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フィレンッエ派を超えて、ウェネッィア派に継承発展させたルネサンスの巨匠

ピエロ・デラ・フランチェスカの魅力

Piero della Francesca


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 ピエロ・デラ・フランチェスカの描く描写の様式は、民衆的物語に深遠で壮大な品格を与え、叙事詩の領域まで高めています。遠近法と短縮法を馳駆したピエロ・デラ・フランチェスカの甘味なる新様式は、16世紀初頭のヴェネツィア絵画の影響を予感させます。





 ピエロ・デラ・フランチェスカは、マザッチォのブカランチ礼拝堂の壁画の伝統的な画面構成を用い、原始時代の力強い人物を配しています。描いているのは美しい人物像であり、彼の理想としている古代彫刻の表現を目指していきます。ですが、ピエロの絵画には、何一つ古代風のものは存在しません。人体や変化する光の中で、研究された自然に対する新しい見方を導入しています。青みがかった透明な光が人物とものを包み込み、繊細な陰影肉体に触れて人間の身体を明確に表現します。優れた描写力で、人物の頑丈で優雅な四肢を形作っています。



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 年老いたエヴァの顔を自然主義的に追求、形の良い脚に取り囲まれ生命を失ったアダムの硬直した肉体、絶望のあまり両手を広げた過酷な苦悩は、いかなる動きも引き起こす絶対的不動の秩序、遠近法に組み込まれています。



 ピエロ・デラ・フランチェスカは、フィリッポ・リッピの色彩的様式に、ドナテルロ、マザッチョの線遠近法を習得し、フラアンジェリコの傑作「聖母戴冠」とサンマルコ聖堂の荘厳な祭壇画から、構図に出来る限り広い空間を与え、人物配置に際立ったモニュメンタリティを獲得し、高貴な七宝のような輝く色彩を学びました。フィレンツェで練り上げ遠近法的空間という改革と、マゾリーノやフラアンジェリコのような画家のゴシックの伝統的な賦彩色方法との総合という新しい試み、明るい色彩の広々とした現実の空間の中に人物をいれ、計算された優美な身振りで人物に動きを加えています。




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 1451年、ラ・フランチェススカがミリニのサンフランシスコ聖堂の聖異物のための礼拝堂の壁画では、モニュメンタルな構図、空間の中の計算された人物は位置で、建築家で美術理論家のアルベルティとの近親性を強く感じさせます。この時期アルベルティも、フランチェスコ大聖堂の改築のために働いていました。ピエロ・デラ・フランチェスカの壁画は、建築内の浮き彫り壁画を思わせ、色大理石で被われ室内はつねアルベルティの趣味と一致しており、色も豊かで、室内を鮮やかに彩っています。




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 ジョットの絵画を継承したマザッチョは、聖人たちの円光をそれ自体実質的に厚みを持った固体として、皿が聖人の頭に取り付けられているように描いていました。ピエロ・デラ・フランチェスカは、自然現象の中で認識できる事物から本質的にかけ離れた抽象的な要素を、絵画画面から排除する傾向を見せ始めました。聖人たちを、自分達の超越した偉大さを表現するために、外的象徴を用いるようになりました。



 ピエロ・デラ・フランチェスカの芸術は、広い地域の芸術様式に、完全にルネサンス的な空間という象徴を通して、絵画の新しい見方の転向を促しました。ピエロ・デラ・フランチェスカの芸術は、他のいかなる芸術にも増して、絵画表現の正確な構成として考えられた線遠近法の理論を教えることが出来たと考えられています。本質的にゴシックの流れを汲み、過去の遺産に結びつきながら、遠近法が彼自身の作品のお蔭で、フィレンツェの城壁を出て、作品に刻み込んだ色彩とともに、各地方の中心都市に浸透していくのでした。




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 ピエロ・デラ・フランチェスカは、空間の厳格な統一性と構図の厳格な構成を伴い、形態は立体性と色彩とともに尊重し、すべてを完全に浮き彫りにしました。線描の感覚に重きを置いたフィレンツェ様式と本質的に異なるピエロ・デラ・フランチェスカの遠近法と色彩と大気に対する感受性は、ヴェネツィアのジョバンニ・ベッリーニに受け継がれ、ヴェネツィア派絵画に発展していきました。




