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芸術と自然の美を巡る旅  

ヘンデルがオペラ作曲家としての地位を確立した記念碑的最高傑作

ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』

Handel's baroque opera "GiulioCesare"

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『ジュリオ・チェーザレ』はゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの最も上演された、ヘンデルのオペラ作曲家としての地位を確立した記念碑的作品で最高傑作といえるオペラです。『ジュリオ・チェーザレ』とは、ガイウス・ユリウス・カエサル(英語ではジュリアス・シーザー)のイタリア語読みです。歴史上のシーザーとクレオパトラの物語を題材にしたオペラ・セリアで、レチタティーヴォで導かれるアリアが次々に展開し、多彩な音楽の美しさと歌手の技巧を劇的効果と天才的な技術を織り込み、感情を表現するダ・カーポ・アリア(繰り返しのあるアリア)からなり、そのアリアの旋律は美しく洗練されています。





"GiulioCesare" is a monumental work that established Handel's position as anopera composer and is an opera that can be said to be his masterpiece."Giulio Cesare" is the Italian reading, and in English it is JuliusCaesar. An opera seria based on the historical story of Caesar and Cleopatra.The aria's melody is beautiful and sophisticated.




ヘンデルの時代のオペラ

オペラの歴史において、舞台芸術のオペラの発展に貢献したのが、人気歌手の存在です。歌手こそオペラの最大の魅力と考えられていました。当時の歌手の多くはカストラートで、オペラに登場する男女両方の役を演ずることができました。18世紀イタリアで、艶のある音色と美しい響きを持つ歌唱法・ベルカント全盛期でしたが、この時代が偉大な作曲家・ヘンデルの活躍した時代でした。ヘンデルのオペラはベルカント歌唱法を駆使したアリアが大部分を占めています。カストラートはその圧倒的な歌唱力によって、この時代のオペラのほとんど全ての主役を務めたといっても過言ではありません。


ヘンデルは1740年頃まではオペラに精力的に取り組みました。オペラセリアに共通する特徴として、ドラマティックな演奏効果、不協和音の効果的な使用、観客を引き込む技巧などが挙げられますが、ヘンデルはこれらの特徴を美しい音楽の中で十二分に発揮させました。全体として、完璧なバロック・ドラマで、最も甘く、最も明るく、最も怒り、最も悲しく、最も幸せで、最も美しい音楽を聴きながら、私たちはオペラの世界を旅します。



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ヘンデルのオペラは当時のイタリア・オペラの典型というべきカストラートが欠かせない存在です。カストラートは、去勢された男性歌手で美しい高音域を得意とし、ストーリーの中で重要な役割を担っていました。



音楽面では、ときに美しく、ときに刺激的なアリアが次々と繰り出されます。これらのアリアは基本的に3部構成で「ダ・カーポ・アリア」とよばれる。3部構成の1部目をA2部目をBとしよう。Aが長調ならBは短調というようにコントラストがつけられ、そのあと「ダ・カーポ」、つまり振り出しに戻ってまたAが歌われる。ただ、そのとき歌手は即興で装飾を加えるのが通例なので、Aは繰り替えされたときA‘になる。ヘンデルの同時代には、歌手たちは、A‘でここぞとばかりに超絶技巧を披露して、感動のあまり失神する観客が続出したと言われています。バロック・オペラはふつう、歌手に過剰なほどの技巧を求めています。演歌のように粘っこく歌っては技巧を表現することはできないため、鋭く歌う必要があります。声の響きも楽器の響きと同様、シャープで躍動的になります。



歌手による技巧的な装飾は、楽譜に書かれているわけではありません。バロック・オペラでは、旋律をどう装飾するか、歌手が(現実には指揮者と相談して)考えなければいけないのです。



そもそもバロック・オペラの楽譜には、低音部の旋律と、和声を示す数字が書かれているだけで、演奏者はそれを見て、適切な和声をつけて演奏しなければならなりません。ギターを弾く人旋律にコードをつけて伴奏するのと同じです。音楽に即興性があって、演奏がとても自由だという点で、ロックやジャズに近いかも知れません。モダンに聴こえかどうかは歌手の力量と言えます。





『ジュリオ・チェーザレ』あらすじ (新国立劇場ホームページより)  

このドラマは古代エジプトを舞台に、ジュリオ チェーザレとクレオパトラの愛の物語だけでなく、クレオパトラと弟のトロメーオとの間の闘争と憎しみ、トロメーオ、アキラ、コーネリアの間の三角関係、そしてコーネリアの息子セスト

