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芸術と自然の美を巡る旅  

変化に富んだ躍動的な踊り、夢の中の優美な群舞、バレエの美しさ

バレエ『ドン・キホーテ』

Ballet Don Quixote


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スペイン・バルセロナの太陽の下で.恋する町娘キトリと床屋のバジルの恋物語が、様々なエピソードと踊りに彩られて、陽気に賑わうバルセロナの町に繰り広げられます。中世の騎士になりきって旅するドン・キホーテ、闘牛士や町の女たちによるスペイン舞踊、風車のエピソード、ドン・キホーテの夢の中で繰り広げられる美しい群舞、魅惑的な登場人物が繰り広げるバレエ『ドン・キホーテ』は、生命力あふれる明るく弾ける躍動的な踊り、楽しい演技が観る人を幸せにする、楽しさと活気と魅力にあふれた古典バレエの傑作です。







The ballet ``Don Quixote''is set to music by Cervantes' novel ``Don Quixote'' Minkus. The love storybetween Kitri and Basil, based on an episode of ``Don Quixote,'' and the grandpas de deux performed by the lovers in the final act, is a cheerful and fundance filled with the beauty of classical ballet and a variety of dances. Youcan enjoy many beautiful corps de ballet. Don Quixote travels as a medievalknight, Spanish dances performed by bullfighters and town women, the windmillepisode, beautiful group dances that take place in Don Quixote's dreams, and aballet featuring fascinating characters. ``Don Quixote'' is a masterpiece ofclassical ballet that makes viewers happy with its lively, lively dancing andfun performances.


バレエ「ドン・キホーテ」は、スペインの作家セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」の後篇第19章から第22章の話を主な題材に、ミンクスが音楽をつけています。ミンクスの音楽は、スペインの香りをたたえる楽しい音楽ですが、あくまで主役はバレエで、音楽はバレエの演出に徹底しています。バレエ「ドン・キホーテ」の成功は、プティパの振付・演出が寄与するところ大だとおもいます。セルバンテス著「ドン・キホーテ」のエピソードを原作にした、キトリとバジルとの恋物語、最終幕の恋人たちによるグラン・パ・ド・ドゥまで、古典バレエの美しさとバラエティに富んだ陽気で楽しい踊りの数々と美しいコール・ド・バレエを堪能できる人気バレエです。




1幕、華やかで明るいスペインの街のスペインの市場、床屋の息子バジルと宿屋の娘キトリは愛し合っていますが、父親はキトリを金持ちのガマーシュと結婚させたい為、二人の仲を許しません。闘牛士達も現れ、活気づく街に突然風変わりな風貌のドン・キホーテ一行が現れます。小説「ドン・キホーテ」の筋書きで、ドン・キホーテはキトリをドルシネア姫だと思い込んでしまいます。人々は再び踊りだし、キトリとバジルもそれに混ざりますが、キトリのことをドゥルシネア姫だと勘違いしたドン・キホーテが割り込んできます。キトリはおもしろがってバジルからのバラを投げ捨てて姫になりきってドン・キホーテとメヌエットを踊りますが、バジルが再び奪い返し最後はみんなで踊ります。バレエはふたりの恋物語で、ドン・キホーテは狂言まわしに徹しています。闘牛士の踊りなど、新国立バレエ団の実力派総出演で舞台を盛り上げます。



2幕、舞台は居酒屋、市場の騒動からバジルとキトリが逃げてきます。カスタネットの踊り、ジプシーの踊りなど変化にとんだ華やかな踊りが展開します。キトリにガマーシュとの婚約を無理強いしようとするロレンツォに、バジルは「キトリと結婚できないのなら自殺する」と狂言自殺を図ります。義憤にかられたドン・キホーテは、ロレンツォに槍を突きつけて、バジルの最期の願いであるキトリとの結婚を認めるように迫ります。ロレンツォがしぶしぶ了解すると、死んだふりをしていたバジルは飛び起きて、キトリと喜び合います。


場面は一変し、ロマの宿営地、人形劇がはじまりますが、ドン・キホーテが人形劇の団員たちを悪者、敵と勘違いし、そこにあった風車が回り始めると、ドン・キホーテは悪の巨人が暴れだしたと思い込み、槍を突き立てて突撃して風車の羽に跳ね飛ばされて意識を失います。


意識を失ったドン・キホーテは夢の世界のシーンとなり、まさに夢の世界のような美しい舞台となります。森の中でたくさんの妖精たちがいます。キューピットに手招きされてついていくと、そこには愛しのドゥルシネア姫がいました。妖精たちは彼を歓迎し踊ります。


ドルシネア姫を小野絢子さんは、キトリ役とは一変した優美で美しい踊りを見せます。ヒロインが勝気で弾けたお転婆で気の強い町娘キトリと天中の世界の理想の女性のような優美なドルシネア姫を踊り分けるところが、バレエ「ドン・キホーテ」の最大の見どころです。


3幕 キトリとバジルの盛大な結婚式、新国立バレエ団の主役級総出演で、ラテン的な高揚感のある盛り上がりで、華やかな踊りを次々に披露します。舞台を締めるキトリとバジルのグランドルパ・ド・ドウでは、ミンクスの音楽の力でだんだん盛り上がっていき、明るくて活力があり、お転婆で気の強いキトリとバジルがテクニックを張り合って踊る場面は圧巻です。結婚式に参列した後、ドン・キホーテがドルシネア姫を探してまた旅に出るところで、舞台は終わります。エンターテイメント性のある作品で、舞台のダンサー、一人ひとりが生命力と熱量が、スペインの熱気と活気、スペインの活力を作り出していました。



