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芸術と自然の美を巡る旅  

日本映画界屈指の実力派女優の安藤サクラの渾身の熱演から学ぶ

映画『100円の恋』と安藤サクラ

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山口県・周南映画祭の「松田優作賞」第1回グランプリを受賞した足立紳の脚本を武正晴監督が映画化した映画『100円の恋』で主演・安藤サクラさんは、キネマ旬報ベスト・テン・主演女優賞、ブルーリボン賞、高崎映画祭・主演女優賞・日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞と日本映画の主要映画賞を独占し、数々の映画賞に輝きました。安藤サクラさんは約3カ月間の壮絶ともいえるトレーニングを敢行し、ボクシングに情熱を傾けることで日常をダイナミックに変革させていく主人公・一子を心身もって体現しました。





 注目するのは、映画賞の中でも、評価の高いキネマ旬報ベスト・テン 主演女優賞3回、キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞2回、キネマ旬報ベスト・テン創刊以来、初めての快挙となった主演女優賞、助演女優賞のダブル受賞など前人未踏の記録を持ち、映画『万引き家族』では第71回カンヌ国際映画祭にてコンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞し、女優としても高い評価を得ている現代日本映画界きっての若手実力派女優の安藤サクラさんが、女性ボクサー役に挑んで最後まで必死に闘い抜く渾身の熱演をして、熱く体現したことで、絶賛を浴びた感動作となり、以下のような高い評価を得ました。



 映画『100円の恋』も、第27回東京国際映画祭の「日本映画スプラッシュ部門」作品賞受賞、プチョン国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)、日本映画プロフェッショナル大賞 ベストテン第1位作品賞、監督賞、コハマ映画祭・脚本賞、日本アカデミー賞・最優秀脚本賞、優秀作品賞、優秀監督賞、最優秀脚本賞、受賞し高く評価されました。





あらすじと映画の見どころ

32歳の一子(安藤サクラ)は実家にひきこもり、だらしないすさんだ日々を過ごしていた。お腹がでぶでぶ太ってだらしない身体にするため体重を増やし、ぶよぶよの身体にしていました。


離婚して実家に戻ってきた妹の二三子といざこざを起こし折り合いが悪くなり、ついに一子と二三子は大喧嘩になってしまいます。これをきっかけに一子はボストンバック、手提げ袋を持って自分の荷物をまとめた一子は家を出て一人暮らしをはじめることにしました。2階建ての古いアパートを借りた一子は押し入れを机代わりにし履歴書を書き始めました。履歴書の送り先はいつも深夜に通っていた100円均一のコンビニでした。



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夜な夜な買い食いしていた百円ショップで深夜労働にありつきますが、そこは底辺の人間たちの巣窟でした。心に問題を抱えた店員たちとの生活を過ごす一子は、帰り道にあるボクシングジムで、一人でストイックに練習するボクサー・狩野(新井浩文)を覗き見することが唯一の楽しみとなっていました。


ある夜、ボクシングをやっている男・狩野が百円ショップに客としてやってきました。100円ショップ、ボクシングをやっている男になぜか声をかけられデートに、デートなんかしたことのない一子は、100円ショップで売っていた豹柄の下着をつけて鏡の前に立ちますが、自分の姿をみてがっかりする場面などに笑えない悲しさがあります。


狩野がバナナを忘れていったことをきっかけに2人は距離を縮めていきます。「あの、どうして私なんかを」と誘った理由を聞いた一子に、「断られないような気がした」と言われます。適当に声をかけても断らない安い女だと思われた悲しさ。一子の周りの人間は、常に誰かを蔑んで、安っぽいものを雑に扱う人たちばかりです。



酔っ払ってバイト先の人間に暴行を受け、どうにもできない自分に嫌気が差し、彼女はボクシングジムに通いはじめます。始めはただ通っているだけです。彼女は、新井浩文が演じるボクシング男狩野祐二をアパートで住まわせてしまいます。一子はボクシングをしている祐二を好きになっていきます。


