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芸術と自然の美を巡る旅  

早逝の天才画家が最後に描いたルネッサンスの人文主義精神の完璧な統合

マザッチオ『三位一体』

Masaccio.” Holy Trinity ”..


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フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会では、芸術史におけるルネサンスの誕生の基本的な作品の1つと一般的に見なされているマザッチオ『三位一体』(1426 -1428年)を見ることができます。この作品は、317 x 667 cmの大きさですが、27歳で亡くなった天才芸術家の最後の既知の作品です。その中に人文主義文化のすべての主要な情報が結集し、絵画、彫刻、建築の間に完璧な統合があります。






サンタ・マリア・ノヴェッラ教会

(文字をクリックするとリンクして、内容を見ることができます。)



Around 1427 Masaccio won a prestigious commission to produce a HolyTrinity for the Dominican church of Santa Maria Novella in Florence. Nocontemporary documents record the patron of the fresco, but recently referencesto ownership of a tomb at the foot of the fresco have been found in the recordsof the Berti family of the Santa Maria Novella Quarter of Florence; thisworking-class family expressed a long-standing devotion to the Trinity, and maywell have commissioned Masaccio's painting. Probably it is the male patron whois represented to the left of the Virgin in the painting, while his wife isright of St. John the Evangelist. The fresco, considered by many to beMasaccio's masterwork, is the earliest surviving painting to use systematiclinear perspective, possibly devised by Masaccio with the assistance ofBrunelleschi.



1966年に英帝国勲爵士、1975年 エラスムス賞受賞、1988年にはメリット勲章を授与された美術史家エルンスト・ゴンブリッチは、『美術の歩み (The Story of Art)』が1950年の出版後版を重ね、美術批評の重要文献として広く認められ、視覚芸術に関する最適の教科書としても評価され20以上の言語に翻訳され、何百万部も売れていて私も愛読していました。ゴンブリッチは、マザッチオの絵画の革新的な特徴を次のように表現しています。



「ベールを取り除いた後、現代のブルネレスキ様式で建てられた新しい墓礼拝堂の向こうに見える壁に穴を掘ったように見えるマザッチオのこの絵画が現れたときのフィレンツェの驚きを私たちは想像できます。フィレンツェの人々が風通しの良い国際的なゴシック様式の仕事を期待していたら、他のヨーロッパと同様にフィレンツェ人の好みと流行に失望しなければなりませんでした。繊細な優雅さではなく、マザッチオのこの作品は、巨大で重い人物。自由で流れるような曲線ではなく、角張ったソリッドな形状で完璧に統合されているのです。」





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三位一体父(=父なる神・主権)、子(=神の子・子なるキリスト)霊(=聖霊・聖神)の三つが「一体(=唯一神・唯一の神)」であるとする教えに基づいています。描かれた主な主題は、「グレイスの玉座」と呼ばれる図像モデルに従って配置された三位一体の人物像で構成され、父親は14世紀の終わりにフィレンツェの絵画で広まった息子の十字架を握っています。この主題の原文は、ヘブライ人への手紙から引用したイザヤに含まれています。しかし、マザッチオの作品は、この図像を記念碑的なスケールで最初に表現したものであり、そのようなリアリズムを幻想的な建築の背景で扱われた最初のものでした。マザッチオは他の表現から派生した図像のモチーフの重複した情報を併合して新しい一つの表現にまとめました。通常「恵みの玉座」では、復活に続く判断を呼び起こすためには玉座に座っていましたが、この作品では、父なる神は立って描かれています。神は司祭の提起聖体時の質量を犠牲の象徴として、観客に呼び起こすことを示唆しています。父なる神の姿は幻想的な効果のために巨大に見えますが、父なる神は同等で息子よりも高くはありません。恵みの玉座の以前の表現との比較は、初期のルネサンス文化に典型的な比率と調和を明らかにしています。




今までの描写では背景は常に金または空でした。マザッチオは、初めてすべてが壮大な塗装済み建築物に配置されました。これは人間の活動の地上の空間で、見たことがないほど非常に短縮され、実際、約4メートル離れたところにある教会には、身廊に通じる礼拝堂のような錯覚があります。感銘を受けたヴァザーリは「その壁には穴が開いているようだ」と書いています。



