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芸術と自然の美を巡る旅  

スペイン絵画黄金時代の類い希な才能、ムリーリョ、スルバラン、ベラスケスのの魅力

プラド美術館   

 Museo del Prado Ⅲ


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 プラド美術館は、1617世紀の絵画における世界最高レベルの美術館で、スペイン絵画コレクションは他の美術館に類のないものです。先に紹介した12世紀のロマネスク様式の壁画からエル・グレコの傑作、 ベラスケスのなど40点以上の傑作、ムリーリョ、リベーラ、スルバランなどスペインを代表する画家の代表作までを鑑賞することができました。









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ベラスケス

セビリア時代のベラスケスの作品には、激しい光と影のコントラストや、伝統的な理想主義とは真逆の写実主義などに、当時のイタリアのバロック絵画を牽引したカラヴァッジョの影響が表れています。プラド美術館展で来日する「東方三博士の礼拝」はこの影響が見られる作品だといえます。この作品の三博士のモデルの二人はベラスケスと義父パチェーコで、聖母のモデルは妻フアナ、そして幼子イエスのモデルはベラスケスの生まれたばかりの娘とされています。


ベラスケスは同時代の巨匠ルーベンスとも親交を持ち宮廷画家だけではなく王宮の重役に就くようになりした。 ルーベンスの影響を受けたベラスケスは、かつてルーベンスが8年間過ごしたイタリアへ向かうことを決意しました。憧れのイタリアで、若き日のルーベンスのように古典芸術の模写に励み、芸術の都ローマに1年ほど滞在します。自由奔放な古代の神々であふれたローマは、キリスト教と厳しい規律に支配された暗いマドリッドの宮廷とは対極にあり、ベラスケスはローマで精神的な自由を満喫し、創造力の翼を広げていったのでした。 

     

カラヴァジョの写実主義は、その強烈明暗表現とともに、その後のヨーロッパ絵画に大きな影響を与えました。それは、徹底した現実表現の中に見ることが出来る徹底した写実性の追及でした。それは、リベーラ、スルバランを初めスペインの画家の共通した特徴でした。特にベラスケスは、研ぎ澄まされた技量で、高貴で冷徹なリアリズムを貫徹し、国王から庶民まで人間存在の尊厳を表現しました。真実の作品の特徴として、服のしわや装飾品、背景などを粗いとも言えるタッチで描くのに、遠目で見ると立体的に見え、写実的にリアルに立ち現れてきます。


ベラスケスの描く、宗教的説話でもなければ、歴史物語でもない、ごく平凡な無名の庶民の何の変哲もない情景に対しても、強い光を浴びた頑固そうな老人の姿は、圧倒的な存在感を示しています。周囲の持ち物の素描なども、迫真的です。 


ベラスケスは、光と色彩を表現することを通じて、光は形態と色彩を包み、混然と融合させることによって、空気そのものを描き現すことを実現し、光と空気の革命と呼ばれる絵画上の革新を成し遂げたといわれています。線と輪郭線を中心とした線遠近法を主としたルネサンス以来の絵画を光と色を主とする空気遠近法の絵画に転換しました。ベラスケスは知的で絶え間のない技術の研鑽を重ね、素材・材質によってつくり出される美術的効果と輝く色彩の震えによって形態を捉える筆触を主体とする様式に到達しました。それは2世紀後の印象主義の手法を予告するものでした。