の復讐の物語をからめ合います。カストラートの活躍するオペラ・セリアです。




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【第1幕】

ローマの将軍チェーザレは、政敵ポンペーオを追ってエジプトへ来る。エジプトの将軍アキッラがトロメーオ王からとポンペーオの首を差し出す。悲嘆にくれるポンペーオの妻コルネーリア。息子セストは復讐を誓い、チェーザレも暴挙に憤る。クレオパトラは弟トロメーオから王座を奪うべく、チェーザレへの接近を図っていた。アキッラはチェーザレの様子をトロメーオに報告、チェーザレ暗殺を唆し、報酬にコルネーリアを要求する。クレオパトラが侍女リディアと身を偽ってチェーザレを訪れると、彼はまんまと魅了され、クレオパトラは狂喜する。トロメーオは宴にチェーザレを招く。そこへ忍び込んだコルネーリアとセストは捕えられる。



【第2幕】

クレオパトラのもとを従者ニレーノの手引きでチェーザレが訪れる。アキッラはコルネーリアに愛を迫るが拒否される。トロメーオもコルネーリアを口説くが拒絶される。コルネーリアは誇り高く自害しようとするが、ニレーノに導かれたセストが現れ、命を取り留める。クレオパトラとチェーザレが愛を交わしているとトロメーオのチェーザレ暗殺の動きが知らされ、チェーザレは出陣する。



【第3幕】

アキッラはクレオパトラへ寝返る決心をする。クレオパトラはトロメーオに捕らえられ、絶望している。追い詰められ海へ飛び込んだチェーザレが生還。瀕死の傷を負ったアキッラは、自らがポンペーオ殺害を唆し、コルネーリアを得るべくチェーザレ暗殺を諮ったことをセストに告白する。死を覚悟したクレオパトラの前へチェーザレが現れ助け出す。なおもコルネーリアに言い寄るトロメーオの前にセストが現れ、ついに復讐を果たす。クレオパトラとチェーザレ、コルネーリア、セストを人々が讃え、幕となる。







『ジュリオ・チェーザレ』音楽の聴きどころ

バロック・オペラでは主役の歌手たちが華麗なる技巧を披露するために、ひとつのオペラの中にさまざまなタイプのアリアを歌うことになっていました。『ジュリオ・チェーザレでは特に、ヘンデルが、初演のクレオパトラ役のクッツォーニのために腕によりをかけて書いたアリアの数々が、このオペラの最大の聴かせどころで、「声で堪能するクレオパトラの魅力」がこのオペラの売りだったのでしょうか。


私もこのオペラを初めて鑑賞して、題名は『ジュリオ・チェーザレ』ですが、実は真の主人公はクレオパトラではないかと感じました。クレオパトラ役に書かれた曲は技巧を聴かせるものから切々とした感情を歌い上げるものまでバラエティに富んだ名曲揃いです。権力のためなら色仕掛けもいとわない、というクレオパトラの性格描写が、後半にいくに従ってチェーザレへの真実の愛を吐露するようになり、その変化も聴きどころと言えます。




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世界中のオペラハウスでおそらく最も一般的に上演さている、ヘンデル自身が作った多くのバージョンの中で、1724年のバージョンでは、ジュリオ・チェーザレ、クレオパトラ、トロメーオ、コーネリア、セスト、アキラ、ニレーノ、キュリオの8人。そのうち明確な男声アキラのみで、トロメーオはこるとろーらこれらの役割のうち6人が十分な大きな主要な役割を担っています。すべての歌手の人生で最も美しい挑戦のひとつになるのに十分なニュアンスがあります。バロックオーケストラを伴って、完全なステージと衣装でそれを演奏しまました。


ヘンデルの歌手は、すべての登場人物の劇的な範囲の幅の広さを理解することができます。史上最高のカストラートの 1 人であるセネシーノは、最初のジュリオ チェーザレでした。フランチェスカ・クッツォーニ 彼女の時代の最も有名なソプラノの 1 人がクレオパトラを歌いました。マルゲリータ・デュラスタンテと呼ばれる別の有名なソプラノはセストでした。




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『ジュリオ・チェーザレ』の登場人物を列挙すると、下記のようになります。

ジュリオ・チェーザ(アルトカストラート)

- ローマの将軍、ジュリアス・シーザー。

クーリオ(バス)‐ シーザーの副官。ガイウス・スクリボニウス・クリオ。

クレオパトラ(ソプラノ)- エジプト女王。

コルネーリア(ソプラノ・コントラルト)