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この作品は、初期ルネサンス三大芸術家の作品に相応しい重要な作品として世に知られています。この作品では、聖母マリア、洗礼者ヨハネ、寄進者であるドメニコ・レンツィとその妻が描かれ、寄進者の下部には細密に描写された石棺に横たわる骸骨の全身像が描かれています。ブルネッレスキが発見した科学的根拠に基づく遠近法に基づき完璧な遠近技法で処理された威風堂々たる画面構成や、リアリスムを感じさせる人物の細密な描写など注目すべき点が多く、現在も様々な点から学術的に研究が進められています。



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たいていの絵画作品はそれとなく眺めることができますが、マザッチオ『三位一体』に限っては消失点に反対してみないと効果が半減してしまうのです。子の効果こそ、二次元の壁面に三次元の空間を錯覚によって生み出す効果であり、1420年代にブルネッレスキによって発見されたものと考えられています。ブルネッレスキは視点を固定しすべての大きさを前日の相似のように表現すれは、人減の眼には、現実社会と絵画社会がほとんど同じように映ることには、を明らかにしました。この固定された視点による空間表現の考えは、ブルネッレスキの親友であったマザッチオに受け継がれ、建築家で人文学者であったアルベルティによって論理的に整理されました。1435年アルベルティにより刊行された『絵画論』は、当時の人々の現実社会に対する新しい姿勢を知る上で重要な書となりました。アルベルティは「絵画は現実に向かって開らかれた窓と考えよと」と画家たちを指導しました。


マザッチオは、アルベルティのこの書物が刊行される8年前に亡くなっていますが、マザッチオの『三位一体』には、アルベルティの理論を待たずして、すでに優れた芸術家たちが遠近法という新しい空間表現に取り組んでいたことを示しています。その側面再現図には個々の人物と建物相互の位置関係が極めて明確に表されており、このような合理的・客観的世界認識は、やがて世紀末の新大陸発見へと繋がっていったのかも知れません。




【参考文献】

 オルネッラ カザッツァ (),松浦 弘明 ()『マザッチョ』

 佐々木 英也 () 『マザッチオルネサンス絵画の創始者』2001

 『イタリア・ルネサンスの巨匠たち フィレンツェ絵画の先駆者 1994

 森田 義之、日高 健一郎 () (NHK フィレンツェ・ルネサンス)

   『美と人間の革新 ブルネレスキ、ドナテッロ、マザッチオ』1991

 エルンスト・H・ゴンブリッチ, 田中正之訳『美術の物語』2019

 E.H.ゴンブリッチ、 友部直訳『美術の歩み』(1972)

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia






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by desire_san | 2020-07-23 23:22 | イタリア・ルネサンス美術の旅 | Comments(7)
Commented by snowdrop-momo at 2020-07-10 06:38
おはようございます。
トゥルクの他にこんな素晴らしい古い街があったのですね。
トゥルク大学のラウマ教師養成研究所もあるんですね。

ヘルシンキのセウラサーリ野外博物館には行ったのですが
もっと素朴で、ここまで愛らしい街並みではなかったです。
クリスマスシーズンに教会を訪ねるのもいいでしょうね。

フィンランドの友にもこの記事のURLを送ってみようかと思います。夏のヴァカンスシーズンか、アドベントにでも…
Commented by desire_san at 2020-07-10 14:34
snowdrop-momoさん コメントありがとうございます。

日本には旧市街の街が残っていないのは、日本は木造建築のためと思っている人が多いようですが、ノルウェーやフィンランドには、木造の旧市街がある世界遺産の街がたくさんあるのに驚きました。

日本は、法隆寺を始め世界最高技術の木造建築が数多くあり、これらの建物は北欧のものより芸術的に格段に価値があります。ぜひこれらの文化遺産を中心に、世界遺産と言える街を復元してほしいですね。