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Las Meninas (Spanish for The Maids of Honour) isa 1656 painting by Diego Velázquez, the leading artist of the Spanish GoldenAge, in the Museo del Prado in Madrid. The work's complex and enigmaticcomposition raises questions about reality and illusion, and creates anuncertain relationship between the viewer and the figures depicted. Because ofthese complexities, Las Meninas has been one of the most widely analyzed worksin Western painting.The painting shows a large room in the Royal Alcazar ofMadrid during the reign of King Philip IV of Spain, and presents severalfigures, most identifiable from the Spanish court, captured, according to somecommentators, in a particular moment as if in a snapshot.[2] Some look out ofthe canvas towards the viewer, while others interact among themselves. Theyoung Infanta Margaret Theresa is surrounded by her entourage of maids ofhonour, chaperone, bodyguard, two dwarfs and a dog. Just behind them, Velázquezportrays himself working at a large canvas. Velázquez looks outwards, beyondthe pictorial space to where a viewer of the painting would stand.[3] In thebackground there is a mirror that reflects the upper bodies of the king andqueen. They appear to be placed outside the picture space in a position similarto that of the viewer, although some scholars have speculated that their imageis a reflection from the painting Velázquez is shown working





ベラスケス『女官たち』(ラス・メニーナス) 1656




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 『女官たち(ラス・メニーナス)』はスペイン黄金世紀、国王フェリペ4世の宮廷画家宮でありフェリペ4世の最も信頼する友人として幾多の重要な役割を兼務して、画家としては異例の栄達を遂げた。ディエゴ・ベラスケスが制作した自身の最高傑作とされ、ベラスケスの長年の研究の成果が結集された西洋美術史において重要な作品とされています。『ラス・メニーナス』の舞台はフェリペ4世のマドリード宮殿の大きな一室で、スペイン宮廷人の様子がスナップ写真のように写し描かれています。窓、柱、扉口、鏡、装飾画、天井、キャンバスと格子のような垂直線と水平線を組合わせた構図で、登場人物の人物配置も、幼いマルガリータ王女を囲んでお付きの女官、待女、目付役、2人の小人と1匹の犬、背後にはカンバスに向かうベラスケス自身が描かれ、中央の王女の三角形を中心にピラミッド型に安定感をもって配され絵画の中で互いに交流しています。そういう綿密な計算によって意図的にほどこされる技巧のほかに、鏡のトリックで、この絵に入りきれない王と王妃の上半身を映すことで、もうひとつの虚構空間を設定して、二重の奥行きをもつ複雑な空間構成を達成しています。


 17世紀当時表現しうる空間表現を全て結集し、みる人までも取り込んでし傑作。中景を暗くし前景と遠景に光を満たした構図。放射線上に配置し、距離関係を認知させれる人物。絵を見るものは背景を映す鏡に映る王と王妃。この作品を描いているようなベラスケス自身、空間を画面だけに限らず、もっと手前や左右も含めて考えて描いている。


 王と王妃は、絵の外の鑑賞者と同じ立ち位置にして、絵の中に自分がいるという錯覚を起こさせ、人物の幾人かは絵の中から鑑賞者の側から鑑賞者の方を見ており、他の人は背後に鏡があり、観賞者と絵の登場人物との間に微妙な関係をあたえています。一方で「自意識過剰で計算し尽くされた絵画による示威行動で、今までのカンバス支える脚つきの画架を用いた絵画の可能性への問題提起」という最近の解釈のひとつにも共感を覚えました。その若い頃の写実の極限をゆくような絵と比べれば、パレットの色をかなり単純化した感じがします。正直言って非常に分かりにくい作品という印象が残りました。






ベラスケス『ブレダの開城』163435



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 『ブレダの開城』は、フェリペ4世軍の勝利を記念して描かれた実物大の戦況絵画1つで、スペインとオランダ間で降伏文書調印の3日後の鍵の受け渡しの場面です。絵画のテーマは戦闘ではなく和解です。鍵は構成のまさに中心点に描かれ、平行四辺形で囲むことで鍵を強調し、絵画全体の中心点はユスティヌス・ファン・ナッサウからスピノラへ手渡される鍵に置かれています。a0113718_13174849.jpgスピノラは敵の敗将に穏やかな表情で挨拶をして抱きしめ、長い攻防での敵の勇気や忍耐力を讃える言葉をかけています。『ブレダの開城』を通して、スピノラがオランダ軍に示した尊敬の態度を今日まで讃えられています。ベラスケスの絵で表現したかったのは、戦争の果てに示された人道愛でありオランダ軍にスピノラが示した配慮の賛美です。イタリア生まれの将軍アンブロジオ・スピノラとともにイタリアを訪れたことをきっかけにこの絵を制作しています。『ブレダの開城』はベラスケスの代表作の1つで「あらゆる絵画の中でも最もスペイン的な1枚」と評されています。ベラスケスはスピノラと交友があったため、『ブレダの開城』スピノラの外見描写も正確で、スピノラが記憶していた戦闘の内容も絵の構成に役立て、ブレダ包囲戦に関する体験に基づいた歴史知識を通して『ブレダの開城』の歴史的実況歴史的も正確に伝えています。『ブレダの開城』は、戦の場におけるスペインの力、忍耐、情け深さが1つになった瞬間に敬意を表しています。ベラスケスの画家としての力量を心ゆくまで味わえた大作でした。






