が素晴らしく又美しかったです。
一目見ただけで誰もが内包する宇宙が存在する事を教えてくれました。
それにしても裏側も見れてしまって恐れ多かったですね…舞台裏の匠の魂を見た気分になりました。
Commented by desire_san at 2018-03-19 00:57
SIRIUSさん  コメントありがとうございます。

「千手観音像の救いの手の説得力と迫力が素晴らしく、美しかった」という表現がこの仏像の魅力のすべてを表現していると感じました。
この仏像を一つ見ただけでね私も心がすっかり洗われた気分になりました。



Commented by 大東豊美 at 2018-03-19 11:43 x
先日は私のブログへお越しくださりありがとうございました!

お書きになっている文章から
その場にいるような臨場感が
蘇ってくるようです!

稀にみる美しう「みほとけさま」に
また出逢える日が楽しみになりました。

Commented by desire_san at 2018-03-20 14:15
大東豊美さん  コメント有賀穂等ございます。

以前奈良や京都を廻り、日本の優れた国宝の仏像はほとんとせ拝観してきましたが、葛井寺「千手観音菩薩」と 仁和寺「阿弥陀如来」は未公開で拝観することができなかったので、今回の「仁和寺と御室派のみほとけ― 天平と真言密教の名宝 ―」で念願がかないました。
葛井寺「千手観音菩薩」も 仁和寺「阿弥陀如来」も、期待していた以上に魅力があり、心から感動しました。
私のブログを読んでいただきありがとうございます。


by desire_san