バイト仲間には酷い目にあわされ、好きな男には邪険に扱われ、一子は、風邪をひいて倒れてしまいます。そんな一子を心配してか、ボクシングの男は、彼女にステーキを焼いてくれます。と、割り箸が折れます。しかし、肉が硬くて箸も折れてしまい、一子は情けなくて泣いているのです。頑張ろうとしているけれど、何もかもうまくいかなくて、自分が情けなくて、ステーキを食べようとしても箸まで折れる。何もかもうまくいかなくて悔しい。一子は、初めて祐二に抱かれます。


祐二と同棲した一子は幸せそうですが、結局、祐二は、よりいい女性のほうにいってしまい、一子は捨てられます。狩野との幸せな日々はすぐに終わってしまいましたさらに、100円ショップの店長には、賞味期限の切れたお弁当をホームレス風のおばさんにあげていたことがバレて怒られます。


ある日、たまたま始めたボクシングボクシングをきっかけに一子の中で何かが変わり始め、これまでの人生を跳ね返すような新しい自分を生き始めるリターンマッチのゴングが鳴り響こうとしていました。彼女は、ボクシングにのめりこんでいきます。



「テスト受けたいんですけど。」

一子は、プロテストを受けるというのに恥ずかしくない絞った身体になります。それは並大抵の努力では叶わないものでした。


しまりがなく太っていた身体が次第に締まっていきます。腕も満足にひろげられなかった一子は徐々に動きがよくなり、パンチの威力も上がっていきます。長い階段を駆け上り、すごい速さで走れるようになり、走る姿の美しさも素晴らしくなっていきます




そして、一子が頑張ることによって、自信のなくなっていた父親や、自分を下に見ていた妹、いじめられている妹の子供など、周りの人々に人に希望を与えていきます。


この作品は、単なるよくある自己啓発の映画ではありません。本当にどん底に落ちて、どうしようもできなくなった主人公が、努力し、あがきながら前に進む力強い作品でもあります。ジムの会長、トレーナーなどがリアルに描かれ、一子(安藤サクラ)の演技も、リアリティを増していきます。


なんでボクシングをやることにしたのか聞かれた彼女は「戦いが終わったら、肩たたきあったりするのが、なんかそういうのが、なんかいい。」一子は一生懸命やっている人間にあこがれていたのです。何も打ち込めなくて甘えてばかりいた彼女が、ボクシングのプロになるために、自分を追い込んで変えていこうと思ったのです。



ロテストに合格し試合に出ることになった一子は、試合のテーマソングを100円ショップのテーマソングにします。「一発ぐらい、入れてみなさいよ」、一子は、ないがしろにされていた世界に、一発でいいから、かましてやりたかったのです。




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ハリウッド映画「ロッキー」のように、一子もまた格上の相手に戦いを挑みます。見事に絞られた身体。くっきりとした目つき。このボクシング・シーンが素晴らしいです。息が上がって呼吸ができない、白目をむいて、血を流す顔、ボクシングというスポーツの過酷さをリアルに描きます、


一子逃げ出して最後、ずっと試合にはいかないと言っていた狩野が一子と向き合う覚悟を決めて試合を見にいきました。一子との関係が修復不可能くらいになっていた家族も、一子の試合を見にきます。


最後の試合のシーンは言葉にできないほどにかっこよくて痛い。試合が終わり、一子が泣くシーン。一子の「勝ちたかった」という言葉はすごく重みがあって、考えられないほど成長した一子がそこにいました。一子は試合に負けたけど、1番強いはずだった怠け者の自分に打ち勝った。自分に勝つのが1番難しいのです。



安藤サクラが主演した「100円の恋」は、一子逃げ出して最後、ずっと試合にはいかないと言っていた狩野が一子と向き合う覚悟を決めて試合を見にいきました。一子との関係が修復不可能くらいになっていた家族も、一子の試合を見にきます。



最後の試合のシーンはもう言葉にできないほどにかっこよくて、目が離せなくて、痛いのです。試合が終わり、一子が泣くシーン。一子の「勝ちたかった」という言葉はすごく重みがあって、考えられないほど成長した一子がそこにいました。一子は試合に負けたけど、1番強いはずだった怠け者の自分に打ち勝った。自分に勝つのが1番難しいのです。



