セザンヌの最高傑作『赤いチョッキの少年』、ルノワールの絶世の美少女
ピュールレ美術館 チューリッヒ
Foundation E.G.Bührle

学生時代に美術史を学び、実業家として財をなした世界的に有名な美術収集家のエミール・ゲオルク・ビュールレが、生涯を通して情熱を注いだ、贅沢な個人コレクションは、チューリヒ湖そばにある瀟酒な彼の自邸に飾られていました。1956年にビュールレ氏がこの世を去った後に、チューリヒに遺族が財団を設立し、彼の邸宅を開放して美術館となりました。 このコレクションは約200点の作品で構成され、17世紀のオランダの絵画、18世紀のイタリアとフランスの絵画などがあり印象派とポスト印象派の最高レベルの傑作で構成され、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、モネ、セザンヌなどのフランス印象派の巨匠たちの作品群は、奇跡のコレクションといわれ、世界随一のレベルを誇っています。
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チューリッヒは、ローマ時代から栄えるスイス最大の都市です。チューリッヒ駅前を発着するトラム、私はまずトラムに乗り中心街まで向かいました。欧州を旧市街の多くに見られる風景ですが、トラムと古いビルとも調和がとれていて、車の通行が制限されていて、車が通行してないのが最高に素晴らしく、理想的な市街地の風景のように感じました。チューリッヒ湖が見えてくると、チューリッヒはスイス一の都会であるが湖畔は水鳥がたたずみきれいな街でした。チューリヒ湖を望むところに、かわいらしい花時計がありました。旧市街には、大聖堂、グロスミュンスター、9世紀から10世紀に建てられたチューリッヒ最古の教会、聖ペーター教会、シャガールのステンドグラスで有名な聖母聖堂などの史跡や博物館に加え、自然も多く残る美しい街並みが魅力でした。

TheFoundation E.G. Bührle Collection (Stiftung Sammlung E. G. Bührle) wasestablished by the Bührle family in Zürich, Switzerland to bring to publicviewing Emil Georg Bührle's important collection of European sculptures andpaintings. The Foundation's art museum is in a Zurich villa adjoining Bührle'sformer home.
私がこのピュールレ美術館を訪れたのは、2000年に近い秋でしたが、その後の2012年にチューリヒ市が増大するコレクションを展示するため、チューリヒ美術館の新館を建設することが決定し、2020年以降チューリヒの至宝でもあるビュールレ移管が決まっていまたそうで、それに関係して、日本では決して見られないと思っていたピュールレコレクションの傑作66点が来日し、東京の国立新美術館で美術展が開催され、全く予想しなかったピュールレコレクションとの再開を果たすことができました。
Collections ; Although the collectionincludes a number of Old Masters and Modern art including works by PierreBonnard, Georges Braque, Henri Matisse, and Pablo Picasso, it comprisesmainly French Impressionism and Post-Impressionism paintings by Paul Cézanne,Edgar Degas, Paul Gauguin, Édouard Manet, Claude Monet, Camille Pissarro,Pierre-Auguste Renoir, Georges Seurat, Alfred Sisley, Henri deToulouse-Lautrec, Vincent van Gogh and others.
ポール・セザンヌ『赤いチョッキの少年』1880年
PaulCezanne "A boy with a red vest" (around the year 1888/90)