 

ベラスケス『ファン・マルティネス・センタースの肖像』

1635年頃



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 ベラスケスは、肖像画において、他の画家より秀逸な表現力を発揮しています。彫刻家はふと手を止めて、画家を見ています。ベラスケスは芸術が手先の職人芸に終わらず、知的行為であることを同郷の彫刻家の姿を通して主張しています。その斬新な構想、的確な彩色と筆使い、人間描写の深み、格調の高さにおいて、抜群の感性と技量の真髄を感じることができます。






ベラスケス 『メニッポス』 1638年頃




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ベラスケスは哲人を古代の哲学者としてより、市井の貧しい武尊な人物として描きました。その人間的魅力は、顔の表情で感じさせています。地味ですが精神的気高さを感じさせる魅力的な作品だと感じました。






ベラスケス 『マルス』 1638



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 軍神マルスは、鎧を脱ぎ、武具を投げ出したマルスの姿は戦後の平和の象徴のようにも見えますが、君主フェリペ4世の力量と美徳を暗示していると見方もあります。ヴィーナスとの逢引きが神々にばれた後の放心状態のマルスを描いたルーベンスの歴史画とは対照的に、ベラスケスは自分が普段見ている人間を描いているようで、リアリズム的な表現になっています。








ベラスケス 『狩猟服姿のフェリペ四世』 1632-5



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フェリペ4世のうわべだけのきらびやかさだけでなく、人間的人格までも厳しく表現しています。





     

ベラスケス『王太子バルタサール・カルロス騎馬像』 1635年頃



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青い空を背景に、王太子が勇ましく馬に乗り、馬の姿も絶妙で、完成度の高い傑作。






ベラスケス 『バリューカスの少年』 1635-45



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 自然に人間存在そのものを表現したこの種の作品は、王侯、貴族の肖像画より人間の重みを感じさせます。少年存在感の強さはベララスケスの作品の中でも特に強く感じられます。







ベラスケス 『セバスチャン・デ・モラ』 1645



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 ベラスケスが王室の公式の肖像画よりも新しい表現を求めて、自由に新しい表現や手法を試した代表的な作品です。灰色がかった茶色の背景は、非常に希釈された顔料で処理され、モデルの周りに輝く効果を作り出す光を強調しています。顔と手の両方を素早く浅く塗り、一定のぼかしの印象を作り出ています。衣服は黒色から暗い袖とボタンが混じった緑色で、レースと金の刺繍は装飾的な効果を出しています。 漫画的な役割で楽しませる道化や、身体的又は精神的な欠陥のある人に対して思いやりと愛情を持って描き、その人間的存在に威厳を感じさせます。







ベラスケス 『東方三博士の礼賛』




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 カラブァッジオから光の陰影描写、衣服などは少しエル・グレコを踏襲しているようですが、人間的表現はリアルで、聖母の顔が普通の人間の美人女性のように感じに見えます。 ベラスケスは、聖母マリアを師のパチェーコの娘でベラスケスの妻となったフアナをモデルに、イエスは画家とフアナの間に生まれた長女を、手前で跪いているメルキオールのモデルは画家本人、後ろにいるカスパールは義父パチェーコと、肖像画の人物に良く似ています。 精緻な技法を駆使した写実的な表現を追求しており、リアリズムの性格が強く、宗教画的雰囲気が弱いように感じました。