安藤サクラが主演した「100円の恋」は、そんなどうしようもないところまで落ちてしまった女性が、初めて強く意思を持つ物語でした。






映画の魅力

この映画が映画賞を総なめにするほど成功したのは、ひとえに安藤サクラの演技力は凄さです。


普通の女優さんが、わざと汚いものをみせることは、様々な活躍をみせている女優が肉のった背中をみることは普通ではありえないのです。演技の面では、声は小さく、内弁慶で、家族には暴力をふるい、身勝手で、甘ったれで、何も考えられず、酷い目にばかり会う、そういう演技を自然体で演じ切ってしまうのです。一子のだらしないすさんだ姿を見事にリアルに描写されています。映画の主演女優がここまで醜い顔をさらけ出すことは珍しいのではないでしょうか。


だらしない身体にするため体重を増やし、後半は、プロテストを受けるというのに恥ずかしくない絞った身体になります。それは並大抵の努力ではできないです。そういうところも含めて、個性的実力派の安藤サクラさんは凄い女優だと思いました。



一子の成長を最初から見ていると、ボクシングを始めたところから雰囲気が一気に変わり始めます。一子が本格的にボクシングをはじめるところは本当にすごかったです。映画の中で、一子(安藤サクラ)がどんどん進化していって、まるで別人のようにカッコいい女性に変貌していきます。演技が自然体でリアリティと説得力があるため、「人間ってここまで変われるのだ」と思えてきて、見る人に「自分も本気になって頑張ろう」と勇気を与えてくれます。



安藤サクラさんの動きは何と言っても一子が本格的にボクシングをはじめるところは本当にすごかったです。運動能力、ボクシングの構えとかパンチの速さはプロではないかと思うほど迫力がありました。



ボクシングの試合のシーンでは、息が上がって呼吸ができない、白目をむいて、血を流す顔を見せます。ここでも、ほかの女優ではほとんどやらない、醜い顔をさらけ出し、ボクシングというスポーツの過酷さをリアルに表現していました。映画全体を通しては、もう目を覆いたくなるような現実までもリアルに表現していました。



ボクサーとの出会いから、毎日を生きながらえながら恋愛とボクシングに目覚めていく姿を、安藤サクラさんが演じます。さえない日々に葛藤し、ボクシングに傾倒するヒロインをえんずる安藤サクラさんの繊細かつ体を張った熱演に私は強烈に引き込まれました。




安藤サクラさんの演技が神がかりといえるほどでしたが、100円ショップの元店員で、レジのお金を盗んでクビになったオバちゃん役の根岸季衣さんの演技も、「こんな人居る」って思わされるような演技で、この映画百円の恋には欠かすことの出来ないスパイスのような役割を果たしていたと思います。



この映画は単純な自己啓発の映画ではありません。一度も勝負してこなかった彼女が、勝負を挑む。そのことこそがこの映画の重要なテーマです。何にも打ち込むできない人が多い中、何でもいいから打ち込めることを見つけて、世間とかに一発でいいから存在を示ことは簡単なことではありません。勝負を挑で敗れた一子を待っていたのは、100円ショップで出会った「100円の男」狩野でした。一子が狩野にやさしく肩を添えられて歩いて行くエンディングは、決して一子の明るい未来を暗示しているわけではないことを示しているように感じました。



この作品は、ちょっときつすぎる現実を映しています。そこにある、一度でいいから戦う、ということの大事さを教えてくれる作品となっています。ある意味において、失われた時代の世界を映像にしたような作品で、一部の人たちには凄まじい共感を呼びおこしたかもしれませんが、わからない人には全く理解できない映画かも知れません。



グローバル化した社会、新自由主義経済の社会で、勝ち抜くことは並大抵のことではありません。現実に立ち向かおうとしなかった人が、一度でいいから戦う、ということの大事さは理解できます。しかし、一度闘ったら、闘い続け、勝ち抜くまで闘い続けなければ、勝利者にはなれないかもしれません。このあたりの考え方にはたくさんの哲学的な考え方があり、ここで簡単には語れませんが、はじめから負けを認めて、全く戦おうとしなければ、未来はないでしょう。この映画が教えてくれた、一度でいいから戦う、ということの大切さをは、不滅の真理と言えるのではないでしょうか。






