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芸術と自然の美を巡る旅  

世界的な生命科学者が読み解いた『般若心経』の神髄

柳澤桂子『生きて死ぬ智慧〜心訳〜般若心経』
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柳澤桂子さんは世界的な業績を残すほどの優秀な生命科学者でしたが、第一線の研究者だった31歳の時に原因不明の病に冒され、以後36年の闘病生活を強いられる中で、ご自身の経験を通じて人生の意味を模索する中で般若心経と出会いました。般若心経に心を救われた柳澤桂子さんが体得したものを「心訳」として書かれたのがこの本です。





仏教をはじめとした多くの宗教では、「一元的」世界の真理について説いています。一方、私達が生きている社会では、人間は自己と他者、自分と他の物という様に境界線で区切って「二元的」な考える世界です。その自分と対象物という二元的なモノの見方をするところに人の「執着」が生まれ、それが「欲」の原因となり、「苦しみ」が生じてくるのです。一元的世界の方が物質世界の本質であり、私たちの脳の作用で確固たる物質の世界に生きていると信じ込まされているわけです。



ここで宇宙を「一元的」に見るようになると風景が変わり出します。私達は原子で出来ています。原子が自由に動き回わることで、この物質世界が成り立っているのです。宇宙を一元的に見るようになると「見渡す限りの原子が飛び交っている空間の中に、ところどころに原子の密度が濃い処がある。」というだけの世界になるのです。その世界ではあなたも私もありません。そこにはこの世のすべてのモノが存在するのです。物は原子の濃淡でしかありませんから、物欲に捉われ固執することは意味が無いとなります。



般若心経の「空」という概念を「原子の濃淡」と捉えて置き換えています。「空」という一元的世界を体現すること、それが仏の智慧の完成であり、そのようなことが「般若心経」にはあるわけですが、それを、「原子」「粒子」「宇宙」という言葉に置き換えることにより、現代の私達に理解しやすく表現しています。



あとがきで柳澤さんが以下ようにこの本の概念を集約されています。

「あなたもありません。私もありません。けれどもそれはそこに存在するのです。物も原子の濃淡でしかありませんから、それにとらわれることもありません。一元的な世界こそが真理で、私たちは錯覚を起こしているのです」



科学者らしい視点であり、また苦しみの中生き抜いてこられた柳澤さんだからこその「心訳」だと思います。この解釈は柳澤さん特有のもので、実際に「般若心経」の原本を読んで見るとちょっと違うと感じるかもしれませんが、おそらく般若心経によって救われたであろう柳澤さんの言葉で以って般若心経の世界観に触れることによって、「般若心経」の奥深さを感じさせるという意味でも名書だと思いました。





柳澤 桂子, 堀 文子「生きて死ぬ智慧」2004年  小学館











by desire_san | 2015-06-14 01:28 | 日本の旅と文学・映画・ドラマ | Comments(0)