- シーザーの政敵、ポンペイウス(ポンペーオ)の妻。

セスト(ソプラノ)- ポンペイウスの息子、セクストゥス・ポンペイウス。

トロメーオ(アルトカストラート)- エジプト王。クレオパトラの弟。

アキッラ(バリトン)- エジプトの将軍。トロメーオ王に仕える。

ニレーノ(アルトカストラート)- クレオパトラの従者。



クーリオ(バス)とアキッラ(バリトン)はアリアを1曲しか歌わない端役です。ドラマを引っ張る主要な6人は、3人のソプラノの他は、主役のジュリオ・チェーザレを始め、カストラートでした。美しいバロック音楽の甘味な旋律の音楽を背景に、甘味なメロディの女声のアリアが次々と畳みかけように歌われる世界は、女性とジェンダー集積場ともいえるある種の性を感じてしまうような世界ですが、そのような雑念を振り払い、素直に音楽と向き合うことが重要ともいえます。





【第1幕】

序曲の後、ジュリオ・チェーザレを除くキャスト全員がステージに集まり、チェーザレとヘラクレスを比較する勝利の歌であるオープニング・コーラス(ビバ、ビバ・イル・ノストロ・アルサイド)を歌います。ジュリオ・チェーザレと彼の勝利した軍隊は、ポンペーオの軍隊を打ち負かした後、ナイル川のほとりに到着します。(ジュリオ・チェーザレのアリア: Presti omai l'Egizia terra)


ポンペーオの 2 番目の妻であるコーネリアは、夫の命のために慈悲を懇願します。チェーザレは同意しますが、エジプト軍のリーダーであるアキラは、チェーザレにポンペーオの頭が入った棺を贈り、エジプトの共同統治者であるトロメオ(妹のクレオパトラとともに)からの支援の証です。コーネリアは気を失い、チェーザレはトロメーオの残酷さに激怒します。(アリア:Empiodiròtu sei )


チェーザレの助手であるキュリオは、彼女が彼に恋をして彼と結婚することを望んで、コーネリアに復讐することを申し出ます。コーネリアは、別の死が彼女の痛みを和らげることはないと言って、悲しみの申し出を拒否します。(アリア: Priva, son d'ogni conforto ). コーネリアとポンペーオの息子であるセストは、父親の死に復讐することを誓う。(アリア: Svegliatevi nel core )


クレオパトラは彼女の魅力を使ってチェーザレを誘惑することにしました。(アリア: chi sà? ) アキラは、チェーザレがポンペーオの殺害に激怒したというニュースをトロメーオに伝えます。トロメーオは、王国の支配を守るためにチェーザレを殺すことを誓います。(アリア: L'empio, sleale, indegno


クレオパトラが、玉座に執着する弟トロメーオに対し、「がっかりしないで、あなたには玉座は無理でも、恋愛面で成功するかもよ」と皮肉たっぷりに歌います。

クレオパトラが「Non disperar がっかりしないで(笑)

Tutto può donnavezzosa 美しい女は何だってできる」


侍女リディアに変装したクレオパトラはチェーザレに会い、さっそく彼を虜にする。

「美しい女にはすべてが可能なの。愛らしく言葉を発し、眼差しをめぐらせれば」

Tu la mia stella sei 希望よ、お前は私の星」

クレオパトラはシーザーや、トロメーオに恨みを持つコルネーリアとセストがいるのだから、弟トロメーオにきっと勝つことができる、と希望にあふれて歌う。


クレオパトラ(変装して)は、エジプトの女王として彼女をサポートしてくれることを期待して、キャンプでチェーザレに会いに行きます。チェーザレは彼女の美しさに驚きます。(アリア: Non è si vago ebello )。ニレーノは、誘惑が成功したと述べています。(アリア: Tutto può donna vezzosa ).


一方、コーネリアは夫の死を悼み続けていました。(アリオーソ: Nel tuo seno, amico sasso ). コーネリアはポンピオの死に復讐するためにトロメーオを殺す準備をしているが、代わりにそうすると約束したセストによって止められた. チェーザレ、コーネリア、セストはトロメーオに会うためにエジプトの宮殿に行きます。(アリア: Cara speme, questo core ). クレオパトラは今、チェーザレ、コーネリア、セストをトロメーオにうまく対抗させたので、天秤は彼女に有利に傾いていると信じています。(アリア:Tu la mia stella sei )