ベラスケス 『セバスチャン・デ・モラ』 1645



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 ベラスケスが王室の公式の肖像画よりも新しい表現を求めて、自由に新しい表現や手法を試した代表的な作品です。灰色がかった茶色の背景は、非常に希釈された顔料で処理され、モデルの周りに輝く効果を作り出す光を強調しています。顔と手の両方を素早く浅く塗り、一定のぼかしの印象を作り出ています。衣服は黒色から暗い袖とボタンが混じった緑色で、レースと金の刺繍は装飾的な効果を出しています。 漫画的な役割で楽しませる道化や、身体的又は精神的な欠陥のある人に対して思いやりと愛情を持って描き、その人間的存在に威厳を感じさせます。



ベラスケスの部屋には何度か来日して親しまれているベラスケス の『マルガリータ王女』も展示されていました。隣の部屋には私の好きなムリーリョの傑作を観ることができました。







リベーラ

16世紀以来、スペイン国王はイタリアやネーデルランドの著名な画家を重用し、自国スペインの画家を冷遇し続けていました。バレンシアは、首都マドリードやトレドと並んで、17世紀スペイン自然主義の発展の地となり、マニエリスムからバロックへの発展を促す新しい美術状況は、対抗宗教改革の指導者として君臨したバレンシア大司教ファン・デ・リベーラによる宗教、文化政策を通して育っていきました。バレンシアを代表する画家フランシスコ・リバルタも、リベーラ大司教の厚い庇護を受けて当地で芸術を開花させました。バレンシア移住後は、リベーラ大司教の美術趣味を反映して、モニュメンタルな人物表現と、強烈な明暗対比を特徴とするテネプリズムの画法に一層深く傾斜していきました。テネプリズムとは、カラブァッジオの影響による明暗法の一種で、イタリア語の闇を意味するネオブラに由来するものです。リバスタ芸術は、17世紀後半に至るまで、バレンシアの芸術に決定的な影響を及ぼしました。


バレンシアが輩出した最大の画家、フセペ・デ・リベーラは、若くして芸術の震源地イタリアへ赴き、リバスタ晩年の自然主義をいっそう大胆に追及しました。ローマに滞在し、北イタリアを巡って研鑽を積み、パロマの貴族から依頼を受けるほど腕をあげて、カラブァッジオ画風の信奉者として名をなしていました。


リベーラは、1616年、ローマのから、スペイン副王領として繁栄極めるナポリに移りました。巨大な富を背景に、歴代副王の絵画収集熱も高いものでした。リベーラは、優れた力量に加えて、スペイン人であることもセールスポイントとしてのナポリの歴代の副王に徴用され、ナポリ画壇の指導者となりました。


ナポリはカラブァッジオが2度滞在し晩年の傑作を残した街で、ナポリに定住したナポリに定住したリベーラの芸術は、カラブァッジオの影響を鮮明に反映します。モデルに下層階級の人々を用い、暗い背景に強烈な光で劇的に人物を浮かび上がらせ、赤裸々に描き出しました。酷薄ともいえるリベーラのリアリズムは、カラブァッジオの自然主義を超えて、よりスペイン的特質を示していたともいえます。一方パトロンの趣味を反映して随時画風を立ち戻り、また、青年期にローマで見たラファエロの絵画を理想と考えたことも思い起こし、ローマ=ボローニャ派の画家たちから、清澄な色彩、静粛な抒情性と高貴さを吸収し、芸術に輝きと奥行きを加えていきました。1640年代のリベーラは、赤裸々リアれズムを脱却し、人物像に抒情性と高貴さを与え、安定した構図を模索して、最晩年はラファエロの古典主義に回帰するに至りました。






