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芸術と自然の美を巡る旅  

ワーグナーの最後のオペラで「楽劇」に進化・発展していく過渡期のオペラ

ワーグナー『ローエングリン

Richard Wagner"Lohengrin "

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 「ローエングリン」はワーグナーのロマンティック・オペラの代表作で、バイエルン国王、ルードビッヒ2世を虜にした作品として有名です。劇中に出てくる「結婚行進曲」はたいていの結婚式で使われているほどホピュラーになっています。





Lohengrin is a romantic operain three acts composed and written by Richard Wagner, first performed in 1850.The story of the eponymous character is taken from medieval German romance,notably the Parzival of Wolfram von Eschenbach and its sequel, Lohengrin,written by a different author, itself inspired by the epic of Garin leLoherain. It is part of the Knight of the Swan tradition.




 テルラムント伯爵に弟の殺害という無実の罪をきせられた王女エルザは、白鳥に乗って現れた騎士ローエングリンによって救われる。しかし、テルラムント伯爵の妻で魔女のオルトルートの企みに乗せられて、禁問の誓いを破り、騎士の身分を疑い名前と素性を聴いたため、その愛を失って白鳥の騎士は去ってしまうという愛と別れを描く神話的で幻想的な悲劇の物語です。




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As Elsa and her attendants areabout to enter the church, Ortrud appears, clad in magnificent attire, andchallenges Elsa to tell who her husband is, and to explain why anyone shouldfollow him. After that, King Henry enters with the Knight. Elsa tells both ofthem that Ortrud was interrupting the ceremony. Elsa and her new husband areushered in with the well-known bridal chorus, and the couple express their lovefor each other. Ortrud's words, however, are impressed upon Elsa, and, despitehis warning, she asks her husband the fatal question. Before the Knight cananswer, Telramund and his four recruits rush into the room in order to attackhim. The knight defeats and kills Telramund. Then, he sorrowfully turns to Elsaand asks her to follow him to the king, to whom he will now reveal the mystery.
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 モンサンヴォートの聖杯を護る騎士団からきた白鳥の騎士ローエングリンは、世俗の娘を愛しても相手に素性を知られれば別れなければならない。白鳥の騎士ローエングリンはエルザに恋をしたとは、愛の告白とともに禁問いの誓いを相手に求めます。ローエングリンのエルザへの禁問の誓いは、男女の間の支配と服従の関係を強いる者であり、当時の家長制の象徴と考えられます。エルザは現実社会のテルラムント伯爵を選ばず、白鳥の騎士との愛を夢見ていました。第1幕ではエルザは白鳥の騎士への愛の成就のために騎士へ服従を容認していました。しかし、本来自由な愛を望んでいたエルザは、オルトルートの「あの男は何者なのか」の問いに目覚め、ローエングリンとの対等の愛を求め、自分の意志で夫の名前と素性をたずねます。ローエングリンのすべてを知り、あなたと悩みや苦しみも共にしたいと切望します。


 このオペラでワーグナーは登場人物の特徴、立場にふさわしい音楽を与えています。主人公ローエングリンは世俗社会と距離を置く浮世離れした存在で、音楽も登場場面から高貴で美しくはありますが孤独感を背負っています。



The troops arrive equipped forwar. Telramund's corpse is brought in, Elsa comes forward, then the Knight. Hediscloses his identity to the king and Elsa. He tells the story of the HolyGrail, on the Monsalvat, and reveals himself as Lohengrin, Knight of the HolyGrail and son of King Parsifal. The time for his return has arrived and he hasonly tarried to prove Elsa innocen



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 第3幕の有名な「ローエングリンの名乗りの歌」「美しい白鳥よ」はテノールの美声に聞き惚れる美しいアリアですが、例えば、「さまよえるオランダ人」のゼンタのバラードや「トリスタンのイゾルデ」の愛の二重唱やイゾルデの愛と死のような地に着いた迫力はなく心に強烈に焼付くようなものではありません。ローエングリンはこの世に住むものではなく、エルザとは住む世界が違う、所詮かなわぬ恋だったということでしょう。




 それに対して、キリスト教支配が進む前の古代ゲルマンの神々を信仰する異教徒の象徴・オルトルートの復讐のアリアやエルザの愛するがゆえに揺れ動く心の苦悩のアリアは世俗的感覚でも分かり易い音楽を与えていました。他の登場人物や合唱も含めて世俗の音楽にひとりローエングリンの浮世離れした高貴な音楽が立ち向かうという構図だったように思いました。




As he sadly bids farewell tohis beloved bride, the swan reappears. Lohengrin prays that Elsa may recoverher lost brother, and gives her his sword, horn and ring; which allows Elsa toremember him fully. Then, when Lohengrin tries to get in the boat, Ortrudappears. She tells Elsa that the swan who drove Lohengrin to the bank wasactually Gottfried, Elsa's brother; and she put a curse on him by turning himinto a swan. The people considered Ortrud guilty of witchcraft. Lohengrin praysto the swan, and the swan turns into another form, a young Gottfried. He electshim as the Duke of Brabant. Ortrud sinks as she sees him.



