ハプスブルク家の絵画の至宝
六本木の国立新美術館でウィーン美術史美術館(オーストリア)とブダペスト国立西洋美術館(ハンガリー)の所蔵品からハプスブルク家ゆかりの絵画の至宝75点に華麗な工芸品を加えた計約120点を展示した大規模な美術展が開催されています。
ハプスブルク家はヨーロッパに600年以上君臨し、宮廷画家として活躍した画家だけでもデューラー、ティツィアーノ、ベラスケス、ルーベンスなど絵画史上の巨匠が並びます。今回の展覧会では、これらの巨匠に加え、クラナッハ、ラファエッロ、エル・グレコ、ムリーリョ、ゴヤなどイタリア絵画、ドイツ絵画、オランダ・フランドル絵画、スペイン絵画の代表作が見られ、16世紀から18世紀にかけての西洋美術の系譜をたどることができました。
最初のセッションでは、フランツ・クサファー・ヴィンターハルターの描いた巨大な「オーストリア皇妃エリザベート」の肖像画を始めとするハプスブルク家の肖像画宮廷肖像画は8点が展示されていました。その中で特に心に残ったのが、アンドレアス・メラー「11歳の女帝マリア・テレジア」でした。美しい女性の絵としても魅力ある作品ですが、彼女のその後の人生や歴史的役割を考えながら見ると肖像画を越えた感傷を感じました。鮮やかなバラの花や右手のひ弱な花も何かを象徴しているように思えました。
イタリア絵画のセッションでは、特にルネサンス期のヴェネツィア派の画家・ロレンツォ・ロットとジョルジョーネの作品が心に残りました。ロレンツォ・ロットの「聖母子と聖カタリナ、聖トマス」は 聖母マリアの水色のドレスが華やかで画面全体に統一感を与え、一方で内面へ迫る心理描写と独自の不安的で神経質が僅かに共存するみずみずしい作品でした。
ジョルジョーネの「矢を持った少年」は油彩の板絵で、小品ながらジョルジョーネの繊細な表現力にこの画家の偉大な才能を感じました。他にティツィアーノの「聖母子と聖パウロ」やジョルジョーネ、ティントレットなどヴェネツィア派の秀作が展示されていました。
ドイツ絵画のセッションでは、ルーカス・クラナッハの「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」(ブダペスト国立西洋美術館蔵)が鮮烈な印象を与えました。1530年代の油彩の板絵ですが、洗礼者聖ヨハネの首が生々しく、サロメの妖艶な美しさとの対比が心に焼きつきました。アルブレヒト・デューラーの「若いヴェネツィア女性の肖像」が色彩の明るさとリアリズムのバランスがとれた清楚な作品でした。これも16世期初頭の作品です。
スペイン絵画のセッションでは、ディエゴ・ベラスケスの「白衣の王女マルガリータ・テレサ」と「皇太子フェリペ・プロスペロ」が並んで展示されていました。視覚効果を重要視した独自の写実主義的陰影表現が見事で、子供のさわやかな肖像画としても楽しめまま奇抜な構図と非現実的な色彩した。他にベラスケスは初期の作品「食卓につく貧しい貴族」がありましたが、私は宮廷画家として描いた肖像画よりこのようなベラスケスの方が好きです。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョは3つの作品が展示されていました。ムリーリョの作品は、大きい明暗対比と柔らかく繊細で輝きがある表現に魅力があります。その中では「悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル」が傑作のようですが、個人的には地味な作品ですがいかにもムリーリョらしい優しさがあふれる「聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ」が心癒され好きな作品でした。他に「幼い洗礼者聖ヨハネ」が展示されていました。私の好きなエル・グレコは「受胎告知」が来ていました。奇抜な構図と非現実的な色彩のもたらす迫力は、まさにエル・グレコの世界です。
フランドル・オランダ絵画のセッションでは、豊かな色彩による画面構成と甘美的表現のあるペーテル・パウル・ルーベンスの「悔悛するマグダラのマリアと姉マルタ」と「キリスト哀悼」が特に目立っていました。他に、アンソニーヴァン・ダイクの人間味まで表現した肖像画4点なども心に残りました。レンブラントは「読書する画家の息子ティトス・ファン・レイン」 が展示されていましたが、あまりに地味な作品なのに驚きました。
心の虜にされるような傑作はありませんでしたが、粒ぞろいの秀作が多数あり、久しぶり心が満たされた美術展でした。
王女マルガリータ・テレサと皇太子フェリペ・プロスペロの前に座っているとタイム・スリップしたような実在感がありました。
素敵な絵画の写真をたくさん載せていらっしゃって、改めてゆっくり見せていただきました。
絵画展は大好きですが、今回は珍しい調度品もあって楽しかったですね。
これからもお伺いさせていただきます!!
私は今回はなぜか装束に関心が集中し、
「聖母子と聖カタリナ、聖トマス」の
マリアの水色のドレスも、とても印象に残りました。
エリザベートのふんわりとした白いチュールドレスも、
空気感たっぷりで、本当に素敵でした。
印刷物で見るととても平面的なのですが、実物を見ると、
これほどまでに立体的に迫ってくるものか、と感じました。
またお邪魔させていただきます!ありがとうございました。
ハプスブルグ家ゆかりの絵画がこれだけ集まって見れるのもなかなか機会がないでしょうけど、今回はdesireさんのアルバムで我慢します。
それぞれの絵に詳しい解説が加えられていますので、美術関係の方なのですか?
芸術は時代と空間を超えて私たちをいざなってくれますのでいいですよね。
これからも、よろしくお願いします。
先日はご訪問ありがとうございました。
ハプスブルク展、良かったですよね。
出不精のワタクシですが、思い切って出かけて良かったと思っています。
実物に触れ、その「世界」に浸れる幸せを感じました。
またお邪魔させていただきますね!
「11歳の女帝、マリア・テレジア」同じような思いで観賞しておりました。
また「食卓につく貧しい貴族」ベラスケスがこのような作品も描くのだなあと肖像画とはまた違った印象がありました。
「ヨハネの首の生々しさとサロメの妖艶な美しさとの対比・・・」印象に残っています。