リベーラ 『天使によって牢獄から救出される聖ペトロ』

1639年頃




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リベーラの中期を代表する作品『天使によって牢獄から救出される聖ペトロ』は、キリスト十二弟子の筆頭であり、イエスより教会の中心たる「岩」を意味するアラム語「ケファ(Kephas。ギリシャ語ではPetros)」と名付けられた初代ローマ教皇の聖ペトロが師イエスの磔刑後、エルサレムで捉えられるも天使によって牢獄から救出された奇蹟を描いたものです。 厳しい明暗法と徹底した写実性、イタリアの解剖学に基づく正確な身体描写や極端だが説得力のある構図をされ、リベーラ独自の表現を感ずることができました。リベーラは、リアリズムと美の相克の画家でした。この作品は、版画を霊感として用いていたようです。



 



リベーラ 『聖ヒエロニムスとラッパを吹く天使』



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リベーラは、テオプリズム一辺倒ではなく、ローマ、ボローニャの画風を吸収し、均衡ある画風と明澄な色彩に加え精妙な表現と高貴さを習得していました。筆致は、非常に流麗であり、精妙な半陰影が随所に駆使され、色調は洗練を極めています。特に聖人の衣の白と朱色の色彩効果が鮮烈で、高貴に溢れています。





リベーラ 『ヤコブの夢』  1639




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この絵の主題は、旧約聖書から父イサク騙し、兄エサウの相続権を母リベカと共に奪ったが、激怒した兄エサウの復讐を恐れ逃げ出した道中に天使から啓示を受ける場面を描いたものです。厳しい明暗を用いながらも思想的なヤコブの姿と、幻想性を見出した光の表現は高く評価されました。 リベーラは、明瞭な背景と力強い筆跡による大胆な構図が取り入れ、独自の世界と様式を確立しました。強烈な光彩による厳しい明暗法を主体とした写実的描写が、リベラによって昇華されたと言えます。





リベーラ 『悔恨するマグダナのマリア』 1641年頃



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 リベーラの芸術には、聖女を描いたものは少ないのは、厳しいリアリズムを本源とする彼の芸術の特質そのものに関連するものと考えられます。 赤裸々なリアリズムを脱却した1630年代後半以降は、聖女を描いた作品が見られます。 この作品は明るい雲の空を背景に、甘味な気品を漂わせた聖女は 古典的な三角形構図にまとめあげたリベーラ女性聖人像の代表作です。




 


スルバラン

スルバランは最初にセビーリャで成功をおさめもました。スルバランの芸術は、見かけの派手さはありませんが、慎ましく誠実に、敬虔な信仰心に溢れた作品を描き上げました。スルバランの開花を祖最初に受け入れたのは、信仰の世界に深く沈潜していた修道士たちでした。セビーリャは大司教座を有し、一大宗教都市であるとともに、布教に情熱溢れた殿堂の修道士たちの新世界への旅ための地でした。17世紀初頭には。修道院の新築が相次ぎました。修道院は、しばしば大掛かりな絵画シリーズを求め、増大するこの種の注文を受けて、スルバランは目覚ましい画家としての成功を収めました。 スルバランは、自身の信仰心を感じさせ、リアルに描いていますが、聖なる場面であることを感じさせる作品を描きましした。




スルバラン 『無原罪の御宿』 1630-35年頃



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この『無原罪の御宿り』は、スルバランの最も著名な代表作のひとつであり、聖母マリアへの信仰も非常に深かった17世紀スペインで、最も一般的に描かれた主題のひとつです。 聖母マリアの原罪なき姿を描いたもので、≪無原罪の御宿り≫は、神の子イエスが宿る聖なる体器に選ばれた聖母マリアも、イエス同様、原罪から免れていという考えから、下弦の月に乗り地上へと降りてくる少女の姿をした聖母マリアの誕生と聖性を象徴化し表現されています。 スルバランこれをテーマとした作品を生涯の中で複数描かれています。