監督 武正晴  脚本 足立紳 

出演 

安藤サクラ(斎藤一子)

早織(斎藤二三子)

伊藤洋三郎(斎藤孝夫)

宇野祥平(岡野淳)

沖田裕樹(佐田和弘)

坂田聡(野間明)

吉村界人(西村)

根岸季衣(池内敏子)

新井浩文(狩野祐二)

重松収(青木ジムの会長)

松浦慎一郎(小林)

和宇慶勇二(藤村京介)

白岩佐季子(迫田彩美)





参考資料

映画「百円の恋」公式サイト

百円の恋 | 東映ビデオオフィシャルサイト

「百円の恋」劇場用パンフレット

Momonosatiblog ドラマ映画感想「演技派安藤サクラ」

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia





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by desire_san | 2022-11-10 09:55 | 日本の旅と文学・映画・ドラマ | Comments(5)
Commented by Yugralio_Rejewat at 2022-11-23 11:18
「100円の恋」どこかでタイトルを見たように思たのですが、解説を読んで、心にしみる良い映画であるとおもいましたね やる気のない どうしようもない人間も努力で立ち直れることを示していますね これは一種の教育映画ですね



Commented by desire_san at 2022-11-23 11:19
私はこの映画は教育映画とは思いませんでした。一度も勝負してこなかった彼女が、勝負を挑む。そのことこそがこの映画の重要なテーマです。何にも打ち込むできない人が多い中、何でもいいから打ち込めることを見つけて、世間とかに一発でいいから存在を示ことは簡単なことではありません。勝負を挑で敗れた一子を待っていたのは、100円ショップで出会った「100円の男」狩野でした。外題のきつすぎる現実を映してると思います。それでも、この映画から学ぶ人がいることは理解いたします。



Commented by Keiko_Kinosdhita at 2022-11-23 11:20
安藤サクラさんの演技に感動しました。
私は、1989年「告発の行方」、1991年「羊たちの沈黙」で、2度の「アカデミー賞主演女優賞」に輝かれた、ジョディ・フォスターさんを思いだしました。




Commented by 山脇由美 at 2022-11-23 11:27
『100円の恋』の魅力と、あらすじと映画の見どころを丁寧ありがとうございました。

安藤サクラさんは、「松田優作賞」第1回グランプリを受賞した足立紳の脚本を映画化した『100円の恋』は、主要な日本の最優秀主演女優賞を独占し、数々の映画賞に輝きました。

安藤サクラさんがNHKの朝ドラ『まんぷく』のヒロインに決まった時、相手役に『麒麟がくる」で名演し、長谷川博己さんも安藤サクラさんの演技に興味があったので快諾しました。その安藤サクラさんが、日本映画界屈指の実力派女優の神髄を、繊細かつ体を張った渾身の熱演で魅せた映画のが『100円の恋』です。『まんぷく』のオープニング17歳?になりきった安藤サクラさんとは全く違う安藤サクラさんの魅力が炸裂しますね。

安藤サクラさんは、ひとりで映画をけんいんできる凄い女優さんですね。





Commented by 平石 悟 at 2022-12-25 11:37
「松田優作賞」第1回グランプリを受賞した足立紳の脚本を映画化した『100円の恋』は、主要な日本の最優秀主演女優賞を独占し、数々の映画賞に輝きました。『100円の恋』の安藤サクラさんがNHKの朝ドラ『まんぷく』のヒロインに決まった時、相手役に『麒麟がくる」で名演し、長谷川博己さんも安藤サクラさんの演技に興味があったので快諾しました。その安藤サクラさんが、日本映画界屈指の実力派女優の神髄を、繊細かつ体を張った渾身の熱演で魅せた映画のが『100円の恋』です。『まんぷく』のオープニング17歳?になりきった安藤サクラさんとは全く違う安藤サクラさんの魅力を演じてくれましました。