チェーザレはトロメーオに会い、彼は王室のアパートの部屋を彼に提供しますが、チェーザレはキュリオにトロメーオが彼を裏切ることを期待していると言います。(アリア: Va tacito e nascosto )。トロメーオはコーネリアの美しさに魅了されましたが、アキラに彼女を手に入れることができると約束しました。(アリア: Tu sei il cor di questo core ). セストはトロメーオに挑戦しようとするが失敗します。コーネリアがアキラを拒否すると、彼は兵士たちにセストを逮捕するよう命じます。(デュエット:ソン・ナタ・ア・ラグリマー)



【第2幕】

クレオパトラの宮殿では、「リディア」に変装している間、彼女は自分の魅力を使ってチェーザレを誘惑します.(アリア:ヴァドーロ、瞳孔)

このアリア、「V’adoro pupille 瞳よ、愛の矢よ!」は、チェーザレを宮殿に招いたクレオパトラは、ギリシャ神話のパルナッソス山を模した美しい風景の中で美徳の女神に扮して歌う。「私が崇める瞳よ、愛の矢よ!その煌めきはこの胸に喜びをもたらします」

Venere bella 美しきヴィーナスへ」


クレオパトラがチェーザレを待つあいだ、「美の女神よ、いまだけは私に最高の魅力を与えてください」と歌います。

ラルゴという、ゆったりしたテンポでチェーザレを誘う魅惑のアリア 。彼女はキューピッドのダーツを称賛し、チェーザレは喜んでいます。チェーザレはクレオパトラに夢中になり、ニレーノはチェーザレに「リディア」が彼を待っていると告げます。(アリア: Se in fiorito ameno prato ).


トロメーオの宮殿で、コーネリアは自分の運命を嘆く。(Arioso: Deh piangete,oh mesti lumi ). アキラはコーネリアに彼を受け入れるように懇願するが、彼女は彼を拒否します。(アリア: Se a me non sei Crudle ) 彼が去るとき、トロメーオも彼女を勝ち取ろうとしますが、拒否されます. (アリア: Sì spietata, il tuo rigore。望みがないと思ったコーネリアは自ら命を絶とうとするが、ニレーノに付き添われたセストに止められます。


ニレ-ノは、トロメーオがコーネリアを彼のハーレムに送るように命令したという悪いニュースを明らかにします. しかし、ニレーノをはまた、セストをコーネリアと一緒にハーレムに忍び込ませる計画を思いついたので、セストはトロメーオが一人で武装していないときに殺すことができます. (アリア: Cessa omai di sospirare ). セストはニレーノを殺したトロメーオと戦うことを望んで、宮殿の庭に入ります。(アリア: L'angue offeso mai riposa ). その間、クレオパトラはチェーザレが宮殿に到着するのを待っています。(アリア: Venere bella


まだ彼女に夢中になっているチェーザレは、クレオパトラの宮殿に到着します。しかし、キュリオは突然突入し、裏切られたことをチェーザレに警告し、敵はチェーザレの部屋に近づき、「チェーザレに死を」と唱えています。クレオパトラは彼女の身元を明らかにし、敵が彼らに向かっているのを聞いた後、チェーザレに逃げるように頼みますが、彼は戦うことにしました. (アリア: Al lampo dell'armi )(コーラス: Morà, Cesare morà ). チェーザレに恋をしたクレオパトラは、神々に彼を祝福してくれるように頼みます。(アリア: Se pietà di me non senti ).


トロメーオの宮殿で、トロメーオはハーレムに入る準備をします(アリオーソ: Belle dee di questo core。トロメーオがコーネリアを誘惑しようとすると、セストは急いでトロメ-オを殺そうとしますが、アキラに止められます。アキラは、チェーザレが(兵士から逃げようとして)宮殿の窓から飛び降りて死んだことを発表しました。アキラは再びコーネリアに求婚するが、トロメーオに断られます。激怒して、アキラは去ります。セストは荒廃したと感じ、自殺を試みますが、母親によってそうすることを妨げられています。彼はトロメーオを殺すという誓いを繰り返します。(アリア: L'aure che spira )




【第3幕】

トロメーオの忠誠心にもかかわらず彼に恩知らずであることに激怒したアキラは、クレオパトラの側に亡命することを計画しています(アリア:Dal fulgor di questa spadaが、トロメーオは彼がそうする前に彼を刺しました。トロメーオとクレオパトラの軍隊の間で戦いが始まると、トロメーオはクレオパトラに対する明らかな勝利を祝います(アリア: Domerò la tua fierezza )