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音楽

ミンクスは1826年にオーストリアに生まれ、カリスマ振付家マリウス・プティパからスカウトされてマリンスキー劇場で舞踏音楽を作曲するポストに就きました。ミンクスはドン・キホーテ以外に「パキータ」「ラ・バヤデール」などバレエ音楽の主要なレパートリーの作曲もしています。


「ドン・キホーテ」はロマンティックバレエのような「踊りのための音楽」という音楽のスタイルでありながら、「バレエの技巧を見せること中心とする」というクラシック・バレエの踊りの要素がかなり強い作品です。

全編を通して似たような雰囲気の音楽が続きますが、魅力的で印象的なメロディーもたくさんあり、音楽的な中でも踊りやすさを最重要に考えるというポリシーのもと作曲されているといえます。この時代のバレエの作品群すべてに共通していて、当時の音楽界ではバレエ音楽はという扱いでした。総合芸術といえるのは、あくまでもオペラでした。


この傾向はチャイコフスキーによって打ち破られ、その後大きく変わっていきます。チャイコフスキーは「バレエ音楽も交響曲と同じである」と考え、バレエ音楽に芸術性を持たせました。チャイコフスキーの「バレエ音楽革命」は、それ以後はプロコフィエフやストラヴィンスキーなど、「踊りやすいという概念そのものをなくした音楽」という作品に移り変わってきます。




バレエ

バレエ『ドン・キホーテ』は、「踊りのための踊り」がふんだんに盛り込まれており、バレエの技巧を楽しめる作品です。


ドン・キホーテが巻き起こすゴタゴタをコミカルに描き、広場や酒場でみんなで賑やかに踊り通します。人気の高い有名なパ・ド・ドゥ、主役級ダンサーがダイナミックなジャンプや回転など超絶技巧を披露し、場内は一気に盛り上がります。主役には5組のペアが登場し、充実した陣容の小野さんの魅力ダンサーの実力をお楽しめました。



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舞台の感想

今回の舞台は振付:マリウス・プティパ / アレクサンドル・ゴルスキー、改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフという、オーソドクスなロシア版で、華やかで、ダイナミックで、自由さがありました。バレエは、表現面、技術面だけでなく、内面的な表現も人間的重要で、ダンサーの人間的豊かさも重要です。


小野絢子さんは、美人で綺麗で可愛い表現のできるダンサーです。キトリでも、高度の安定した技術に基づいて、小野絢子さんの魅力を炸裂させていました。1幕では要所はきちりと決めつつ、弾けるような踊りを伸び伸びと踊って、全体をリードしていました。


小野絢子さんのキトリは、1幕のヴァリエーションは精緻にして男性ダンサーのように踊りの切れが良く、アクセントや角度のちょっとした技術も精度が高く、カッコよくキトリのソロを踊っていました。ドゥルシネア姫やグランドルパ・ド・ドウのヴァリエーションも完璧でしたが、顔の向きを変えたりするときに一瞬流し目をしたり、小野絢子さんの個性的な演技も見せていました。


2幕の酒場のシーンはスローテンポな音楽が多い中、脇で芝居している小野絢子さんの可愛らしい演技がアクセントになっていました。中島瑞生さん演じるエスパーダからバラを受け取る場面では、バジル役の中家正博さんを扇子で突っぱねて、バラをもらってうっとりし、狂言自殺の場面ではオーバーアクションの芝居がコメディエンヌを可愛らしく演じていました。


ドルシネア姫を演ずる小野絢子さんは、キトリ役とは一変した優美で美しい踊りを見せていました。ヒロインが勝気で弾けたお転婆で気の強い町娘キトリと天中の世界の理想の女性のような優美なドルシネア姫を踊り分けるところが、バレエ「ドン・キホーテ」の最大の見どころです。夢の場では打って変わって、優美で威厳のあるお姫様を小野絢子さんは見事にバレエで表現していました。



小野絢子さんと中家正博さんとは主演で初のペアだそうですが、中家正博さんのサポート技術はすばらしく、瞬時に一番いいポジションでサポートし、小野絢子さんも持ち上げた状態で高い技術で踊れるダンサーですので、余裕があって安心感をもって鑑賞できました。中家正博さんは、ラインもほっそりして、どの技も大きく丁寧で味わいがありました。



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ジュアニッタとピッキリアに、赤井綾乃さんと五月女遥さんは高いジャンプなど鮮やかに踊っていました。五月女遥さんは見るたびにうまくなっていくダンサーで、赤井綾乃さん「ドゥエンデ」に選ばれており、コンテンポラリー系を踊らせると物凄うまいダンサーです。仲村啓さんは3幕のボレロは、ロシア風のスパニッシュで、重心を落とし身体の角度などがバランスの取れた踊りでした。直塚美穂さんの街の踊り子は、エスパーダの中島瑞生さんと息があって、見事なスピード感で技を決めていました。原田舞子さんのカスタネットの踊り、益田裕子さんが真紅のバラなど、見どころがたくさんありました、


チャイコフスキー以降の完成度の高い音楽とストーリー性の高いバレエと異なり、ミンクスの「ドン・キホーテ」は踊りを楽しむバレエでしたが、久しぶりにくつろいでバレエを楽しむことができました。



振付:マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー

改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ

音楽:レオン・ミンクス

美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ

照明:梶孝三

芸術監督:吉田都

指揮:マシュー・ロウ/冨田実里

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

出演:新国立劇場バレエ団

20231029() 14:00

【キトリ】小野絢子

【バジル】中家正博

【ドン・キホーテ】中島駿野

【サンチョ・パンサ】小野寺雄

【ガマーシュ】小柴富久修






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by desire_san | 2023-11-16 21:14 | バレエ・演劇 | Comments(0)

by desire_san