セザンヌの画業を語るうえで必ず言及される「赤いチョッキの少年」は、1886年に亡くなった父の遺産を手にしたセザンヌは、プロのモデルを雇う余裕できて、初めて一流のモデルをさまざまなポーズを取らせて、この作品を含む4点の油絵と2点の水彩画を仕上げました。 この作品に採用された伝統的なメランコリーなポーズは、それまでほとんどなかったが、セザンヌの1990年代にはしばしば取り上げられています。
これまでのセザンヌの作品と比べて全体がずっと整理され、色彩も特別に鮮やかな天で成功しています。中央の長く引き伸ばされ大きく描かれた少年の右腕が、正常のバランスを抜け出し、はるかに大きなものになっています。それは、袖のついている左腕と対比するとはっきりします。しかし、この絵を見ていると、手前の腕での異常な大きさにあまり違和感を感ません。少年の右腕は、絵画画面の中心にどっしり大きく据えられた大黒柱のようなもので、全体に強い安定感を与え、それを通じて、画面に美しさと精神的深さの見事な融合が生まれています。
チョッキの赤の並々ならぬ鮮明な美しさに強いインパクトを感じます。 少年の身に着けた、赤、白、青が魅惑的です。 少年が肘をついているものの緑も、並大抵の色ではありません。一見机に見えるものは、幅広い椅子のようです。 色彩が豊かになるほど形が豊かになる、というセザンヌの言葉の実践がこの作品し強く主張しているように感じるのです。
もう一つ注目すべきは、造形的な自立性です。 少年の長く伸びた腕を覆うシャツ、右端のソフアの上に載る四角い紙は光を反射して白く輝き、その周囲に配された、ヴォリュームのあるカーテン、少年の膝をつく椅子の濃い色調と、鮮やかな対比を見せています。この作品の主役ともいえるチョッキは、その内部に置かれることで、その鮮やかな色彩のハーモニーにより、色彩のリズムが完成しているのです。
セザンヌは一時期、印象派に近づいたが、本格的な印象派の画家であることに飽き足らず、無意識か意意識的かはわかりませんが、絵画制作に前衛性を求めていたように感じます。この作品には、色彩と画面の再構築が見られ、もはや印象派よりキュビスムや抽象絵画を志向しているように感じます。
Themost impressive collection is a big sight. Among the Bucurer Collections,Impressionists and Post-Impressionists' works are particularly high in qualityand are attracting attention from art fans all over the world. Eugene Delacroix, Edgar Degas, Edouard Manet, Pierre-Auguste Renoir,Vincent van Gogh, Paul Gauguin, Claude Monet, Paul Cezanne, Henri Matisse,Pablo Picasso's luxurious writer Works are gathered together. Among them, Renoir draws an innocent girl of eight years old"Elaine Caen Danvert lady " and a distinguished facial expression ofAnnui painted by Cezanne "red vest of boots", the best of bothwriters It is a spectacular work known as masterpiece.
ピエール・オーギュスト・ルノワール
『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』
(可愛いイレーヌ)

絵画史上、最も人気のあるな少女像といえる『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)』は、裕福な銀行家の注文を受けて描かれた子女の肖像画です。植え込みの深い緑色を背景にして、座る少女が光を浴びて輝いています。斜めを向いた色白の顔は丁寧に描写されており少女の面影をよく写し取っています。
顔まわりはしっかり描かれていますが、赤みがかった少女の豊かな髪や衣装は、素早く細かいタッチで異なった色が並置されています。これは明らかに印象派風の描き方です。 ルノワールはこの作品で、部分ごとに描法を使い分けて、人物の存在感と画面の明るさ・軽やかさを同時に実現しています。
ルノワールは、戸外にキャンバスを持ち出してモネらと印象派的描法を模索した数年前なら、瞬間の印象を画面に留めるため顔面の丁寧な描写など切り捨てられていました。しかし、『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)』では、印象派の流儀とは異なる少女の表情を描き込んでいるのです。人物が周囲に溶け込む流麗な筆致が。その場の雰囲気を見事に描く近代人物画を代表する傑作といえます。
ルノワールの芸術を語るにあたって、忘れてはならない画家がいます、ロココ美術の巨匠フラゴナールの存在です。そう思ってみねと、フラゴナールとルノワールの絵に同じようなにおいがすると思いませんか。生きる喜びを描こうとした画家という点でも、フラゴナールとルノワールは微妙に共通しています。ロココ様式最後の画家、フラゴナールかとうえ義の完成者アングルの描く女性は、ラファエロのように美しく、衣服のレースまで細部の表現が美しく、古典主義的なリアリズムを感じさせます。 ルノワールが傾倒したロココの画家・フラゴナールの作品では、偶発性が更に進み,モデルの一瞬の動きを近代絵画特有の性格が濃くなって往きます。穏やかに微笑みながらこちらを見つめるマドレーヌの表情は、軽やかな筆遣いによって描かれていて、うつろいやすい少女の美しさ典主を見事に視覚化した作品となっています。
ルノワールが描く少女の愛らしさは、ルノワール特有のバランス感覚から生まれているのだと思います。イレーヌ嬢の姿には、印象派を学んだルノワールならではの抜群に上手な光演出を感じます。開けた場所に少女を座らせることで画面にたっぷり光を導き入れ、それを人物のもとへ集中させます。集中された光の効果により、少女の色白の肌は透明感を増し、豊かな髪は光を乱反射させながら画面から浮き上がってくるのです。光の効果を自在に絵画へと反映させてしまうルノワールの手腕が存分に発揮されています。技と思考の深みも実感できる傑作です。うつろいやすい少女の美しさをここまで見事に師各課した作品は他に類を見ないといっても過言でないでしょう。
トゥールーズ・ロートレック『メセリン』 1901年