スルバラン 『カディスの防衛』 1634年頃



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スペインとイギリスとの開戦の翌年、8000もの大群で押し寄せるイギリス軍に対して、F・ギロンの率いる僅か600のスペイン守備隊が都市カディスを防衛した歴史的勝利の場面『カディスの防衛』を描いたもので、歴史的勝利の主要人物と、後景には都市カディスを防備するスペイン守備隊とイギリス軍との争いの場面が描かれています。 静謐な表現による深い精神性を描くことが本領のスルバランは、この作品のようなダイナミックな展開が求められる歴史画には本質的に向いないので、あまり評価されなかったようです。





スルバラン 『磔刑のキリストと画家』 1630-40年頃




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強い黒い背景に、光に照らされたキリストが浮かび上がり、その前にパレットを手にした画家が、キリストを見上げています。画家は祈りの気持ちから恭しく胸に手を当てて、口を開いており、キリストはこれを迎えるかのように、画家の方に眼を向けています。スルバランは、このような神秘的な表現と、金四泊感のある構図による静粛な宗教画を描きました。






スルバラン 『聖ガルシア』 1640年頃




きらびやかな衣装をまとった聖母像は、スルバラン芸の魅力的一面です。豪華な衣装はせりビア人の貴婦人に好まれました。・




スルバラン『聖ペテロ、ノラスコに現れた使徒、聖ペテロ』


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瞑想するノラスコの物語をリアル捉えています。スルバランの才能は、細部へのリアリズムと超自然的な情景描写を両立させた点にあります。簡単な重要構図は、見る人の視線を両聖人の緊迫した魂の対話に集中させ、神秘の光がこの場を一瞬のうちに奇跡の領域に高めています。地上の一切の要素を排した暗がりが、奇跡の意味を物語っています。スルバランはこのような神秘的な表現と緊迫感のある構図により、静粛な宗教画を描きました。






ムリーリョ

ムリーリョは、明確な自然主義と激しい明暗画法を学び、1630年代、セビーリャに君臨した盛期のスルバランの様式を学び、更に輝かしい色彩をコエ―ラスから学び、写実精神をリベーラから学びました。純朴なリアリズムが称賛され、ムリーリョはセビーリャ画壇に華々しくデビューしました。ムリーリョが描く、限りなく優しい宗教画は、アンダルシアの人々の魂の渇きを癒したことでしょう。宗教的題材が巧みに所門的な生活風景の中に取り込まれ、観る人は、いつしか慈愛あふれる絵画の世界に浸っていきます。聖母の姿は、時とともに初々しい乙女の愛らしい姿に変わっていきます。40歳を迎えたムリーリョは、画家としての名声を確立すると同時に、光と黄金色が溶け合う円熟期に向います。





ムリーリョ『聖イルデフォンソにカズラを渡す聖母』

1650-55年頃



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トレドの太史享で守護聖人となった聖イルデフォンソは聖母の処女性を擁護し、多くのマリアに関する著作を残しました。これを喜んだ聖母マリアが聖イルデフォンソもとに現した奇跡を描いています。聖母マリアと聖イルデフォンソを中心として、バロック期に典型的なX字形の構図を展開し、さらに天使たちを階段状に配し、見事な構図的な効果をあげています。右下の蝋燭を手にした老婆の存在は宗教上の意味が込められています。テネプリズムと駆使された色彩の効果が際立つ傑作です。


神の子イエスが降誕した夜、ベツレヘム郊外の貧しい羊飼いのところへ大天使が降り救世主が生まれたことを告げられ、急いでベツレヘムに向かい降誕して間もない聖子イエスを礼拝する場面です。14世紀中期頃盛んに描かれたテーマ「羊飼いの礼拝」を描いたものですが、陰影の光彩表現と細密な描写による場面構成はムリーリョの個性が存分に行かされています。