若きワーグナーのロマン派歌劇『ローエングリン』では救いは全く見られない、そのことは,この歌劇がヨーロッパ激動の革命の年に完成しているということにも関係があるのかもしれなません。ワーグナーは歌劇『ローエングリン』という作品を抱えてドレースデンの革命に加わりましたが、社会を変革しようという彼の夢は現実にもろくも打ち砕かれてしまうのです。ワーグナーの天才的な聖域の芸術も、世俗的な人間社会には受け入れませんでした。ローエングリンの運命はワーグナーの運命でもあったようです。歌劇『ローエングリン』には若きワーグナーの芸術活動の体験が投影されているといえます。




オペラから楽劇へ


ワーグナー自身は、『ローエングリン』を「3幕からなるロマンティック・オペラ」と名付けてはいます。しかし、『ローエングリン』は、ワーグナーの作風が一層充実し、楽劇というスタイルに進化・発展していく過渡期に作られたオペラです。1845年に前作『タンホイザー』を初演し、その5年後に初演された『ローエングリン』では、作曲・作劇の両面で一層進歩しています。音楽は限りなく『ニーベルングの指環』などと同じ「楽劇」に近いスタイルで書かれています。その第一は、各幕ともに途中にアリアやアンサンブルを挟むことなく、音楽に息の長い連続性を持たせることで、言葉との関連性をより緊密なものとしている点。これは後の「無限旋律」につながる手法といえる。音符と言葉が密接に絡んで、お互いを補完し合うことによって、ドラマを集約していく楽劇ならではのスタイルに近づいています。


オペラとして作曲した『さまよえるオランダ人』と楽劇に近い『ローエングリン』は、聴き比べていただけると違いがよくわかると思います。下記の文字をクリックするオペラのダイジェスト音楽を聴くことができます。

さまよえるオランダ人 『ローエングリン』 



 次に「ライトモティーフ(示導動機)」の概念をより明確にし、多用し始めている点です。「ライトモティーフ」という作品全体に共通する「音楽言語」を設定することで、作品を貫く主題がより鮮明に提示されています。例えば『ローエングリン』の「禁問の動機」にあたるのが『ニーベルングの指環』の「アルベリヒ呪いの動機」と位置付けられます。更に『タンホイザー』まで存在した序曲を採用せずに、より短い前奏曲に置き換えています。前奏曲は、序曲に比べて簡潔にその幕の性格を表現でき、音楽が延々と続くことがない分、本編に対する観客・聴衆の集中度が増すこと効果があります。




 更に大きな違いは、オーケストラの編成の拡大です。オペラ史上初の完全3管編成を必要とし、舞台上や舞台裏などに配置する別働隊も活躍します。オーケストラの編成を大きくしたことで、より多彩な響きを創り出すことが可能になったばかりでなく『パルジファル』のように、調性を細かにコントロールしていくことで様々な劇的・心理的な効果を意図している箇所がいくつもあります。



初演はまずまずの成功という程度であったが、充実期に向かうワーグナーの手によるこの作品が、ドイツのみならずヨーロッパ各国で人気演目として現在に至る不動の評価を獲得するまでに、さほどの時間を要することはなかった。上演回数が増えるにつれて、この作品の魅力の虜となった歴史上の人物も多い。音楽の世界では、ベルリオーズやチャイコフスキーらが強い感銘を受けたことを書き記すなどしている。リヒャルト・シュトラウスが、その創作活動において強い影響を受けていたことも有名である。さらにトーマス・マンやシャルル・ボードレールの心酔ぶりも有名です。



『ローエングリン』には「聖杯のモチーフ」や「白鳥の騎士ローエングリンのモチーフ」、そして「禁問のモチーフ」などが効果的に至るところにちりばめられており、後のワーグナーの楽劇作品を予感させます。光と闇の対比も効果的であり、芸術的に完成度が高い作品といえます。バイエルン国王ルートヴィヒ2世やドイツの作家トーマス・マンなどもこの作品に魅せられました。歴史を動かすほどに大きな影響を受けた人物の代表格としては、ワーグナーの熱烈なファンであり大パトロンでもあったバイエルン王国のルートヴィヒ2世、そしてアドルフ・ヒトラーが挙げられます。ルートヴィヒ2世は『ローエングリン』の世界をこの世に再現しようとノイシュバンシュタイン城を建設したほどの熱狂ぶりでした



『ローエングリン』の最大の聴きどころのひとつは、人間の無意識の機微が捉えられているところかです。人間の無意識を「再発見」したのはフロイトですが、フロイトよりもずっと前に、ワーグナーは、芸術家の直観で、私たちの無意識の中にうごめく様々な情動を音楽にしました。『ローエングリン』は、聴き終えた時に深い満足と慰撫を与えるのは、そこにあるのかも知れません。日常生活の中で様々なストレスを受け、歪んでしまっている私たちの無意識が適度の刺激を受け脳がより健やかになっているかも知れません。







参考文献:

ワーグナー (作),日本ワーグナー協会(監修),三宅 幸夫,池上 純一 (訳)

『ローエングリン』2010.五柳書院

アッティラ・チャンパイ他(),宇野道義他()『ワーグナー ローエングリン』

音楽の友社編・スタンダードオペラ鑑賞ブック「ドイツオペラ」

三宅新二「ヴァーグナーのオペラ女性像」鳥影社






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by desire_san | 2022-08-17 15:36 | オペラ | Trackback | Comments(0)
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