トゥールーズ・ロートレックは、ボルドーでのグランシアターに行ってメッシーナのオペラを見て、客席から "美しい"と叫んだと言われ、このオペラを題材に多くの作品を残しました。『メセリン』は、今日はめったに上演されていませんが、1899年にモンテカルロオペラで熱狂的人気があったオペラです。オペラ「メセリン」は、詩人ハレスを誘惑したローマ皇后メサリナのおとぎ話に基づいています。彼女はすぐに彼の献身と愛情に疲れました、彼の兄弟、ハンサムな剣闘士ヘリオン近づきます。ハレスは不貞な恋人に対して復讐を誓います。最後の場面はサーカスマキシムスの皇室で行われます。ヘリオンに面と向き合い、メセリンは彼女が彼からの彼の兄弟の見知らなかつた原因であると告白します。一方、ハレスは秘密に入ってメサリナを殺そうとしますが、ヘリオンによって打ち負かされてしまいます。彼は兄弟を殺したことに気づいて、ヘリオンは彼が死んだところで彼がライオンによって裂かれている場所で立ち往生します。パールマンは、ハレスがメセリンを暗殺しようとする直前の瞬間に働いています。
19世紀のフランス絵画
19世紀のフランス美術は最も大きな変化の時代を迎えました。神話や宗教、歴史といった、それまで最も重要と考えられていた主題が後退し、風景や静物など、日常の何気ない一瞬を捉えたような作品が画家たちの関心の的となっていきます。 主題性が希薄になり、何を描くかではなく、いかに描くか画集視されるようになっていきます。ここでは、ドラクロワやシャヴァンヌなど、古典的な主題を取り上げながらその様式で近代への扉を開いた画家たちや、近代絵画の父と称せられるマネの作品が展示されていました。
ウジェーヌ・ドラクロワ モロッコのスルタン』 1862年

ドラクロワは記録係としてフランスの使節団によるモロッコ訪問に随行し、同国のスルタン、ムーレイ・アブドゥッラフマーンに謁見しました。ドラクロワは、この時の記録や記憶を基にスルタンを描いた作品を1845年のサロンに出品した後も、この主題をたびたび手掛けています。この作品では、ドラクロアの卓越した色彩感覚が輝き、多くの従者に囲まれたスルタンの威厳のある姿を鮮やかに描いています。ドラクロアらしく、赤をうまく使って、画面に躍動感を与えています。
コローの初期の作品《読書する少女》、では、少女が読書にふける姿が自然に描かれています。コローのリアリズムは、クールベの強烈なリアリズムとは一線を画していました。マネは、多様なモチーフを、見事なタッチで表現しました。
マネ 『オリエンタル風の衣装をまとった若い女』
1871年頃

伏し目の表情をした女性が、中東風の装飾品と透けた白いロングドレスを身に着け佇む様子が描かれています。官能的な衣服を身にまとった女性の姿には、東洋趣味の妖艶さと倦怠感が漂っており、誘うようなエロスを感じさせる作品です。
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ジョルジュ・ブラック 『ヴァイオリニスト』 1912年
1908年以降、ブラックはピカソと共に、物体を平面的な小さな面に解体し、それらを再構成するキュビスムの絵画を作り上げるようになりました。この作品では、演奏者のイメージは細かく分解されていますが、ヴァイオリンの4本の弦と字孔ははっきりと認識できるように描かれています。
パブロ・ピカソ 『花とレモンのある静物』 1941年
ナチスによるパリ占領が始まっても、ピカソはパリのグラン=ゾーギュスタン通りのアトリエで作品を制作し続けました。1944年のパリ解放までの間、ピカソが描いた静物画は戦争の暗い影を落としています。本作品でひときわ目を引く画面を分割する黒い線は、占領下の不安や苦悩を感じさせます。
参考文献
図録「至上の印象派展 ビューレル・コレクション 2018
「ビュールレ・コレクション」公式ウェブサイト. スイス政府観光局
アレックス・ダンチェフ (著), 二見史郎、蜂巣泉(翻訳),「セザンヌ」 2015年
賀川 恭子 (著) 西洋絵画の巨匠 (4) ルノワール大型本 – 2006年