ムリーリョ『ロザリオの聖母』1650-1655年頃



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 『ロザリオの聖母』はムリーリョの個性が生かされた魅力ある聖母子画作品です。ドメニコ修道会の象徴する代表的な聖母子像とされ,ドメニコ修道会の創始者聖ドミニクスが祈祷中に聖母マリアが現れロザリオを与えたとの伝承に従っています。ムリーリョの柔らかく繊細な描写で人物の内面まで深く描く表現力と暗闇に射される光と影の明暗の対比が見事で、表情に誠実さあふれる聖母マリアと、聖母の腕に抱かれる幼いイエスが高貴に表現され、神々しさが感じられます。聖母子とロザリオ以外構成要素を持たないので、ムリーリョの内面を深く描く人物表現が生かされ、それが人々に誠実に伝わってくるのだと思います。そういう意味では『ロザリオの聖母』はムリーリョが最も得意とするテーマの一つだったのだと思います。





ムリーリョ『羊飼いの礼拝』 1650-55年頃




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 神の子イエスが降誕した夜、ベツレヘム郊外の貧しい羊飼いのところへ大天使が降り救世主が生まれたことを告げられ、急いでベツレヘムに向かい降誕して間もない聖子イエスを礼拝する場面です。14世紀中期頃盛んに描かれたテーマ「羊飼いの礼拝」を描いたものですが、陰影の光彩表現と細密な描写による場面構成はムリーリョの個性が存分に行かされています。







ムリーリョ 『小鳥のいる聖家族』



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キリスト画において脇役だったヨセフが、この作品では、主役描かれています。小鳥を片手に戯れるキリスト、幼児を支える大きな体格のよい身体から、包容力たくましい父性愛があふれ出ています。傍らで糸を紡ぎながらわが子を見守る聖母の微笑みは、愛情細やかな描写です。室内の照明や衣服の を描き分けるテオプリズム、勢いよく回る糸車を描写する筆致、また画面の調和と安定を与える三角形の構図など、技巧的にも頭角を現した若き日の作品です。宗教画というより、親密な家族を描いたよう雰囲気の作品に感じました。ムリーリョは、愛する妻とたくさんの子供に恵まれ、愛情あふれる生活を過ごしました。これが作品の愛情ある表現の源となっています。





ムリーリョ『無原罪の御宿り -エル・エスコリアル』



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 最初は東方で唱えられ神学者の間で議論された後公認された教理「無原罪の御宿り」は、神の子イエスの母である聖母マリアが、マリアの母アンナの胎内に宿った瞬間、神の恩寵により原罪から免れたというテーマで、17世紀スペインで盛んに描かれたテーマのひとつです。聖三位の一位であるイエス、その聖器のマリア、マリアを生んだアンナの関係性の議論は公認されるのにも時間がかかった複雑な規定ですが、セビーリャ派の画家ムリーリョは、学の無い者でも分かるように簡略化して情緒的に表現し、ムリーリョの『無原罪の御宿り』はセビーリャの地を中心に圧倒的な人気を得ることになりました。ムリーリョは生涯に十数点もこのテーマの作品を描いており、その何点かが来日しています。ムリーリョの聖母は清純なかわいらしい美人なのが魅力で、心が休まります。






「プラド美術館」は、3回に分けてレポトしました。今回の前に、以下の内容について詳しくレポートしていますのでご参照ください。文字をクリックすると、そのサイトにリンクします。

ルネサンス美術、フランドル美術

エルグレコ、ルーベンス、ゴヤ




 

参考文献:

大プラド美術館 スペインの誇り、巨匠たちの殿堂 公式図録 2006

高 保二郎, 雪山 行二 (編集)「ベラスケス」1992 (日本放送協会)

ホセ・ロヘリオ・ブエンディーア 著 , 大高 保二郎 訳 ,「プラド美術館」1997 岩波書店

大高 保二郎 (編集), 雪山行二 (編集)

民衆の祈りと美 リベーラ・スルバラン・ムリーリョ」 (NHK プラド美術館) 1992




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by desire_san | 2018-05-14 15:01 | スペイン美術の旅 | Comments(10)
Commented by Keiko_Kinoshita at 2018-05-12 16:52 x
こんにちは。
いつもながらの丁寧な気移設を読ませていただき、スペイン美術に対する理解が大変深まりました。いつも、ありがとうございます。