なお、「ピエロ・デラ・フランチェスカの代表的傑作を巡っての旅」の旅行記で、それぞれの作品について詳しく書きましたので、下記をご参照ください。


文字をクリックすると写真集、画像集にリンクします。


ミラノ・ブレラ美術館

ブレラの祭壇画『聖母と聖人たち』 




参考文献

岩波 世界の美術「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」 2004

マルコ カルミナーティ (), ピエロ・デッラ・フランチェスカ (名画の秘密) 2016





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by desire_san | 2018-05-25 18:33 | イタリア・ルネサンス美術の旅 | Trackback | Comments(8)
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Commented at 2018-05-25 18:35
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by rollingwest at 2018-05-26 15:32
ルネサンスの巨匠たちの絵画素晴らしいですね。彼らに大きな影響を受けたルーベンス展が今年に秋に来るので楽しみにしているところです。 
Commented by desire_san at 2018-05-30 02:13
rollingwestさん  コメントありがとうございます。

ルネサンスは、多種多様な画家がいて、知れば知るほど、知らないことが多いことがわかり、のめり込むと、限りなくたのしめますね。

私はまだプーシキン美術展にも行っていないのですが、もう早速、ルーブル美実由展がはじまりますね。ルーベンス展が秋に来るのは知りませんでした。情報ありがとうございます。

Commented by desire_san at 2018-05-30 03:28
十字軍運動とは、西欧キリスト教徒が東欧や中東地域に向けた軍事遠征のことで約200年にわたって展開され、その恩恵を受けたのがヴェネツィアで、十字軍を相手に船を貸し、食糧や水を売り、兵士まで派遣する「ビジネス」を展開しました、ヴェネチアは、約200年にわたる十字軍運動を後ろ盾に経済的にも大きく発展したのです。強大な経済力を背景に子、政治的にも力を持つようになりました。ヴェネチアだけではありません。フィレンツェなど当時のイタリアの主だった都市は政治的にも経済的にも「ギルド」が権力を掌握していました。フィレンツェは毛織物業や金融業が大きな力を持ち、欧州の金融センターとしての役割を果たしていました。こうした政治経済システムがルネサンスの母体となりました。
Commented by desire_san at 2018-05-30 20:39
snowdrop-momoさん  ご指摘ありがとうございます。
早速修正いたしました。

負担などとんでもないです。自分でハ、なかなか気が付かないところをありがとうございます。
snowdrop-momoさんのブログも、大変感性に良い刺激をいただいています。
Commented by snowdrop-nara at 2018-06-03 09:54
こんにちは。
「ピエロ・デラ・フランチェスカの代表的傑作を巡っての旅」、素晴らしいです。
ウルビーノ、アレッツォ、モンテルキ、サンセポルクロ…
ピエロの絵は小さな町に点在しているので、自動車の運転が下手な私にはめぐるのが難しそで…
desireさんはお車でしたか?
こうした街をめぐる日本からのツアーも昔はあったのですが、今はどうなんでしょう。

一枚目の「聖会話」だけは、ミラノのブレラ美術館で見ました。
その後、この絵をとりあげた小論文を翻訳したので、思い出深い作品となっています。
その小論文では、絵の上半分につり下がっている卵がダチョウの卵だと検証するのにかなりのページを費やしていました。色んな目の付け所があるのですね…

私はこの絵の清澄な色彩や、建築の奥行き表現、
聖母や聖人と、実在の人物フェデリーゴとが違和感なく
ひとつの空間に収まっているところに惹かれます。
もっとも、若いころはピエロの絵の静謐な魅力がよく分からなかったのですが…

desireさんは様々な西洋絵画を訪ねる旅を重ねてこられましたから、ピエロについて詳しく語り、ルネサンス絵画史のなかに位置づけることができるのですね。他のピエロの貴記事も改めて読み返してみたくなりました。
Commented by desire_san at 2018-07-05 18:56
snowdrop-naraさん、コメントありがとうございます。

私は主には、朝日旅行のツアーを見つけていきました。ピエロ・デラ・フランチェスカの傑作はイタリアの小さな町に点在しているので、個人で全部回るのは難しいので、このついうーに飛びついた次第です。

一便見たかったのは、イギリス軍の侵攻をとめて街を護ったという逸話のある、世界最高のキリストの名画、ピエロ・デラ・フランチェスカの「キリストの復活」でした。本物を見た時の感動は期待を大きく上回り、私が勝手に、ツアー参加の人たちにこの作品のガイドを始めたおかげで、1時間以上この絵の前のツアー旅行の人を止めてしまいました。添乗員の人には迷惑をかけてしまいましたが、ツアー参加の人たち初めて喜んでいたようです。




Commented by snowdrop-nara at 2018-07-06 15:25
コメントをありがとうございました。
朝日旅行のツアー、私も昔の切り抜きを持っています。
関西発のを待っているうちに
自由に旅行できない境遇になってしまいました。
desireさんのガイド、私もお聞きしたかったです。

東京は梅雨明けしたと思ったら大雨ですね。
蒸し暑さが体にこたえる季節、どうぞくれぐれもご自愛ください。

心に残った自然とアート   


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