クレオパトラは、戦いとチェーザレの両方に負けたことを嘆きます (アリア: Piangerò la sorte mia )。「Piangerò lasorte mia 我が運命を嘆く」


クレオパトラは兵士たちがトロメーオ軍との戦いに敗れたため、囚われの身となる。運命を嘆く大変美しい旋律からはじまるが、中間部では「だが、死んだ後には亡霊となり、昼も夜も暴君を苦しめてやる」という激しい感情が表れるのがクレオパトラらしい。しかし、チェーザレは死んでいません。彼は跳躍を生き延び、軍隊を求めて砂漠を歩き回っています(Aria: Aure, deh, per pietà。トロメーオを探していると、セストは負傷したほぼ死んだアキラを見つけ、アキラはセストに軍隊を指揮する権限を与える封印を渡します。チェーザレが現れてセストにその封印を要求し、コーネリアとクレオパトラの両方を救うか死ぬことを約束します(アリア:クエル・トレンテ、ケ・カデ・ダル・モンテ)


チェーザレが生きていてアキラが死んで、セストの精神が高まり、彼は戦うことを誓う(アリア:Lagiustizia ha già sull'arco


チェーザレはクレオパトラの陣営へと続き、クレオパトラはチェーザレに会えて大喜びする。

(アリア:Da tempeste il legno infranto 嵐で船が難破しても).



バロック・オペラに典型的な、状況の困難さを嵐に例えて歌う、技巧的なアリア。海で死んだと思われていましたチェーザレが生きてクレオパトラを救いに来た喜びを歌い上げる曲。「嵐で船が難破しても、そのあと、生きて港にたどりつければ、それ以上望むことはない」と高らかに歌い上げます。


宮殿で、セストはトロメーオがコーネリアを暴行しようとしているのを見つけ、彼を殺します。ポンペーオの仇討ちに成功したコーネリアとセストは、トロメーオの死を祝う。(アリア: Non ha più che temere )


勝利したチェーザレとクレオパトラはアレクサンドリアに入り、チェーザレはクレオパトラがエジプトの女王であることを宣言し、彼女と彼女の国への支援を約束します。彼らはお互いへの愛を宣言します(デュエット: Caro! Bella! Più amabilebeltà )。その後、チェーザレはエジプトが専制政治から解放されたことを宣言し、ローマの栄光が広く広がることを望んでいます。最後のコーラスでは、キャスト全員 (死んだアキラとトロメーオを含む) がステージに集まり、愛の力と悪に対する善の勝利を祝います (コーラス: Ritorni omai nel nostro core )





ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』のポイント

『ジュリオ・チェーザレ』で、ヘンデルは、初演のクレオパトラ役のクッツォーニのために腕によりをかけて書いたアリアの数々が、このオペラの最大の聴かせどころで、「声で堪能するクレオパトラの魅力」がこのオペラの売りだったのでしょうか。


また、ファリネッリと並んでバロック期のスター・カステラート歌手、カレスティーニの出演するオペラのために作曲されたオペラ・アリア。歌声の美しさと歌心は当代最高とされたカレスティーニの声の魅力を徹底的に引き出すべく作曲された作品でした。ヘンデル作品は彼のロンドンでのオペラ劇場での活動の最後を飾る作品で、カレスティーニはイタリアへ去ってしまいました。 スター・カステラート歌手がロンドンを去ると、ヘンデルもオペラの制作をやめてしまいました。ヘンデルにとってオペラは、歌手たちが華麗なる技巧を披露するため舞台であり、ヘンデルのオペラには傑出した歌手の存在が不可欠だったのです。カレスティーニはイタリアへ去り、ヘンデルの作曲の原動力となっていた傑出した歌手がロンドンからいなくなってしまった時、ヘンデルは方向転換して、オラトリオ作品の作曲に集中することになります。




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『ジュリオ・チェーザレ』では、クーリオ(バス)とアキッラ(バリトン)はアリアを1曲しか歌わない端役です。ドラマを引っ張る主要な6人は、3人のソプラノの他は、主役のジュリオ・チェーザレを始め、カストラートでした。


『ジュリオ・チェーザレ』は、美しいバロック音楽の甘味な旋律の音楽を背景に、ストーリーの展開はあるものの、甘味なメロディの女声のアリアが次々と同じような歌詞を畳みかけように歌われるこのオペラです。 これを、カットなしで第190分、第270分、第360分の合計約3時間40分聴くのは、相当の忍耐力が必要と感ずる人もいるのではないでしょうか。