Commented by rollingwest at 2020-07-15 14:35
イタリアの聖堂ライトアップ素晴らしいですね!背景の夕暮れ紫とのコントラストが美し過ぎます。イタリア観光の復活もまだ先が見えませんが心置きなく廻れるのはいつになるのでしょう。
Commented by desire_san at 2020-07-15 17:08
rollingwestさん ここに載せた写真は、私が社会人になってから今まで撮った写真から選んだものです。

コロナが怖くてイタリアはおろか国内の観光にも行けなくなってしまいました。

旅が好きな私としては、見通しが全く見えないのは困ったものですね。



Commented by 平石悟 at 2020-07-25 16:20 x
描かれた主な主題は、「グレイスの玉座」と呼ばれる図像モデルに従って配置された三位一体の人物像で構成され、父親は14世紀の終わりにフィレンツェの絵画で広まった息子の十字架を握っています。
Masaccioの作品は、この図像を記念碑的なスケールで最初に表現したものであり、そのようなリアリズムと幻想的な建築の背景で扱われた最初のものでした。Masaccioはまた、2つの「カルバリーの追悼者」など他の表現から派生した図像のモチーフをマリアと聖ヨハネ、通常描かれた主な主題は、「グレイスの玉座」と呼ばれる図像モデルに従って配置された三位一体の人物像で構成され、父親は14世紀の終わりにフィレンツェの絵画で広まった息子の十字架を握っています。
Masaccioの作品は、この図像を記念碑的なスケールで最初に表現したものであり、そのようなリアリズムと幻想的な建築の背景で扱われた最初のものでした。Masaccioはまた、2つの「カルバリーの追悼者」など、他の表現から派生した図像のモチーフとして、磔刑のふもとにマリアと聖ヨハネという構図を選びました。
Commented by 平石悟 at 2020-07-25 16:28 x
通常「恵みの玉座」では、復活に続く判断のテーマを呼び起こすために、神は玉座に座っていました。この場合、代わりに、父なる神は立って描かれています。彼は司祭の提起聖体時の質量を犠牲の象徴として、観客に呼び起こすことを示唆しています。以前の描写では、背景は常に金または空でできていました。Masaccioは、初めてすべてが壮大な塗装済み建築物に配置しました。これは人間の活動の結果である地上の空間です。約4メートル離れたところにある教会には、身廊に通じる礼拝堂のような錯覚を与えます。幻想的な力はを見たことがないくらい非常に短縮され、感銘を受けたヴァザーリは「その壁には穴が開いているようだ」と書いています。

Commented by Wigh_Rezo at 2020-07-25 16:49 x
マサッチョが遠近感の空間性に関するブルネレスキのレッスンを完全に同化したことを示した場合、画家が全体として使用した詩は異なります。マザッチョの空間的リアリズムは、空間内の人物を並べ替えるだけでなく、作品の宗教的メッセージを劇的に高める幻想的な効果を目指していました。非常に低い消失点を選択することで、見物人の目で、表された空間は実際の空間と密接に関連しており、マリアの視線と動きが示唆しているように、見る人はそれに明確に関与しています。

奥の壁には水平の台があり、その上に父なる神の姿が立っています。彼は赤いチュニックと青いマントを身に着けており、成熟した男性のように見え、陽気な表情をしています。腕はクロスの水平腕を保持するために少し開いています。その頭とフレームは、巨大見せること礼拝堂のヴォールトに触れます。以前とは異なり、光輪は透視図で描かれ、神聖な放射線です。実際には、彼の身長は息子の身長に厳密に比例しています彼の肉の蒼白さのためにフレスコ画でその姿が際立っている十字架の上で十字架に釘付けにされた脚のアーチ型の位置と、側面に沿って見える白い布は、ナポリに保存されているマサッチョのはりつけとの顕著な類似点を示しています。




父と息子は、遠近法のルールから差し引かれる作業の唯一の特性であり、人間の世界の物理法則の根底にない不変のエンティティとして暗黙的に宣言されています。結果として生じる効果は、それらを見る人にほとんど沈殿させる傾向の知覚の効果です

by desire_san