マドリードの町中にべレスケスのいろんな像が飾られているというニュースがありました。ベラスケスが描いた絵画「フェリペ4世の家族」(後に「ラス・メニナス」と呼ばれる)は、スペインのマドリードの主要な通りを様々なアーティスト、デザイナー、俳優が演奏しました。これは最初の「Meninas Madrid Gallery」で、80のコピーが街中に広がる屋外アートギャラリーです。 したがって、金曜日の最後の金曜日から7月の第1週まで、公道には黄金時代の精神が存在します。おもしろいですね。
Commented by rollingwest at 2018-05-14 22:03
これが本物のプラド美術館なのですね~!初めて外観全容を見せて頂きました。そして今春上野で見た名画がズラリですね!実際自分の目で鑑賞してみた後にこのようなブログを読むと一層に心に刻まれます。スペインのプラド美術館に実際に行って見た方の本質を考察は本物ですね!この秋はルーベンス展を見に行こうと思っておりますのでまた教えて下さい。
Commented by shinn-lily at 2018-05-15 08:19
凄いとしかいいようのないプラド美術館を思いだしました。
もう一度、今見せて頂いた絵の前に行きたい・・・でもここで見せて頂くだけで幸せな気分になりました。
Commented by desire_san at 2018-05-16 13:46
Keiko_Kinoshitaさん コメントありがとうございます。

興味深いお話をありがとうございました。

「ラス・メニナス」にからめて、マドリードの町中にべレスケスのいろんな像が飾られるの良いニュースですね。
芸術の街、マドリードのイメージを世界にアピールできますね。
世界中からよりアート好きの観光客が集まるのではないでしょうか。

Commented by desire_san at 2018-05-16 13:52
rollingwestさん  いつもコメントありがとうございます。

スペイン絵画は、プラド美術館に行けば、ほとんどの傑作を見ることができます。

ルーベンス展は、近く開かけるのですか。私もいきたいですね。

ルーベンスは、プラド美術館の前回のルーベンスの項目をご参照下さい。

Commented by desire_san at 2018-05-16 13:58
shinn-lilyさん  コメントありがとうございます・

私も事前に勉強していきましたが、知識があると、直感で絵を見るよりまた別のものがもみえてきますね。いやほんガイドは、絵の描かれた事情など外面的な説明ばかりで、絵の魅力を感ずるには、あまり参考になりませんね。

Commented by misako at 2018-05-18 09:15 x
dezireさん、初めまして!
拙いブログにお越しいただきありがとうございました。
絵画一枚一枚に詳しい説明・・・大変圧倒されました、そしてまた
大変勉強になります。
↓の記事も拝見しましたが、素晴らしい知識をお持ちですね。
1時間かけてご覧になる絵もあるとか。。
本当に気に入った絵はずっと観ていたい気持ち、わかります。

またお邪魔させて頂きますね。
どうぞよろしくお願いします。
Commented by ponn1351 at 2018-05-18 12:01 x
拙ブログへのコメントを有難う御座いました。
世界中の至る所へ行かれているんですね。
とってもて丁寧な知識に溢れたブログで敬服します。
また、ゆっくりとお邪魔したいと思います。
Commented by desire_san at 2018-05-19 21:05
misakoさん、コメントありがとうございます。
私のブログを読んでありがとうございます。

私にとっては、西洋絵画も、仏像も、オペラも、バレエも、
すべて、その世界に浸って、現実とは別次元の美しさを体感することが大きな喜びですね。

私の気持ちをご理解いただける方に出会えて、大変嬉しいです。



Commented by desire_san at 2018-05-19 21:10
ponn1351さん、私のブログを読んで頂いてありがとうございます。

私が仕事以外で海外に行くときは、ほとんどお目当ての美術を見るためですね。

丁寧に旅行記を描いているので、なかなか進みませんが、
これからも書き加えていきますので、ご訪問をお待ちしています。



by desire_san