実質的に主役であるクレオパトラに傑出した歌手を配し、過剰なほどの技巧で、鋭く歌う、歌手は楽譜に書かれていない技巧的な装飾で、旋律をどう装飾するか、それがうまくいったとき、歌手が声の響きも楽器の響きとシャープで躍動的になります。ヘンデルのオペラ『ジュリオ・チェーザレ』の上演には、こういう難しさがあると思います。




新国立劇場『ジュリオ・チェーザレ』の感想

今回の新国立劇場の講演では、ジュリオ・チェーザレ役をノルウェーのメゾソプラノ、マリアンネ・ベアーテ・キーランドが歌い、クレオパトラにいま日本でいちばん評価が高いソプラノと言われる、森谷真理が、トロメーオに日本を代表するカウンターテナー、藤木大地が起用されていました。




チェーザレ役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドさんは、最初はおとなしすぎると思いましたが、次第に本来の力を発揮し、2幕、3幕から声量を上げても柔らかさが失われないという彼女特有の魅力が感じられました。ただ、少しパワー不足なのか、他の登場人物とたくさんのアリアの中で、ドラマを牽引するとまではいかなかったと思います。ヘンデルが聴いていたらアルトカストラートとして満足したでしょうか。




 妖艶なクレオパトラ役の森谷真理さんは、恋愛の場面がセクシーな衣装で、倒錯的ともいえる熱演でした。安定した熱唱でしたが、声を強めると声量がやや足りない感じで、巧みに声をコントロールしてしっかりと歌っていました。ただ、ダ・カーポ・アリアの機敏な変化の妙を歌いこなすまでにはいかず、この難役にさすがに硬くなっていたようでした。


 セスト役の金子美香さんは、のびやかな声はやわらかく力もあり、1幕の「怒りよ、心の中で目を覚ませ」、2幕最後のアリアなど、日本人歌手の中では特に存在感があって大健闘していました。




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 コルネーリアの加納悦子さんは、所々で声が太くなったり、重々しくなったりして、もう少し透明感のある表現があると良かったと思いました。


  カウンターテナーでは高音の出る男性歌手が活躍していました。トロメーオの藤木大地さんは、実力派とは言われるだけあって、その滑らかな声は魅力的で、少しコミカルな歌の表現もよかったと思います。クレオパトラのとの兄妹としての絡み合いは演出のせいかも知れませんが、単調で面白さが足りなかったように思いました。


ニレーノの村松稔之さんは、容姿もスタイルやしぐさも女性的で、声はソプラノのように伸びて魅力的でした。はじめ女性が演じていると思っていたほどです。2幕の「甘く満ち足りた瞬間を逃したものは」などのキュートな歌唱も魅力的で、クレオパトラ役と対等に張り合っていました。



アキッラ役のヴィタリ・ユシュマノフさんは立派で存在感がありました。ただ、クレオパトラが日本人なのに、橋役のアキッラ役に海外の歌手を使ったのは、バランスを崩していたように思いました。




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ともあれ、『ジュリオ・チェーザレ』は、ヘンデルは、その時代最高に傑出したクレオパトラ役のクッツォーニのために書いたアリアの数々がこのオペラの最大の聴かせどころで、「声で堪能するクレオパトラの魅力」がこのオペラでした。更に、バロック期のスター・カステラート歌手、カレスティーニのために作曲されたオペラ・アリアは、カレスティーニの声の魅力を徹底的に引き出すべく作曲された作品でした。



今回の舞台では、歌手は全体として歌がうまく、メロディも美しく、バロック的な装飾技巧や、旋律の変化などをある程度楽しむことができましたが、歌手の力量が揃っている反面、卓越した力量の歌手の存在が見えず、主役不在ともいえる舞台だったように感じました。女声又はカストラートの似たような声で、同じ言葉を畳みかけるように歌うアリアが次々と繰り返されるため、歌だけ聞いていると、3幕合計約3時間40分に退屈さを感じたのは私だけでしょうか。





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2019年の『ジュリオ・チェーザレ』の最初の構想では、ヘンデルの壮大な音楽とともに、歌手の技巧を存分に堪能できる作品として、クレオパトラ役が世界的なスウェーデンのソプラノ。オペラ歌手、ミア・パーションが出演の予定でした。コロナ禍で、2年半延期になり、今も日本が感染爆発状態であることは西欧で知られている状況なので来なくなって、日本の実力は歌手・森谷真理がクレオパトラを演ずることになったのではと推測します。もしも、実質的に主役といえるクレオパトラ役に世界的なスウェーデンのソプラノオペラ歌手、ミア・パーションが出演していたら、全く違った舞台になっていたかも知れないと想像してしまいました。



コロナ禍前は、新国立劇場のオペラは、主役級の歌手は海外から実績のある歌手を招いていました。このようなオペラ公演を聴き慣れていると、日本人だけの舞台は残念ながら主役級の存在感が弱く、大方寂しいものになります。バロック・オペラは初体験なので、明確なことは言えませんが、世界的なソプラノオペラ歌手、ミア・パーションの存在が大きければ、この舞台もかなり違ったものになったかも知れないのではないかと思いました。



リナルド・アレッサンドリーニ指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は美しい世界から歯切れのよいしっとりとした音楽まで楽しむことができました。ただ、この演奏がバロック的なのかは、私がオーディオでしかバロック音楽を聴いておらず生演奏の体験がないため、はっきりしたことは言えませんが、少し違うのではないかと感じました。


ロラン・ペリーの演出は、エジプトの博物館のバックヤードを舞台に設定し、巨大な彫像や絵画が舞台上に次々と登場して古代と現代が入り混じります。と美術館の倉庫というシチュエーションで、古代ローマ指揮のエジプト人としての登場人物と、博物館で働く人が微妙に同期する舞台づくりがファンタスティックです。舞台セットがとても美しく絵になる、巨大な絵画な絵画からクレオパトラが登場し絵画の中で歌うなど、美しい場面もあり洒脱で品の良い舞台だったと思います。3幕合計約3時間40のやや退屈な長いオペラが、演出の変化により中和されたような印象でした。






参考資料

新国立劇場 オペラ『ジュリオ・チェーザレ』公式サイト

2022/2023 オペラ『ジュリオ・チェーザレ』公演プログラム新国立劇場

新国立劇場 オペラ『ジュリオ・チェーザレ』公式サイト

ぶらあぼ「新国立劇場 2年半越しの《ジュリオ・チェーザレ》」2022.10
ウィントン ディーン (), 藤江 効子, 小林 裕子 (翻訳)

       『ヘンデル オペラ・セリアの世界』2005年 春秋社

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』










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by desire_san | 2022-10-29 00:30 | オペラ | Comments(7)
Commented by Keiko_Kiinoshita at 2022-10-30 23:33 x
歌手の方々は本当にうまいのですが、メロディの美しさというより、バロック的な装飾技巧や、旋律の変化などを楽しむことができ、いつもと違う楽しさがあります。歯切れのよい曲や、しっとりとした曲(もっとも私はこの「しっとり」系はまだ苦手なのですが)も多く、ロマン派以前の人たちの歌の楽しみ方を体現でき、貴族になったような気もします。この公演はとても素晴らしいので、もし興味があれば、観に行って損のない公演だと思いました。





Commented by Kiyoshi_Morishita at 2022-10-30 23:44 x
バロックオペラを聴く機会が少ないので楽しみにしていましたので、楽しめる公演でした。           バロック時代に用いられた楽器は、たとえばヴァイオリンです。ネックは短く角度もまっすぐで、弦もスチールやナイロン製ではなく、羊の腸などで作られたガット弦が張られていたようです。ホルンはバルブやピストンがなく、自然倍音音列だけで演奏されました。どうしても音量は小さくなりますが、その代わりに音が鋭くなってリズムが際立ち、響きがシャープになり、速度や強弱にメリハリがついていました。

モダンに聴こえるのは歌手のせいです。バロック・オペラはふつう、歌手に過剰なほどの技巧を求めている。演歌のように粘っこく歌っていては、そういう技巧を表現することはできず、鋭く歌う必要があります。声の響きも楽器の響きと同様、シャープで躍動的になります。
歌手による技巧的な装飾は、楽譜に書かれているわけではなく、バロック・オペラでは、旋律をどう装飾するか、歌手が指揮者と相談して考えます。
バロック・オペラの楽譜には、低音部の旋律と、和声を示す数字が書かれているだけで、演奏者はそれを見て、適切な和声をつけて演奏しなければならりません。ギターの旋律にコードをつけて伴奏するのと同じで、音楽に即興性があって、演奏がとても自由のようでした。



Commented by Masayuki_Mori at 2022-10-30 23:53 x
 史実のクレオパトラは、オペラのように共同統治者の地位のまま侍女に扮してカエサルを招いたのではなく、自ら危険なアレクサンドリアに忍び込み、絨毯に包まれてカエサルの元に運ばせたという有名な話が残されています。

 クレオパトラの大胆さと美しさに魅了されたカエサルは、プトレマイオスに対し、クレオパトラとの共同統治に戻るよう仲裁します。これをプトレマイオスと王の取り巻きは不服としてカエサルを包囲し、ナイルの戦いに発展していきました。

 包囲されたカエサルは、大灯台のあるファロス島を拠点に援軍を待とうとするも失敗しました。カエサルは船から海中に飛び込み退却しました。援軍が到着すると形勢が逆転します。プトレマイオスはナイル川を下って逃亡した際に川に落ちて溺死し、アルシノエも捕らえられました。
王座に返り咲いたクレオパトラは、弟のプトレマイオス14世を共同統治者に指名しました。カエサルは数カ月エジプトに留まり、クレオパトラとの間にはカエサリオンという息子が産まれました。






Commented by High_Rezo at 2022-11-08 12:40 x
今回の「ジューリオ・チェーザレ」は、ヘンデルの一番人気のオペラ。タイトルロールはあのローマ将軍シーザーで、オペラの主軸はシーザーとクレオパトラが出会って結ばれるまでです。

バロックオペラというのは、ストーリーが史実とずれているのは当然で、音楽も、歌も楽器も即興に任せられる部分が大きいので、とても自由。当時の即興や装飾を含めて演奏習慣や楽器のことなどいろいろな知識がないと、ふさわしい「遊び」はできない、とても高度な破茶滅茶に感ずるようです。

 そして何より、うまい歌手、うまい奏者が揃わないと、面白くない、というのはご指摘の通りだと私も思います。





Commented by Keiko_Kiitagawa at 2022-11-08 12:51 x
繰り返しが多い4時間半のヘンデルオペラを自分は最後まで見られるのか少し不安でした。
1幕だけで90分ある。二回の休憩をはさんで2幕と3幕が各60分。蓋をあけてみたら、不思議な世界に巻き込まれ、あっという間に終わってしまいました。

チェザーレ役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドも、トロメーオ役の藤木大地さんも、ガラスの展示ケースの中に入ったり、巨大な遺跡オブジェに乗ったりして歌う。たくさんの裏方スタッフが、展示物を運んだり絨毯を塗ったりしていました。

隅に陳列されていた石膏像・ソクラテスやアポロやアグリッパなどが一斉にパクパク口を開けて歌い出すというロラン・ペリーの演出はぶっ飛んでいる感じでした。

ジュリオ・チェーザレの難しいアリアを聴いていると、受胎告知の天使の口から文字が出てくる絵を思い出しました。マリアンネ・ベアーテ・キーランドは、真摯にこの役を歌いこなし、英雄の悲劇的な表情も良かったと思いました。





Commented by Hiromi_Kasamine at 2022-11-08 13:08 x
2年前にコロナ禍で上演できなかった作品が、ついに上演されたので、行ってきました。

歌の感想ですが、高音を伸ばすところもひっかかることなく綺麗に伸びるし響く。しかし、声が聴こえない。届かない。多分、アジリタ部分は転がすこととブレスを長く持たせることを考慮しすぎて、声量をかなりセーブしているような気がしました。

レチタティーヴォやアジリタではない部分は声量もあり客席にスッと声が届いていましたが、アジリタになると声が引っ込んでしまいます。発声のポジションや響きの問題もあるではょうが、声量をセーブしている結果、超小声アジリタになってしまっているのかではないかと思いすました。

小声でアジリタができることもすごいんだけれど、バロックオペラのレパートリーは多くお持ちなので、決してアジリタが苦手だったりバロックオペラが主力ではないというわけではないようです。彼女の中の歌唱法の1つなのかもしれません。


新国立劇場はシビアなつくりをしていて、なんでもかんでも響かせてくれる優しい劇場ではないようです。小さい声や響きがない声は簡単に切り落とすようです。彼女のアジリタは声自体に響きがないわけではないでしょうが、新国立劇場は拾ってくれなかったようです。








Commented by desire_san at 2023-08-22 23:04
『ジュリオ・チェザーレ』のレポート読んでいただきありがとうございます。新国立劇場の舞台を「退屈」「長い」と感じたのは演出による理由もあります。ただ、バロックオペラ自体、モーツアルト以降のオペラと比べて脚本も音楽も完成度が低いのも事実です。バロックオペラの魅力は美しいアリアなので、まず、オーディオでアリアに特化して聴きこんでみるのも、バロックオペラに親しむよいほうほうではないかと思います。





by desire_san